現在性をあまり感じられず ☆3.5点
1995年から1996年までビッグコミックスピリッツで連載された新井英樹の同名漫画の実写映画化。
寒村に暮らす農家の一人息子でパチンコ店で働く中年独身男性が、過干渉な母と失恋でやけを起こし、フィリピン人女性と金銭で国際結婚したことから巻き起こる騒動を描く。
監督は吉田恵輔、主演に安田顕とナッツ・シトイ、共演に木野花、伊勢谷友介、河井青葉
予告編
映画データ
本作は2018年9月14日(金)公開で、全国27館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には67館での公開となるようです。
製作・配給はスターサンズ
TOHOシネマズシャンテで予告編はよく目にしていて、2月に『犬猿』が公開されたばかりの吉田恵輔監督の新作がもうやるんだと思って、楽しみに鑑賞しました。
漫画原作の存在は知らず、未読での鑑賞です。
監督は吉田恵輔さん
近作は『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんと』『銀の匙 Silver Spoon』『ヒメアノ~ル』『犬猿』を観てます。
主演に安田顕さん
近作は『黒執事』『龍三と七人の子分たち』『新宿スワン』『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』『聖の青春』『追想』『銀魂』『不能犯』『北の桜守』を観てます。
主演にナッツ・シトイさん
フィリピンの女優さんで数本の映画に出演してるようです。
本作への出演はフィリピンでのオーディションで選ばれたそうです。
日本で見れる出演作品にネットフリックスのオリジナルドラマ「AMO 終わりなき麻薬戦争」があります。
共演に木野花さん
近作は『さよなら渓谷』『恋人たち』を観てます。
共演に伊勢谷友介さん
近作は『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』『ジョーカー・ゲーム』『新宿スワン』『劇場版 MOZU』『新宿スワンⅡ』『3月のライオン後編』『忍びの国』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』『いぬやしき』を観てます。
共演に河井青葉さん
近作は『さよなら歌舞伎町』『二重生活』『PとJK』『東京喰種 トーキョーグール』『望郷』『あゝ、荒野 前篇/後篇』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
宍戸岩男: 安田顕
アイリーン・ゴンザレス: ナッツ・シトイ
宍戸ツル: 木野花
塩崎裕次郎: 伊勢谷友介
吉岡愛子: 河井青葉
マリーン: ディオンヌ・モンサント
正宗: 福士誠治
宍戸源造: 品川徹
竜野: 田中要次
斉藤: 古賀シュウ
真嶋琴美: 桜まゆみ
あらすじ
一世一代の恋に玉砕し、家を飛び出した42歳のダメ男・宍戸岩男(安田顕)はフィリピンにいた。コツコツ貯めた300万円をはたいて嫁探しツアーに参加したのだ。30人もの現地女性と次々に面会してパニック状態の岩男は、半ば自棄になって相手を決めてしまう。それが貧しい漁村に生まれたフィリピーナ、アイリーン(ナッツ・シトイ)だった。岩男がとつぜん家を空けてから二週間。久方ぶりの帰省を果たすと、父の源造(品川徹)は亡くなり、実家はまさに葬儀の只中だった。ざわつく参列者たちの目に映ったのは異国の少女・アイリーン。これまで恋愛も知らずに生きてきた大事な一人息子が、見ず知らずのフィリピーナを嫁にもらったと聞いて激昂するツル(木野花)。ついには猟銃を持ち出し、その鈍く光る銃口がアイリーンへ……!
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
うーん、面白いには面白かったんですけど、傑作かと言われると自分にはそこまで響きませんでした。
お話的には吉田監督の『ヒメアノ~ル』の二番煎じ的な気がして、バイオレンス、セックス、生きる!みたいな。
『ヒメアノ~ル』はサイコスリラーでしたけど、本作はコーエン兄弟作品のお間抜けさがプラスされたクライムドラマといいますか、お話の転び方なんかも、雪深い寒村という設定を含めて『ファーゴ』なんかと似てたと思いました。
原作は20年以上前の漫画で、その当時は中年童貞という言葉はありませんでしたが、お話としては中年童貞をこじらせちゃった系だと思います。
そして、そこに母親が息子を溺愛してるのがプラスされるんで、お話としては更にややこしくなります。
本作では息子は母親に反発してますのでマザコン(エディプスコンプレックス)ではありませんが、反対の場合を指す言葉はギリシャ神話的な言葉でありますでしょうか?
最近では「ムスコン」なる言葉があるようですが、まあそんな感じです。
本作ではなぜ母親のツルはそこまで息子の岩男を溺愛するのか?
これは終盤の方で分かりますが、理由を聞けば納得できる部分もあります。
ただ子離れ出来ない母親の行動は観ていて中々辛いものがあります。
岩男の部屋は居間に隣接してる引き戸の部屋で鍵も掛けられないためプライバシーがありません。
42歳の息子がアダルトビデオを見ながらオナニーしてるのを覗く母親は異常ですよね。
息子が中学生くらいで、母親が部屋を片付けてたらエロ本を見つけるのとは訳が違います。
岩男も42歳でパチンコ屋で働いてるんだから、寮に入るとか一人暮らしすればいいのに?と思います。
田舎のパチ屋だと寮無いんでしょうかね?
劇中ではボケた父親の源造がその時だけ意識がはっきりして「親も家も捨てられない男に女は惚れない」と言いますが、一人暮らししたからって親を捨てることにはならないと思いますし、岩男には最低限のプライバシーは必要だったんじゃないかと思いました。
そう考えると、本作は毒親の話だったのかしら?
岩男が愛子に優しくされて舞い上がっちゃうのは分かるんです。
そして恋愛下手というか経験が無いから撃沈しちゃうのも仕方がない。
でも車に轢かれて「おまんこ~」と叫ぶのが分かりません。
いや映画的には面白いシーンだと思いますよ、劇場でも笑いが起きてましたし。
自分も笑いはしましたが、作品の評価には繋がりません。
「おまんこ~」と叫ぶならマリーンとヤればよかったのにと思いますが、酔った勢いで女性をお金で買ったのが許せないんでしょうか。
岩男は愛子にしてもそうですが、女性に処女性を求めてます。
自分にはこの感覚は分からなくて、上の中年童貞の記事にあるように処女性を求め、二次元やロリに走ったりするのも分かりません。
あと、いつもニュースを見ていて思うのは、毎日のように痴漢や盗撮で逮捕されてる人がいますが、何でお金払って風俗に行かないんだろ?と思います。
なので車に轢かれて頭から血を流しながら「おまんこ~」と叫ぶ岩男にノレなかったんですね。
次のシーンでは岩男はフィリピンにいます。
パチンコ店の同僚の斉藤にフィリピンパブに連れていかれたときに、国際結婚のことを聞き齧ったからなんですが、この短絡的な展開はフィクションだから仕方ないと思いますが、金を払ってフィリピン人と結婚するっていうのに、現在性を感じなかったんですよね。
もちろん原作が20年以上前の作品だからですが、劇中では20年前では無かったと思います。
今だったら「婚活系出会いサイトで騙されて~」みたいな方がリアリティあったと思いますが、それじゃまるっきり原作の話と違っちゃいますもんね。
ていうか今年出会い系で騙されるやつありましたね。
勢いでフィリピンのお見合いツアーに参加した岩男は、最後はやけになってアイリーンに決めますが、自分は正直言ってアイリーンにそんなに魅力を感じなかった(笑)原作読んでる方には雰囲気出てると評判いいみたいですけど。
処女性を求めてるからか分かりませんが、ちょっとロリっぽい雰囲気入ってますよね。
この役、90年代ならルビー・モレノが演じていたかどうかは分かりませんが、『月はどっちに出ている』なんかはルビー・モレノの魅力が作品の評価を牽引してましたよね。
それに比べると、本作はそこまでには至ってなかったと思います。
というか、ぶっちゃけマリーンの方がよかった(笑)
『月はどっちに出ている』のルビー・モレノしかり、関西弁を話すフィリンピン人に惹かれるのは私だけでしょうか(笑)
岩男がいなくなるとツルは必死に探しますが、この辺も息子離れ出来ない母親が描かれてます。
そして夫の源造が死んでお葬式をあげてると岩男がアイリーンを連れて帰ってきます。
するとツルは猟銃を持ってアイリーンを追い出そうとしますが、これは当然でしょう。
日本人同士で結婚したって嫁姑の問題があるのに、いきなり知らない外国人を連れてきて結婚したと言われたら、息子を溺愛してるツルじゃなくても拒否反応を示すと思います。
自分は常々、結婚というのは恋愛の延長にあるのでは無くて、お互いが親兄弟を捨てない限り、家と家の付き合いだと思うのですが、日本人の家同士の文化が違うだけでも大変なのに、国の文化が違ったらとてつもなく大変なことになるなと、「フィリピン 国際結婚」で検索したら分かりましたが、下の2つは読んでて面白かったです。
で、ここからは嫁姑のバトルというか、ツルがアイリーンを追い出そうと色々画策しながら、同時に自分の眼鏡に適った嫁を岩男に宛てがおうと見合い話を進めますが、素朴な疑問として、何で42歳までほっといたんだろう?と思いますが、それ言っちゃうと身も蓋も無いんでまぁいいです。
ツルが気に入ったのは漬物工場に勤める真嶋琴美で真面目で控えめで地味で処女という申し分ないスペックです。
アイリーンと結婚する前だったら岩男も気に入ったと思うのですが、何で42歳までほっといたんだろう?(2回目)
真嶋琴美を演じたのは、眼鏡かけて目元にほくろ付けて地味なメイクした森川葵さんかと思ったんですが、途中でお尻だしたり、パンツ下ろした状態でコケて、まんこ丸見え状態(モザイクかかってますけど)になったので違う人だよなぁ?と思い、最後にエンドロールで確認したらやっぱり森川葵のクレジットは無くて、これ書くのに調べたら桜まゆみさんという初めましての女優さんだったんですが、声とかお芝居の雰囲気とかそっくりだったんで、「桜まゆみ 森川葵」で検索したらやっぱりそういう声ありました(笑)
ツルは2人を強引にお見合いさせると、岩男には精力ドリンク、琴美には睡眠薬入りドリンクを飲ませて琴美を車で送っていくように言います。
すると琴美は途中で眠ってしまうので、その姿を見て欲情した岩男は車を路肩に止めて、琴美のスカートをめくってパンツ見ながらオナニーを始めるんですがあり得なくないですか(笑)
吉田監督は『ヒメアノ~ル』でも森田剛さんにオナニーさせてましたが、あのシーンはいじめの残酷さを象徴するものとして、あれ以上ない素晴らしい(ジャニーズにやらせたという点も含め)シーンでした(今思い出しても泣けてくる)が、本作のこのシーンは笑いこそ起きてましたが、リアリティという点では首を傾げざるを得ませんでした。
まぁ、公開包茎手術をしたヤスケンさんらしいシーンではありますが…。
女衒の塩崎は、何であんなにアイリーンに執着するのか分かりませんが、塩崎と利害が一致したツルは塩崎にアイリーンをさらわせます。
岩男はアイリーンを救うため、塩崎を殺すと、晴れてアイリーンと結ばれます。
ここからは暴力とセックスの対比になりますが、これも『ヒメアノ~ル』で森田(森田剛)の殺人シーンに、岡田(濱田岳)とユカ(佐津川愛美)のセックスシーンを挟むなどしてましたが、若干の違いはあれど基本的には同じだと思います。
岩男とアイリーンのセックスを見たツルは閉経したのに生理がきますが、あのシーンはどう捉えたらいいんでしょう。
実はあの出血は重大な病気の前兆だったとか?
物語的なインパクトを狙っただけであまり意味が無い気もしますが…。
あとやっぱりこの作品が自分には響かなかったのは、岩男がアイリーンに惹かれていく様子に共感が湧かなかったことです。
マリーンだったら違ったんでしょうけど(しつこい)
塩崎の仲間の暴力団に塩崎殺しを疑われると、岩男は様々な嫌がらせを受けて追い詰められていきます。
しかし、逆に命を燃やすように性欲は増してきて愛子と頻繁に関係を持ちます。
岩男は愛子だけでは性欲は収まらず、職場の良江だったり、マリーンを買ったり、片っ端からセックスしていきます。
寺の坊主の正宗との仲を疑ったアイリーンには、愛のあるセックスは拒否されて3千円払ってセックスしてます。
そして久しぶりに琴美が岩男を訪ねて来て、オナニーを見たことを謝罪するのですが、謝罪の必要は無いと思いますし、岩男がお詫びの代わりに目の前でオナニーをしろと言うのもよく分かりません。
そして琴美がパンツ下ろしてオナニーしようとするのが一番分からなくて、面白いシーンだとは思いますが、物語的にはどうでもよくなってきました。
岩男は願掛けのように何度も神社の奥の森の木に、アイリーンへの思いを刻みに行ってましたが、暗闇で雪で足を滑らせて落ちるとあっけなく死んでしまいます。
残されたツルとアイリーンは「楢山節考」みたいな展開になりますが、アイリーンが岩男の子を妊娠してると言うとツルは思いとどまり、アイリーンがおんぶして下山中にツルは息を引き取って亡くなります。
ツルが岩男を溺愛したのは2人流産して次の子が2歳で亡くなって、ようやく大きくなるまで育てられた子だからで、母の思いを知ると胸に刺さるものはありますが、それが子の思いとは一致しないところが辛いところです。
というか、そもそも本来が一致するものでは無いんですが、それが理解できなかった母親は、結果的に全ての子が逆縁になってしまうという悲劇でした。
「中年童貞」という言葉の方が新しいですが、「毒親」という言葉もここ何年かでよく目にする言葉で、そのせいで本作のテーマも目新しさは感じませんが、原作漫画をリアルタイムで読んでいたら自分の評価や印象も変わったのかな?と思います。
ただ、2018年4月クールのテレビ東京のドラマ「宮本から君へ」も、途中脱落してしまったので、なんとなく新井漫画と相性がよくないのかな?と思い始めてます。
あと、本作の漫画原作は『ヒメアノ~ル』と同じ全6巻ですが、『ヒメアノ~ル』が上映時間99分だったのに対し、本作は137分でやや長いかな?とも思いました。
ウィキペディアを見る限り、原作漫画では「日本(の農村)の少子高齢化」「嫁不足」「外国人妻」「後継者問題」「国際結婚が内包している種々の問題」といった社会問題に正面から取り組んでるようですが、映画ではそれほどの社会的テーマは感じられなかったので、もっと短くてもよかったかなと思います。
鑑賞データ
TOHOシネマズシャンテ TOHOシネマズデイ 1100円
2018年 147作品目 累計127200円 1作品単価865円
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