これ原作面白いんですかね? ☆2点
2010年に講談社創業100周年記念「書き下ろし100冊」作品として刊行された芥川賞作家・中村文則の同名小説の映画化。
邪となるべく育てられた財閥の息子が自身の運命に立ち向かう姿を描く。
監督はアサヒスーパードライのCMや関ジャニ∞のMVを手掛ける中村哲平、主演は玉木宏、共演に新木優子、吉沢亮
予告編
映画データ
本作は2018年1月13日(土)公開で全国50館での公開です。
今後順次公開され最終的には全国60館での公開となるようです。
上映時間は138分とちょっと長めの映画です。
本作の予告編は映画館では全く見かけませんでしたが、ポスターが印象的で『アメリカン・サイコ』とか『悪の教典』をイメージして観に行きましたよ。
例によって例のごとく原作は未読ですが、アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」が選ぶ2013年ベストミステリーの10作のうちに選ばれたそうで弥が上にも期待値が上がります。
監督は中村哲平さん
初めましての監督さんです。
福山雅治さん出演のアサヒスーパードライのCMの演出を手掛けていたようです。
主演は玉木宏さん
『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』を劇場鑑賞スルーしたので映画館で出演作を見るのは初めてです。
共演に新木優子さん
近作は『聖の青春』『僕らのごはんは明日で待ってる』を観てます。
共演に吉沢亮さん
近作は『銀魂』『斉木楠雄のΨ難』を観てます。
共演に中村達也さん
近作は『野火』を観てます。
共演に光石研さん
近作は『共喰い』『闇金ウシジマくん Part2』『ジョーカー・ゲーム』『天空の蜂』『恋人たち』『無伴奏』『シン・ゴジラ』『彼女の人生は間違いじゃない』『南瓜とマヨネーズ』を観てます。
共演に柄本明さん
近作は『天空の蜂』『岸辺の旅』『人生の約束』『モヒカン故郷に帰る』『シン・ゴジラ』『後妻業の女』『サバイバルファミリー』『武曲 MUKOKU』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
久喜文宏/新谷弘一: 玉木宏
久喜香織: 新木優子
伊藤亮祐: 吉沢亮
久喜幹彦: 中村達也
探偵・榊原: 光石研
久喜捷三: 村井國夫
刑事・会田: 柄本明
整形外科医: 呉汝俊
佐藤: 尾上寛之
矢島孝之: 小林且弥
あらすじ
11歳の久喜文宏は、この世に災いをなす絶対的な悪=“邪”になるために創られたと父から告げられる。やがて、父が自分を完全な“邪”にするために、初恋の女性・香織に危害を加えようと企てていることを知り、父を殺害して失踪する。十数年後、文宏は顔を変え、“新谷弘一”という別人の仮面をつけ、香織を守るために殺人を繰り返していた。そして、文宏の過去を知る異母兄の幹彦や日本転覆を企むテロ組織が香織を狙い始めたと知った文宏は、ついに自身の背負わされた運命に立ち向かうことを決意するが――。
(公式サイトhttp://akutokamen.com/story/より引用)
ネタバレ感想
面白い映画って冒頭5分くらいで判断ついたりするんですが、本作の場合はどっちにも転びそうな感じでどうなるのかなぁと思って観てましたが結果つまらなかったですね。
映画のルック(映像)としては、銀塩写真というか黒っぽいというか昭和のフィルム映画みたいでいいかなと思ったんですが、音楽で盛り上げようとして常に劇伴がかかってるんですよね。
ちょっと劇伴の音も大きくてセリフにかかっちゃたりしてて、はっきり言って邪魔でした。
冒頭にも書きましたが『悪と仮面のルール』ってタイトルは面白そうじゃないですか。
ダーティーヒーロー的なものやピカレスク・ロマン的なもの、『アメリカン・サイコ』とか『悪の教典』みたいのを思い浮かべて期待してたんですけど、どうにも主人公が弱すぎるんです。
物語の舞台となる久喜家というのは第一次世界大戦の軍需産業で伸びた新興財閥みたいなんですけど、主人公・久喜文宏/新谷弘一(玉木宏)の父・久喜捷三(村井國夫)は2代目とか3代目になるのかな?
その久喜捷三が60歳を過ぎて、何人かいる妾のうちの1人に産ませたのが文宏なんですけど、邪の家系が必要だと言ってお前を悪に染めるって言うんです。
そのために文宏が14歳になったら地獄を見せるって言うんですが、どんな地獄を見せてくれるのかワクワクするじゃないですか。
文宏は養女の香織と一緒に暮らしてるんですけど、当然のように仲良くなって初恋の相手となります。
14歳の誕生日が近づいてくると、捷三は香織と3人で別荘に2か月ほど行くぞと言って、その間にお前も14歳になるなと意味深なことを言います。
直感的に香織が損なわれる(傷付けられる)と判断した文宏は、捷三が利用する秘密の地下室に閉じ込めて父を殺します。
捷三はたぶん文宏の母をはじめ、妾たちとその地下室で変態的なことをしてたんだと思うんですが、閉じ込められるとき文宏にどっちにしても邪になると言います。
捷三が死ななければ地獄を見せられますし、捷三を殺せばそのこと自体がトラウマとなって文宏を苦しめるという訳です。
文宏は父の言葉通り、以前とは同じように香織に向き合えなくなると、姿を消して海外に飛び、顔を変えて新谷弘一という人間になって日本に戻ってくるまでが映画のプロローグとなります。
うーむ、まずここまでで、地獄を見せると言ってたのに見せてくれなかったのにがっかりなんですが、父親を殺しちゃったんで仕方ありません。
ただその父殺しも閉じ込めて殺すだけですから、映画的には弱いと言いますか。
捷三が言ってる邪とは必要悪だと思うんですが、それって帝王学の一環な気がしますし、どうにもセリフが中二的といいますか、なんかノレませんでしたねぇ。
日本に戻ってきた弘一は、邪になるために他の兄弟よりも遺産を多くもらってたので、仕事もせずに悠々自適にタワマンで暮らしてます。
香織(新木優子)のことが気になる弘一は、香織のどんな情報でもいいと、父が使っていた探偵の榊原(光石研)に香織の調査を依頼すると、六本木でキャバ嬢やってるのが判明します。
文宏はもう弘一となってるので香織の前に現れるわけにもいかず見守る愛ですね。
榊原は部下をキャバ嬢として潜り込ませると、香織の情報をどんどん弘一に上げていきます。
榊原の情報によると香織の常連客に矢島孝之(小林且弥)という男がいて、この男が筋がよろしくなく香織の財産を狙ってるとのことでした。
久喜家から手当してもらった貯金3000万円とのことでしたが、何か「邪」とかスケールが大きいこと言ってるわりには金額少なくないですかね?
矢島はヤクも扱っているんで、いざとなれば香織をヤク漬けにしてでも目的を達成させるだろうとのことで、弘一は警戒されないよう矢島に近づくと薬物で矢島を殺します。
このあとは文宏/弘一に伊藤亮祐(吉沢亮)、久喜幹彦(中村達也)、刑事の会田(柄本明)と3人の男が関わってきて物語は進んでいきます。
伊藤亮祐は弘一を文宏だと思って接触してきた男で、文宏と同じように久喜家の親戚の中で邪の家系として育てられた人物でした。
亮祐は愉快犯的に世間を騒がしているテロ集団JLのメンバーで、活動資金及びあわよくば文宏をメンバーに引き入れるために接触してきたのでした。
弘一は最後の方まで亮祐に文宏だとは明かしませんでしたが、似たような境遇から付かず離れずな関係になります。
JLはネット上で繋がってる緩やかな組織で、リーダーもいなく、2ちゃん(5ちゃん)でいう鬼女板の実行部隊?みたいなものかと。
ただなんで亮祐がこれやってるのかはよく分かりませんでしたね。
久喜幹彦は捷三の次男で久喜グループを継いだ?男です。
(でも長男いるはずですよね?長男がグループを継いでるのかも。原作だと幹彦は軍需部門の会社を任されてるようです)
幹彦から会いたいと言われ、幹彦の部下に拉致されるようにして弘一は連れてこられますが、幹彦は弘一を文宏と見抜いてました。
久喜家が軍需産業で栄えたことは幹彦の口から語られ、文宏の邪が加われば百人力とのことで組まないかと誘われます。
あとで判明するのですが矢島を使って香織を損なおうとしていたのは幹彦でした。
幹彦によれば香織は捷三によって久喜家の生贄となるべく連れてこられた人物で、捷三がやろうとしたことをやろうとし、文宏に香織を連れてくるように言います。
文宏は香織を愛してるので当然のように躊躇しますが、幹彦にその気持ちは嘘だと言われ、お前も同じように香織を損ないたいと思ってるはずだと言われます。
幹彦は香織を損なう理由を滔々述べますが、はっきり言って中二的な感じで何言ってるか分かりませんでしたね。
脚本が脚本に酔ってるといいますか。
原作がそうなってるんでしょうかね?
ただ、ここでの演技は元・BLANKEY JET CITYの中村達也さんでなければ成立しなかったと思います。
中村さんが演じることでギリギリ成立してたと思います。
弘一は幹彦の目をごまかすため、結局は客として香織と会うことになるんですが、榊原を使って遠くから見守るなんて悶々としたことしてないで、最初から新谷弘一として出会ってしまえばいいのにと思ってしまいます。
幹彦とはその後も会って、狂気を帯びた幹彦が自分の首にナイフを押し当てると文宏に切れと言うのですが、チキンな文宏は出来なくて、代わりにここでの会話や幹彦の様々な悪事を告発する手筈になっていると伝え、亮祐から預かった簡易時限爆弾をセットして、止めたければ勝手にどうぞと部屋を出ていき、幹彦は止めずに爆死するっていう展開になります。
刑事の会田は、以前、女性が死んだ事件を追っていて、その容疑者と睨んだのが新谷弘一でした。
文宏はなんでそんな危なっかしい人物の戸籍を手に入れたのかは、映画内では明かされないので分かりません。
新谷は事件後、海外に飛んでいたようで久しぶりに会った会田は以前と雰囲気が違うと言います。
会田が新谷が戻ってきたと気づいたのは、矢島の事件を追ってたら周囲の防犯カメラに新谷が映っていたためでしたが、新谷と矢島には接点がなく矢島事件の犯人だとは思っていません。
結局、会田は女性死の事件の犯人として新谷を挙げることは出来ませんでしたが、矢島の事件以降、新谷を張っている中で、幹彦の死や捷三の死を知り、これらが香織を守るためだと考えれば合点がいって、「新谷弘一が久喜文宏であれば全て説明がつく」というところまで辿り着きますが、整形までは見抜けず、会田のパートは終了します。
ラストは弘一が、実は文宏の友人だと香織に明かして、文宏は結婚して元気にやってると適当な嘘をついて香織を安心させます。
そして弘一は香織のことが好きだったと告白しますが、結婚してるのでもう会わない方がいいと言って、また海外に旅立って行って映画は終わる感じです。
うーん、なんか全体的は雰囲気は『フローレンスは眠る』に近いかなぁ。
なんか設定はおおげさなんですけど、やってることはチマチマしてると言いますか。
結局は久喜家という一族の物語で、初恋の女性を愛し続けた話です。
『フローレンスは眠る』のときにも書きましたけど『天国への階段』っぽいと言いますか。
殺人を繰り返しているってありますが、直接的に手を下したのは矢島だけな気がしますし、ダーティーヒーローの雰囲気もピカレスク・ロマンの雰囲気も無かったです。
だいたいに於いて弘一は「金は幾らでも出すんで」が口癖で、探偵の榊原にお願いすることが多くて、何でもドラえもんを頼りにするのび太みたいな感じでした。
それでいて榊原が具体的に何をしているか(探偵のノウハウ)は描かないので、犯罪小説や探偵小説的な面白さもないんですよね。
香織のことが好きで悶々としてるのが描かれるだけで、文宏/弘一が香織を損なうというのは、きっと香織と肉体関係を結ぶということも含まれていると思うんですけど、それが出来ないもどかしさ、って「中二かよっ」ってツッコミを入れたくなる、どこまでも中二が付いて回る映画でした。
でも14歳(中二)になったら地獄を見せるってこのことか!
お前にはいつまでも中二が付いて回るっていう。
おあとがよろしいようで(誤用)
鑑賞データ
新宿バルト9 夕方割 1300円
2018年 12作品目 累計5700円 1作品単価475円
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