時代背景を知らないと難しいかも ☆4点
予告編
映画データ
あらすじ
1950年代、ハリウッドが“夢”を作り世界中に贈り届けていた時代。
スタジオの命運を賭けた史上空前のスペクタクル超大作「ヘイル、シーザー!」の撮影が始まっていた。
だがその撮影中、主演俳優であり世界的大スターのウィットロック(ジョージ・クルーニー)が何者かに誘拐されてしまう。
スタジオが大混乱に陥る中、事件解決への白羽の矢を立てられたのは貧乏くじばかりを引いている“スタジオの何でも屋”エディ(ジョシュ・ブローリン)だった。
お色気たっぷりの若手女優(スカーレット・ヨハンソン)や、みんなの憧れのミュージカルスター(チャニング・テイタム)、演技がどヘタなアクション俳優(アルデン・エーレンライク)など撮影中の個性溢れるスターたちを巻き込みながら、エディは難事件に挑んでゆくが……。(MovieWalkerより引用)
ネタバレ感想
コーエン兄弟の新作です。
コーエン作品はコメディよりスリラーの方が好きなんですけど『ノーカントリー』以降はコメディが続いてる感じでしょうか?
黄金期のハリウッドの映画撮影所を舞台にしたお話で、日本だと三谷幸喜さんが撮りそうな作品です。
冒頭からナレーションが多いのと、膨大な台詞に数多くの登場人物で、これは自分には厳しいかなと思いましたが、なんとか話に付いていくことができました。
あらすじとしては、ジョシュ・ブローリン演じる映画撮影所のプロデューサーで、よろずトラブル処理係であるエディ・マニックスに振りかかる、トラブルの一日を描いたお話なんですけど、劇中映画や登場人物にはモデルがあるようなので、それを知ってれば楽しめるようですが、相当の映画通じゃないと厳しいかなと思います(自分は全く分かりませんでした)。
物語の時代背景としては1940年代のハリウッド黄金期が終わり、テレビの出現によって映画が斜陽産業になるんじゃないかと危惧されていた50年代のハリウッドで、テレビに負けないように娯楽大作が多く作られていた時代です。
また第二次世界大戦後の冷戦構造によりハリウッドでも赤狩りが横行していた時代で、物語の軸もこれを背景としていて、スタジオで撮影中の大作映画「ヘイルシーザー」の主演俳優ベアード(ジョージ・クルーニー)が誘拐されるという事件が中心になります。
でも誘拐事件と言っても深刻ではなくて、ハリウッドの脚本家たちが「我々はヒット作を書いても正当な報酬をもらってなく映画会社から搾取されている」「富の不平等(資本主義ダメ)だからそれを取り返す」と息巻いてて、誘拐されたベアードもその主張に感化されて誘拐に加担するというコメディタッチです。
またスタジオで撮影中の映画の場面場面では、楽しいシーンがあって、アクションは得意だけど演技はド下手な西部劇俳優がドラマ物の大作映画の主演にさせられたり、スカーレット・ヨハンソン演じる人魚物映画の映像的美しさとか、『マジック・マイク』を彷彿とさせるチャニング・テイタム演じる水兵モノの映画の踊りのシーンとか見どころが散りばめられています。
エディが奔走するトラブルには、双子のゴシップ誌の映画ライター(この頃のライターは映画の興行成績に影響するほど力があったようです)が俳優と監督の同性愛(この頃はタブーだった)をスクープしようとするのを抑えたり(この辺は今年公開された『キャロル』とかに通じます)、スカヨハがシングルマザーになりそうなのを取り繕う工作をしたりしますが、この辺は、この時代のハリウッドにはヘイズ・コードという検閲制度があってすごく保守的だったのと関わっているようです。
参考 ヘイズ・コード – Wikipedia
他に描かれてるお話は、エディがロッキード社からスカウトを受けてて気持ちが揺れてるという話で、楽で給料がいい仕事(ロッキード)を取るか、辛くてなんだかよくわからないんだけども今の仕事(映画産業)を取るか選ぶ話で、結局は今の仕事を取るという、映画という魔物に取り憑かれた映画人の映画愛に溢れたお話でもありました。
鑑賞データ
TOHOシネマズ六本木 シネマイレージデイ 1400円
2016年 53作品目 累計62000円 1作品単価1170円
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