やろうとしたテーマは壮大、だけど激ムズ ☆3.5点
予告編
映画データ
『美女と野獣』
も
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』
も
まだ観に行ってないのに、慌てて観に行ってきましたよ。
『サクラダリセット 後篇』
本作は2017年5月13日(土)公開で全国130館規模での公開なのですが、上映1週目からほぼ1日2回上映と全国一斉ロードショーにしては寂しい限りで、都内でも仕事終わりにサービスデーを利用して鑑賞しようとなると、私の環境下ではTOHOシネマズ渋谷かユナイテッド・シネマ豊洲のほぼ2択でして、前篇公開時の状況からすると、2週目以降はどうなるか分からないってことで、慌ててTOHOシネマズ渋谷で観て参りました。
前篇は2017年3月25日(土)公開で全国192館規模での上映だったのですが、2週目終わって3週目に入ると全国で80館程度に減らされ、上映回数もほぼ1日1回と、観るためのハードルも凄く高かったんですが、そんな前篇のときの感想がこちらです。
東京では前篇時のヘッド館がTOHOシネマズ新宿だったのが、後篇では上映が無くヘッド館もTOHOシネマズ渋谷に変わってたり、地方では前篇公開時に上映していた映画館が後篇ではやってなくて、わざわざ遠くまで観に行かねばならないなど、サクラダ難民が発生してる模様です。
後篇初日の舞台挨拶もTOHOシネマズ六本木ヒルズでやったみたいなんですけど、通常上映は無いというややこしさ。
300億とか自虐にもほど遠い感じで、前後篇合わせても3億届くのでしょうか?
プロデューサーたちは青ざめてると思うんですけど、夜逃げとか出なければいいなぁと思います。
そんな本作なんですが、やろうとしたテーマは壮大でラノベ原作と侮るなかれ、村上春樹氏にも通じるようなテーマと感じたのですが、映画的には上手くいってなかったかな?
といいますか、そもそもの設定が複雑過ぎて映画には不向きだったと思うのですが、現在やっているアニメ版は連続2クールでやるようなので、分量としてはそれくらい必要なんだと思います。
あらすじ
僕は、この街の能力がどうしようもなく好きだ
悲しみを消し去るために
より正しい未来を見つけるために
ただ、幸せを願うために
僕は、できるなら色々なことを、もう一度「リセットしたい」能力者が集う街・咲良田。浅井ケイ(野村周平)は、圧倒的な「記憶保持」能力を持つ高校生。
彼と行動を共にする春埼美空(黒島結菜)は、「リセット」―世界を最大3日分巻き戻すことができる。
そんな2人の取り戻せない過去-それは、2年前に「リセット」の影響を受けて死んだ同級生・相麻 菫(平 祐奈)のこと。
ケイは、街中の様々な能力を組み合わせ、相麻の再生に成功する。
だが、相麻菫の再生こそが、すべての始まりだった。
今まで平穏だった咲良田市のいたるところで〝能力の暴発事件〟が発生。
咲良田の能力者たちを制御・監視する公的機関・管理局の対策室室長 浦地正宗(及川光博)の〝一掃計画〟によって、街から能力がすべて消滅してしまう。
「私は貴方を、覚えていません」リセットを失くした春埼美空―
咲良田に能力があった記憶を持つ者は、世界中で浅井ケイただ一人となってしまった。
みずからの過去に区切りをつけるため、ケイは初めて咲良田を出る。
2年前に相麻がなぜ世界から消えなければならなかったのか?
咲良田がどのようにして能力者の街になったのか?
すべての謎を解き明かすケイを待っていたのは、能力の再生を賭けた浦地との対決だった。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
まず、あらすじですが、すごい複雑です。
前篇はなんとかついていけた感じでしたが、後篇は激ムズでした。
前篇では目的がはっきりしなかった管理局ですが、後篇では冒頭から管理局対策室長・浦地政宗役の及川ミッチーが登場し「咲良田の街から能力を無くす」という目的が明らかになるので、そこに向かって進むお話なんだなと分かります。
ただ前篇のときと同じように序盤でのテンポが非常に悪い。
ミッチーがいることでまだ観れましたが、事が起こってリセットするまでが、冗長といいますか何か眠くなるような描き方するんですよね。
斜がかかった映像も特徴的で前半は多いんですが、あれ普通にクリアな映像でいいと思いますね。
眠くなってしょうがないです。
前篇で管理局に幽閉されていた「名前のないシステム」と呼ばれる未来視の能力を持つ魔女(加賀まりこ)がいなくなって、管理局は未来を読むことが出来なくなると、咲良田で生まれる新しい能力者(主に子供)が初めて能力を使用するときに起こるトラブルをコントロール出来なくなって、予告編にある爆破とかが起こります。
浦地は「能力者がいる街なんて普通じゃないだろ。気持ち悪い」と思っていて、彼をドナルド・トランプ的な人物と捉えれば、この映画っていうか作品のテーマは壮大で深いです。
前篇の最後に蘇った相麻菫(平裕奈)も未来視の能力者です。
前篇では浅井ケイ(野村周平)と春埼美空(黒島結菜)と三角関係的な描かれた方をしてて、特に春埼がそのことに気をもみますが、菫には自分の未来も分かっているのでケイと付き合うことが無いのも分かってるから切ないんですよね。
菫が死んだのは浦地が望む通り、咲良田から能力が消失した未来が見えたからで、それを阻止しようとするケイに協力するためなんですが、アンドロイドとか何とか言ってて細かいところは映画観ただけではよく分かりませんでした。
前篇を観たときも思ったのですが、ケイは事が起こるまで事態を阻止するための行動を取らないといいますか、菫にもなかなか会いに行かないなぁ、とか思ったのですが、物語中の時間(9月22日、23日、24日)が流れると、浦地の思惑通り街から能力が消失します。
街に能力があったことを覚えてるのはケイ1人になるので、春埼にリセットを唱えさせセーブした9月22日に戻せばいいんですが、春埼はケイの存在もリセットの方法も忘れてるので、それをどうやって思い出させるかなんですが、それは菫が布石を打ってくれてます。
ケイの持っているフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の文庫本に、前篇で登場した佐々野さん(大石吾朗)の撮った写真を挟んで、春埼に貸すというもので、まずケイが春埼に電話をかけケイの番号が登録されてることを確認させ、春埼の部屋にあるディックの本は自分が貸したものだと言いケイを信用させ、佐々野さんの撮った写真で写真の中に入るんですが、このあとがよく分からなかったです。
前篇のときに菫を蘇らすときにやったようなシーン(公園の滝のところ)なんですが、昼から夜に変わってたので、いつ撮った写真か分からなくて、DVDが出たら確認しながら観るような案件じゃないかと思います。
で、春埼のリセットを使って9月22日に戻ると、ここからは前篇のときと同じく、ケイがみんなの能力を組み合わせて浦地の計画を阻止しようとするので序盤・中盤よりは面白く観れます。
前篇の感想でも書きましたが、能力者モノと言ってもバトルする訳ではなく、能力を組み合わせてロジカルに進めていくので、理解するのが大変難しいのですが、きっと原作ではその論理が破綻しないように設定はかなり練られているのだと思います。
一方、映画では、描きたいテーマは一緒だと思うのですが、原作から削られている登場人物もいるようなので、論理的に破綻しないように物語を進めていくにはかなり無理が生じるといいましょうか、人物描写の点でなぜそのような行動を取るのかが分からなかったりしたので、そこが設定やテーマは面白そうだったのに映画では失敗した点ではないかと思います。
実際、ラストでケイと浦地が対峙するシーンは良くて、能力者を異質・異端なものとして能力を消去した世界を目指す浦地に対し、ケイは「カルネアデスの板」の話を例に出して説得を試みます。
大学でも法学部なんかではこの話が出るみたいで、タイトルは知らなかったんですが、話としてはよく聞く話です。
それは、「難破した船から投げ出された人が一枚の板に掴まってたら、後から来た人が手を伸ばしてきた。2人で掴まったら沈むと考え突き飛ばした。後から来た人は溺れ死んだ。助かった方は殺人罪に問えるか?」という緊急避難の例として引用される寓話なんだそうですが、哲学的な命題を含んでいます。
浦地は「突き飛ばして助かった人は当然だ」と言いますが、ケイは「ボクは二人が助かる方法を模索する」といい、咲良田で能力者たちが生きる道を模索します。
映画的には、智樹(健太郎)の声を届ける能力を使って、浦地に語っていた話を、浦地の右腕である管理局員の加賀谷(丸山智己)に聞かせ、彼をトラウマから救い味方にするんですけど、細かいところはよく分からなかったんで割愛します(浦地の両親が最初の能力者で、魔女を含めて3人が最初の能力者だったとか)
前篇から出てきた「名前のないシステム」という言葉や、最後に出てきた「カルネアデスの板」という言葉に至って物語は哲学的になってきます。
浦地がとる排除の論理に対しては、村上春樹氏のエルサレムスピーチがそのまま当てはまる感じで、テーマとしては壮大な気がします。
なので『ラストコップ』なんかより、全然いい映画なんですけど、公開館数減らされちゃって気の毒だなと思います。
ただ、一度観ただけでは理解出来ないのも事実で、構成や脚本、編集がもう少し上手かったらなぁとも思います。
アニメ版がネットフリックスやHulu、アマゾンビデオで配信されてるようなので、そちらも観てみたいなと思いました。
鑑賞データ
TOHOシネマズ渋谷 シネマイレージデイ 1400円
2017年 77作品目 累計80800円 1作品単価1049円
コメント
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