ブルックリン 評価と感想/彼女に選択できる自由があることが大事

ブルックリン 評価と感想
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妹を思う姉の気持ちに涙 ☆4.5点

予告編

映画データ

ブルックリン (2015):作品情報|シネマトゥデイ
映画『ブルックリン』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:『わたしは生きていける』などのシアーシャ・ローナンを主演に迎え、アイルランドからニューヨークに移住した女性の青春の日々を映すドラマ。
http://cinema.pia.co.jp/title/169529/

あらすじ

1950年代。アイルランドの小さな町に住むエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は、美人でキャリアウーマンの姉とは対照的に大人しく目立たない存在だった。しかし彼女の将来を案じた姉の勧めでエイリシュはニューヨークへ渡米することを決める。だがそこは生まれ育った小さな町とはあまりに違う生活。ブルックリンの高級デパートでの仕事には慣れず、下宿先の同郷の女性たちは既に洗練されて会話もままならない。激しいホームシックに陥り、アイルランドから届く姉の手紙を読み返し涙に暮れるエイリシュの様子を見かねて、同郷の神父(ジム・ブロードベント)はブルックリン大学の会計士コースを受講するよう勧める。やがて学ぶ喜びを知り、少しずつ前向きになっていくエイリシュ。そんな中、あるパーティーでイタリア系移民のトニー(エモリー・コーエン)と出会った彼女は、毎週大学に迎えに来る彼の誠実さに少しずつ心を開いていく。最新の水着に身を包み、コニーアイランドでトニーと過ごすエイリシュは、いまや洗練されたニューヨーカーになっていた。ところがある日、故郷から突然の悲報が届き、エイリシュはアイルランドへ帰郷する。そんな彼女を待ち受けていたのは、トニーとは正反対のジム(ドーナル・グリーソン)との再会、そしてもう一つの幸せな人生であった……。

Movie Walkerより引用)

ネタバレ感想

今年のアカデミー賞作品賞候補だった本作。

『ブリッジ・オブ・スパイ』以外は観ましたが、今年の作品賞候補はどれもよかったです。

今作は物語の舞台が1950年代のニューヨークで主人公がデパートの店員ということで『キャロル』と似たような設定でした。

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今のところ今年ナンバー1  ☆5点 予告編 映画データ あらすじ 1952年ニューヨーク、クリスマスを間近に控えて街は活気づき、誰もがクリスマスに心ときめかせている。マンハッタンにある高級百貨店フランケンバーグのおもちゃ売り場でアルバイトと...

主演のシアーシャ・ローナンは主演女優賞にもノミネートされていましたが、オスカーを獲得した『ルーム』のブリー・ラーソンよりよかったかもしれません。

凄い美人という訳ではないですが、彼女の強い眼差しや聡明な雰囲気など、今作の高評価は彼女の演技によるところが大きいと思います。
ほわっとした中にもしっかりと芯がある感じは、日本だと黒木華さんのイメージ?ですかね。

この映画、前半が特によかったです。

まずお姉さん(フィオナ・グラスコット)が凄く美人で聡明。
お姉さんだけは妹の可能性を理解していて、閉鎖的で旧態依然としたアイルランドに留まるよりも、ニューヨークへ行くことを後押ししてくれます。
勤めている食品雑貨店のケリーのババアは嫌なやつでしたが、言ってることは半分当たってて、お姉さんは自分を犠牲にして妹を送り出してくれます。
お姉さんは妹よりアイルランドの社会に適応するのが少し上手くて、表面的には上手くやっていたけど、彼女も自分の人生を謳歌したかったはずです。
自分の思いを妹に託してた部分もあったと思います。

そして主人公のエイリシュが本当にいい子です。
前半は本当にいい子でそれだけで涙が出そう。
アイルランドで親友とダンスクラブに行ったとき、その容姿から親友だけは男子からダンスに誘われるけど、エイリシュは誰からも誘われません。
あのエイリッシュの遠くを見る目、あれだけで泣けてしまいます。

ニューヨークへ行く船の中で、同室になった女性もよかったです。
あの人も凄い美人で凄く優しい。
ちょうど『イヴの総て』と同じような構造で、最後はエイリッシュがあの立場になります。

ニューヨークでの生活が始まって、デパートでの勤務前に更衣室で同僚とかわす会話も好きなシーンです。
前日のお休みに映画を観てたらアイルランドの話が出てきたからと話題を振ってくれるのです。
エイリシュは上手く返せませんでしたが、周りのみんながとても優しい。

寮での生活も、少しいじわるな先輩がいましたが、基本みんな優しい。
特に寮母のキーオ夫人がよかったですね。
演じるのはジュリー・ウォルターズ。
ハリーポッターシリーズではロンの母親役でした。

ブルックリンではあらゆる可能性が開けていて、仕事に学業に恋に、と全てが順調に進んでいました。
エイリシュが努力してるシーンはあまり描かれなかったですけど、もちろん主人公の努力があってのことだと思います。

前半が特によかったのと比べると、尊敬するお姉さんが亡くなってアイルランドに一時帰国する後半は少し落ちますが、それでもアイルランドを出る前は見向きもされなかったエイリシュがアメリカから戻ってきた途端、ちやほやされることに戸惑う様子はしっかりと描かれていたと思います。

エイリシュが結婚を隠していたことに怒る意見もありますが、あれは流れからそうなっただけで、葛藤する様子は描かれていましたし、監督も言ってるように、重要なのはこの時代に女性に選択する余地が出来たということです。

皮肉にもそのきっかけを作ったのはまたしても食品雑貨店のケリーのババアですが、周囲から嫌われようが何しようが自身の偏屈を通す姿は一本筋が通っていて、相容れない価値観ではありますが象徴的なものがあるな、と思いました。

たぶん男性の観客には、アイルランドに帰国してからの展開は不満だと思うのですが、ラストの展開は男性(男社会)が色々やってきたことを思えば、エイリシュの選択はどちらでもいいんだと思います。
彼女が自分で選択したことに意味がある訳で、そういう点で女性の観客の方が共感しやすい映画かなと思いました。

鑑賞データ

角川シネマ新宿 TCGメンバーズ ハッピーチューズデー 1000円
2016年 75作品目 累計87900円 1作品単価1172円

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