阪本順治監督が奇妙な作品を作り上げました ☆5点
予告編
映画データ
あらすじ
大阪近郊にある、古ぼけた団地。昭和の面影を残すその一角で、山下ヒナ子は、夫で元漢方薬局店主の清治とひっそりと暮らしていた。半年ほど前に店を閉め、引っ越してきたばかり。腰は低いがどこか世を捨てた雰囲気に、住民たちは好奇心を隠せない。調子のいい自治会長の行徳と、妻で“ゴミ監視役”の君子。クレーマーで次期会長を狙う吉住に、暇を持て余した奥さま連中。ときおり訪れる妙な立ち居振る舞いの青年・真城だけが、山下夫妻の抱えた過去を知っていた──。そんなある日、些細な出来事でヘソを曲げた清治が「僕は死んだことにしてくれ」と床下に隠れてしまう。夫の姿が団地から消えても、淡々とパートに通い続けるヒナ子の言動に、隣人たちの妄想は膨らむばかり。「もう殺されてると思う…」。一人がつい口にしてしまった言葉をきっかけに、団地を覆った不安は一気にあらぬ方向へと走りだして……。
(公式サイトhttp://danchi-movie.com/より引用)
ネタバレ感想
日本映画史に残る傑作『どついたるねん』から27年。
阪本順治監督が、とても奇妙な作品を作り上げました。
阪本作品は数えるほどしか見てないのですが、ベースがブラック・コメディということもあるのでしょうが、こんな作風だっけ?と思うくらい、ガラリと作風が違う気がしました。
ここ数作続いた原作物から離れてのオリジナル脚本。
見る前に知ってたのは、藤山直美さん主演で団地を舞台にしたコメディというくらいで、殆ど予備知識なしで鑑賞しました。
映画始まってすぐにおやっ?と思ったのは、主要キャストやスタッフクレジットの中でVFXスタッフのクレジットがあったことです。
地味であろう団地モノのお話なのになぜ特撮?と思っていると、真城役の斎藤工さんが登場するのですが、この人物がまたおかしい。
眼の焦点を動かさず淡々と喋るのですが、日本語が少し不自由で、ナイツのヤホー漫才の人みたいに、いちいち言い間違えるのです。
公式サイトの阪本監督のインタビューを見ると、今作を構想した経緯が書いてあるのですが、監督が子供の頃に影響されたアーサー・C・クラークや星新一の世界観とあり、なるほどと思いました。
http://danchi-movie.com/
見終わってみると、いわば阪本順治版『世にも奇妙な物語』なのですが、行き着く先がそんなところとは思って見てないので、あれ?あれ?あれー?となる訳です。
デヴィッド・リンチ感すらありました(笑)
またそこに至るまでの、団地内での主要キャスト(藤山直美・岸部一徳・大楠道代・石橋蓮司)の漫才の掛け合いのような会話が、大変面白いのです。
これも公式サイトによると、阪本監督がそれぞれに当て書きしたようでして、なるほど上手くはまっているなぁと思いました。
それから、ガッチャマンを斉唱する少年がいたり、井戸端会議が大好きでズッコケ三人組のような主婦グループ、児童虐待の気がありクレーマー気質の夫婦など、出てくる登場人物が一癖も二癖もあってみんな面白いです。
団地内での死体遺棄騒動はヒッチコックのブラックコメディ『ハリーの災難』みたいな雰囲気もあり、団地の昭和感と相俟ってノスタルジックな感じもしました。
とにかく、この映画は、
・監督が藤山直美さんを念頭に一週間で書き上げた脚本
・主要キャスト4人に当て書きした台詞
・監督が子供の頃に影響された世界観
が、ばっちりとハマった怪作だと思います。
映画好きの方は、ちょっと見といた方がいいかな、と思う作品で、一応ネタバレ有りで感想を書いてますが、重要なところは書いてないつもりですので、なるべく予備知識無しでご覧になられるとよいと思います。
しかし『海よりもまだ深く』の是枝監督といい、同じくらいの年齢の監督の、団地を舞台にした作品が同じ時期に公開されるというのも、なんだか面白いなと思いました。
鑑賞データ
新宿シネマカリテ 映画ファンサービスデー 1000円
2016年 61作品目 累計71200円 1作品単価1167円
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