かごの中の瞳 評価と感想/優位性を失った男の末路

かごの中の瞳 評価と感想
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カメラがよかったと思います ☆3.5点

『007 慰めの報酬 』や『ワールド・ウォーZ』のドイツ人監督マーク・フォースターによるオリジナル脚本(ショーン・コンウェイとの共同脚本)のラブサスペンス。
タイのバンコクで暮らす1組の夫婦で幼少時に視力を失った妻が角膜移植により視力を取り戻したことから、保たれていた夫婦のバランスが崩れていく様を描いた作品。
主演の妻役にブレイク・ライヴリー、夫役にジェイソン・クラーク

予告編

映画データ

http://cinema.pia.co.jp/title/176350/

本作は2018年9月28日(金)公開で、全国9館での公開です。
今後順次公開されて、最終的に30館程度での公開となるようです。

劇場での予告編はTOHOシネマズシャンテに行くたびに目にしてて、昨年観た『ノクターナル・アニマルズ』っぽい雰囲気がして面白そうと思い観に行ってきました。

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監督はマーク・フォースター
監督作は公開中の『プーと大人になった僕』で初めて観ました。
本作はアメリカでの公開は2017年10月27日(金)とほぼ1年前なので、プーさんの方が最新作なんですが日本での公開順は逆になりました。

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主演にブレイク・ライヴリー
近作は『ロスト・バケーション』『カフェ・ソサエティ』を観てます。

主演にジェイソン・クラーク
近作は『チャイルド44 森に消えた子供たち』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』『エベレスト 3D』『聖杯たちの騎士』『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

ジーナ: ブレイク・ライヴリー
ジェームズ: ジェイソン・クラーク
カーラ: アーナ・オライリー
カレン: イヴォンヌ・ストラホフスキー
ダニエル: ウェス・チャサム
ヒューズ医師: ダニー・ヒューストン

あらすじ

タイのバンコクに暮らすジーナ(ブレイク・ライヴリー)はその日、いつになく緊張していた。子供の頃に両親の命を奪った交通事故で視力を失ったのだが、評判の高いヒューズ医師(ダニー・ヒューストン)の診察を受けることになったのだ。保険会社に勤める夫のジェームズ(ジェイソン・クラーク)に優しく付き添われ、ジーナは何とか辛い検査に耐えるのだった。ヒューズは、「角膜の移植手術で、右目の視力は0.4まで回復すると診断する。「ステキ」と微笑むジーナに、「ステキどころじゃない。最高のニュースだ」とジェームズは歓喜する。
一方で、待望の赤ちゃんが今月も授からなかったと知った2人は落ち込むが、その夜、角膜提供の順番待ちにキャンセルが出て、急遽ジーナの手術が決まる。翌日、眼帯を取ったジーナの瞳には、まだぼんやりとだったが、初めて見るジェームズが映っていた。感激に涙するジーナだったが、夫の姿は想像とは違っていたのも事実だった。

2種類の目薬を渡され、退院するジーナ。「何が見たい?」という問いかけに「色が見たい」と答えたジーナを、ジェームズは生花市場へと連れて行く。色の洪水に満面の笑顔を浮かべたジーナだったが、初めて見る自分たちの部屋に、やはり「想像と違った」と失望を隠せないでいた。
そんなジーナに、ジェームズからサプライズプレゼントが贈られる。新婚旅行で訪れた南スペインを再訪し、そこからバルセロナで暮らすジーナの姉のカーラ(アナ・オライリー)に会いに行こうというのだ。だが、幸せなはずの“2度目の新婚旅行”で、ふとしたことから気持ちがすれ違う2人。今まで何ごともすべてジェームズに従ってきたジーナが、自己主張し始めたのが原因だった。

久しぶりに会うカーラと彼女の夫のラモンに歓迎され、夜の街へと繰り出すことになる4人。ジーナはカーラから美しくメイクを施され、彼女のセクシーなドレスを借りる。かつて見たことのない艶やかなジーナにジェームズは、まさにラモンの言う通り、“ジーナが見えるようになって目移りが心配”という想いに引き裂かれるのだった。
帰国後、ジーナの変貌が加速していく。髪をブロンドに染め、ジェームズが買い与えた地味な服を捨てて派手なファッションに身を包み、「引っ越したい」と高級な物件を探す。生まれ変わったように、毎日を楽しむジーナとは正反対に、ジェームズは失意のなかにいた。

ジーナの輝きが増すにつれて、ジェームズの嫉妬も激しくなっていく。やがてジーナは、同じプールに通っているダニエル(ウェス・チャサム)と公園で偶然会い、親しくなる。そんな中、突然ジーナの視界が再び閉ざされていく・・・。
思わぬ裏切りに出た2人が招いてしまった〈衝撃の結末〉とは——?

(公式サイトhttp://www.kagonaka.jp/より引用)

ネタバレ感想

最初の方に書いたように、アメリカでの公開は約1年前なんですけど、ロッテントマトとかの評価を見るとめちゃめちゃ低くてトマトメーターが28%、オーディエンススコアが32%くらいで、ボックスオフィスの興収も21万ドルくらいしかいってないんですけど、個人的にはプーさんよりかは面白かったです。

ただお話としてはやや不親切で、この夫婦がなぜバンコクで暮らしてるのか?とか、バンコクに来てどれくらいなのか?、結婚してどれくらいなのか?、ジーナはいつから目が見えないのか?、そもそもこの夫婦の馴れ初めは?などといったことには詳しい説明がありません。
中には話が進んでいく内に追い追い分かることもありますが、基本的には説明されず映像で魅せる感じの作品です。

序盤は妻のジーナの視力が無いので、ジーナの脳内のイメージ映像だったり、ジーナの視力が回復するとぼんやり段々と見える映像だったり、揺らめくようなカメラやアップが多用されていて叙情的な雰囲気を醸し出しているのですが、カメラは結構よかった気がします。

撮影監督はマティアス・コーニッグスウィッサーという方でプーさんでも撮影監督を務めてるのですが、プーさんでも100エーカーの森で立ち込める霧の雰囲気とか、幻想的な感じは上手いなと思いました。
ただプーさんの時には、作品全体が暗い感じになってしまっていたので、明るいイメージを持つプーさんという作品には合っていない気がしましたが、こういう作品だと合ってる気がしました。

肝心のストーリーの方は単純で、目が見えないときは文字通り盲目的に純粋に夫を愛し頼るしかなかった妻が、目が見えるようになると夫の粗が見えてきて夫婦に亀裂が走るっていう話です。

ただ本作の場合、夫ジェームズに難ありです。
ジェームズにとってジーナは、目が見えない以外美人なので自慢なんですが、ジーナが目が見えるようになって化粧などでどんどん綺麗になっていくと、他の男と喋ってるだけで嫉妬します。
原題は「All I See Is You」で邦題は「かごの中の瞳」ですが、まさに「籠の中の鳥」状態のジーナを愛していてソクバッキー男です。

ジェームズは序盤、まだ目が見えない状態のジーナをクラブに連れて行きトイレに行くシーンがあるのですが、知らない人に囲まれて戸惑っているジーナをすぐに助けず暫く眺めてるシーンがあります。
ジーナが困りきったところで手を差し伸べるんですが、「自分にはジェームズがいないと」と思わせて依存させる手段で、きっと付き合い初めの頃から、こんなことやってるんだと思います。

また夫婦は子供が欲しくて子作りに励んでいるのですが、妊娠の兆候が全く無く、序盤はジーナの方に問題があるように見せていて、ジェームズは「目が見えない」「子が出来ない」という二重苦をジーナに背負わせて引け目を感じさせているんですが、これも話が進むうちにジェームズの方に問題があるのが分かります。

ジェームズはジーナに内緒で精液検査を受けていて、自分が無精子症で妊娠させる確率がかなり低いと分かってもジーナに打ち明けません。
この頃にはジーナの目は見えるようになっていましたが、あくまで自分を優位に立たせようとする姑息な男として描かれていました。

最初にも書きましたが、映画を順を追って観ていると、ジーナがいつから見えないのか?とか、ジェームズと知り合ったときは見えていたのか?とか分からないのですが、スペイン旅行に行くとジーナの過去が見えてきます。

ジーナは幼い頃に交通事故で両親を亡くしていて、自身もそのときの怪我で失明しています。
なのでジェームズと知り合ったときも目が見えてなかったわけですが、旅行に行く前、目が見えるようになったとき、住んでる部屋を見回して「想像してたのと違った」と言います。
その時は、それが部屋に対してなのか、ジェームズも含めてなのかが分からなかったのですが、あとからジェームズも含めてだということが分かるような話の進め方になってます。

タイのバンコクで暮らす理由は詳しく描かれず、保険会社に勤めるジェームズの転勤によるものと推察できますが、穿った見方をするとジーナを周囲(姉のカーラなど)から引き離し、自分だけに依存させるために、自ら転勤を希望したんじゃないか?とも思えました。

それくらいスペイン旅行に行ったジェームズは、カーラ夫妻やジーナと上手くやれてませんでした(覗き部屋に一緒に行くのを拒否したり、9歳くらいの甥っ子とジーナが一緒にお風呂に入るのに嫉妬したり)。

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結局スペイン旅行はジーナの自由を謳歌する気持ちに拍車をかけることになり、タイに戻ったジェームズの嫉妬心はますます深まるばかりになります。

タイに戻ってしばらくすると、ジーナの目が再び見えなくなり始め、映画はサスペンス色を帯びてきます。
ジーナは毎日2種類の目薬をささねばなりませんが、洗面台に置いてある目薬をジェームズがじっと見つめるシーンがあります。
直接的には描かれませんが、片方の目薬をジェームズが入れ替えてるのは明らかで、ジーナは眼科の定期健診で医師から細菌が混入していると言われます。
目薬がすり替えられてるんじゃないか?と言う医師に、思い当たる節があったジーナは洗面台に置いてある目薬を使うフリをしてジェームズを欺きます。

一方、ジェームズはジーナに気付かれてるとは知らず、目薬を入れ替え続けるんですが、こうなると夫婦してやっていくのは無理(もう傷害罪になってる)で自ずと結末は見えてきます。

また、これも詳しい説明はされないのですが、ジーナは目が見えないときから近所の子供とギターの弾き語りを自宅で練習しているのですが、その子が飼ってた犬が事情で飼えなくなるとジーナが引き取り、散歩に連れてくようになります。

するとある日、散歩中に犬が軽い熱射病になってしまい、犬の知識が無かったジーナは、同じく犬の散歩をしていたダニエルという青年に助けられ、家が近くということで自宅で休ませてもらうことになります。
元々このダニエルとは目が見えない頃から通っているプールで挨拶を交わす程度の仲であり、目が見えないときは友人女性のカレンから、ダニエルとプールで入れ違いになる際に「彼の息子大きいわよ」と猥談されていて印象に残っていた人物でした。

ジーナは帰り際にダニエルにキスされ、体を重ねる描写がありますが、複数人としているイメージもあり、はっきりしたことは分かりません。

ジーナは犬の散歩で遅くなると、犬が熱射病にかかり散歩中に出会った犬を連れた人の家で休ませてもらったことを話しますが、ジェームズは平静を装いながらも疑いの目を向け、再び行動を起こします。

今度は2人の留守中に家が荒らされて、飼ってた犬も行方不明になってしまいます。
これもジェームズがやったという直接的な描写はありませんが、犬も邪魔と考えたジェームズの自作自演は明らかで、本作ではそういうところはボカシて描かれています。

ジェームズはジーナの目が見えなくなって犬もいなくなれば、以前の状態に戻りジーナを籠の中に閉じ込められると考えますが、ジーナの目は悪くならずにいましたし、このタイミングでジーナの妊娠が判明します。

ジーナはジェームズに妊娠したことを告げますが、ジェームズは自身が無精子症だと分かっているので、自分の子ではないと考えます。
またジェームズは行方不明の犬を探す際にダニエルと知り合っていて、ジーナとの仲も疑っていますが、ジーナに内緒で精液検査を受けた手前、自分の子では無いとも言えず、ジェームズの思いはますます屈折したものになっていきます。

結局、ジェームズはジーナの求めに応じて新しい家に引越した際に、ジーナが目薬を隠していたのに気付き、自身の仕業がバレていたことも気付きますが、この期に及んでもジーナの目が見えてるかどうか試すようなことをして、ジーナも見えないフリをします(ジェームズが目薬を入れ替えてるのを咎めない)。

説明されなかったギターの弾き語りは、ラストで発表会がありジーナは少女とステージに立ちます。
ジーナと少女は「Double Dutch」という歌を歌いますが、ジェームズも見に来ます。

Double Dutchの歌詞は以下の通りです。

縄跳びが好き 水泳も好き
幸せになれる にっこり笑える
縄跳びが好き ダンスも好き
幸せな私は
あなただけを見てる(原題のAll I see is you)

放課後のテニスコート
プールのそばでお花摘み
縄跳びが好き 走るのも好き
幸せになれるし すごく楽しいの
パーティーが好き フラフープも好き
幸せな私は
あなただけを見てる
幸せな私には
あなたしか見えない

空の下 あなたと2人
流れる雲の合間に 星を数える
一晩中寄り添って

時の流れの中 あなたと2人きり
私の愛が見えるはず
瞳の奥をのぞき込めば
今夜はひとまず別れるけど
あなたの夢の中で
私たちは大丈夫 永遠に
私の心の中では
2人は決して離れない 永遠に
私の心の中では 私たちの夢の中では
2人は決して離れない

これを聞いたジェームズは激しく動揺し、歌の途中で会場を出ていくと、動揺したまま雨の中、車を運転し事故を起こして帰らぬ人となってしまいます。

そして残されたジーナは一人で子供を出産し、映画は終わります。

生まれた子供はダニエルの子とも、ジェームズの子(可能性は低いがゼロではないため)とも、言えると思いますがはっきりしたことは分かりません。
ただラストの歌の歌詞や、ジェームズが動揺したことを考えると、ジェームズの子ではないかという気がします。

物語はジーナの目が見えるようになったのとは反対に、ジェームズは嫉妬や疑心暗鬼に駆られジーナのことが見えなくなっていった話だと思うんですが、監督によるとある程度はっきりした解釈があるようで、そこら辺のことはパンフレットに載っているようですが、パンフレットを買わなかったのではっきりしたことは分からずです。

『かごの中の瞳』マーク・フォースター監督インタビュー | ムビコレ | 映画・エンタメ情報サイト
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本作は最初に書いたように、説明不足でやや不親切であるものの、観てるうちに分かることもあって、これはどういうことだろう?と思って観れるので、眠くなることはありませんでした。

また全編を通してイメージが映像が多く官能的でもあるため、その部分では飽きませんがブレイク・ライヴリーのヌードはありません。

ブレイク・ライヴリー、頑なに拒否していたヌードシーン解禁の理由を告白 - フロントロウ | グローカルなメディア
これまで映画のヌードシーンに対して否定的な意見だった女優のブレイク・ライヴリーがある事をきっかけに心変わりしたことを明かした。

記事ではヌードシーンを解禁したとありますが、イメージ映像でおっぱいのアップはあるもののそれがブレイク・ライヴリーのものかは分かりませんので、ブレイク・ライヴリーの肢体を眺めたいなら『ロスト・バケーション』一択だと思います。

また観に行く前にイメージした『ノクターナル・アニマルズ』の雰囲気もありましたが、ストーリーがどうにもありきたり過ぎて、そこまでの高評価にはなりませんでした。

鑑賞データ

TOHOシネマズシャンテ シネマイレージデイ 1400円
2018年 156作品目 累計135100円 1作品単価866円

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