2018年ベストテン

2018年劇場鑑賞198作品の中からのベストテンです。 今年も絞り切れず邦画と洋画分けてあります。
邦画(87作品)

1位:寝ても覚めても(監督:濱口竜介)

寝ても覚めても 評価と感想/カンヌの裏パルム・ドールといってもいい作品
余白と余韻に浸らせてくれる濱口監督の力量 ☆5点 芥川賞作家・柴崎友香による2010年の第32回野間文芸新人賞を受賞した同名長編恋愛小説の映画化で、監督はこれが商業映画デビュー作となる濱口竜介 W主演に東出昌大と唐田えりか、共演に瀬戸康史、...

2位:恋は雨上がりのように(監督:永井聡)

恋は雨上がりのように 評価と感想/おっさんには刺さりました
淫行にきちんと触れてる点がよい ☆5点 2014年から「月刊!スピリッツ」に連載され、2018年1月からはアニメ化もされた眉月じゅんによる同名漫画の実写映画化。 バツイチのファミレス店長に恋心を抱く女子高生の青春を描いた作品で監督は永井聡、...

3位:祈りの幕が下りる時(監督:福澤克雄)

祈りの幕が下りる時 評価と感想/野村芳太郎版『砂の器』へのオマージュ
ゴジラをオマージュしたシン・ゴジラに近い ☆5点 2010年にTBSで阿部寛主演で連続ドラマ化された東野圭吾の小説「新参者」加賀恭一郎シリーズの第10作目を映画化。 監督は「半沢直樹」をヒットさせた福澤克雄、主演は引き続き阿部寛、共演に溝端...

4位:来る(監督:中島哲也)

(感想まだ未投稿)

5位:孤狼の血(監督:白石和彌)

孤狼の血 評価と感想/東宝がシン・ゴジラなら、東映は孤狼の血だ
呉原狼対仁義なき組織暴力 ☆5点 昭和63年の広島を舞台にヤクザの抗争とそれを取り締まるマル暴を描いた警察小説で2016年の第69回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞した柚月裕子の同名小説の映画化。 監督は白石和彌、主演は役所広...

6位:娼年(監督:三浦大輔)

娼年 評価と感想/副題:松坂トオリー 変態遊戯
桃李の超高速ピストンに刮目せよ ☆5点 石田衣良の小説で舞台化もされた2001年下半期の第126回直木賞候補作の映画化で舞台版と同じく監督は三浦大輔 主演も舞台版に引き続き松坂桃李、共演に真飛聖、冨手麻妙、西岡徳馬、江波杏子 予告編 映画デ...

7位:センセイ君主(監督:月川翔)

センセイ君主 評価と感想/恐るべし17歳、天才・浜辺美波
全方位的に面白い ☆5点 2013年から2017年まで「別冊マーガレット」で連載された幸田もも子原作のラブコメ漫画の実写映画化。 とにかく彼氏が欲しい女子高生と全くつれない教師との恋をコミカルに描く。 監督は月川翔、主演に浜辺美波、竹内涼真...

8位:累 -かさね-(監督:佐藤祐市)

累 かさね 評価と感想/トラボル太鳳とニコラス芳根が素晴らしい
Wの悲劇+ガラスの仮面、そしてフェイス/オフ ☆5点 2013年から2018年まで漫画雑誌イブニングに連載されていた松浦だるま作の同名漫画の実写映画化。 伝説の女優の娘で卓越した演技力を持ちながらも顔が醜い主人公が、母が残したキスした相手と...

9位:犬猿(監督:吉田恵輔)

犬猿 評価と感想/原作モノを撮って進化した吉田恵輔監督オリジナル作品
脚本良し、演出良し、役者良しの傑作 ☆5点 『銀の匙 Silver Spoon』や『ヒメアノ〜ル』の吉田恵輔監督による『麦子さんと』以来4年ぶりとなるオリジナル脚本作品で2組の兄弟姉妹の確執を描く。 主演に窪田正孝、新井浩文、お笑いコンビの...

10位:星くず兄弟の新たな伝説(監督:手塚眞)

星くず兄弟の新たな伝説 評価と感想/昭和のスナックみたいな雰囲気で楽しい
メタメタB級ロックミュージカル風 ☆5点 ミュージシャンの近田春夫が1980年に発表したアルバム「星くず兄弟の伝説」を原案に、1985年に手塚眞監督で映画化された同名映画の続編で監督は引き続き手塚眞 主演は三浦涼介と武田航平、共演に井上順と...

今年の邦画は『万引き家族』のカンヌパルムドール受賞とか、インディーズ映画『カメラを止めるな!』の邦画では前例の無いヒットの仕方とか明るい話題もありましたが、個人的な印象としては、製作委員会方式で最低でも興収10億円台は見込んで作られたであろう作品が悉くコケて、全体としては昨年に引き続き低調だった気がします。

まだ分からないですが2007年以来に邦画の興収を洋画が上回る気がするんですが、そんな2018年の邦画のマイベストテンは、1位が圧倒的に抜けてて、2位~5位が横並び、6位~10位がその次の横並びという感じです。

1位の『寝ても覚めても』は『わたしは、ダニエル・ブレイク』の二番煎じ的だった『万引き家族』より個人的にはパルムドールをあげたい作品で、濱口監督の演出メソッドが別格官幣社というくらい素晴らしく、小津作品にも通じるものを感じました。

本読みが生む自然な演技 濱口監督『寝ても覚めても』 - 日本経済新聞
「ハッピーアワー」で国際的に注目された濱口竜介監督が新作「寝ても覚めても」を制作中だ。まるで記録映画のように自然でリアルな濱口演出の秘訣は、現場での独特の本読みにあった。窓からビルの谷間越しに代々木公園の緑が見下ろせるオフィスビルの一角。7...

2位の『恋は雨上がりのように』は山口達也パイセンの事件で公開タイミングとしては最悪で興収も約6.7億円と振るわなかったんですけど、昨年『帝一の國』をヒットさせた永井聡監督の手腕は確かで、大泉洋さんと小松菜奈さんの両主演の演技も素晴らしかったです。
大泉洋さんは『こんな夜更けにバナナかよ』、小松菜奈さんは『来る』が公開中ですがこちらの演技もかなりいいです。

3位の『祈りの幕が下りる時』は、後からネットフリックスで『砂の器』(アマゾンプライムでも見れます)を見直して、ここまでそっくりだったのかと驚いたんですけど、砂の器でモヤっとした動機の部分が上手く改変されていて、更に一捻り二捻りあって面白かったです。

4位の『来る』は感想まだ書けてないんですけど面白かったです。
映画館で特報的な予告を最初に見たときは、今年見た予告の中ではインパクト最大でかなり面白そうと思いました。
ただ公開が近づいてきて長いバージョンを目にしたら「そうでもないかな?」と思えてきて、ザキヤマさんのCMで完全に戦意喪失しました。

でも結果的には最初に特報を見たときの期待に応えてくれました。
「ジャパニーズ・コクソン」「除霊版シン・ゴジラ」の声は言い得て妙で、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』的なパワフルさもあって面白かったです。
エンドロールがロールしないエンドクレジットで非常に短かったんですが、きっと『シークレット・オブ・モンスター』を意識していると思います。

5位の『孤狼の血』も予告編を初めて見たときから楽しみしていた作品で、その期待に応えてくれました。
興収が10億いかず思ったよりヒットしませんでしたが、続編の製作が決定してよかったです。

403 Forbidden

6位の『娼年』はR18+作品を全国90館弱で公開するというチャレンジングな試みで、オープンしたばかりのTOHOシネマズ日比谷の大スクリーンで鑑賞するという面白い体験もしました。
公開時から「海外の映画祭に持っていったら面白いんじゃないかな」と思いましたが、今年公開された『素敵なダイナマイトスキャンダル』や『止められるか、俺たちを』で1970年代や若松孝二監督に触れて大島渚監督を思い出すと、70年代に『愛のコリーダ』とか本当に藤竜也さんが本番する映画作ってカンヌで上映しちゃったりして、「60年代に人類は月面着陸出来たのに何で今出来ないんだろ?」的なことを思って、改めて凄いことやってたなぁと思いました。

「男性器もかっこいい人を」 崔洋一が語る「愛のコリーダ」制作秘話 | AERA dot. (アエラドット)
2013年1月に肺炎のため80歳で亡くなった映画監督の大島渚さん。代表作のひとつ「愛のコリーダ」に、当時助監督として制作に参加した映画監督の崔(さい)洋一さんが配役にまつわる裏話を明かす。

7位の『センセイ君主』は今年の邦画で一番笑いました。
洋画では公開中の『アイ・フィール・プリティ!』が一番笑いましたが、そちらはアメリカ版渡辺直美と言われるコメディエンヌのエイミー・シューマー主演ですが、本作はまだ新人と言っていい女優の浜辺美波(そういえば名前が渡辺直美さんに似てますね)さん主演で、そのポテンシャルの高さは恐るべしでした。

8位の『累 -かさね-』は漫画原作ながら、土屋太鳳さんと芳根京子さんの演技力の高さを最大限に引き出した良作でした。

9位の『犬猿』はやっぱり吉田恵輔監督のオリジナル脚本は面白いですね。
ハッピーアワー』での濱口演出に近くて、脚本や台詞が演者に当て書きされてる部分があるのでリアリティがあって観てる方も身につまされます。
ニッチェの江上敬子さんと、グラドルの筧美和子さんのキャスティングが見事でした。

10位の『星くず兄弟の新たな伝説』はメタ的な構造とかを含めて、とにかく自由で楽しそうにやってて、昔はわりとあったと思うんですが、最近では無い毛色の映画で面白かったです。

ベストテン以下では昨年末の公開の『花筐/HANAGATAMI』、それから『カメラを止めるな!』と『万引き家族』も当然面白かったです。

洋画(111作品)

1位:しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(監督:アシュリング・ウォルシュ)

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス 評価と感想/とにかく泣ける
サリー・ホーキンス、こっちの方がいいです ☆5点 カナダのフォーク・アートの女性画家モード・ルイスとその夫エベレットの半生を描いた伝記ドラマで各地の映画祭で観客賞を受賞した作品。 監督はアイルランドの女性監督アシュリング・ウォルシュ、主演に...

2位:ブリグズビー・ベア(監督:デイヴ・マッカリー)

ブリグズビー・ベア 評価と感想/ガチャピンであり、ムックであり、ゴン太くんである!
『ルーム』を上回る監禁モノ ☆5点 サタデー・ナイト・ライブの人気コントユニット「GOOD NEIGHBOR」のデイヴ・マッカリーとカイル・ムーニーが監督と主演を務めた初長編映画。 赤ちゃんの頃に誘拐され偽の両親が制作する教育番組「ブリグズ...

3位:グレイテスト・ショーマン(監督:マイケル・グレイシー)

グレイテスト・ショーマン 評価と感想/楽曲にとにかく感動する
キレキレのダンスもよい ☆5点 19世紀にアメリカで活躍した実在の興行師P・T・バーナムをモデルに『ラ・ラ・ランド』の音楽チームが手掛けたオリジナルミュージカル映画で監督はマイケル・グレイシー。主演はヒュー・ジャックマン、共演にザック・エフ...

4位:ヘレディタリー/継承(監督:アリ・アスター)

(感想まだ未投稿)

5位:パディントン2(監督:ポール・キング)

パディントン2 評価と感想/不寛容な社会にパディントンの優しさが染み渡る
排外主義とブレグジットを超えて ☆5点 2017年に亡くなったイギリスの作家マイケル・ボンドの児童文学『くまのパディントン』の実写映画で世界興収2億6千万ドル超のヒットとなった第一作の続編。監督は引き続きポール・キング、主役パディントンの声...

6位:君の名前で僕を呼んで(監督:ルカ・グァダニーノ)

君の名前で僕を呼んで 評価と感想/北イタリアを舞台にした青春映画の傑作
性差を超えて青春の甘酸っぱさを喚起させる ☆5点 エジプト生まれのアメリカの作家でニューヨーク市立大学大学院の教授であるアンドレ・アシマンが、2007年ラムダ文学賞ゲイ・フィクション部門を受賞した小説「Call Me by Your Nam...

7位:女は二度決断する(監督:ファティ・アキン)

女は二度決断する 評価と感想/サムライタトゥーが完成するとき
SNS時代のリアルな現代的復讐譚 ☆5点 現在44歳でありながら弱冠36歳で世界三大映画祭の全てで主要な賞を受賞しているトルコ系ドイツ人監督ファティ・アキンによる人間ドラマ。 主演はダイアン・クルーガーで本作で第70回(2017年)カンヌ国...

8位:ワンダー 君は太陽(監督:スティーブン・チョボスキー)

ワンダー 君は太陽 評価と感想/桐島的視点で描いた傑作
オギー、学校くるってよ ☆5点 アメリカで2012年に発行され全世界で800万部以上のベストセラーとなったR・J・パラシオによる小説「ワンダー」を原作に、「ウォールフラワー」の原作者で監督でもあるスティーブン・チョボスキーが映画化。 主演は...

9位:聖なる鹿殺し(監督:ヨルゴス・ランティモス)

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア 評価と感想/The不条理
どちらにしようかな天の神様の言う通り ☆5点 ヨルゴス・ランティモス監督による2017年の第70回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞作品。 主演にコリン・ファレル、ニコール・キッドマン、共演にバリー・ゴーガン 予告編 映画データ 本作は2018年3...

10位:バトル・オブ・ザ・セクシーズ(監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス)

バトル・オブ・ザ・セクシーズ 評価と感想/これは男女間のロッキーだ
実録路線的な面白さ ☆5点 1973年に当時29歳で女子テニス世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングと55歳で元男子テニス世界チャンピオンのボビー・リッグスによる“The Battle Of The Sexes”(性別間の戦い)と呼ばれた...

2017年に引き続き今年の洋画も豊作で絞るのに苦労しましたが、1位~4位までは順位通りで5位以下はほぼ横並びって感じです。

1位の『モード・ルイス』はなんでしょう、昨年の『ヒトラーへの285枚の葉書』みたいに、名もない夫婦の質素で慎ましやかな暮らしぶりを観てると心打たれて、完全に個人的な琴線ゾーンに入ってます(笑)
絵が素敵でカナダ大使館まで見に行っちゃいました。

https://www.canadainternational.gc.ca/japan-japon/events-evenements/maud-lewis.aspx?lang=jpn

2位の『ブリグズビー・ベア』は1位同様、鑑賞前に予告編も見たこと無く全くノーマークでしたが、設定の奇抜さから映画愛に繋がっていく物語が見事でしかもインディーズ映画ときてるんですから驚きました。
ソニー・ピクチャーズ・クラシックスが製作費を上回る500万ドルで配給権を獲得して、アメリカ版『カメラを止めるな!』とも言えると思いますが、カメ止めほどヒットしなかったのが不思議です。

3位は『グレイテスト・ショーマン』
感想はまだ未投稿ですが今年は同じタイプの映画で『ボヘミアン・ラプソディー』と『アリー/ スター誕生』があり、3作とも素晴らしかったんですが、クイーンは実話で楽曲を知ってる部分があるのと、アリーは『スタア誕生』のリメイクなので、グレイテスト・ショーマンを選びました。
とにかくレベッカ・ファーガソン(実際にはレベッカじゃないですけど)が歌う「ネバーイナフ」が聴いてるだけで涙出るタイプの曲で、ブリテンズ・ゴット・タレントでポール・ポッツが歌う「誰も寝てはならぬ」と同じでやられました。

4位の『ヘレディタリー/継承』は昨年末か今年初めに炎に包まれる短めの予告を見て、かなり怖いと評判になってるのは知ってました。
ただ今年公開されて同じように評判になっていてアメリカでは興収的にもヒットした『クワイエット・プレイス』と『死霊館のシスター』が案外だったので、あまり期待していませんでした。
タイトルもヘレディタリーという聞きなれない単語なので、公開されてもスルーするところでしたが、これは凄くて「21世紀のシャイニング」と言っていいと思います。
ジャック・ニコルソンが迷路のミニチュアを覗くシーンがありますが、本作の冒頭と同じですよね。

5位は『パディントン2』
子供から大人まで楽しめるエンタメ作品でありながらメッセージ性も高くて素晴らしかったんですが、このシリーズ、日本ではいまいちヒットしなくて残念です。
2016年の『パディントン』も☆5点付けてるんですが、2016年は『ズートピア』もあったのでベストテンには入れませんでしたが、両作とも見ていただきたいです。

6位の『君の名前で僕を呼んで』は2016年のマイ洋画ベストテン2位の『キャロル』に匹敵するラストショットで、ティモシー・シャラメがとにかく素晴らしかったです。

7位は『女は二度決断する』
テロ事件から始まり、中盤以降は重厚な法廷ドラマとなるので、そのまま進むのかと思いきや意外なラストにやられました。
カンヌで女優賞を受賞したダイアン・クルーガーの演技が見事でした。

8位は『ワンダー 君は太陽』
難病モノのお涙頂戴劇かと思ったら、複数の視点になる構成が見事で、誰の立場にも寄り添える優しい映画でした。

9位の『聖なる鹿殺し』は、言わんとしてるテーマなどは分かりませんでしたが、スクリーンの画面に惹きつけられる魅力がありました。
終始、不穏さを醸し出しているバリー・コーガンの演技が見事でした。

10位の『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』は、下にあげた作品と入れ替えてもよかったんですけど、この実話を知らなかったというのと、エマ・ストーンとスティーヴ・カレルが好きなので入れた感じです。

ベストテン以下では『キングスマン:ゴールデン・サークル』『マンハント』『BPM ビート・パー・ミニット』『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』『さよなら、僕のマンハッタン』『犬ヶ島』『判決、ふたつの希望』『ボヘミアン・ラプソディ』『パッドマン 5億人の女性を救った男』『アリー/スター誕生』などもよかったです。

2019年の公開作も楽しみなんですが、見たい作品が増えるばっかりで、感想を書く時間が取れなくて投稿が追い付かないのが悩みの種です(笑)

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