パワフルだった70年代 ☆3.5点
2012年に亡くなった映画監督・若松孝二を描いた作品で、1969年当時、ピンク映画で若者を熱狂させていた若松プロに入社した助監督の吉積めぐみを主人公に、彼女が亡くなる1971年までを描いた作品。
監督は若松プロ出身の白石和彌、主人公の吉積めぐみ役に門脇麦、若松孝二役に井浦新
予告編
映画データ
本作は2018年10月13日(土)公開で、全国31館での公開です。
2019年2月頃まで順次公開されて、最終的には48館での公開となるようです。
劇場での予告編は公開は無かった新宿ピカデリーで見た気がするんですが、若松プロをそんなに知らないんで面白そうとは思わなかったんですけど、白石和彌監督ですし、井浦新さんが若松孝二監督役ということで観に行ってみました。
『止められるか、俺たちを』散歩の達人にて白石和彌x井浦新
“新宿純喫茶、若松孝二がいた時代”
新宿ピカデリー横のジャズ喫茶DUGにて撮影、止め俺鑑賞後に寄るにはピッタリな昭和な場所です。#止め俺 #とめおれ pic.twitter.com/ilDRQZkLn0— 映画「止められるか、俺たちを」公式ツイッター (@tomerareruka) 2018年10月19日
監督は白石和彌さん
近作は『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』『サニー/32』『孤狼の血』を観てます。
主演に門脇麦さん
近作は『愛の渦』『闇金ウシジマくん Part2』『太陽』『二重生活』『彼らが本気で編むときは』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『花筐/HANAGATAMI』『サニー/32』『ここは退屈迎えに来て』を観てます。
主演に井浦新さん
近作は『さよなら渓谷』『ジ、エクストリーム、スキヤキ』『光(大森立嗣監督)』『ニワトリ★スター』『菊とギロチン』を観てます。
共演に山本浩司さん
近作は『ジョーカー・ゲーム』『野火』『AMY SAID エイミー・セッド』『あゝ、荒野 前篇/後篇』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
吉積めぐみ: 門脇麦
若松孝二: 井浦新
足立正生: 山本浩司
沖島勲: 岡部尚
大和屋竺: 大西信満
秋山道男(オバケ): タモト清嵐
小水一男(ガイラ): 毎熊克哉
高間賢治: 伊島空
福間健二: 外山将平
荒井晴彦: 藤原季節
斎藤博: 上川周作
中澤梓佐
ミキサー助手福ちゃん: 満島真之介
松田政男: 渋川清彦
赤塚不二夫: 音尾琢真
大島渚: 高岡蒼佑
吉澤健: 高良健吾
前田のママ: 寺島しのぶ
葛井欣士郎: 奥田瑛二
磯貝一: 柴田鷹雄
伊東英男: 西本竜樹
カプリコンマスター: 吉澤健
あらすじ
吉積めぐみ、21歳。
1969年春、新宿のフーテン仲間のオバケ(秋山道男)に誘われて、”若松プロダクション”の扉をたたいた。
当時、若者を熱狂させる映画を作りだしていた”若松プロダクション”
そこはピンク映画の旗手・若松孝二を中心とした新進気鋭の若者たちの巣窟であった。
小難しい理屈を並べ立てる映画監督の足立正生、冗談ばかり言いつつも全てをこなす助監督のガイラ(小水一男)、飄々とした助監督で脚本家の沖島勲、カメラマン志望の高間賢治、インテリ評論家気取りの助監督・荒井晴彦など、映画に魅せられた何者かの卵たちが次々と集まってきた。
撮影がある時もない時も事務所に集い、タバコを吸い、酒を飲み、ネタを探し、レコードを万引きし、街で女優をスカウトする。
撮影がはじまれば、助監督はなんでもやる。
現場で走り、怒鳴られ、時には役者もやる。
「映画を観るのと撮るのは、180度違う…」
めぐみは、若松孝二という存在、なによりも映画作りに魅了されていく。
しかし万引きの天才で、めぐみに助監督の全てを教えてくれたオバケも「エネルギーの貯金を使い果たした」と、若松プロを去っていった。
めぐみ自身も何を表現したいのか、何者になりたいのか、何も見つけられない自分への焦りと、全てから取り残されてしまうような言いようのない不安に駆られていく。
1971年5月カンヌ国際映画祭に招待された若松と足立は、そのままレバノンへ渡ると日本赤軍の重信房子らに合流し、撮影を敢行。
帰国後、映画『PFLP世界戦争宣言』の上映運動の為、若松プロには政治活動に熱心な若者たちが多く出入りするようになる。
いままでの雰囲気とは違う、入り込めない空気を感じるめぐみ。
ひとり映画館で若松孝二の映画を観ているめぐみ。
気付かない内に頬を伝う涙に戸惑う。
「やがては、監督……若松孝二にヤイバを突き付けないと…」(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
若松監督作品ってあんまり見たことなくて、自分が最初に見たのは『水のないプール』でした。
『水のないプール』を知るきっかけは、フジテレビのゴールデン洋画劇場でやっていた『十階のモスキート』をたまたま見たからで、当時、中学生くらいだったと思うんですが、内田裕也さんを知らなくて、「何で地味な顔の普通のおじさんが主演なんだろう?」と思いながら見てたんですけど、やっぱり中学生くらいですから中村れい子さんや風祭ゆきさんの濡れ場に惹きつけられて最後まで見たんですけど、ラストとかそれまで見た商業映画には無いパワーがあって面白いと思いました。
そしてその1年後くらいのゴールデン洋画劇場で、今度は『コミック雑誌なんかいらない!』をやってて見たんですけど、これがめちゃめちゃ面白くて、学校の映画好きな友達とマイブーム的な内田裕也(キナメリ)ブームが来たんですが、このときに『水のないプール(1982年)』と『十階のモスキート(1983年)』と『コミック雑誌なんかいらない!(1986年)』が内田裕也主演三部作と呼ばれてるのを知って『水のないプール』と若松監督の存在を知りました。
ただ『水のないプール』を見たのはそれから3~4年経ってからで、同じくフジテレビの深夜にやっていたミッドナイトアートシアターでこの三部作が内田裕也特集として放送され、見ることができました。
ミッドナイトアートシアターはCMが入らなかったのでこの3作はVHSに録画して何回も見ましたが、『水のないプール』で印象的だったのは中村れい子さんがふくはらぎを突っ張らせるシーンで、あのシーンはめちゃめちゃ興奮したんですが、当時は若松監督がピンク映画出身とは知りませんでした。
余談ですがここ数年、乃木坂46の白石麻衣さんが人気ですが、白石麻衣さんを初めて見たときは中村れい子さんを思い出して、「昔はあのレベルの(綺麗な)人が邦画で何度も脱いでて凄かったなぁ」なんて思ってた所でした。
そんな感じの初めましての若松作品『水のないプール』だったんですけど、その後は劇場で『エロティックな関係』を観た気がするんですが、内容はもう憶えてません。
そしてその後はずっと空いて、『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』と『キャタピラー』をレンタルで見ました。
なので若松作品は4作しか見てなくて、本作で登場する1969年の若松プロのピンク映画『女学生ゲリラ』と『処女ゲバゲバ』や脂が乗っていたであろう1970年代の作品は見たことがありません。
なので当時の若松プロについて全く知識が無いので語れないんですが、本作が製作される経緯は毎日新聞による白石監督へのインタビュー記事が詳しくて、映画の内容も掴めると思います。
また半年に亘り「若松孝二とその時代」と題して、関係者へのインタビューによる特集記事を組んでるようなので貼っておきます。
映画の雰囲気としては、今年3月に公開された『素敵なダイナマイトスキャンダル』も1970年代を描いてたんですが、本作も新宿が舞台でゴールデン街とか出てきて雰囲気が似ていて、70年代の時代背景とかサブカル界はパワーあったんだなぁと思いますし、エピソード自体が単純に面白かったです。
それとこの感想を書くのに調べてたら、まだ芸人になる前のビートたけしさんが、この頃の若松作品(『ゆけゆけ二度目の処女(1969年)』『新宿マッド(1970年)』)に出てたそうで、そんなところにまで繋がるのかと驚きました。
たけしさんが学生時代のバイト先の新宿のジャズ喫茶ビレッジ・バンガードで、連続ピストル射殺事件の永山則夫元死刑囚と同僚だったのは有名な話ですが、若松プロのガイラこと小水一男さんもそこで働いて、その縁でのようです。
その後たけしさんは1989年に『その男、凶暴につき』で映画監督デビューを飾るわけですが、その翌年の1990年に映画を初プロデュースして、監督・小水一男、主演・ビートたけしで『ほしをつぐもの』を公開してます。
なので北野映画の原点には若松プロもあるんですね。
自分が鑑賞した日は上映後に行定勲監督と本作のプロデューサーの大日方教史さんと白石監督の上映後トークがあったのですが、行定監督は一度だけ若松監督の『寝取られ宗介』の助監督についたことがあるそうです。
名前をなかなか覚えてもらえず「定松(さだまつ)」とか呼ばれてたと、劇中にも出てくる若松監督が名前を言い間違えるエピソードを披露してたんですが、元祖プッツン女優と呼ばれた藤谷美和子さん関するエピソードが面白かったです。
なんでも撮影の合間に土産物店みたいなところで頭につけるインディアンの羽飾りみたいのをみつけたらしく、それを気に入って頭に付けて出ると言ったらしいんですが、どう考えても次のシーンが繋がらないので困ったそうなんですが、言い出したら聞かないので若松監督も諦めてそのまま撮ったらしいんですが、出来上がったのを見たら以外とハマっててそういうところが若松監督のカラーみたいなことを言ってました。
また大日方さんの話だったと思うのですが、若松監督はプロデューサーも兼ねているのでお金にシビアで、撮影時間が過ぎそうになって出演者やスタッフに夜の食事を出さなければいけなくなりそうになると、台本では割ってあるカットをワンカットで撮ろうとしたり、残り15分で3シーン撮ったりして時間通りに終わらせて、そういうところも凄かったと言ってて面白かったです。
元々はヤクザの下働きをしてて、きちんと映画を勉強したことが無い若松監督が、三大映画祭に出品出来たり受賞しちゃったりして、映画って本当に面白いもんだなと思いました。
鑑賞データ
テアトル新宿 TCGメンバーズ ハッピーチューズデー 1000円
2018年 166作品目 累計147800円 1作品単価890円
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