ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ 評価と感想/ベニチオ版レオン?

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ 評価と感想
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話作り込み過ぎてむちゃくちゃな気も ☆3点

アメリカ・メキシコ国境地帯の容赦ない麻薬戦争を描いてアカデミー賞にも3部門にノミネートされたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『ボーダーライン』(原題:Sicario)の続編。
不法入国ビジネスも取り仕切り、テロリスト入国の温床ともなっている麻薬カルテルを壊滅すべく、カルテル同士の抗争を引き起こそうと画策するCIA工作員を描いた作品。
主演は前作に引き続きベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリン、監督は前作から変わってイタリア人のステファノ・ソッリマ

予告編

映画データ

http://cinema.pia.co.jp/title/174964/

本作は2018年11月16日(金)公開で、全国57館での公開です。
順次公開されて最終的に83館程度での公開のようです。

監督はステファノ・ソッリマ
イタリアで2015年に公開され、イタリアのアカデミー賞5部門にノミネートされた『暗黒街』(原題:Suburra)というノワール映画で有名になった方です。

日本では2016年5月のイタリア映画祭で限定上映され、2017年10月からのワールド・エクストリーム・シネマで一般公開されましたが、気になっていたものの見に行けず、WOWOWで放送されたのを観ました。

主演にベニチオ・デル・トロ
近作は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『インヒアレント・ヴァイス』『エスコバル 楽園の掟』『ボーダーライン』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観てます。

主演にジョシュ・ブローリン
近作は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『インヒアレント・ヴァイス』『エベレスト 3D』『ボーダーライン』『ヘイル、シーザー!』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『デッドプール2』を観てます。

共演にマシュー・モディーン
近作は『海底47m』『オレの獲物はビンラディン』を観てます。

共演にキャサリン・キーナー
近作は『ゲット・アウト』『インクレディブル・ファミリー(声の出演)』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

アレハンドロ: ベニチオ・デル・トロ
マット・グレイヴァー: ジョシュ・ブローリン
イザベル・レイエス: イザベラ・モナー
ジェームズ・ライリー: マシュー・モディーン
シンシア・フォード: キャサリン・キーナー
スティーヴ・フォーシング: ジェフリー・ドノバン
ミゲル・エルナンデス: イライジャ・ロドリゲス
ギャロ: マヌエル・ガルシア=ルルフォ
ヘクター: デビッド・カスタニーダ

あらすじ

アメリカ国内の商業施設で市民15人の命が奪われる自爆テロ事件が発生。犯人一味がメキシコ経由で不法入国したと睨んだ政府は、国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬カルテルを混乱に陥れる任務を、CIA工作員のマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)に命じる。

それを受けてマットは、カルテルへの復讐に燃える旧知の暗殺者アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に協力を要請。麻薬王の娘イサベル(イザベラ・モナー)を誘拐し、カルテル同士の戦争を誘発しようと企てる。しかしその極秘作戦は、敵の奇襲やアメリカ政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を招いてしまう。メキシコの地で孤立を余儀なくされたアレハンドロは、兵士としての任務と復讐心、そして人質として保護する少女の命の狭間で、過酷なジレンマに直面していく……。

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

まずは2018年2月9日に亡くなった、前作『ボーダーライン』の音楽を担当したヨハン・ヨハンソンのご冥福をお祈りしたいと思います。

作曲家のヨハン・ヨハンソン、死去 | BARKS
映画『博士と彼女のセオリー』『プリズナーズ』『マザー!』などの音楽を制作してきたアイスランド出身の作曲家、ヨハン・ヨハンソンが、亡くなった。金曜日(2月9日)、ドイツ・ベルリンにあるアパートメントで死亡しているのが...

本作の音楽担当はヒルドゥル・グズナドッティルという女性チェロ奏者の方で、前作でもチェロを担当していて、ヨハンソンと共同制作することが多かった方のようです。

本作は「ヨハンソンが亡くなったから音楽を手掛けられなかったのかな?」と思いましたが、ヨハンソンが彼女を推薦したようですね。

[698]『ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ』におけるヒルドゥル・グズナドッティルの音楽 | IndieTokyo
2018年の映画『ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ』は、アメリカとメキシコの国境での麻薬戦争を描いた2015年の映画『ボーダーライン』の続編である。 前作の『ボーダーライン』においては、アイスランド出身のヨハン・ヨハ

そして監督も前述したようにドゥニ・ヴィルヌーヴからステファノ・ソリマに代わりましたが、ベニチオ・デル・トロとジョシュ・ブローリンと「The Beast」があれば、「ボーダーラインになるな(笑)」と思いました。

そしてジョシュ・ブローリン演じるマットと言えば水攻めなんですが、本作でも冒頭にチョロっと出てきてニヤリとするところでした。

さて、続編の本作は麻薬では無くて、イスラム系と思われる自爆テロから始まり、「これがどう麻薬カルテルに繋がるのかな?」と思ったのですが、メキシコの麻薬カルテルが不法入国ビジネスを取り仕切っていて、テロリストを入国させたのではないか?ということでした。

というのも9.11以降のアメリカは空港での警備が厳しくて、飛行機での入国はあり得ないってことで、メキシコ国境からテロリストがメキシコ人に扮装して入国したのであろうということになり、麻薬カルテルを壊滅すべく作戦が動き出すことになります。

因みに話が進んでいくと、麻薬ビジネスより密入国ビジネスの方が割がいいみたいな話も出てきます。
麻薬だと取引の途中でブツが差し押さえられれば金になりませんが、メキシコ人の密入国は1人10万円で請け負っていて先払いですし、密入国者が途中で捕まってもカルテルは知ったこっちゃないですし、それでいてアメリカへ渡りたい人は後を絶たないのでカルテルとしては食いっぱぐれが無い訳です。

この辺の国境越えの悲惨さは、アルフォンソ・キュアロン監督の息子のホナス・キュアロンが監督した『ノー・エスケープ 自由への国境』で描かれていました。

ノー・エスケープ 自由への国境 評価と感想/排外主義の先
現実に起こりうる世界 ☆4.5 『ゼロ・グラビティ』で父親であるアルフォンソ・キュアロン監督と共同脚本を務め、本作が初長編監督作となる息子のホナス・キュアロンによるソリッドシチュエーションスリラーです。

そして上のあらすじにあるように、カルテル同士を争わせるべく、麻薬王の娘を誘拐してくるのですが、本編を観てる限りこれでカルテル同士が争うことは無く、マットたちは今度は救出したふりをするんですが、CIAのマッチポンプ的なのは分かるんですが、なんか観てると「意味なくない?」という疑問が…。

マットたちは誘拐してきた娘を、今度は帰しに行くんですが、その途中で別のカルテルの息が掛かったメキシコ警察が襲ってきて銃撃戦となります。

しかしその隙に娘が荒野に逃げてしまい、ベニチオ・デル・トロ演じるアレハンドロはカルテルから守るべく娘を追うと行動を共にすることになります。

荒野なので水も無く、夜も気温が下がって越せないので、休めるところを探すと一軒の民家に辿り着き、休ませてもらいます。

するとカルテルの息の掛かったメキシコ警察を殲滅してアメリカに戻っていたマットから衛星電話が入ります。
マットからの電話は娘を殺せというものでした。

マットがアメリカに戻るとメキシコ警察を殲滅したことが問題になっていて、メキシコ政府もCIAの偽装工作を掴みつつあり、おまけにテロリストはアメリカに住んでいたイスラム系アメリカ人だったことが判明し、麻薬カルテルの関与が無かったことから作戦の中止を言い渡されます。

そして全てを目撃している娘が、カルテルやメキシコ政府などに話をすれば不利になると考え、抹殺を命じられます。

しかしマットがこれをアレハンドロに伝えると拒否されたため、アレハンドロと娘はCIAからも追われる身となり逃避行を繰り広げるが…。
というお話になってくるんですが、この辺からもうジャン・レノ主演の『レオン』の既視感しかありませんでした。

うーん、何でしょう?
つまらなくは無いんですが、前作で仇のカルテルのボスの子供も躊躇なく殺してたアレハンドロのキャラがブレてしまったように感じたんですよね。

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そもそも前作でアレハンドロの個人的な復讐は終わっている訳で、マットやCIAに協力する義理も無いと思うんですが、それでも協力するのならば、アレハンドロの目的は「メキシコ麻薬カルテルの壊滅」の一点しかなく、前作の感想でも書きましたが、ひょっとするとコロンビアカルテルの復権みたいなところもあるのかな?と思いましたが、とにかく前作で描かれた不条理や理不尽の真っ只中にいる人物だと思ったのに、「何でレオンの二番煎じみたいになるかなぁ?」と思ったんですよね。

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テイラー・シェリダンの脚本の印象は、「現代アメリカ社会の問題を落とし込みながら、上手い具合にエンタメに昇華させてるなぁ」と思っていて、どの作品も勢いがあって鑑賞中は観れるのですが、終わってみると「あれ?」っていうところもある感じのイメージです。

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そして、その中で前作の『ボーダーライン』だけは救いが無い感じで、『ウインド・リバー』と『最後の追跡』はややハッピーエンドな感じがしたんですが、本作も顔を撃たれて死んだと思われたアレハンドロは生きていて、麻薬王の娘にも証人保護プログラムが適用されるなどハッピーエンドでした。

おまけに続編もあるような感じの終わり方で、前作とは「テイストが違うな」と思ったのですが、シェリダンの脚本は最初のボーダーラインだけがやや異質で、基本的にはメローでセンチメンタルな部分があるんだと思いますが、ことメキシコの麻薬戦争に関してはその部分は不要かな?という気がしました。

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元々3部作構想だったようですが、「死んだと思ったら生きていた」という『アウトレイジ』から『アウトレイジ ビヨンド』みたいな展開で、こうなったら3作目は無くてもいいかな?と思ったりもしました。

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監督のステファノ・ソッリマの作品は最初に書いたように『暗黒街』しか観てませんが、本作もソッリマ節といいましょうか、そういうのが出てたと思います。

この監督、導入部の掴みは凄く上手いです。
『暗黒街』でも、バチカン、与党大物議員、伝説のマフィア、若手で台頭している残虐なマフィア、高級コールガールなどを次々と登場させて世界観を広げてスケール感があります。
そして『暗黒街』では何と言っても尺をしっかり取って描かれる与党大物議員のシャブSEXシーンが極めつけだと思うのですが、本作でも冒頭のショッピングセンターでの自爆テロシーンは物語のスケールを感じさせます。

ただ、この監督、話が進んでいくうちにスケール感がしぼんでいくんですね。
『暗黒街』の場合は、バチカンは出オチで終わってた感じでしたし、伝説のマフィアも終始1人で行動していて終わってみれば小物感が漂っていました。

対して本作も、自爆テロから麻薬カルテル壊滅のための同士討ちはグダグダになり、最近の映画ではよく描かれるCIAのマッチポンプが描かれ、途中からは『レオン』、いやもっと言えばジョン・カサヴェテスの『グロリア』以降、使い古された感じのある逃避行モノになるという始末です。

うーん、やっぱり個人的にはメキシコ麻薬戦争モノはもっとヒリヒリしたものが観たいです。

『悪の法則』や『ブレイキング・バッド』には全く及ばない感じでした。

鑑賞データ

角川シネマ有楽町 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2018年 186作品目 累計167600円 1作品単価901円

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