羊と鋼の森 評価と感想/本屋大賞+お仕事ムービー=良作

羊と鋼の森 評価と感想
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才能について考えさせられる良作 ☆4.5点

第13回2016年本屋大賞を受賞した宮下奈都の同名小説を映画化した作品で、ピアノの調律師になる主人公の成長を描いたヒューマンドラマ。
監督は『orange-オレンジ-』の橋本光二郎、主演は山﨑賢人、共演に鈴木亮平、上白石萌音・萌歌、三浦友和

予告編

映画『羊と鋼の森』予告

映画データ

羊と鋼の森|映画情報のぴあ映画生活
『羊と鋼の森』は2018年の映画。『羊と鋼の森』に対するみんなの評価やクチコミ情報、映画館の上映スケジュール、フォトギャラリーや動画クリップなどを紹介しています。

本作は2018年6月8日(金)公開で、全国320館での公開です。
制作・配給共に東宝です。
劇場での予告編はよく目にしましたね。

本屋大賞受賞作+ピアノ調律師という、あまり馴染みの無い職業の組み合わせは、辞書編纂者を描き、やはり本屋大賞受賞作だった『舟を編む』のイメージがあるので期待して観に行きました。

舟を編む
松田龍平
¥ 400(2018/09/22 14:09時点)

監督は橋本光二郎さん
初めましての監督さんで前作の『orange-オレンジ-』が劇場長編初監督作だったようです。
日本映画学校を卒業して相米慎二監督や滝田洋二郎監督らに師事し、その後助監督として経験を積まれてきたようです。

orange-オレンジ-
土屋太鳳
¥ 500(2018/09/22 14:09時点)

主演は山﨑賢人さん
近作は『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』『斉木楠雄のΨ難』を観てます。

共演に鈴木亮平さん
近作は『ホットロード』『TOKYO TRIBE』『予告犯』『俺物語!!』『の・ようなもの のようなもの』『HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス』『忍びの国』を観てます。

共演に上白石萌音さん
近作は『溺れるナイフ』『君の名は。(声の出演)』を観てます。

共演に上白石萌歌さん
近作は『ハルチカ』を観てます。

共演に三浦友和さん
近作は『アウトレイジ ビヨンド』『ストロベリーナイト』『葛城事件』『DESTINY 鎌倉ものがたり』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

外村直樹: 山﨑賢人
柳伸二: 鈴木亮平
佐倉和音: 上白石萌音
佐倉由仁: 上白石萌歌
北川みずき: 堀内敬子
濱野絵里: 仲里依紗
上条真人: 城田優
南隆志: 森永悠希
外村雅樹: 佐野勇斗
秋野匡史: 光石研
外村キヨ: 吉行和子
板鳥宗一郎: 三浦友和

あらすじ

将来の夢を持っていなかった主人公・外村(山﨑賢人)は、 高校でピアノ調律師・板鳥(三浦友和)に出会う。彼が調律したその音に、 生まれ故郷と同じ森の匂いを感じた外村は、 調律の世界に魅せられ、果てしなく深く遠い森のような その世界に、足を踏み入れる。ときに迷いながらも、先輩調律師・柳(鈴木亮平)や ピアノに関わる多くの人に支えられ、磨かれて、 外村は調律師として、人として、逞しく成長していく。そして、ピアニストの姉妹・ 和音(上白石萌音)由仁(上白石萌歌)との出会いが、 【才能】に悩む外村の人生を変えることに―。

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

橋本光二郎監督、全く存じ上げなかったんですが、上映時間134分とちょっと長めの本作、劇中何か取り立てて大きなことが起きる訳でもなく、映像的にも北海道の自然やピアノの調律といった地味な画が続き、劇中の劇伴も少なく、ピアノを弾いてるシーン以外では、劇場内でお腹が鳴ったら聞こえちゃいそうなくらい静かだったんですが、不思議と眠くなることはなく、134分集中して鑑賞でき、時間を長く感じることの無い良作でした。

主人公の外村は将来にこれといった夢も無いごく普通の高校生です。
実家は祖父の代から続く林業で、周囲に家は無くぽつんと暮らし、父と母と勉強の出来る弟と祖母の5人で暮らしてます。
森や自然は好きでしたが出来のいい弟に引け目を感じ、漠然と外の世界に出たいと思ってます。

ある日、学校の先生に頼まれて体育館のピアノの調律に来た調律師を案内したことから、外村の人生は変わります。
調律師を体育館まで案内した外村はすぐ帰ろうとしましたが、その調律師が確認のために鳴らした一音に森の匂いを感じ、その作業に興味を覚えます。

その板鳥という調律師が「いい羊がいい音を作る。このハンマーが鋼の弦を叩いて音が生まれる」と説明すると、外村の夢は調律師になることに固まっていました。
外村は高校を卒業すると、東京にあるピアノの調律の専門学校に2年間通います。

専門学校を卒業した外村は故郷に帰ると、板鳥も働いている地元の江藤楽器に就職します。
先輩調律師の柳に付いて顧客を回り、OJTを重ねていきます。

根っからの性格が真面目で堅く、自信の無い外村は、柳の一挙手一投足に注視してメモ魔です。
「どうしたら調律が上手く出来るようになるか」「自分にもっと才能があれば」といった事ばかり考えていますが、柳は調律師に大事なのは技術だけじゃないと言います。
顧客が理想としてる音がどこにあるかを汲み取るコミュニケーション力が大事で、1人でも多くの顧客、1台でも多くのピアノに向き合うのが大事だと言われます。

柳は卵を例に挙げて説明します。
顧客が硬い音が欲しいと言ったときに、その顧客の硬い基準がどこにあるのかを探るのが大事だと言います。
生卵しか知らなくて、それに比べて硬いと言ってるのか、或いは生卵から半熟卵、固ゆで卵まで知った上で硬いと言ってるのかの見極めが重要だという訳です。

外村に調律師としての必要な技術は揃っていると考えた柳は、1人で顧客を回らせるようにします。

外村が1人になって初めて向かう顧客は新規の顧客でした。
南という表札の一軒家を訪ねると出てきたのは若い男で、少しゴミ屋敷化しており、黙ってピアノまで案内されます。
外村がピアノを調べると調律されたのは14年前でした。
外村は「少し時間がかかります」と言うと丁寧に黙々と作業を始めます。

外村が作業してる間、南はずっとうつむいて座り、手には犬の首輪が握られています。
外村は作業が終わると、「要望があったら何でも言って下さい」と言って、確認のために南にピアノを弾いてもらうと、南の回想に入ります。
南にとってピアノはかつては幸せの象徴でした。
両親と飼い犬に囲まれて、ピアノを弾いていましたが、両親が交通事故で他界してしまうと、ピアノを弾かなくなってしまいます。
その後は飼い犬だけが心の拠り所でしたが、その飼い犬も老衰で亡くなってしまったのでした。
残されたピアノだけが過去を繋ぐものとなり、今回調律を依頼したのでした。
南がピアノを弾き終わると感動した外村は拍手します。
南は外村の調律に「ありがとうございます」と言って涙を流すのでした。

外村は柳と回っていたときにも調律していた佐倉姉妹のピアノも1人で調律を任されます。
コツコツと努力型で引っ込み思案な姉・和音と、天才肌で自分の希望をはっきり伝える妹・由仁に、外村は自分と弟との関係を重ね合わせていました。
佐倉姉妹はそれぞれ希望する音が違っていましたが、柳が調律していたときはそれをバランスよく調律していました。
外村が調律するようになってからも表面上はそうしていましたが、心情は姉の和音に寄っていました。
また和音もそのことを感じたのか、柳のときよりも外村に希望をはっきり伝えてくるようになります。
佐倉姉妹にピアノコンクールの時期が近づいてくると、外村は和音から頻繁に調律を頼まれるようになります。

ピアノコンクールの日、佐倉姉妹からの結果報告を楽しみにしていた江藤楽器の面々でしたが、母親から電話があり調律は暫くお休みして欲しいと言われます。
柳が理由を聞くと、妹の由仁がコンクールの途中でピアノが弾けなくなってしまい、またそのことで姉の和音もショックを受けてピアノを弾かなくなってしまったと言われます。

それを聞いた外村は「自分が和音に合わせたせいだ」と自分を責めますが、柳は外村に「うぬぼれるな」と言い、「今のお前にそこまでの力は無い」とも言うのでした。

すっかり自信を失った外村に、弟から着信があり電話に出ると祖母が亡くなったとの知らせでした。
葬式のために実家に帰ると、久しぶりに弟と顔を突き合わせます。

外村は家族の前で調律師になりたいと言ったときに、弟に軽く流されたことがありました。
「調律の仕事は世界に繋がってる気がする」と言うと、「世界と繋がるって何だよ」と言われたことがあり、弟に対し卑屈な外村は上手く話すことが出来ません。
そんな兄の様子にキレた弟は言います。
「だけど、ばあちゃんは言ってた。兄ちゃんは森に一人で入っても必ず戻ってくると」

外村はかつて柳にも言われたことがありました。
2人で歩いてると外村はふと目にした花の名前を口にします。
何のことか分からなかった柳が聞き返すと、外村は花の名前だと言います。
柳は外村が草木の名前をよく知ってることを感心すると、外村は「家の周りによく生えていたから知ってるだけですよ」と謙遜します。
しかし柳は「それって大事なことだよ」と言ったのでした。

外村は自分が気付いてないだけで、弟からも他人からも羨まれるものを持っていたのでした。

外村は葬式から戻ると、板鳥が携わる来日中のドイツの有名ピアニストのコンサート会場の調律現場を見学します。
一流ピアニストからの要望に応える板鳥の姿に、外村は初めて板鳥に会ったときの姿が重なります。
コンサート会場に満員の人が入った景色を想像して調律する板鳥の姿に、ああいう風になりたいと決意を新たにする外村でした。

そんな外村の元に暫くすると佐倉姉妹の妹の由仁が訪ねてきます。
由仁がピアノを弾けなくなったのは、いわゆるイップスだと思うのですが、由仁の立ち直りは早く、もう次を向いていました。
由仁はプロのピアニストは諦め、調律師になりたいと言います。
そして外村には和音が弾けるようになるためにピアノの調律をして欲しいと言います。

柳も和音が復活できるよう後押しします。
濱野と結婚することが決まった柳は、江藤楽器に来たものの外村に声を掛けられずにいる和音を見かけると披露宴でピアノを弾いて欲しいと依頼します。
その足で柳は江藤楽器の皆にも結婚することを報告すると披露宴で使うピアノの調律を外村に依頼します。
先輩の晴れの舞台に躊躇する外村でしたが、ピアニストが和音と聞くと「やらせて下さい」とお願いするのでした。

外村と和音は早速、披露宴会場で調律と練習を始めます。
披露宴当日も会場準備前から調律を始めますが、披露宴スタッフが会場の準備を始めると和音は「音が止まった感じがする」と言います。
外村は披露宴までの僅かな時間で「何とかしてみる」と言うと、スタッフが次々と広げるテーブルクロスやテーブルに置かれた花、出席者が着席して歓談する様子を想像して調律を始めます。
由仁も外村を手伝い、会場の端に立って音チェックすると、外村の調律が完成します。

外村は披露宴が始まり江藤楽器の皆とテーブルを囲んでいると柳が新郎挨拶にやってきます。
柳は外村の調律と和音のピアノを褒めて礼を言うと、江藤楽器の先輩調律師たちも外村の調律を褒めます。
調律師になって以来、具体的な目標が無かった外村ですが、皆の前でコンサートチューナーを目指すことを宣言して映画は終わります。

コンサートチューナー|カワイの調律について|アフターサービス|お客様サポート|河合楽器製作所 製品サービス情報サイト
ピアノを知り尽くした職人MPA(Master Piano Artisan)は、長期間にわたる大変に厳しい研修と高いレベルの認定試験をクリアし、特に優れた技術を身につけた技術者として、その多くは研究所において音づくりの職人としてコンサートピアノの製作に携わるとともに、主要な国際ピアノコンクールにコンサートチューナーとして...

外村が調律師を目指すきっかけとなる板鳥ですが、劇中では同じ江藤楽器所属ではあるものの、それほど頻繁に交流がある訳ではありません。
たまに外村がアドバイスを求めるんですけど、板鳥のアドバイスは抽象的で独特です。
外村が「どうしたら調律が上手く出来るようになりますか?」と聞くと、板鳥は「こつこつですよ、こつこつ」と返します。
また外村が「板鳥さんの理想とする音はどんな音ですか?」と聞くと、板鳥は詩人・原民喜の言葉を引用します。

明るく静かに澄んで懐しい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛へている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体

原民喜 沙漠の花

とまぁ分かるような分からないような終始こんな感じです。

一方、外村を直接指導する柳のアドバイスは分かりやすいです。
卵のアドバイスもそうですし、「自分には才能が無い」と言う外村に対し、「才能っていうのは、ものすごく好きだっていう気持ちなんじゃないかな。どんなことがあっても、そこから離れられない執念とか、そういうものなんじゃないか」と柳は言うんですが、「ああ、分かる!」って感じです。
ばしゃ馬さんとビッグマウス』の感想にも書いたんですが、「夢を持ち続けられる」っていうのが一番難しいんじゃないか?と思ってるので、「継続は力なり」といいますが、それが才能なんじゃないかと思います。

「才能よりも根気。大事なのは、こつこつやること」〜本屋大賞受賞作『羊と鋼の森』に励まされる人続出!(週刊現代)
一流の調律師さんからは「才能」とか「センス」とかいった言葉は聞かれませんでした。みなさん異口同音に、「大事なのは、こつこつやること」と言う。私は、そんな風に「才能より根気」と信じて邁進している人こそが信頼できる、と思います。

本作は原作がいいんだと思うんですが、台詞がとてもいいですね。
要所要所での台詞が胸に刺さってきます。

『羊と鋼の森』に感動の声。読者が選んだ「私が好きなこの一文」 『羊と鋼の森』 (宮下奈都 著) | 特集
2016年の「本屋大賞」第1位に選ばれた宮下奈都さんの『羊と鋼の森』は、静謐で美しい文章と、調律師として理想の音を追い求める主人公の青年の姿に、共感の輪が広がりました。その結果、2016年上半期の小説…

そしてピアノがメインの話であるので、小説もいいですが映画向きであるとも言えます。
劇中は殆ど劇伴がなくしーんとしてますが、その分演者がピアノを弾くシーンは印象的で、そのキャラクターの心情と相まって映画的表現を豊かなものにしてたと思います。

また本作はスーパーアナモフィックレンズというので撮影されたそうで、ロケ地が北海道の旭川や美瑛だったようですが、冬の北海道の凛とした空気感を映像に収めることに成功してたと思います。

本作は天皇皇后両陛下もご鑑賞なさったそうで、監督・役者冥利に尽きるでしょうね。

天皇皇后両陛下「羊と鋼の森」ご鑑賞 主演・山崎賢人は放心状態「光栄な時間」 : 映画ニュース - 映画.com
天皇皇后両陛下が5月24日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた映画「羊と鋼の森」の特別試写会にご出席された。両陛下のご鑑賞には主演の山崎賢人をはじめ共演の上白石萌歌、メガホンをとった橋本光二郎監督、原作者の宮下奈都氏、エンディング

外村と同じくこれからの進路を迷ってる高校生から、すでに何かを諦めた大人まで、才能について考えさせられる映画で、「プロフェッショナル 仕事の流儀」的な側面もあり、おススメな内容となっています。

鑑賞データ

新宿ピカデリー SMTメンバーズ割引クーポン 1200円
2018年 102作品目 累計95400円 1作品単価935円

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