彼女の人生は間違いじゃない 評価と感想/そして正解もない

彼女の人生は間違いじゃない 評価と感想
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彼女に笑顔があらんことを ☆4.5点

2015年に出版された福島の今を描いた廣木隆一監督の同名タイトルの初小説を自身の手で映画化した作品で主演は『グレイトフルデッド』の瀧内公美、共演に光石研と高良健吾

予告編

映画データ

彼女の人生は間違いじゃない (2017):作品情報|シネマトゥデイ
映画『彼女の人生は間違いじゃない』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:福島県と東京を舞台にしたヒューマンドラマ。週末ごとに東京で風俗嬢として働く女性とその周囲の人々の姿を描く。
http://cinema.pia.co.jp/title/173045/

ヒューマントラストシネマ渋谷で予告編を2,3回観てまして、廣木隆一監督のスイーツ映画じゃないのが観れると楽しみにしていた作品です。

監督は廣木隆一さん
最近のは『さよなら歌舞伎町』と『PとJK』を観てます。

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おもしろいんですが... ☆4点 予告編 映画データ 配役は以下の通りです。 高橋徹: 染谷将太 飯島沙耶: 前田敦子 イ・ヘナ: イ・ウンウ アン・チョンス: ロイ 鈴木里美: 南果歩 池沢康夫: 松重豊 高橋美優: 樋井明日香 福本雛子...

主演は瀧内公美さん
『日本で一番悪い奴ら』で綾野剛さん演じる諸星をエースとおだてて色仕掛けで迫る同僚婦警役を好演されてました。

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拳銃1丁2千万円 コスパ悪すぎw  ☆4点 予告編 映画データ あらすじ 大学柔道部での腕を買われ北海道警察に勧誘された諸星要一(綾野剛)は26歳で北海道警察本部の刑事となるが、捜査も事務も満足にできず、周囲から邪魔者扱いされる。署内でも抜...

共演に光石研さん
最近のは『共喰い』『恋人たち』『無伴奏』とか観てます。

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共演に高良健吾さん
最近のは『ジ、エクストリーム、スキヤキ』『ふきげんな過去』『シン・ゴジラ』とか観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

金沢みゆき:瀧内公美
金沢修:光石研
三浦秀明:高良健吾
新田勇人:柄本時生
山本健太:篠原篤
山崎沙緒里:蓮佛美沙子
隣人夫妻:戸田昌宏
隣人夫妻:安藤玉恵
震災ゴロ:波岡一喜
墓を探す老夫婦:麿赤児
女子大生:小篠恵奈
漁師:毎熊克哉
東京駅のトイレで会う女性:趣里

あらすじ

まだ薄暗い、早朝のいわき駅。
東京行きの高速バスに乗り込む、金沢みゆき(瀧内公美)。
まもなく太陽も昇りきり、田んぼに一列に並んだ高圧電線の鉄塔が、車窓を流れてゆく。
東京駅のトイレで化粧を終えたみゆきは、渋谷へと向かう。
スクランブル交差点を渡り、たどり着いたマンションの一室が、みゆきのアルバイト先の事務所だ。
「YUKIちゃん、おはよう」と、ここでの彼女の名前で話しかける三浦(高良健吾)。
彼が運転する車の後部座席に乗って、出勤したのはラブホテル。
彼女の仕事はデリヘルだ。
その日は客とトラブルになったが、それを解決してくれるのも三浦の役目だ。
「何年目だっけ?」と帰りの車の中で三浦に聞かれ、「来月でちょうど2年目です」と答えるみゆき。
暗くなる前に、今度は鉄塔の表側を見ながら、福島へと帰る。
仮設住宅に二人で暮らす父親の修(光石研)には、東京の英会話教室に通っていると嘘をついていた。
月曜日になると、市役所勤めの日常に戻るみゆき。
だが、その日はちょっとしたハプニングがあった。
昼休みに、昔付き合っていた山本(篠原篤)から会いたいというメールが入る。
みゆきの母は震災で亡くなったのだが、そんな時に山本が放ったある一言が、二人の心の距離を広げたのだった。
久しぶりに帰郷した山本はそのことを謝り、やり直したいと打ち明けるが、みゆきは「考えとく」と逃げるように立ち去る。
家では父が、酒を飲みながら母との思い出話ばかりを繰り返す。
田んぼは汚染され、農業はできず、生きる目的を見失った父は、補償金をパチンコにつぎ込む毎日を送っている。
みゆきはそんな父をなじり、腹立ちまぎれに家を出て行くが、こんな時に気が晴れる場所などどこにもなかった。
もう一人、みゆきと同じようにもがく男がいる。
市役所の同僚の新田(柄本時生)だ。
東京から来た女子大生に、被災地の今を卒論のテーマにするからと、あの日からのことを〝取材〟されるが、言葉に詰まってほとんど答えられない。
週末になると東京へと通うみゆきの日々に、変化が訪れる。
三浦が突然、店を辞めたのだ。
みゆきは三浦がいると聞いた、ある意外な場所を訪ねるのだが―。

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

映画は冒頭からかなり台詞が少なくて主人公・金沢みゆきの姿を追ってると話が見えてくる感じです。
平日は父の朝ご飯を作り、母にご飯を供えると、市役所に勤務する毎日です。
母を津波で亡くし、父と2人で仮設住宅で暮らしてるのが分かります。
父は農業ができず、妻の死も受け止められず、補償金でパチンコする毎日で、毎晩の晩酌も欠かせません。
酔うといつも、仙台の祭りへ出かけた時に、牛タン屋で相席になって知り合った秋田出身の妻の話をします。
仙台の祭りに出かけなければ妻と会うこともなく、津波で死ぬことも無かったといって泣きます。
そんな父をみゆきは、いい加減前を向いてほしいと思っています。

週末はいつもより早起きします。
父にはおにぎりを作って、母にご飯を供えると、まだ暗いうちから出かけます。
車で駅まで行くと、高速バスで東京まで出かけます。
東京駅着の高速バスを降りて、東京駅のトイレで身支度を整えてると、度々会いますよねと女性から声をかけられます。
私たちは同じ感じがすると言う女性は、新潟から高速バスで来てるとのことでした。

渋谷へは銀座線を使って行きます。
スクランブル交差点を渡るとセンター街の奥へ入っていく感じでしょうか。
デリヘルの事務所に着くと三浦から今日の衣装はこれとブレザーの制服を渡されます。
三浦の運転する古いボルボでラブホテルに向かいます。
客が本番強要しようとするのでトイレに行くと言って、電話をかけると「おつりお願いします」と言います。
すると三浦が部屋に乗り込んで来て本番強要客を撃退してくれるのでした。
帰りの車の中で何年目だっけ?2年目です、最初に比べるとだいぶ慣れたよね俺がスカウトしたんだけど、なんて話をします。

腕っぷしの強いデリヘル店員、古いボルボ、スカウトもこなす。
このあたりの雰囲気を見てて「まほろ駅前」の星君が渋谷に現れたのかと思いました(笑)

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ドラマ24「ま ほろ駅前番外地」公式サイト  W主演:瑛太×松田龍平  監督:大根仁  原作:三浦しをん 職業「便利屋」痛快でじんわり心に響く最強バディストーリー 毎週金曜 深夜0:12放送

名前もまほろの原作者と同じ三浦ですし。

元カレの山本が放った一言は「お母さん亡くなったのに俺たちデートしてていいのかな」です。
お父さんと同じで後ろ向きなんですね。
先日のこれにも近い。

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お父さんはパチンコ屋にいるか仮設住宅にいるかなので、仮設住宅の周囲の人も描かれます。

お隣さんの夫婦の家は旦那さんが留守がちで、奥さんは精神を病んでるようです。
何か張り紙の嫌がらせもされてます。
ある日奥さんが自殺しようとしてたのでお父さんが助けて病院に連れていきます。
旦那さんに電話すると仕事ですぐ戻れないとのことで、戻るまで居てくれないかとのことでした。
お父さんもブチ切れますが待ってあげます。
旦那さんは汚染水の処理の仕事してて東電の社員でした。
昔はみんなに喜ばれたのに、と言って肩を落とします。

お父さんは昔、高校球児だったので近所の子供とキャッチボールをしてあげてます。
その子は両親を亡くし祖母と暮らしててショックから引きこもってましたが、キャッチボールをするようになって外に出るようになり祖母から感謝されてました。

補償金目当ての震災ゴロというか詐欺師みたいのも現れます。
お父さんが除染状況の説明会に行くと、お宅も農家ですか?と声をかけられます。
うちはトマトをやられてなんて言って仲良くなると、草野球チームに誘われます。
入会費はいらないけど、頼みがあると言って、不思議な効果がある壺を買ってほしいと言われます。
何なら除染の効果もあると。
当然ながら胡散臭いと思ってお父さんが断ると補償金でパチンコばっかりしてるくせにと罵られます。

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新田の方は年の離れた弟と2人暮らしをしています。
父の工場は津波で流され、母は祖母と変な宗教にハマり家を出て行ってしまってました。
料理が作れない新田は近所のスナックで焼きそばとかナポリタンとかカレーライスとかのスナック飯を作ってもらって弟に食べさせてます。
そのスナックで東京からバイトに来てる女子大生をママから紹介されます。
市役所勤務だと紹介されると興味を持たれて、卒論に協力して欲しいと言われます。
この女子大生の取材では、新田は言葉を詰まらせますが、見てる観客は新田に同情的だと思います。
自称意識高い系にはうんざりする感じです。

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次にみゆきが出勤すると帰りの車の中で三浦からこの商売も長く続けるもんじゃないよと言われます。
自分もそろそろ卒業かなと。子供が出来た、おめでとう、というやり取りがなされます。

次にみゆきが出勤すると三浦は辞めていました。
新入りの店員さんに聞くと、三浦は舞台をやってるからで役者でした。
舞台をやってる場所を教えてもらうと下北沢に出かけていきます。

三浦の芝居は2人芝居でした。
目的をもってデリヘル店員をしていて、自分で芝居を打つ三浦にみゆきは感銘を受けます。
それと同時に最初に会ったときの三浦のことを思い出していました。
デリヘルに入店したものの踏ん切れずにいたみゆきに対し、やる気がないなら帰れという三浦の言葉でした。
みゆきが覚悟を見せようと裸になろうとすると、無理しなくていいと言います。
何があるのか知らないけど、俺には関係無いからと言います。
仕事だからやってるだけだと言います。
それでも覚悟してこの仕事をやるなら俺は全力でお前を守ると言います。
すると、みゆきはこの言葉にカチンときて、どうして私のことなんて守るというの?と言います。
三浦は、うぬぼれるなと言い、ここで働く他の女性と同じように仕事をする上で困らないようにトラブルが起きないように全力で守るだけだと言います。
みゆきはこの言葉にハッとして、自分も悲劇のヒロインになりたがっていたことに気付いたのでした。
なので父親や山本が抱える葛藤は2年前に克服済みでした。

帰りの東京駅のトイレで新潟の女性に出会います。
彼女もデリヘル嬢でした。
彼女は新潟から東京に出てくるそうで、一緒に住まない?と軽い感じで言われます。

みゆきのことを諦めきれない山本が仮設住宅までやってきます。
食事に誘う山本に対し、このままホテルに行って昔みたいに出来たらよりを戻してもいいとみゆきは言います。
ホテルで山本がみゆきに覆いかぶさると東京でデリヘルをしてることを告げられます。
みゆきは黙ってようと思ったが本当のことを言わなければと思ったと。
他の男に抱かれているのは嫌でしょう?と。

ここは山本、頑張れーと思います。
萎えるところではあるが頑張れと思います。

すると俺は気にしないと山本は頑張ります。
みゆきはもういいからと言って服を着ます。
きっとやり直す方向で進んでいくんだと思います。

お父さんは帰宅困難区域の自宅に入ると妻の服を幾つか持ち出します。
パチンコ仲間の漁師に船を出してもらうと、お母さん寒いだろうと言って服を投げ入れます。
津波で流された妻の遺体は見つかっていませんでした。
妻の死を受け入れた父はトラクターで畑を耕し始めます。

広報課に勤める新田は山崎の写真を使った展示が好評で終わります。
弟に母ちゃんのところに行きたいかと聞くと兄ちゃんといると言います。

みゆきのところには三浦から双子が産まれた写メが送られてきます。

みんなそれぞれ前を向いて少しずつ進み始める希望が見えたところで映画は終わります。

 

本作は主人公が市役所勤務、公務員てところがバランスいいなと思ったんですよね。
家族亡くしたりして被害者ではあるけど、ある面では市民の、被害者からの、矢面に立たされることもある訳で、現に除染状況の説明会では新田が農民から突き上げを食らいます。
汚染区域のお墓に入れないため、お墓を探してる老夫婦の要求にしてもそうで、新田は官と民の板挟みになったりします。
みゆきには直接的にそういう状況は描かれないですが、同じような思いはしてるはずで、早い段階で現実的な前向きな選択をしてると思うんですよね。

みゆきがなんで東京のデリヘルに勤めようと思ったのかははっきりとは分かりません。
ただ、いつまでも後ろ向きな父や元カレへのアンチテーゼではあると思うんですよね。
本当は父を置いて東京へ行けばよかったんでしょうが、さすがにそれは現実的ではないので、週末だけ閉塞的な環境から抜け出すって言いますか。

廣木隆一監督は『さよなら歌舞伎町』でも東日本大震災のこと少し描いてたんですけど、そのときは染谷将太さん演じる兄がラブホテルの店長で樋井明日香さん演じる妹がAV女優という設定で、本作はそれを更に推し進めた感じがあります。

『さよなら歌舞伎町』では主演女優だったミュージシャン志望役の前田敦子さんが枕営業するシーンがあるのですが、その描写が中途半端になってしまって残念に思ったのですが、本作の瀧内公美さんは『さよなら歌舞伎町』でのイ・ウヌさんのデリヘル嬢役にも負けない演技で素晴らしかったです。
日本の女優さんでもこれぐらいやれるんだというところを見せてくれてよかったです。
インタビュー読んでも覚悟がすごい女優さんだなぁと思います。

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『グレイトフルデッド』はまだ見たこと無いので見てみたいと思います。

映画を見てもこれといった正解は無いと思うんですけど、同じ経験をしてもどこを向くかで変わってくるのかなぁと思います。

復興庁 | 今村復興大臣記者会見録[平成29年4月4日]

違う経験(栃木、群馬、千葉から避難)をしても、どこを向くかで変わってきますし難しい問題だなぁと思います。

賠償金のお支払い状況|東京電力

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ ハッピーチューズデー 1000円
2017年 118作品目 累計125000円 1作品単価1059円

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