ディアーディアー+お葬式みたいな感じ ☆3.5点
2010年の城戸賞で最終ノミネートまで残った脚本をこれまでCM演出を中心に手掛けてきた森ガキ侑大監督が手掛けた長編デビュー作。
主演は映画初主演となる岸井ゆきの、共演に岩松了、光石研、水野美紀
予告編
映画データ
本作は2017年11月4日(土)公開で全国8館ほどでの上映です。
順次全国公開されて、最終的には16館ほどでの上映となるようです。
監督は森ガキ侑大さん
映画監督志望だったそうですが、これまではCMの演出を中心にされてきたそうで、長編映画初監督作です。
ご自身のHPに演出した作品がまとめられています。
主演は岸井ゆきのさん
近作は『銀の匙 Silver Spoon』『ピンクとグレー』『二重生活』を観てます。
共演に岩松了さん
近作は『トイレのピエタ』『3月のライオン前編・後編』『22年目の告白-私が殺人犯です-』『東京喰種 トーキョーグール』を観てます。
共演に美保純さん
近作は『人生の約束』『モヒカン故郷に帰る』を観てます。
共演に岡山天音さん
近作は『麦子さんと』『ディストラクション・ベイビーズ』『セトウツミ』『僕らのごはんは明日で待ってる』『帝一の國』を観てます。
共演に松澤匠さん
近作は『恋の渦』『味園ユニバース』『オーバー・フェンス』を観てます。
共演に光石研さん
近作は『ジョーカー・ゲーム』『天空の蜂』『恋人たち』『無伴奏』『シン・ゴジラ』『彼女の人生は間違いじゃない』『散歩する侵略者』『アウトレイジ 最終章』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
春野吉子: 岸井ゆきの
春野昭男: 岩松了
野村ふみ江: 美保純
春野洋平: 岡山天音
野村千春: 小野花梨
春野京子: 赤間麻里子
春野清太: 池本啓太
春野功: 五歩一豊
春野ハル: 大方斐紗子
圭介: 松澤匠
春野薫: 水野美紀
春野清二: 光石研
あらすじ
彼氏とのセックスの浅中に祖父の訃報の電話を受けた春野吉子(岸井ゆきの)。そのことにぼんやりとした罪悪感を抱きながらもあわただしく進んでいく葬儀の準備。久しぶりに集まった家族たちもなんだか悲しそうじゃない。
失業を秘密にする父・清二(光石研)、喪主を務める叔父・昭男(岩松了)、
その元妻・ふみ江(美保純)とひきこもりの従兄(岡山天音)、高校生の娘・千春(小野花梨)。地元を離れた独身の叔母・薫(水野美紀)、東京の大学に通う吉子の弟・清太(池本啓太)も駆けつけ、祖母(大方斐沙子)は家族の顔もわからないほどボケている。
葬儀が進むにつれ、それぞれのやっかいな事情が表面化し、親たちの兄弟ゲンカがはじまると、みっともないほどの本音をぶつけ合いはじめる家族たちに、呆れながらも流れに身を任せていた吉子はーー。(公式サイトhttp://ojiichan-movie.com/about.htmlより引用)
ネタバレ感想
公式サイトのストーリーには「セックスの浅中」と書いてありますが、たぶん「セックスの最中」の誤字だと思います。
主人公・吉子はおじいちゃんが死んだとき、自分はセックスしてたんだなぁと、漠然と罪悪感を覚えるのですが、亡くなった連絡を受けたのがセックスの最中であって、本当にセックスの最中に亡くなったかは分かりません。
というより、早期退職した父が外で庭仕事してるのに自宅の2階で真昼間からセックスしてるというのが、結構凄い気がします(笑)
最初は分からないんですが、お話が進んでいくうちに家族構成が見えてきて、葬儀の段取りが進んでいくと監督ご自身が言ってるように伊丹十三監督の『お葬式』ぽくなってきます。
それから家族構成が『ディアーディアー』ぽいなと思いました。
この映画も父危篤の知らせを受けて兄弟妹が集まる話ですが、妹だけ年が離れていて東京で暮らしてるという設定です。
映画はオリジナル脚本ということですが、ツッコミどころもややあると思いました。
例えば劇中で兄・昭男と弟・清二が母の老人ホーム代を心配する会話があって、「親父もそれくらいは残してるだろ」と言うのですが、妹・薫は東京で成功していてフェラーリを乗ってくるくらいですから、普通は妹に頼ると思います。
薫は独身でしたし、最後、母親をフェラーリで送っていったくらいですので、自分からもそうすると思いました。
それから葬儀の後、家族での食事で兄弟喧嘩が始まり会社を辞めたことをバラしますが、早期退職したことは知ってましたよね?
早期退職の理由は不明でしたが、そのことが喧嘩の種になるのは、やや不自然な気がしました。
それから、通夜が自宅だったのでてっきり葬儀も自宅かと思ったら斎場で、通夜が自宅で葬儀が斎場なんてあるのかな?と思いましたが、これはあるみたいですね。
家族葬の風「通夜は自宅、葬儀は斎場」 – 家族葬ネットの心にしみる
東京だともう殆ど通夜も葬儀もお寺か斎場なので珍しいと思いました。
それから「隣保(りんぽ)」って言葉が頻繁に出てきて聞きなれない言葉だったので、地域の名前かと思ったんですがとなり近所のことだったんですね。勉強になりました。
面白いシーンは昭男が頭頂部のハゲを気にして、娘の千春にスプレーしてもらう一連のくだりでしょうか。
特に喪主挨拶のシーンでは笑いが起きてましたね。
生も死もそこにあるということを表現するためだと思うんですが、吉子はインドには普通に死体が転がってる(水葬)と思ってるんですが、ラストでインドまで行ってて「死体無いじゃん」と言うのですが、それだけのためにインドロケしていて凄いなと思いました(笑)
それと演出面で気になった点があって、それは、最近の邦画の喫煙シーンを入れないと場面が作れない問題です。
吉子が従姉妹の千春と会うシーンは病院の屋上での喫煙シーンでしたし、千春は高校3年生の設定です。
吉子が叔母の薫と話すシーンでも庭の隅に行って喫煙しながら話してました。
映倫でもそのことに触れてて本作はPG12になっています。
カレシとセックスしてる間におじいちゃんが死んだ。だけど、お父さんと伯父さんはケンカばっかりしてるし、いとこ達はシラ~っとしてて、なんだか皆、あまり悲しそうじゃない……。ドラマ。簡潔な性愛描写と、未成年の飲酒・喫煙の描写がみられるが、親又は保護者の助言・指導があれば、12歳未満の年少者も観覧できます。(1時間44分)
(映倫サイトより引用)
たばこを一服してるとそこに誰か来て会話するというのは、場面は作りやすいと思うんですが、ちょっと安易すぎるんじゃないかなと。
特に吉子は旅行代理店のOLで喫煙習慣も付きづらいと思うんですよね。
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』でも女性の主人公に喫煙させてましたけど、何か意図があるんでしょうかね?
たぶんこの映画は、身内が亡くなったときにセックスしてた罪悪感と、身内が亡くなっても泣けなかったということと、人が死ぬとゲロの味がするっていう3本柱だと思うんですが、これって結構あるあるじゃないかと思います。
なんかドラマとか映画では泣けても、身内の不幸とかリアルなことでは泣けないことって多い気がします。
セックスしてた罪悪感は劇中、脇導師によって一定の答えが得られます。
ゲロの味がするのは緊張感から胃液が上がってきてるんだと思います。
なので共感こそしますが、自分にとってはそんなに珍しい話では無かったです。
親戚関係もあんな感じですし。
出演者では小野花梨さんがよかったです。
ドラマ「鈴木先生」で初めて知り、その演技が光ってましたが、その後に見たのはHuluのオリジナルドラマ「フジコ」でした。
本作では兄にパンツをチラチラ見られてましたが、ひと頃のエレン・バーキンみたいな雰囲気があると思います。
そういえば感想書いてるうちに思い出したんですが、妻が死んだのに泣けないっていうのは昨年の『永い言い訳』がありました。
洋画だと今年公開された『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』
お葬式のコミカルな感じは『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
この辺と共通してくる映画だと思います。
鑑賞データ
テアトル新宿 水曜サービスデ― 1100円
2017年 193作品目 累計207900円 1作品単価1077円
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