映像的紙芝居とか浄瑠璃とか ☆5点
1937年に発表された檀一雄の処女作品集「花筐」を原作に、大林宣彦監督がデビュー作『HOUSE ハウス』以前に書き上げていた脚本を40年の時を経て映画化。主演は窪塚俊介、共演に満島真之介、長塚圭史、常盤貴子、矢作穂香、柄本時生、門脇麦、山崎紘菜
予告編
映画データ
本作は2017年12月16日(土)公開で全国7館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には46館での公開となるようです。
東京での公開も現在は有楽町スバル座だけなので、劇場で予告編を目にしたことが無く、どういう内容か分からない中での鑑賞です。
監督は大林宣彦さん
巨匠ですが自分の中では尾道三部作で止まってる感じです。
作品を見たのは『異人たちとの夏』が最後ですかね。
2000年代に入ってからは全く見てないです。
『理由』は原作読んでたんですけど、大林監督が映画化されてたのも知らなかったです。
主演は窪塚俊介さん
窪塚洋介さんの弟ですね。
映画は見たことありません。
共演に満島真之介さん
満島ひかりさんの弟ですね。
近作は『オーバー・フェンス』『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~(声の出演)』『無限の住人』『忍びの国』『散歩する侵略者』『三度目の殺人』『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY ―リミット・オブ・スリーピング ビューティ―』を観てます。
2017年は大活躍ですね。
共演は長塚圭史さん
長塚京三さんの息子さんで常盤貴子さんの旦那さんです。
舞台がメインで映画出演は少ないようで作品は見てません。
共演に常盤貴子さん
長塚圭史さんの奥さんです。
映画館で観たのは『20世紀少年』三部作以来です。
共演に柄本時生さん
柄本明さんの息子さんです。
近作は『愛の渦』『超高速!参勤交代 リターンズ』『聖の青春』『彼女の人生は間違いじゃない』を観てます。
共演に門脇麦さん
近作は『愛の渦』『闇金ウシジマくん Part2』『太陽』『二重生活』『彼らが本気で編むときは』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を観てます。
共演に山崎紘菜さん
東宝以外にも出るんだと思いましたが、大林映画常連なんですね。
近作は『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』を観てます。
共演に矢作穂香さん
フジテレビの深夜ドラマ「イタズラなKiss2〜Love in TOKYO」で見てました。
映画は初めてです。
他に共演と配役は以下の通りです。
榊山俊彦: 窪塚俊介
鵜飼: 満島真之介
吉良: 長塚圭史
阿蘇: 柄本時生
江馬美那: 矢作穂香
あきね: 山崎紘菜
千歳: 門脇麦
江馬圭子: 常盤貴子
山内教授: 村田雄浩
一条医師: 武田鉄矢
江馬家の婆や: 入江若葉
俊彦の父: 南原清隆
俊彦の母: 小野ゆり子
江馬圭子の夫・良: 岡本太陽
吉良の下宿の老婆: 豊田邦子
糸島の父: 原雄一郎
娼家の女: 根岸季衣
娼婦: 池畑慎之介
憲兵: 細山田隆人
憲兵を恋する少女: 白井美海
出征する女形: 大川竜之助
女形を送る長老: 大塚康泰
文士: 片岡鶴太郎
山内の母: 白石加代子
あきねの父: 高嶋政宏
あきねの兄: 原雄次郎
唐津くんちのおじいさん: 品川徹
老いたる俊彦: 伊藤孝雄
あらすじ
1941年の春、アムステルダムに住む両親の元を離れ、佐賀県唐津に暮らす叔母(常盤貴子)の元に身を寄せることになった17歳の榊山俊彦(窪塚俊介)の新学期は、アポロ神のように雄々しい鵜飼(満島真之介)、虚無僧のような吉良(長塚圭史)、お調子者の阿蘇(柄本時生)ら学友を得て“勇気を試す冒険”に興じる日々。肺病を患う従妹の美那(矢作穂香)に恋心を抱きながらも、女友達のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)と“不良”なる青春を謳歌している。しかし、我が「生」を自分の意志で生きようとする彼らの純粋で自由な荒ぶる青春のときは儚く、いつしか戦争の渦に飲み込まれてゆく。「殺されないぞ、戦争なんかに!」・・・俊彦はひとり、仲間たちの間を浮き草のように漂いながら、自らの魂に火をつけようとするが……。
(公式サイトhttp://hanagatami-movie.jp/より引用)
ネタバレ感想
冒頭からCGの桜が舞い散る教室、デフォルメされた映像はフルカラーの『シン・シティ』のようです。
紙芝居のようにスライドするシーン転換も独特で、能の曲目にも「花筐」というのがあるそうですが、能とか浄瑠璃とかそういう様式美も感じました。
各キャラクターもデフォルメされてて
・榊山俊彦役 窪塚俊介(1981年生)
・鵜飼役 満島真之介(1989年生)
・吉良役 長塚圭史(1975年生)
・阿蘇役 柄本時生(1989年生)
が同じ17歳の高校生役というのですから最初は戸惑いますが、観てるうちにそんなことが気にならないくらいデフォルメされた世界に没入されていきます。
物語は1941年の春から、毎年11月に行われる唐津くんちを描いて、1941年12月8日の真珠湾攻撃までの約8か月間の出来事です。
17歳の高校生たちが、「日本は本当に戦争に突入するのか?」と不安にかられながらも、それぞれの恋と友情や悩みと、青春を謳歌する様子が描かれます。
7人の少年少女のうち、吉良、阿蘇、美那と体の弱い者が3人おり、彼らには常に死のイメージがつきまといます。
それと共に戦争が迫りくる中、戦力にならないことを自覚してる彼らは、自ら非国民のレッテルを貼り悩むことになります。
阿蘇は兄弟が徴兵され、農業を営む実家の働き手がいなくなったため、実家に戻ることになり物語の途中でいなくなります。
吉良と千歳は馬渡島から渡ってきたいとこ同士で、千歳の実家は料亭ですがどうやら養子のようで、ふと気づくと一人になってしまうことがよくあり「寒い、寒いよ」と言ってます。
千歳が自信家の鵜飼と付き合ってることも彼女を不安にさせています。
俊彦は自分に無いものを持っている鵜飼と吉良に尊敬の念を抱いており、彼らの間の緩衝材的役割でもあります。
俊彦は当初、従妹の美那に惹かれましたがキスを拒否されたこともあって、豆腐屋の娘で屈託がなく明るいあきねに惹かれるようになります。
美那は圭子の満州で戦死した夫の妹で、病弱のため家の外に出られませんが、アポロ神のように例える俊彦の話を聞いて鵜飼に興味を持ちます。
吉良は病弱のため歩けるようになったのは4年前で、馬渡島にいたときは千歳が吉良の布団に潜って遊ぶということをよくしていました。
今は千歳のカメラの師匠でもあり千歳は美那をモデルに写真を撮っています。
吉良は同じように病弱である美那に恋心を抱きますが、屈折してる吉良は千歳を利用して美那の裸の写真を手に入れます。
鵜飼は圭子にも心惹かれ積極的にアプローチしながらも、美那とキスを交わしたりします。
鵜飼はマッチョの強いイメージで俊彦の羨望を集めますが、自身は左利きのため徴兵されても役に立たないことを自覚していて、戦死した兄のように立派にはなれないと考えています。
物語はこれら各人の思いが交錯しながら、容体が悪化してきた美那の思い出作りのために12月8日に開かれるパーティーを迎えることになります。
美那はパーティー終了後、眠るように息を引き取り、吉良は俊彦に美那の裸の写真を撮った事実を打ち明けると崖から海に身を投げ、鵜飼は俊彦から言われていた「鵜飼君なら飛べる」という断崖絶壁から飛び込むと、76年後(2017年)に飛び、現在の俊彦が当時を回顧して映画は終わります。
映画は吉良と千歳の近親相姦的イメージがあったり、圭子と美那、俊彦と鵜飼の同性愛的イメージがあったりと、台詞の量も多いですがイメージで魅せるシーンも多かったです。
頻繁に上半身裸になる鵜飼や、白いハチマキに唇にルージュをひいた女子たちがキスして日の丸を作ったりと、三島由紀夫っぽいなと思いましたが、公式サイトの解説を見たら三島が小説家を志すきっかけになった小説なんですね。
「映画化するのは終生の夢であった」・・・大林宣彦
世界的カルト映画にして大林宣彦監督のデビュー作『HOUSE/ハウス』(77)より以前に書き上げられていた幻の脚本が40年の時を経て奇蹟の映画化。自分の命さえ自由にならない太平洋戦争勃発前夜を生きる若者たちを主軸に、心が火傷するような凄まじき青春群像劇を、圧倒的な映像力で描く。原作は三島由紀夫がこの一冊を読み小説家を志したという檀一雄の純文学「花筐」。尾道三部作をはじめ数多くの“古里映画”を撮り続けてきた大林宣彦が選んだ佐賀県唐津市を舞台に、唐津の魂「唐津くんち」が映画史上初の全面協力。窪塚俊介主演、満島真之介、長塚圭史、常盤貴子ほか。『この空の花』『野のなななのか』に続く本作は、余命宣告を受けながら完成させた大林宣彦的 “戦争三部作”の締めを飾る魂の集大成である。
本作は2015年の塚本晋也監督作『野火』と2016年の片渕須直監督作『この世界の片隅に』の系譜に連なってくる作品だと思いました。
本作を観てて思ったのは、戦争が忍び寄っている不確かな空気感が、今と非常に似てるなと思いました。
アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エンドレス・ポエトリー』もまだ見に行けてないんですが、大林監督、この年齢にしてこの情熱はホドロフスキー監督といい勝負だと思います。
公開から2週間経って観に行ったため、年が変わってしまいましたが、本来なら2017年の邦画のベストテンに入ってきそうな映画なので、2018年の邦画での候補に考えたいと思います。
鑑賞データ
有楽町スバル座 映画サービスデー 1100円
2018年 1作品目 累計1100円 1作品単価1100円
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