コメディに寄せ過ぎようとして滑ってる ☆2点
1987年に刊行された小松重男の江戸時代をテーマにした6編からなる短編小説集「蚤とり侍」から3編の話を再構成して鶴橋康夫監督自ら脚本を手掛けた作品。
主演は阿部寛、共演に寺島しのぶ、豊川悦司、斎藤工
予告編
映画データ
本作は2018年5月18日(金)公開で、全国327館での公開です。
配給と製作が東宝で制作がROBOTと『後妻業の女』と製作体制がほぼ同じで、出演者も結構被ってますね。
劇場での予告編はよく目にしまして、蚤とり屋稼業なるものを初めて聞いたので興味惹かれて観に行ってきました。
予告編がコメディ調だったのでR15+作品とは思いませんでした。
監督は鶴橋康夫さん
近作は『後妻業の女』を観てます。
主演は阿部寛さん
近作は『カラスの親指』『エヴェレスト 神々の山嶺』『海よりもまだ深く』『恋妻家宮本』『海辺のリア』『祈りの幕が下りる時』『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』『北の桜守』を観てます。
共演に寺島しのぶさん
近作は『R100』『シェル・コレクター』『オー・ルーシー!』を観てます。
共演に豊川悦司さん
近作は『後妻業の女』『3月のライオン 前編/後編』『ラプラスの魔女』を観てます。
共演に斎藤工さん
近作は『虎影』『リアル鬼ごっこ』『団地』『無伴奏』『シン・ゴジラ』『SCOOP!』『昼顔』『蠱毒 ミートボールマシン』『マンハント』『去年の冬、きみと別れ』『blank13』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
小林 寛之進: 阿部寛
おみね: 寺島しのぶ
清兵衛: 豊川悦司
佐伯 友之介: 斎藤工
おちえ: 前田敦子
甚兵衛: 風間杜夫
お鈴: 大竹しのぶ
牧野備前守 忠精: 松重豊
田沼 意次: 桂文枝
宋庵: 伊武雅刀
結城 又太郎: 六平直政
松平 定信: 三浦貴大
平賀 源内: 笑福亭鶴光
望月屋 秀持: ジミー大西
根津屋 文吾:オール阪神
お仙: 飛鳥凛
斎: 雛形あきこ
おしげ: 樋井明日香
お種: 山村紅葉
あらすじ
“蚤とり”とは、
お客の飼い猫の蚤を取って日銭を稼ぐ、江戸時代に実在したお仕事でございます。
しかし、ウラの顔は、女性に愛をご奉仕する“添寝業”のことでございます。時は、十代将軍・徳川家治 治世の夏 ――――
老中・田沼意次(桂文枝)の規制緩和により、世に金が回れば、何でもOKな時代です。男の名は、小林寛之進(阿部寛)。
越後長岡藩の勘定方書き役として、まさにエリートコースをひた走る、
“清廉潔白”、“質実剛健”などんぐり眼の男。しかし、
歌会の場で藩主・牧野備前守忠精(松重豊)に
大恥をかかせてしまったため、左遷されてしまいます…。
その左遷先は、“猫の蚤とり”を行う江戸の貧乏長屋でした。「”猫の蚤とり”とは何ら?」
戸惑う寛之進を迎えたのは、
長屋に暮らすいかがわしい旦那・甚兵衛(風間杜夫)と女将のお鈴(大竹しのぶ)。
そして、貧しい子供たちに読み書きを無償で教える友之介(斎藤工)でした。「猫の蚤取りましょう…♪」
甚兵衛に言われるがまま、陽気な声をあげ、“のみとり業”を始める寛之進でしたが・・・
はじめてのお客は、
なんと、寛之進の亡き妻・千鶴に瓜二つの女・おみね(寺島しのぶ)!!
この運命の出会いに胸高鳴る寛之進でしたが、
おみねから浴びせられたのは、この一言!
「この、下手くそが!」
侍として、必死に積み上げてきた剣術や学問もここでは無・意・味。
まさに失意のどん底。
意気消沈する寛之進の前に現れたのは、
江戸でNo.1の伊達男にして恐妻家の清兵衛(豊川悦司)でした。清兵衛は、小間物問屋・近江屋の婿養子。
妻・おちえ(前田敦子)の尻に敷かれながらも、その浮気癖は治りません。
おちえはその浮気封じのために、清兵衛の一物に 饂飩粉をまぶしておりました。そんな清兵衛に寛之進は頼み込むのです!
「拙者に女の悦ばせ方を教えてはくれぬか!」清兵衛先生の温かなご指導と、寛之進の持ち前の勤勉さから、
寛之進の”のみとり技術“はメキメキと上達し、
一人前になっていくのでした。しかし!!
老中・田沼意次の失脚により
急遽、“のみとり禁令”が出されてしまいます。
寛之進はじめ“のみとり”たちは窮地に立たされてしまいます。果たして、寛之進は、武士として、男として、その生き様を江戸に示すことができるのか?
そして、運命の相手・おみねとの恋を成就させることはできるのか?
これは、江戸の浮世を懸命に生きた侍が、本物の“愛”と“人情”に出会った物語でございます。(公式サイトhttp://nomitori.jpより引用)
ネタバレ感想
猫のノミ取り屋に関してはこちらを参考にどうぞ。
江戸時代の『娼年』ていう感じなんですけど、劇団ポツドールの三浦大輔さんの「おしまいのとき」のエアコン修理人みたいな感じもあります。
映画の冒頭は、籠に乗って出勤する田沼意次を待って並んでる陳情者が次々に賄賂を渡していくシーンから始まるんですけど、田沼意次を演じてるのが桂文枝さんで、滑舌が悪くて演技も下手なんで、最初からテンションだだ下がりで本作は始まります。
しかも陳情者が平賀源内役の笑福亭鶴光さん(松竹芸能)、ジミー大西さん、オール阪神さんだったので吉本映画?と思ってしまいました。
寛之進が左遷されるきっかけとなる歌会のシーンでも、松重豊さん演じる牧野備前守にバカ殿っぽい演技を付けるんですが、鶴橋監督の演出はコメディに寄せ過ぎようとして滑ってます。
変に笑わそうとしなくても『娼年』の西岡徳馬さんのシーンみたいに全力でやれば、自然に笑いが起きるのになぁと思いました。
寛之進が左遷された猫のノミ取り屋の親分夫婦にも笑わせようとする演技を付けるんで、演技派の風間杜夫さんも大竹しのぶさんもだいぶ下手に見えて、名優揃い踏みなのに残念なことになってて、この辺でこの映画もうダメだと思いました…。
親分夫婦は寛之進みたいなお武家様がノミ取り屋稼業にまで身を落としたのを見て、何か理由があると考え、その理由を仇討ちのためと勘違いしたまま話は進みます。
寛之進が初めてノミ取り屋の皆と街を流すと、亡き妻の千鶴とそっくりな女・おみねに声を掛けられるんですけど、ここもよく分からなかったです。
寛之進は女好きの牧野備前守から美人妻だった千鶴を差し出すように言われたんですけど、過去に断った経緯があります。
そのことを備前守が根に持っていて左遷されたと寛之進は考えます。
ただ千鶴がその後に何で死んだかが描かれないので、話としては片手落ちな気がしました。
寛之進はおみねがあまりにも亡妻に似ていて驚くんですが、そのときに長岡藩江戸留守居役の結城又太郎(六平直政)の話を思い出します。
結城は田沼意次に連れてってもらった所にいい女がいたという話をするんですが、結果としておみねは田沼の妾なんですがここも非常に分かり辛かったです。
おみねに下手くそと言われて意気消沈した寛之進が歩いてると、橋の上で武士にぶつかったと因縁を付けられ斬られそうになってる清兵衛を助けたことからウナギを御馳走になります。
鰻屋に上がって蒲焼を食べてると清兵衛の周囲に白い粉が落ちていて、寛之進が「それは何?」と聞いたことから清兵衛の浮気の話のくだりになるんですが、どうも話があっちこっちに飛ぶような気がしたんですよね。
調べたら原作では、浮気封じの策として妻に股間をうどん粉塗れにされた紙問屋の顛末「唐傘一本」という話のようで、これを表題作である「蚤とり侍」と繋げたようなんですが、何か物語に一本筋が通ってなかった『DESTINY 鎌倉ものがたり』と同じで、脚本が上手く無いなぁと思いました。
それでこの後は寛之進が清兵衛の女遊びのアリバイ作りを手伝う傍ら、清兵衛が実際にヤッてるトコを見て性技について学んでいくことになります。
清兵衛役の豊川悦司さんと水茶屋の遊女役の飛鳥凛さんとの刺激の強い性愛描写となるので、コメディ作品でありながらR15+とアンバランスな作品となる訳です。
性技をマスターした寛之進はおみねにリベンジすることになるんですが、ここも分かり辛かったです。
寛之進は最初の出会いで「下手くそが」とおみねに拒絶されていたので、普通は2回目は無いと思うんですが、あっさりおみねを抱いていたので寛之進の空想シーンかな?と思ったら実際にヤッてます。
最初の出会いでは寺島しのぶさんの乳首が一瞬映るだけでしたが、ここでは刺激の強い性愛描写となるのでR15+ですし、寺島さんがキャスティングされたのも納得でした。
しかし、役柄的にいったら寺島さんが清兵衛の鬼嫁のおちえ役で、おちえ役の前田敦子さんがおみね役だろうなぁと思います。
おみねに似ている千鶴は亡くなってる訳ですし、年齢的にも前田さんの方が合ってる気がしますが、『さよなら歌舞伎町』と同じような感じだなぁと思いました。
本作で唯一、普通に登場するのが佐伯友之介役の斎藤工さんです。
貧乏長屋で無償で子供たちに読み書きを教える寺子屋の先生ですが、あまりの貧しさから常に空腹です。
あまりの空腹から長屋のゴミ捨て場にある残飯を漁ろうとしたら猫に引っ掛かれて化膿し生死の境をさまよいます。
貧乏長屋の衆は四谷の宋庵という町医者に頼みに行きますが、料金が高くて診てもらえません。
すると清兵衛が自分のところの近江屋かかりつけの医者ならば診てくれるかもと呼びに行きますが、その最中に牧野備前守が走らせる馬に轢かれてしまいます。
戻ってこない清兵衛に痺れを切らした寛之進は、友之介の家宝である100両は下らないとされる刀を質に宋庵と交渉すると診てもらえることになります。
江戸時代なので麻酔無しで膿を切り出す手術が描かれて友之介は無事助かります。
後日、宋庵が寛之進を訪ねてきて刀を返します。
寛之進が理由を聞くと、その刀は価値が無いとのことで最初から気づいていたと言います。
しかし、寛之進のような立派な武家もいると感心して診てくれたとのことで、人情話として描かれますがこのエピソードは丸々いらない気もします。
ここからラストに向けて話が分かり辛くなってきます。
まず、田沼意次と松平定信のやり取りがあり、田沼が失脚したらしいことが描かれますが、寛政の改革が頭に入ってないと、何のことかさっぱりな気がします。
そして、寛之進がおみねと逢ってると田沼がやって来ます。
失脚する田沼がおみねに別れを告げに来たんですが、寛之進もあっさり見つかります。
間男だから怒られると思いきや、田沼は寛之進を知っていました。
寛之進は剣術の腕も優れていて御前試合で8人抜きを達成したからなんですが、田沼は長岡藩に起きているお家騒動を教えてくれます。
それによると牧野備前守の女好きが災いして、家臣たちの妻を提供させ、その家臣たちを重用したために収集が付かなくなり長岡藩の財政を圧迫していました。
しかし融通が利かない寛之進はお金を出し渋ったので、命を狙われていました。
それを知った牧野備前守が命を狙われないように左遷させたのが今回の真相でした。
寛政の改革が執行されると、猫のノミ取り屋は直ちに違法となり、寛之進たちは捕まってしまいます。
寛之進たちは鋸挽きの刑にされるんですが、2日間生き延びれば無罪放免っていうのもよく分からなかったです。
江戸時代の鋸挽き刑は主人殺しにのみ適用され、2日間生き延びた場合は磔になるらしいんですが、そういう時代考証は無視してるんですかね?
とにかく寛之進たちを助けようと猫のノミ取り屋の親分夫婦や長屋の人たちは川の前で見張って励まし続けます。
2日目に入ると長岡藩の者たちが来て寛之進を連れていくんですが、刑が終わってないのでここもよく分かりませんでした。
屋敷に連れて行かれると、武士の分際でノミ取りしてたってことで、裁きにかけられるんですけど、そこには記憶を失って保護されていた清兵衛がいます。
寛之進は正式な裁きが告げられる前に周囲から切腹だと囃し立てられますが、それを見た清兵衛が「この人だけは死なせちゃいけない」と言って暴れると、寛之進が清兵衛に気付きます。
寛之進が「清兵衛!」と声をかけると、自身がうどんこを逆さに読んで付けた近藤清兵衛だと思い出します。
寛之進は友之介が助かったことを告げると清兵衛も安堵するのでした。
そこに牧野備前守が現れると、寛之進はのみとり屋や長屋の人々が貧しい暮らしながらも如何に素晴らしい人たちだったかを語ります。
それを聞いた牧野備前守は自身の目に狂いは無かったと言うと、田沼が話したことと同じ真相を話します。
寛之進を勘定方書き役に戻してハッピーエンドで映画は終わりますが、最後はあんまりよく分かりませんでしたね。
本作は週末動員ランキング初登場3位でしたが、『後妻業の女』の興収比の約60%という成績でした。
配給と製作が東宝なのに、3週目にして都内のTOHOシネマズでは1日2回上映に減らされているので失敗作なんじゃないかと思います。
複数の短編をまとめた脚本が全く練れてなくて、「江戸時代に出張ホストがあった」というだけの話に終わってると思います。
『娼年』とは雲泥の差で、出演者だけ豪華で特に見るべきところの無い作品でした。
鑑賞データ
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2018年 91作品目 累計83400円 1作品単価916円
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