コーヒーが冷めないうちに 評価と感想/そんなに泣けません

コーヒーが冷めないうちに 評価と感想
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限定シチュエーションタイムリープ ☆3.5点

2012年で活動を停止した劇団音速かたつむりの脚本家兼演出家の川口俊和が、2010年に演劇ワークショップ用の戯曲として完成させた台本を元に2015年に小説化され、2017年の本屋大賞にノミネートされた原作の映画化。
監督は映画初作品となる塚原あゆ子、主演は有村架純、共演に伊藤健太郎、深水元基、石田ゆり子

予告編

映画データ

http://cinema.pia.co.jp/title/175512/

本作は2018年9月21日(金)公開で、全国305館での公開です。
東宝配給のTBS映画です。

劇場での予告編はよく目にしましたね。
立ち位置としては、たぶん去年の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』みたいな映画なんだろうな、と思いまして、そんなに惹かれなかったんですけど、「4回泣けます」というキャッチコピーで煽ってきたので、一応念のため観に行ってみました。

毎度のごとく原作は未読です。

『コーヒーが冷めないうちに』泣ける小説のあらすじや結末をネタバレ解説!
路地裏にひっそりと佇んでいる小さな喫茶店を舞台にしたタイムトリップ物語は、多くの人に感動をもたらしました。4回泣けるという帯の宣伝通り、泣けるポイントの多い本作のあらすじなどを、ネタバレとともに解説いたします。

監督は塚原あゆ子さん
映画は初監督ですがTBSドラマの演出でよく名前を見かける方で、最近だと「重版出来!」とか「アンナチュラル」が面白くて、自分の中では打率の高いディレクターさんです。
TBSの社員ディレクターかと思ってたんですが、TBS子会社のドリマックス・テレビジョンの所属で他局のドラマもたまに演出するときがあるようです。

主演は有村架純さん
近作は『アイアムアヒーロー』『何者』『3月のライオン前編後編』『関ヶ原』『ナラタージュ』を観てます。

共演に伊藤健太郎さん
以前まで健太郎だったんですけど、2018年6月30日の21歳の誕生日を機会に、芸名を本名の伊藤健太郎にしたそうです。
近作は『俺物語!!』『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』『サクラダリセット 前篇後篇』『犬猿』を観てます。

共演に深水元基さん
近作は『TOKYO TRIBE』『新宿スワン』『新宿スワンⅡ』『曇天に笑う』を観てます。

共演に吉田羊さん
近作は『脳内ポイズンベリー』『SCOOP!』『グッドモーニングショー』『ボクの妻と結婚してください。』『恋は雨上がりのように』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

時田数: 有村架純
新谷亮介: 伊藤健太郎
清川二美子: 波瑠
賀田多五郎: 林遣都
時田流: 深水元基
平井久美: 松本若菜
高竹佳代: 薬師丸ひろ子
平井八絵子: 吉田羊
房木康徳: 松重豊
謎の女: 石田ゆり子

あらすじ

時田数(有村架純)が従兄(いとこ)で店主の時田流(深水元基)と切り盛りする、とある街のとある喫茶店「フニクリフニクラ」。
そこには、不思議な都市伝説があった。
それは店内の【ある席】に座ると、望んだとおりの時間に戻ることができるというもの。
ただし、そこにはめんどくさい……非常に面倒くさいいくつかのルールがあった。

1. 過去に戻って、どんな事をしても、現実は変わらない。
2. 過去に戻っても、喫茶店を出る事はできない。
3. 過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ。コーヒーが冷めないうちに飲み干さなければならない。
4. 過去に戻れる席には先客がいる。席に座れるのは、その先客が席を立った時だけ。
5. 過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない人には会う事ができない。

「ここに来れば過去に戻れるってほんとうですか?」
今日も不思議な噂を聞いた客がこの喫茶店に訪れる。

アメリカに行ってしまった幼馴染の賀田多五郎(林遣都)とケンカ別れをしてしまった三十路直前の独身キャリアウーマン清川二美子(波瑠)。

若年性アルツハイマーに侵された妻・高竹佳代(薬師丸ひろ子)と、そんな高竹を優しく見守る夫・房木康徳(松重豊)。

故郷の妹(松本若菜)を裏切って、一人スナックを営む喫茶店の常連客・平井八絵子(吉田羊)。

数に次第に惹かれていく常連客の大学生・新谷亮介(伊藤健太郎)。

過去に戻れるという【ある席】にいつも座っている謎の女(石田ゆり子)……。

どんなことをしても現実は決して変わらない。それでも過去に戻り、会いたかった人との再会を望む客たち。
そこで彼らを待っていたものとは?そして、主人公・時田数に隠された真実とは?

(公式サイトhttp://coffee-movie.jp/story/index.htmlより引用)

ネタバレ感想

予備知識としては劇場で見た予告編だけだったんですが、「4回泣けます」のキャッチコピーがあったので4話のオムニバスなんだろうな、と思いましたがまさしくその通りでした。

1話目の波留さん演じる清川二美子のエピソードで、清川にタイムリープに関する細かいルールを説明して観客にも理解してもらう方式で、清川の理解=観客の理解という図式です。

1話目の話はアメリカに行ってしまった幼馴染に思いを告げてやり直したいってことで、一週間前のアメリカに行く前に戻るんですが、過去に戻っても現在は変えられません。
清川は実際にそれを体験することで認識して、いつまでも過去にすがっても仕方ないと考えられるようになり、思いを告げるために自分がニューヨークに行く決断をするっていう話で、まだ1話目なのでボクシングに例えればジャブみたいな話なんですが、この話で泣ける人がいるんでしょうか?(笑)
少なくとも「3回泣けます」にしないと看板に偽りありです。

1話目でタイムリープに関する細かいルールが分かったので、ジャンルとしてはソリッドシチュエーションスリラーならぬ限定シチュエーションタイムリープ(勝手に作った造語)だと思います。
またこの設定だと、お話としてはかなりこじんまりしたものになると想像できます。

泣けるとしたら2話ですかね。
松重豊さんの泣き顔にやられると思います。

松重さん演じる房木康徳の妻・高竹佳代(薬師丸ひろ子)は若年性アルツハイマーで日がな一日フニクリフニクラにいます。
苗字が違うのは佳代が房木のことを夫と認識してなく、房木の前で夫との思い出話を佳代が楽しそうにするため、房木は佳代を混乱させてはいけないと思い、介護の資格を取って苗字を変えて他人を演じて佳代には介護士として接してて、それが房木の妻に対する優しさでした。

ただ、佳代はいつも大事そうに夫宛の手紙を抱えていて房木も気になっていましたが、夫と認識されていないため読むことができません。
房木はそれほど過去に行くことにこだわりを見せていませんでしたが、たまたま席が空くと数に勧められて過去に行くことになります。

房木は過去に戻るとまだ病気が進行する前の佳代と話せて、久々に夫婦としての楽しい時間を過ごします。
そしてその際に佳代が抱えていた封筒を渡され、内容を知ることが出来ます。

手紙には病気が進行して夫のことを忘れてしまうかもしれないことが書かれていましたが、そのときには自分が夫だと言って欲しい、というようなことが書かれていました。

妻の思いを知った房木は涙し、他人(介護士)のフリはやめて佳代と正面から向き合うという決断をするのが第2話の話でして、いい話でしたけど自分は泣くまでには至りませんでした。

3話目は1話目からお店にいる吉田羊さん演じる常連客の平井八絵子の話です。
1話目と2話目でしょっちゅうお店にいるので何してる人なのかな?と思ったんですが、フニクリフニクラの近くでスナックをやっているママさんでした。

吉田羊さんがやってるスナックなら行きたいぞ!と思いましたが、そういう話ではありません。

八絵子には松本若菜さん演じる久美という妹がいて、時々、地方から姉を訪ねてくるんですが、八絵子はフニクリフニクラなんかに居るときに妹が訪ねてくると厨房に隠れて会いません。
そして、そのやり取りは定番化してきてるみたいなんですが、その日の久美はお姉ちゃんに渡して下さいと言って、数に手紙を渡して帰っていきます。

そんなある日、数は毎日のように店に入り浸っている八絵子が数日顔を見せないのに気づきます。
数が従兄弟で店主である時田流に聞くと、実家で不幸があって帰省していると聞かされますが、そんな話をしてると「いやー、参った」と言って、無理に明るく振る舞う八絵子が帰ってきます。

実は妹の久美が前回来て帰る際に、交通事故に遭って帰らぬ人となっていたのでした。
数は久美から預かっていて八絵子が受け取らなかった手紙を改めて渡すと、翌日、八絵子がお店に来て過去に戻りたいと言います。
数がコーヒーを淹れると八絵子が過去に戻り、久美が頻繁に姉を訪ねて来ていた理由が分かります。

八絵子は地方の老舗旅館の長女で両親も跡継ぎにしようとしていましたが、両親と折り合いが悪く若い頃に反発して実家を飛び出し、気づいたら現在はこの街でスナックを経営していました。
実家の旅館は妹の久美が両親と切り盛りしていましたが、久美は姉の方が(サービス業に)適性があると思っていて、両親と仲直りして旅館の経営に携わって欲しいと、説得するために頻繁に姉の元へ訪れていましたが、ずっと会えずじまいでした。

八絵子は最後まで妹に会わなかったことを後悔しての過去行きで、久美から「お姉ちゃんと一緒に旅館をやりたい」の言葉を聞くと、事故の日は絶対に外に出ちゃいけないとアドバイスして現在に戻りますが、もちろん現実は変わりませんでした。

八絵子は久美の遺志を継いで実家に戻ると、持ち前の器量を生かして新しい女将を務めるのでした。

4話目は、1話目から過去に戻れる席に先客として居る石田ゆり子さん演じる謎の女の話です。

1話目からは伊藤健太郎さん演じる大学生の新谷亮介がフニクリフニクラの都市伝説を聞いて、自身も体験しようとお店にやってきますが、謎の女が座ってるせいで席がなかなか空かなかったり、細かいルールだったり、他の人が過去に戻るのを見て、自身で体験するのはやめて常連客になります。

特に亮介が過去に戻ろうとするのをやめたのは、常連としてお店に通ううちに、「もし、コーヒーが冷めないうちに飲みきれなかったらどうなるの?」という疑問が湧いて数に聞いたことで、数からは謎の女を指差されます。
謎の女は過去に行ったときコーヒーを飲み干さないで戻れなくなっていて、それ以来幽霊のように現在に留まっていて、トイレで席を立つ以外はずっと過去に戻れる席に座っているのでした。

亮介はフニクリフニクラに通い続けるうちに、年齢が近いこともあって数と仲良くなり、やがて付き合うようになります。

亮介はある日、朝早くにフニクリフニクラに行くと、数はまだ出勤してなく、流と2人になります。
付き合って間がなく、まだ数のことをよく知らなかった亮介は、そういえばという感じで、流に数の母親のことを聞きます。
すると流は「あー、まだ聞かされてなかったか」と言って、数の母親のことを話してくれます。

数の母親は謎の女で時田要という名前でした。
流によると、コーヒーを淹れて過去に戻れるのは代々、時田家の女性だけに備わる能力で、子供の頃の数が初めてコーヒーを淹れた相手が母親の要でした。
当時、要は数の父親である夫を亡くしたばかりで、数はお母さんがお父さんに会いに行ったまま戻ってこなくなってしまったと思い、自分が母にコーヒーを淹れたことを悔やんでいました。

亮介はそんな数の思いを知ると、月日は流れ2人は結婚し、やがて数のお腹の中に赤ちゃんを授かります。
亮介は素直に喜びますが、数はまだ相変わらず幽霊のように居る要のこともあり、自分だけが幸せになっていいのかと素直に喜べないようでした。

数のそんな様子を見て心配した亮介と流が思案してると、流が「数が過去に行って、要さんと会って話せればそれが一番いいんだけど、コーヒーを淹れられるのは数だけだから、それは無理だしな」と言います。

お腹の中の子、流のこの言葉で、だいたいの観客はピンとくると思うんですが、亮介もピンとくると、明日お店のオープン前の朝8時に来てと流に言います。

翌朝8時、亮介は数を伴ってお店に現れると過去に戻れる席に数を座らせます。
すると元気な女子中学生(山田望叶)が現れて、数にコーヒーを淹れながら「ミキです。未来と書いてミキです!」という『未来のミライ』と丸かぶりな展開になるのでここは必見です。

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説明するの野暮だと思うんですが、生まれてくる子が女の子なんで、亮介が10数年後に数が未来にコーヒーを淹れて、未来を過去に送り込んでくる作戦を思い付くんですな(なんか『ターミネーター2』みたいだ)

そして未来が数にコーヒーを淹れて過去に行かせるという、二段階下町ロケットみたいな作戦です。

数が要に会いに行くと、要は夫に会いに行ったんじゃないと分かります。
この頃、要にも病気が見つかって3か月の余命宣告を受けていて、1人残される数を不憫に思って未来の数に会いに行って戻れなくなったのが真相でした(細かいルールのことは分からないので各々みなさん考えて下さいね←完全に他力本願)。

母親と離れがたい数はコーヒーが冷めそうになりますが、要にずっと見守ってると言われるとコーヒーを飲み干して現在に戻ります。

無事戻ってきた数はその後出産し、生まれてきた女の子に「未来」と付けるところまでを懇切丁寧に描いて映画は終わります。

うーん、正直、自分は1回も泣けなかったんですけど、泣ける人もいるでしょうから、キャチコピーは

「最低1回は泣けます」

くらいにしといた方がよかったかなと思います。
ほら、謙虚さって大事じゃないですか。
これだと看板に偽りなさそうですし。

映画は安定のタイムリープものなので、つまらなくは無いですが、まぁテレビでもいいかなという気はします。

個人的には「吉田羊さんのスナック行きたい!」という思いだけが残った映画で、120分スナックのママ役の吉田羊さんの映画が観たいと思いました。

♪ゆこう、ゆこう、羊さんのスナックへ、フニクリフニクラァァァ~

鑑賞データ

新宿バルト9 夕方割 1300円
2018年 157作品目 累計136400円 1作品単価869円

コメント

  1. カモノハシ より:

    この間観ました。ツッコミどころも多くそこまで泣けずにモヤモヤしていました。「最低1回は泣けます」のフレーズに爆笑し、共感しすぎて頷きが止められず首がもげそうです。楽しい記事をありがとうございます。

    • eigamanzai より:

      カモノハシさん、コメントありがとうございます。
      拙ブログ読んで笑って頂けたとのこと嬉しい限りです。
      首がもげそうとのことでそれは大変ですので、そこはひとつしっかりと接着して頂いて(笑)、また映画を鑑賞した際には拙ブログまで辿り着いて頂けたら幸いです。