劇的につまらない ☆2点
『蜩ノ記』(ひぐらしのき)で2011年下半期の直木賞を受賞した作家・葉室麟が2012年に発表した江戸時代の扇野藩という架空の藩を舞台にした同名時代小説の映画化。
監督は名キャメラマンの木村大作、脚本は『蜩ノ記』を監督した小泉堯史、主演はV6の岡田准一、共演に西島秀俊、黒木華、池松壮亮
予告編
映画データ
本作は2018年9月28日(金)公開で、全国341館での公開です。
配給は東宝で、製作委員会方式で作られてて(東宝、電通、ジェイ・ストーム、WOWOW、時代劇専門チャンネル、東急エージェンシー、KADOKAWA、朝日新聞社、毎日新聞社、阪急交通社、ひかりTV、日本出版販売、GYAO、読売新聞社、時事通信社、中日新聞社、北日本新聞社、西日本新聞社)といった会社が名を連ねてる大作です。
劇場での予告編はたいへんよく目にしましたし、名キャメラマンの木村大作さんの監督作ということで観に行ってまいりました。
監督は木村大作さん
監督作は昨年『追憶』を観たと思ったんですが、監督・降旗康男、撮影・木村大作の布陣で勘違いしてました。
監督作は『劔岳 点の記』『春を背負って』に続いて3作目なので、劇場での鑑賞は初めてになります。
『劔岳 点の記』はWOWOWで途中から見た気がします。
主演に岡田准一さん
近作は『エヴェレスト 神々の山嶺』『追憶』『関ヶ原』を観てます。
共演に西島秀俊さん
近作は『ストロベリーナイト』『脳内ポイズンベリー』『劇場版 MOZU』『クリーピー 偽りの隣人』『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』を観てます。
共演に黒木華さん
近作は『銀の匙 Silver Spoon』『リップヴァンウィンクルの花嫁』『海辺のリア』『未来のミライ(声の出演)』を観てます。
共演に池松壮亮さん
近作は『愛の渦』『海を感じる時』『劇場版 MOZU』『シェル・コレクター』『無伴奏』『ディストラクション・ベイビーズ』『海よりもまだ深く』『セトウツミ』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『万引き家族』を観てます。
共演に麻生久美子さん
近作は『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『ニシノユキヒコの恋と冒険』『グラスホッパー』『未来のミライ(声の出演)』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
瓜生新兵衛: 岡田准一
榊原采女: 西島秀俊
坂下里美: 黒木華
坂下藤吾: 池松壮亮
瓜生篠: 麻生久美子
篠原三右衛門: 緒形直人
宇野十蔵: 新井浩文
平山十五郎: 柳楽優弥
篠原美鈴: 芳根京子
坂下源之進: 駿河太郎
千賀谷政家: 渡辺大
田中屋惣兵衛: 石橋蓮司
榊原滋野: 富司純子
石田玄蕃: 奥田瑛二
坂下家下男: 柄本時生
矢島健一
螢雪次朗
ナレーション: 豊川悦司
あらすじ
享保15年。
かつて藩の不正を訴え出たが認められず、故郷・扇野藩を出た瓜生新兵衛(岡田准一)は、連れ添い続けた妻・篠(麻生久美子)が病に倒れた折、彼女から最期の願いを託される。「采女様を助けていただきたいのです……」と。
采女(西島秀俊)とは、平山道場・四天王の一人で新兵衛にとって良き友であったが、二人には新兵衛の離郷に関わる大きな因縁があったのだ。
篠の願いと藩の不正事件の真相を突き止めようと、故郷・扇野藩に戻った新兵衛。
篠の妹・坂下里美(黒木華)と弟・藤吾(池松壮亮)は、戻ってきた新兵衛の真意に戸惑いながらも、凛とした彼の生き様にいつしか惹かれていくのだった。散り椿が咲き誇る春——
ある確証を得た新兵衛は、采女と対峙することになる。そこで過去の不正事件の真相と、切なくも愛に溢れた妻の本当の想いを知ることになるのだった……。
しかし、その裏では大きな力が新兵衛に迫っていた——。(公式サイトhttp://chiritsubaki.jp/about.htmlより引用)
ネタバレ感想
本作は東宝配給で341館と大規模公開だったのですが、初週の週末動員ランキングで、アニプレックス配給で136館での公開のアニメ『劇場版 夏目友人帳 うつせみに結ぶ』と3週目の『プーと大人になった僕』の後塵を拝し、3位スタートでした。
ただ、この週に公開された『クワイエット・プレイス』やその前の週で見れてないものがあったので、「大規模公開なのでしばらくやってるだろう」と後回しにしたら、公開館数は変わらないものの上映回数が減らされていて、2週目にして夜の回が殆ど無く、上映時間がシニア向けにシフト(午前中から夕方まで)してて観る時間を合わせるのに苦労しました。
実際、映画館に行っても観客はお年寄りが多く、上映時間112分という微妙な長さもあって、途中トイレに席を立つ人も多かったのですが、暗い中、階段を降りていくのでつまずいたりしてる人も何人か見受けられました。
特に本作は自然光で撮られていて、照明を使ってる映画に比べると館内が暗めでしたので余計でしたね。
さて、肝心の内容の方なんですが、これが劇的につまらなくて、眠気を抑えるのが大変でした。
まず最初にダメだなと思ったのは、新兵衛役の岡田准一さんが扇野藩に戻って来るシーンで、街道沿いで藤吾役の池松壮亮さんと宇野役の新井浩文さんが見てたと思うのですが、2人の会話が説明台詞になっていて、普段このお2人の演技で下手と感じることは無かったのですが、えらい下手に感じられてビックリしました。
また上のあらすじにあるように、新兵衛の凛とした姿を映したいがためか、岡田さんが黙々と何かをやってるところをじっくりたっぷり撮るんですが、本作は物語上必要と思われる8年前の回想シーンにしばしば飛びます。
ただ8年前の采女の養父の死の真相は四天王が知っているため、前半に観客に明かすことが出来ず、わりとどうでもいい回想シーンがダラダラと映し出されるんですが、肝心の大事そうなシーンは映像化されず現在パートで藤吾などの台詞によって語られます。
そのため台詞がどうにも説明っぽくなってしまい、岡田さんのじっくりたっぷりのシーンと比べると非常にバランスが悪く、大事なトコ映さないで無意味なシーンがダラダラ続いてるように感じてしまいました。
説明台詞が多いのは脚本が悪いんだと思いますが、ここまで説明台詞になるんだったらいっそのこと昔の芥川隆行さんみたいなナレーション入れればよかったのに?と思いましたが、よく考えたら豊川悦司さんのナレーション入ってました。
うーん、豊川悦司さんの無駄遣い感もハンパないですし、ナレーションあるのにここまで説明台詞っぽくなるって…。
あと自分が驚いたのは散り椿のもとで行われる岡田さんと西島さんの対決シーンです。
自分はWOWOWに加入してるのですが、番組と番組の間の5分程度のミニ番組で、本作のナビ番組がやってて、岡田さんと西島さんのトークで、岡田さんが当日ロケバスにやってきて西島さんに「殺陣なんですが…」と言って、西島さんが「わかったよ!」と半ばキレ気味に応じて、当日に殺陣が変更になったことを楽しそうに話してて、上記内容の記事のことは鑑賞前から知ってたんですが、このシーンを観たとき、そもそもこの2人が戦う理由がよく分からなくて…。
対決自体も途中で誤解が解けて刀を鞘に収めますが、最初から殺す気の無いのが透けて見える決闘シーンが面白いとは思えず、ただ殺陣の演舞を見せられてるだけにしか感じませんでした。
しかも散り椿ってタイトルになるくらいですから、象徴的なシーンだと思うんですが、それが「この程度?」って思ってしまって…。
話の方もめちゃくちゃです。
普通、時代劇って悪代官と越後屋が一蓮托生だと思うんですが、本作での田中屋は証拠まで用意して主人公側に付いて(命が惜しいっていうのもありますが)くれます。
すると「窮鼠猫を噛む」という事かもしれませんが、家老の石田玄蕃が若殿の千賀谷政家の暗殺を企てますが、いくら何でも話が無茶苦茶じゃないですかね?
江戸時代にも主君押込があったにせよ、です。
石田は政家暗殺に失敗すると、今度は采女の警備が悪いと言って切腹か藩を去るかを迫りますが、石田が無茶苦茶過ぎて、「よくこんなんで家老になれたな?」と思うほどのデキの悪さで、真面目に観るのが馬鹿らしくなってしまいました。
これが、爽快な殺陣のアクションに振れてる映画であるとか、軽快でユーモアもある時代劇映画であるとかならば、石田の無茶苦茶ぶりも目をつぶって観れるのですが、作品自体がどうにもシリアスでここまで重いと、作品を破綻させるだけのものになってたと思います。
正直、観終わって、あまりのつまらなさに「どうしてここまで酷かったんだろう?」と考えたときに頭に浮かんだ言葉は「馴れ合い」でした。
本作の殺陣は格闘技に精通している岡田さん自身が担当されてるらしいのですが、殺陣を当日変更 した記事にあるように「予定調和を崩した方がいいとかなと。西島さんだからできること」と、その時のノリが採用されています。
本来こういうところは、インディーズと違う大作映画では、監督がコントロールすべきところだと思うんですが、肝心の監督は岡田さんをべた褒めですし、この辺の馴れ合いさ加減が作品に悪い方に出たかな?と思いました。
それから、エンドロールのクレジットも珍しく縦書きの文字が左から右に流れるものでしたが、それぞれの字が違っていて、おそらく出演者・スタッフの直筆だと思うのですが、そういうところも製作者側の熱い思いは分かりますが、空回り感が否めずその点で『パンク侍、斬られて候』なんかと近いと思いました。
本作を楽しめるとしたら、「ナルシスティックな俺」「カッコいい自分」が満載の岡田准一さんを好きなファンだけな気がするんですが、映画ファンとしては岡田さんが進むべきは『ジョン・ウィック』の方向で、巨匠と呼ばれる人と組むのではなくて、インディーズの若手監督だったり、それこそチャド・スタエルスキみたいなスタント出身の人と一緒に作り上げていった方がいいものが出来るんじゃないかと思いました。
鑑賞データ
TOHOシネマズ上野 TOHOシネマズデイ 1100円
2018年 162作品目 累計142800円 1作品単価881円
コメント
全く納得の評価ですね。残念な部分もたくさんありますか、それでもいい映画、好きな映画にしました。映像美、雰囲気、殺陣、そして妻への想いが素晴らしかったです。ストーリーに関しては途中から、もうどうでもいいや、と思ってました。