白石和彌監督オリジナルが全くダメだった件 ☆2点
2013年公開の『凶悪』でタッグを組んだ白石和彌監督と脚本家・高橋泉によるオリジナル作品のサスペンススリラー。
主演はNGT48を卒業することを発表した北原里英、共演にピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦
予告編
映画データ
本作は2018年2月17日(土)公開で、全国40館での公開です。
2月9日(金)から新潟・長岡で先行公開されてます。
順次公開されて、最終的には48館での公開となるようです。
予告編は新宿バルト9か渋谷シネパレスに行ったときくらいしか目にしなかったので2、3回しか見てないと思います。
『彼女がその名を知らない鳥たち』からわりと間が無い公開ですが、白石和彌監督ということで期待して観に行きました。
監督は白石和彌さん
監督作は『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』を観てます。
主演は北原里英さん
AKB系は興味無いので、名前だけは存じ上げておりますが、詳しいことは知りません。
出演している映画は見たことが無く、ドラマもゲスト出演してる作品は見てるようですが記憶にないと思いましたが、「みんな!エスパーだよ!番外編 〜エスパー、都へ行く〜」でわりと大きな役だったのを思い出しました。
共演にピエール瀧さん
近作は『凶悪』『の・ようなもの のようなもの』『エヴェレスト 神々の山嶺』『日本で一番悪い奴ら』『シン・ゴジラ』『怒り』『アウトレイジ 最終章』を観てます。
共演にリリー・フランキーさん
近作は『凶悪』『トイレのピエタ』『野火』『バクマン。』『恋人たち』『シェル・コレクター』『海よりもまだ深く』『二重生活』『SCOOP!』『聖の青春』『美しい星』『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』を観てます。
これでもまだ見てない作品あるから、リリーさんの出演本数ヤバいな(笑)
共演に門脇麦さん
近作は『愛の渦』『闇金ウシジマくん Part2』『太陽』『二重生活』『彼らが本気で編むときは』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『花筐/HANAGATAMI』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
藤井赤理: 北原里英
柏原勲: ピエール瀧
ネット上に現れた二人目のサニー: 門脇麦
小田武: リリー・フランキー
田辺康博: 駿河太郎
春樹先輩: 音尾琢真
寺脇壮一: 山崎銀之丞
上島ひろみ: カトウシンスケ
杉崎静香: 奥村佳恵
田子浩: 大津尋葵
百瀬貴之: 加部亜門
前川充: 松永拓野
木戸みちる: 蔵下穂波
向井純子: 蒼波純
あらすじ
冬の新潟の或る町。仕事も私生活も振るわない中学校教師・藤井赤理(北原里英)は24歳の誕生日を迎えたその日、何者かに拉致された。やったのは二人組で、柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)という男。雪深い山麓の廃屋へと連れ去り、彼女を監禁!小田は嬉々としてビデオカメラを回し、柏原は「ずっと会いたかったよ、サニー……」と、そう赤理のことを呼んだ。
“サニー”とは―世間を騒がせた「小学生による同級生殺害事件」の犯人の通称だった。事件のあらましは、当時11歳だった小学生女児が同級生を、殺害したというもの。突然、工作用のカッターナイフで首を切りつけたのだ。
事件発覚後、マスコミが使用した被害者のクラス写真から、加害者の女児の顔も割りだされ、いたいけで目を引くルックスゆえに「犯罪史上、最も可愛い殺人犯」とたちまちネットなどで神格化、狂信的な信者を生み出すことに。出回った写真では、独特の決めポーズ(右手が3本指、左手は2本指でピースサインをつくる)も話題を集め、それは信者たちの間で「32(サニー)ポーズ」と名付けられ、加害女児自体も“サニー”と呼ばれるようになった。
奇しくも、この“サニー”の起こした事件から14年目の夜に二人の男によって拉致監禁された赤理。柏原も小田もカルトな信者で、二人は好みのドレスに着替えさせ、赤理の写真や動画をネット上の「サニーたんを愛する専門板www」にアップ。赤理は正気を失っていきながらも、必死に陸の孤島と化した豪雪地帯の監禁部屋から脱出を試みる。が!それは驚愕の物語の始まりにすぎなかった―。
(公式サイトhttps://movie-32.jp/about/より引用)
ネタバレ感想
予告編を2,3回程度見ただけなので内容は分からず観に行きました。
1月の『悪と仮面のルール』のときにも書きましたけど、映画の善し悪しって、だいたい冒頭で分かるじゃないですか。
本作はダメな雰囲気でした。
冒頭で劇中のサニー事件をダーッと説明してくれるんですが、「佐世保小6女児同級生殺害事件(2004年)」をモチーフにしてることはすぐ分かりました。
ただこの事件が後に通称「ネバダ事件」として、ネットを中心に盛り上がってたのは知りませんでした。
そして「この事件て父親が」と思いましたが、それは2014年の「佐世保女子高生殺害事件」でした。
教師をしてる藤井赤理(北原里英)はストーカーに悩まされていて、同僚教師の田辺(駿河太郎)に相談していましたが、その田辺がストーカーというオチでした。
なんかこのシーンは普段は下手だと感じることが無い駿河さんの演技が、北原さんの演技に引っ張られて下手に感じられましたが、パトカーに乗せられて車が出ていくシーンはキモかったのでちょっと安心しました。
ストーカーが逮捕されたのは前フリで、すぐに柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)に拉致られるんですが、ここがネバダたん=サニーとなる訳ですが、犯罪者を神格化する感性(ネバダ事件と言って盛り上がったこと)が理解出来ないので、あまりノレませんでした。
柏原と小田は赤理を気絶させるとドレスに着替えさせるんですが、『ラブド・ワンズ』みたいだなと思いました。
そしてここからは監禁モノになっていくので同じ白石でも白石晃士監督作品じゃないか?と思いました。
赤理は「自分はサニーでは無い」と言い、隙を見て逃げだしますが、すぐに捕まって連れ戻されると寺脇(山崎銀之丞)、上島(カトウシンスケ)、杉崎(奥村佳恵)、田子(大津尋葵)と信者が増えてます。
柏原は1人20分のイニシエーションみたいのを企画すると、1番手は医者の寺脇になり赤理に膝枕をしてもらいます。
すると上島がナイフを持って入ってきて赤理を刺そうとしますが、庇った寺脇が刺されてしまいます。
上島はサニー事件の被害者の兄だと明かすと、再び赤理を刺そうしますが、駆けつけた柏原たちに取り押さえられます。
赤理は寺脇を病院に連れてくように頼みますが、その時、外から不審な音がします。
柏原が外に出るとドローンが飛んでいます。
柏原たちはサニーのことをネット配信してたので、居場所を突き止められ何者かが飛ばしたドローンで中継されていたのでした。
アジトがバレた柏原たちは豪雪地帯の監禁場所を捨てると、小田が用意した海の家に移動します。
病院に行くと思っていたサニーですが、寺脇は途中で死んでしまいます。
海の家に着くと、小屋でセックスしようとしていた地元カップルの前川(松永拓野)とみちる(蔵下穂波)を捕まえます。
柏原たちは2人を軟禁すると仲間にします。
上島を部屋に縛り付けて拘束すると、柏原たちは寺脇を埋めるための穴を掘りに行きます。
柏原は杉崎と田子と前川に穴を掘らせますが、杉崎が田子をスコップで殴ります。
理由は田子がサニーをディスっていたからで、田子はサニー事件を卒論のテーマとするために信者のフリをしていたのでした。
柏原は前川にも田子を殴るように指示すると田子は逃げだします。
その頃、海の家に残された赤理は上島に「被害者の兄なら、私がサニーじゃないことは分かるでしょ」と言い、助けてくれるように言うのでした。
逃げた田子はすぐに柏原たちに捕まりますが、連れ戻す途中に再びドローンが飛んでます。
一同が周囲を見渡すと、マスクをしてノートPCを持った少年が近づいてきて、ドローンを使ってネット配信しています。
柏原が止めさせようとするとスタンガンで返り討ちに遭うのでした(ここは『凶悪』みたく首に押し当てて欲しかった)。
ドローン少年は百瀬(加部亜門)という名前でMOMOSEチャンネルというのを運営してるんですが、ここは完全にドローン少年の真似をしています。
百瀬はみちるに手伝わせて失神した柏原たちを海の家に集めると、その様子を配信します。
百瀬は聞いたことに素直に答えないとスタンガンを当てようとしますが、赤理が当てられた際に偶然コンセントケーブルを掴むと、放電が起こり百瀬を気絶させます。
その様子が神懸っていたことから配信を見てた視聴者からも「(゚∀゚)キタコレ!!」と祭り上げられると、覚醒した赤理は柏原たち一人一人を総括 (連合赤軍) するのでした。
そして赤理は視聴者のコメントの中に「藤井先生」の文字を見つけ、向井と名乗る生徒を見つけます。
向井(蒼波純)は赤理が気に掛けていた生徒でクラスに馴染んでいませんでしたが、赤理にも心を開いてはくれませんでした。
しかしネットでサニーとして神格化した赤理には心を開いたようでした。
赤理はサニーとして活動することを決めます。
柏原たちは百瀬も仲間にしてチャンネルを作り、サニーの相談コーナーを始めます。
最初の相談はパチンコがやめられない主婦の相談でしたが、パチンコ玉を1発打つごとに、北のロケットとかミサイルを飛ばしてる国にお金が流れてると言い、戦争に加担することになるから止めなさいというものでしたが、唐突過ぎる政治ネタでなんだかなぁと思いましたし、ちょっと安易じゃないかと思いました。
この頃になると視聴者たちからお布施が送られてくるようになります。
前川とみちるの先輩の春樹先輩(音尾琢真)の家を受取場所にすると、どこか駐車場で荷渡しをします。
赤理と柏原たちの関係は良好になっていましたが、ネット上に自分こそが本物のサニーと名乗る人物が現れます。
その人物は現在でも罪の意識に苛まれていて自分の指を折ろうとするなど自責の念に駆られていました。
2人目のサニーの登場に戸惑う柏原たちでしたが、特に杉崎の信念が揺らいでいました。
自分たちのサニーは本物なのかを問う杉崎に、柏原はどっちでもいいと答えます。
一方、赤理にはもう一つ気がかりなことがありました。
配信を通して送られてくる向井のコメントは、もうすぐ迫るサニーが事件を起こした2月28日に何かをしようと予見させるものでした。
心配した赤理は百瀬に頼んでコメントから向井の連絡先を調べて連絡すると、なぜか2人目のサニーに繋がります。
2月28日
前川とみちるは春樹先輩と荷渡しをしてますが、日頃不満に思っていた春樹先輩が前川に絡むと喧嘩になります。
小田が止めに入りますが、警邏中のパトカーから警察官が降りてきます。
春樹先輩が近づいてきた警官を刺すと、もう1人の警官から発砲され死にます。
小田は刺された警官の銃でもう1人の警官を撃つと殺し合いになり前川とみちるも死に、怪我を負った小田は逃げます。
一方、海の家ではサニー宛てに向井から「クラスメイトがいるカラオケボックスに行く」とメッセージが入ります。
向井がサニー事件をなぞろうとしてるのを察知した赤理は止める手立てを模索しますが思いつきません。
本当のサニーなら事件を止められると考えた赤理は、2人目のサニーに繋げるとどうやったら止められるかを尋ねます。
本物のサニーは事件がなぜ起こったかを話し始めると、回想形式でサニーの事件が描かれます。
サニーと被害者の上島めぐみはとても仲良しでした。
ある日授業中に先生が「上島さんも5年生なんだからワキガのこと気にかけなさい」と言います(こんなこと言うか?)
先生に腹が立ったサニーは下校時、学校も先生も嫌になったからめぐみに逃げようと言うとバスに乗って少し遠出してカラオケボックスに行きます。
サニーにとってめぐみとの時間は楽しいものでしたが、めぐみに帰りたいと言われると裏切られた気がしてカッターナイフで殺したのでした。
どうやっても殺人を犯したという行為は消えないと言ってボロボロ泣きながら自分の指を折る本物のサニーは、どうか殺させないでと言うと、海の家の周囲が騒がしくなります。
騒がしいのはパトカーが取り囲んでたからで、警察が入ってくるとここでも撃ち合いになり、柏原と杉崎と田子が死にます。
赤理は屋上に逃げると追ってきた警察に追い詰められますが、先に逃げた百瀬が飛ばしてるドローンに飛び移ると上昇します。
しかしすぐに重みで落ちますが、逃げてきた小田が運転する車の上に落ちると、そのまま発進するのでした。
カラオケボックスでは向井が犯行を思いとどまっていました。
カラオケボックスで1人うなだれる向井の元に駆け付けた赤理は向井を抱きしめて映画は終わります。
うーん、なんでしょう?
途中までホントつまらなくて長く感じたので、キタコレ連発して赤理が覚醒したところで終わるのかと思ったら、そのあとは赤理の教祖パートみたいになって。
最初のパチンコ依存の相談をする主婦を『恋人たち』の成嶋瞳子さんが演じてたんですけど、回答の内容の何と薄っぺらいこと。
本物のサニーだと言う門脇麦さんが出てきた辺りから面白くはなってきたんですけど、最初に指を折ろうとするところでティンクルのCMみたいな「続きはWebで」をぶち込んできたりして観客をバカにしてるのかな?と
そして、本物のサニーも監禁されてるみたいですけど、なぜそうなのかは全く描かれずじまいです。
柏原と小田はサニーを間違ってた訳ですし。
なんか映画全体を見てると大衆をステレオタイプに描き過ぎだと思って、君塚良一さん的といいますか、『グッドモーニングショー』を思い浮かべたんですけど、
何でか分かりました。
スーパーバイザーが秋元康さんなんですね。
本作の出発点、それはちょっとしたサプライズであった。「AKB48」グループの総合プロデューサー、かの秋元康氏から「白石和彌監督に北原里英主演で映画を撮ってほしい」とのオファーが日活へと届いたのである。これだけでもインパクト大のトピックだが、決定的だったのは、北原里英のフェイバリットムービーの1本に白石監督の『凶悪』があり、彼女自身も「ぜひ『凶悪』のような作品に出たい!」と言っている、と―。
(公式サイトPRODUCTION NOTEShttps://movie-32.jp/production-notes/より引用)
うーん、これ読むとほぼゴリ押し企画ですよね…。
自分の人生を振り返ってみると「おニャン子クラブ」にもハマらなかったので秋元康さんとは合わないんだなぁと思います。
そういえば『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』も秋元康さん映画だったような…。
ロケ地も新潟になってることから、AKB(NGT)映画+ご当地映画なんだと思います。
それにしても邦画でネットの世界を描くと上手くないなぁと思います。
『白ゆき姫殺人事件』なんかも思い浮かべました。
「佐世保小6女児同級生殺害事件」をモチーフに、拉致される展開にしたのは、こういう実際のアイドルの苦悩を組み合わせたのでしょうかね?
白石和彌監督はデビュー作の『ロストパラダイス・イン・トーキョー』と日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクトの『牝猫たち』を除くと、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』と3作続けて原作モノが続いた訳ですが、本作は『凶悪』でタッグを組んだ高橋泉さんとの脚本だったようですが、オリジナル作品だとここまでダメなのかと正直ビックリしたんですが、制作された経緯なんかを鑑みると致し方無い部分もあるのかなぁと思います。
ただ実際の事件をモチーフにしてこの程度の掘り下げ方の作品を作るくらいなら、この公開規模だったらB級リベンジスリラーみたいのに特化したアイドル映画でよかったんじゃないかと思いました。
実際の事件をモチーフにしたいんだったら、それこそ「AKB48握手会傷害事件」をモチーフにしたサスペンススリラーとかにして、自らの手でAKB商法的なモノも総括するとか、やりようがあったと思いますし、その方がチャレンジングだったと思います。
はっきり言ってファン以外には見るべきところの無い作品だと思います。
鑑賞データ
渋谷シネパレス メンズデー 1000円
2018年 34作品目 累計24900円 1作品単価732円
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