真面目なフリしたギャグ映画な気が ☆3.5点
イギリスの文学賞、ブッカー賞の常連で1998年に刊行した「アムステルダム」で同賞を受賞したイギリス人作家イアン・マキューアンが2007年に発表した小説「初夜」の映画化で自身も脚本を担当。
監督はドミニク・クック、主演にシアーシャ・ローナン、ビリー・ハウル、共演にエミリー・ワトソン、アンヌ=マリー・ダフ
予告編
映画データ
本作は2018年8月10日(金)公開で、全国14館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には46館での公開となるようです。
劇場での予告編はシャンテに行った時に数回見ました。
「あなたとは結婚できない」と言うシアーシャ・ローナンの台詞と「僅か6時間の結婚生活」のコピーで、成田離婚みたいな話かな?と思って観に行きました。
監督はドミニク・クック
イギリスの舞台演出家のようで、劇場長編映画は初監督のようです。
映像作品は2016年のイギリスBBCのテレビ映画『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』のシーズン2の「ヘンリー六世 パート1」「ヘンリー六世 パート2」「リチャード三世」を監督してるようです。
主演にシアーシャ・ローナン
近作は『グランド・ブダペスト・ホテル』『ロスト・リバー』『ブルックリン』『レディ・バード』を観てます。
主演にビリー・ハウル
日本では今年1月に公開された『ベロニカとの記憶』で映画デビューを果たした新たなイギリスのイケメン俳優なんですが未見です。
『ダンケルク』では桟橋の士官役で出演してたみたいです。
共演にエミリー・ワトソン
近作は『エベレスト 3D』『キングスマン:ゴールデン・サークル』を観てます。
共演にアンヌ=マリー・ダフ
近作は『未来を花束にして』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
フローレンス・ポンティング: シアーシャ・ローナン
エドワード・メイヒュー: ビリー・ハウル
ヴァイオレット・ポンティング: エミリー・ワトソン
ライオネル・メイヒュー: エイドリアン・スカーボロー
マージョリー・メイヒュー: アンヌ=マリー・ダフ
ジェフリー・ポンティング: サミュエル・ウェスト
アン・メイヒュー: アンナ・バージェス
ハリエット・メイヒュー: ミア・バージェス
あらすじ
1962年、夏。世界を席巻した英国ポップカルチャー「スウィンギング・ロンドン」が本格的に始まる前のロンドンは、依然として保守的な空気が社会を包んでいた。そんななか、幸せいっぱいの若い夫婦が誕生する。
カルテットの一員となり、大きな舞台でコンサートを開くことを夢見ていたのは、美しく野心的なバイオリニストのフローレンス。一方のエドワードは、歴史学者になることを目指しながら自由に暮らしていた。まるで接点のなかった2人だったが、ある日偶然出会い、一目で恋に落ちる。
とはいえ、実業家として成功した厳格な父親と過保護な母親を持つ裕福な家庭で育ったフローレンスと、学校の教師を務める父親と脳に損傷を負った母親を抱えるエドワードは対照的な家庭環境。すべてが異なる2人にとっては、さまざまな困難が立ちはだかると思われていたが、フローレンスとエドワードはそれらを乗り越えるほどの深い愛情で結ばれていた。
そしてついに、フローレンスとエドワードは人生をともに歩んでいくことを決意する。結婚式を無事に終え、2人が新婚旅行として向かったのは、美しい自然に囲まれたドーセット州のチェジル・ビーチ。幸せに満ち溢れた時間を過ごすはずだった。ところが、味気ないホテルに到着すると、堅苦しい空気に包まれてしまう2人。ホテルの部屋で食事を楽しもうとするものの、初夜を迎える緊張と興奮から、会話は思うように進まず、雰囲気も気まずくなるばかりだった。
いよいよそのときが訪れるも、喜びを抑えきれずに焦るエドワードと不安な様子のフローレンスは、どこかちぐはぐで、うまく噛み合わないまま。ついに結ばれるかと思われたが、なぜかフローレンスはエドワードを拒絶してしまう。フローレンスはホテルを飛び出し、チェジル・ビーチへと逃げていくのだった。エドワードは後を追いかけるものの、2人は激しい口論となり、お互い思ってもいない言葉を口にしてしまうことに。
愛しているからこそ生じてしまった“ ボタンの掛け違い”。それは、今後の2人の人生を大きく左右する分かれ道となってしまう。フローレンスとエドワードにとって、生涯忘れることのできない初夜。その一部始終がいま明かされる……。
(公式サイトhttp://tsuisou.jp/#bg02より引用)
ネタバレ感想
物語はチェジル・ビーチに新婚旅行に来ている2人の回想形式で進みます。
最初はその進み方に慣れなくて、ホテルで食事してると場面が切り替わったりするので、時間軸に戸惑ったのですが、ホテルの部屋とチェジル・ビーチのシーン以外は回想で描かれ、新婚旅行と回想が頻繁に切り替わりながら物語は進みます。
ただ回想の方はあんまり面白くなくて、2人の家庭環境の違いだったりが描かれます。
2人の出会いはフローレンスが水爆実験反対の会合でビラ配りしてる所にエドワードが訪れたことによって始まります。
エドワードはその日、大学から成績表が届いて歴史学で優を取って喜んでたのですが、その喜びを分かちあってくれる人がいません。
母親のマージョリーは画家で一日中家に居ますが、以前に駅のホームで列車の進入時に開いた扉に頭をぶつけて脳損傷し、昼間から庭で真っ裸になるなど痴呆状態にあるので、テストで優を取ったと言っても頓珍漢なことを言います。
なのでエドワードは誰かに伝えたくて街に出かけると、人の出入りが多かったその会場に吸い込まれ、ビラを配ってるフローレンスと出会います。
エドワードはフローレンスに「今日、歴史学で優を取ったんだ」と言うと、フローレンスが「すごーい」と褒めてくれたので、一気に好きになります。
フローレンスの方はエドワードが入ってきた時からイケメンだったので一目惚れでした。
かくしてお互いすぐに付き合う流れになります。
フローレンスはエドワードの家に行っても、上半身裸で絵を描いてるマージョリーの扱いなんかも上手かったので、エドワードの父ライオネルからも気に入られます。
ライオネルはエドワードに「あんないい娘はいない。早く結婚しろ」と言います。
一方、フローレンスの家の方は父ジェフリーが電子機器の会社を経営していてお金持ちです。
フローレンスが音楽にうつつを抜かしてられるのも実家がお金持ちだからでしょう。
フローレンスには妹がいて2人姉妹なんですが、ジェフリーは特に娘に継がせる気はないようで、エドワードも一応、入社させますが雑用係からのスタートです。
ジェフリーは上流階級のたしなみであるテニスでエドワードと対戦しますが、労働者階級であるエドワードは3セット先取の試合の中で1ゲームしか取れず、ジェフリーからも明らかに気に入られてない様子でした。
このように明らかに不釣り合いな2人の家族なんですが、とにかくお互いが好きというだけで結婚し、結婚式を終えると新婚旅行でチェジル・ビーチに来たという訳です。
チェジル・ビーチはチェシル・ビーチとも表記するみたいでロンドンの南西220kmくらいなんですが、日本で言えば新婚旅行のメッカだった熱海みたいなもんだと思います。
参考 なぜ熱海が新婚旅行のメッカに?知られざるハネムーンの歴史
そしてこのチェシル・ビーチを含む一帯はジュラシック・コーストと呼ばれ2001年に世界遺産に登録されたそうです。
チェシル・ビーチは砂州になってるようで、日本だと天橋立を思い浮かべるんですが、新婚旅行で熱海と天橋立という観光地を一遍に行った感じで、想像すると楽しそうです。
そんな感じで本来なら楽しいはずの新婚旅行なんですが、2人の頭は初夜のことで頭が一杯で緊張してます。
ビーチを少し歩いてホテルに戻ると部屋食でのディナーとなりますが、時間がちと早いです。
フローレンスが「少し早くない?」と聞くんですが、エドワードは「まあ、いいよ」と言ってディナーが始まります。
まずはワインのテイスティングから。
労働者階級のエドワードはワインの味なんて分からないんで、当然OKを出すんですが、このワインは水で薄められてます。
夕食の準備をしていた給仕係がこぼしたからなんですが、給仕係2人して「水を入れとこう」と言います。
前菜を食べ始めても給仕係が帰らないので、エドワードは「ずっと居るんですか?」と聞くと、メインの肉料理をサーブしたら居なくなると言われ、肉料理が出てくるとやっと2人きりになれますが、部屋を出て行った給仕係は新婚の2人を茶化すように廊下で笑っていて、そのことも2人を気まずくさせます。
結局、昼食を食べたばかりということもあり、夕食を早々に切り上げると、エドワードがフローレンスに近づいていって「愛してる」と呟き、外はまだ明るいですがそういう流れになっていきます。
この2人、交際中は頻繁にキスをしてましたが、それ以上は初めてで、エドワードはややガッツキ気味です。
エドワードはフローレンスを抱きしめながらワンピースの背中のファスナーを下ろそうとしますが、途中で引っかかって下りなくなってしまいます。
それでもエドワードは背中を向かせてファスナーを下ろそうとしますが完全に引っかかってしまって下りません。
フローレンスが「壊れる」と言って窘めると、エドワードはイラついた態度を取り回想シーンになります。
エドワードは以前、暴力で失敗していて、それは友達の仕返しのための暴力でしたが、暴力的なエドワードはその友達から距離を置かれてしまいます。
フローレンスはそのことを知ってるので、そういうところを直した方がいいと注意すると、落ち着かせるためベッドに横になります。
フローレンスに諭されて落ち着いたエドワードもベッドに腰掛けると、ストッキングを脱いでもらい、また続きが始まります。
エドワードがフローレンスに覆い被さってキスしてると、初めてで不安なフローレンスはエドワードに経験人数を聞きます。
適当に誤魔化すエドワードに「6人?」と聞くと、エドワードは「まあ、そんなもん」と答えますが見栄を張ってるのは明らかで「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ」状態でした。
結局、不安なフローレンスの質問攻めに、正直に初めてであることを告げると、エドワードも幾らか気が楽になったのか、フローレンスの下半身に手が伸びます。
エドワードはフローレンスのパンティを脱がすと、覆い被さりながら自分の靴を脱ごうとしますが、そんな芸当は出来るはずもなく、ベッドから下りると靴を脱いで上半身ワイシャツ1枚だけになります。
エドワードは再びフローレンスに覆い被さると、フローレンスを押しつぶしてしまわないように、痛くないか聞いて足の位置を調整します。
そしてお互いの下半身を密着させ結ばれようとします。
フローレンスは全く知識が無かったので、事前に「結婚、愛とセックス」というハウツー書を読んでいました。
それには、女性が導いてもいいと書かれていたため、密着しているエドワードの息子に手を添え導こうとします。
しかし、そこは処女と童貞、うまくいかずにいるとエドワードが声を上げてベッドを下りてしまいます。
何が起きたのか分からないフローレンスがスカートをたくし上げると、太ももに精液がぶちまけられていました。
結果的に、結婚するまでお預け状態だったエドワードが暴発してしまったのでした。
しかし、それに驚いたフローレンスは精液を枕で拭くと、子供の頃の記憶が蘇り部屋を出て行ってしまいます。
2度ほど回想で出てくる子供の頃のフローレンスは、父親とヨットに乗っています。
そして船室のベッドで横たわる子供の頃のフローレンスを映し、性的虐待があったことを示唆します。
エドワードはフローレンスを追いかけると、追いついたのはチェシル・ビーチの砂州を3kmも歩いたところでした。
2人はお互いの愛情を再確認すると、改めて一生添い遂げたいと言いますが、フローレンスはセックスだけは無理だと正直に打ち明けます。
自分には無くてもいいものだが、それをエドワードに求めるのは酷なので、性処理は他の女性としていいと言います。
しかし、新婚初日で他の女性としていいと言われたエドワードはプライドが傷ついて、そのまま帰ってしまい、結婚生活は6時間で終わってしまうのでした。
物語はT・レックスの20センチュリー・ボーイがかかると1975年に飛びます。
ややロン毛でパンタロン気味のエドワードは黒人の彼女とレコード店をやってます。
するとそこに一人の少女がやってきます。
少女はチャック・ベリーのレコードが欲しいと言います。
エドワードもチャック・ベリーが好きなので、子供なのに珍しいと思い話しかけると母親が好きで誕生日プレゼントしたいと言います。
その子は楽器ケースを持っており、よく見るとエニスモア・カルテットというステッカーが貼られています。
エニスモア・カルテットというのはフローレンスの楽団で、その少女はフローレンスの娘なのでした。
エドワードは、レコードはプレゼントすると言うと、今度は2007年に時間が飛びます。
すでにおじいさんになってるエドワードがラジオを聞いてると、エニスモア・カルテットが45周年記念でウィグモア・ホールでコンサートが開かれると流れてきます。
リーダーのフローレンスはその間に3人の子と5人の孫に恵まれたことが紹介されていました。
ウィグモア・ホールはフローレンスがカルテット結成時、アルバイトしてた所で憧れの舞台でもありました。
若かりし頃のエドワードとフローレンスは、いつかそのホールでコンサートが開けたら、この座席から聴くと約束した場所でもありました。
コンサートの日、エドワードは約束した席で演奏を聴いてるとフローレンスも気づきます。
2人は目が合うと涙を流しますが、演奏は無事終了し大きな拍手に包まれます。
ラストシーンは新婚旅行のチェシル・ビーチに戻って、別れる2人を引きの画で映します。
画面の右端に佇むエドワードからフローレンスが左に歩きフレームアウトして映画は終わります。
映画が終わった直後はよく分からなかったんですが、フローレンスは結局3人も子供を産んだわけで、エドワードが手慣れていればこうはならなかったのかな?と思いました。
性的虐待を受けたかの描写も曖昧で、フローレンスがセックスを無理と言ったのは、上手くいかなかったことに自信を無くした部分もあって、こういう部分は2人とも若気の至りだったのかなとも思いました。
あとは最初に書いたように「成田離婚」の部分ですよね。
上の記事を読むと、まさにエドワードのことが書かれてると思いました。
本作は『追想』(原題:On Chesil Beach)なんてタイトルが付いてるので、真面目な文芸作品かと思ったんですが、ホテルでのシーンなんかは結構、コメディっぽく描かれてて思わず笑っちゃったんですけど、映画館は5~6割の入りだったでしょうか、そんなに笑ってる人もいなかったのでゲラゲラ笑うわけにはいかなかったんですが、ちょっとツッコミ入れつつ笑いたいくらいでした。
タイトルとしては「処女と童貞の新婚初夜、暴発の行方」や、それこそまさに「夫のちんぽが入らない」だと思ったんですけど、それだとピンク映画のタイトルみたいになってしまうので『追想』で致し方ないところでしょうか。
ただ『追想』だとユル・ブリンナーとイングリット・バーグマンのがあるんでややこしいんですよね。
フィリップ・ノワレとロミー・シュナイダーの『追想』もありますし。
なかなかややこしいタイトル付けたなと思います。
昨年は『追憶』がありましたし。
なかなか評価が難しい作品なんですが、真面目な作品だと思って観るとつまらないですが、「夫のちんぽが入らない」的な好奇心のところから入ってみると、悲喜こもごもを感じられる作品で、どうにも邦題がよくなかった気がします。
これなら小説のタイトルの「初夜」のままでよかったと思いますね。
シアーシャ・ローナン版「夫のちんぽが入らない」は言い得て妙だと思います。
と思ったら、本家の方もドラマ化されるんですね。
ドラマが放送されたら、本作と見比べてみるのもいいかもしれません。
鑑賞データ
TOHOシネマズシャンテ 1か月フリーパスポート 0円
2018年 129作品目 累計123100円 1作品単価954円
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