噓八百 評価と感想/骨董版ロッキーの趣もあるリベンジコメディ

噓八百 評価と感想
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曜変天目の件があるのでリアリティ有り ☆4点

日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞と最優秀脚本賞を受賞した『百円の恋』の武正晴監督と脚本家の足立紳が再び組んだオリジナル脚本作品で、W主演に中井貴一と佐々木蔵之介
古物商と贋作陶芸作家が自身を貶めた古美術商と有名鑑定士にリベンジする姿を描く

予告編

映画データ

嘘八百 (2017):作品情報|シネマトゥデイ
映画『嘘八百』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:『百円の恋』の武正晴監督と脚本家の足立紳が再び組み、商人の街堺を舞台に描くコメディードラマ。
嘘八百 : 作品情報 - 映画.com
嘘八百の作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。中井貴一と佐々木蔵之介がダブル主演を務め、「幻の利休の茶器」をめぐって繰り広げられる騙し合いを軽妙に描いたコメディ...

本作は2018年1月5日(金)公開で全国73館での公開です。
今後も順次公開され、最終的には95館程での公開となるようです。

本作の予告編は劇場でちょくちょく目にしましたね。
武正晴監督はこないだ『リングサイド・ストーリー』が公開されたばかりで、結構、間が無いなと思いました。

監督は武正晴さん
近作は『百円の恋』『リングサイド・ストーリー』を観てます。

主演に中井貴一さん
近作は『グッドモーニングショー』を観てます。

主演に佐々木蔵之介さん
近作は『の・ようなもの のようなもの』『超高速!参勤交代 リターンズ』『エヴェレスト 神々の山嶺』『破門 ふたりのヤクビョーガミ』『3月のライオン 前編後編』『美しい星』を観てます。

共演に近藤正臣さん
近作は『龍三と七人の子分たち』『本能寺ホテル』を観てます。

共演に前野朋哉さん
近作は『イニシエーション・ラブ』『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~(声の出演)』『東京喰種 トーキョーグール』『リングサイド・ストーリー』『勝手にふるえてろ』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

小池則夫: 中井貴一
野田佐輔: 佐々木蔵之介
野田康子: 友近
大原いまり: 森川葵
野田誠治: 前野朋哉
大原陽子: 堀内敬子
よっちゃん: 坂田利夫
材木屋: 宇野祥平
飲み屋「土竜」のマスター: 木下ほうか
ピエール: ブレイク・クロフォード
田中四郎: 塚地武雅
文化庁文化財部長: 桂雀々
絹田昭太郎: 寺田農
樋渡忠康: 芦屋小雁
棚橋清一郎: 近藤正臣

あらすじ

大阪・堺。千利休を生んだ茶の湯の聖地に、目利きだが大物狙いで空振りばかりの古物商・小池則夫(中井貴一)が娘のいまり(森川葵)を連れてやって来た。「西に吉あり」。ラジオの占いに導かれるように車を走らせていると、蔵のある屋敷にたどり着く。門から様子を伺うと、主らしい男・野田佐輔(佐々木蔵之介)が帰ってきた。蔵の中を見せてくれると言う。庭にはジオラマ作りに夢中の息子・誠治(前野朋哉)がいた。
佐輔は「骨董の事は分からない。これ一つでも車一台は買えると聞いている」と言って茶器を差し出す。則夫は名物に似せた贋物だと見抜き、売りつけた古美術店の名を聞くと、茶器を譲り受けた。
則夫は早速、その店を訪ねる。素人に贋物をつかませた証拠をネタに高額で引き取らせる魂胆だ。ところが、店主の樋渡(芦屋小雁)と大御所鑑定士の棚橋(近藤正臣)に軽くあしらわれてしまう。くさっていると佐輔からの電話。屋敷に再び呼ばれた則夫は、書状を見せられ、絶句する。利休直筆の譲り状だ。「お宝でっか?」と尋ねる佐輔にしらばくれる則夫。譲り状があれば茶器があるはず。はやる心をおさえながら蔵の中を探すと、ついに利休の形見の茶器が現れた。国宝級だ。「蔵のもの全部、百万円で引き取りましょう」。すました顔で申し出ると、佐輔は快く応じた。
翌朝、支払いを終え、お宝を積んだ車を上機嫌で走らせていると、ラジオから「油断大敵」の声。不安になって箱を開けると、茶器は真っ赤なニセモノだった。
大慌てで戻ると、屋敷の主は全くの別人(寺田農)だった。佐輔は留守番を頼まれただけだったのだ。則夫が佐輔の行きつけの居酒屋に乗り込むと、百万円を山分けしている。警察の筆跡鑑定もくぐり抜ける達筆のマスター(木下ほうか)、紙に詳しい表具屋のよっちゃん(坂田利夫)、どんな箱でも作ってみせる材木屋(宇野祥平)。彼らは贋作に関わる仲間たちだった。隙を見て逃げ出した佐輔を追いかけると、さびれた家に着く。そこには佐輔の妻・康子(友近)と誠治、そして、いまりがいた。屋敷に通ううち、誠治といまりは心を通わせていたのだ。息子に恋人ができたことに安心した康子は家を出ていく。陶芸家としての才能があるにもかかわらず、樋渡と棚橋にそそのかされ、贋物を作り続け、くすぶっていた佐輔に愛想を尽かしたのだ。
利休形見の茶器の本物の〈譲り状〉と〈箱〉はある。だが、肝心の〈茶器〉がない。則夫は一瞬でも自分の目を惑わせた佐輔の腕を見込み、一世一代の大勝負を持ちかける。「悔しかったら、やり返せよ」。実は則夫自身にも樋渡と棚橋に一杯食わされた過去があった。
利休に関わる博物館を訪れた二人は、利休を愛してやまない学芸員(塚地武雅)に出会う。昔の情熱を次第に取り戻す佐輔。それを支える則夫。力を合わせて作り上げる茶器はきっと「本物よりも凄いモノ」になるはず。二人が仕掛けた一発逆転の大勝負は、樋渡や棚橋だけでなく文化庁をも巻き込み、前代未聞の大騒動に発展する。果たして人生の借りを返し、一攫千金の夢を叶えられるのか─。

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

映画の企画自体はこれより前に始まったみたいですが、昨年話題になった「開運!なんでも鑑定団」での曜変天目茶碗に近い話で、事実は小説より奇なりと言いますが、結構リアリティあると思いました。

【今週の注目記事】国宝級茶碗の真贋はドロ沼「神学論争」に なんでも鑑定団騒動…今度はX線分析結果に専門家が猛反論(1/4ページ)
昨年12月に放送されたテレビ東京系の人気番組「開運!なんでも鑑定団」に持ち込まれた茶碗が、国宝級の「曜変天目(ようへんてんもく)」と鑑定されたことに複数の専…

棚橋清一郎って名前がもう中島誠〇助を連想させるっていう(笑)

 

則夫がやってる古物商・獺屋(かわうそや)の車は横浜ナンバーなので大阪まで遠征してきたと思うんですけど、離婚した妻との間で押し付け合っている娘のいまりを伴って、ラジオの占い「西に吉あり」を当てにして堺に辿り着きます。

街を流してると蔵がある大きな屋敷を見つけたので、門の前で様子を伺ってると家主と思われる佐輔が帰ってきます。
いまりを連れてるのは不審に思われなくて商談が上手くいくからなのですが、則夫は名刺を出して蔵の中を見せて欲しいというと、佐輔は「父親が道楽で集めてたみたいだが、自分はよう分からんので見てって下さい」と言われ蔵の中を見ることになります。

則夫は佐輔が「車一台は買えるらしい」と言ってた茶碗をせいぜい5千円相当の贋作だと見抜くのですが、父親が樋渡開花堂で55万円で買ったというので2万5千円で引き取り、樋渡開花堂に向かいます。

樋渡にさきほどの茶碗を何も言わずに見せると、則夫と同じ5千円の見立てでした。
ちょうどそこに大物鑑定士の棚橋が現れ、樋渡が棚橋に見立ててもらうとやはり5千円でした。
則夫は樋渡に「自分が買い取った客がこちらで55万円で買ったと言ってる」「プロを欺くのはまだしも、素人に贋作をふっかけるなんて、お宅はそういう商売してるのか」と迫ります。

樋渡は記憶を辿り、確かに売ったが1万円だったと言います。
佐輔の55万円の言葉に騙されていたのは則夫なのでした。
佐輔に文句を言おうと店を出ようとすると、棚橋が「でも、その茶碗を入れる箱はよろしおますな。その箱は2万円で買い取りまひょ」というので実は2万5千円でトントンなのでした。

翌日、則夫が佐輔に文句を言いにいくと、「実はこんなものが出てきた」と1枚の書状を見せられます。
則夫はすぐに千利休の譲り状と見抜くのですが、佐輔に嘘をつかれてたこともあって、「これは百姓一揆の決起文だ」と嘘をつきます。
「百姓一揆の決起文は珍しいものでは無いが、知人にコレクターがいるので買い取る」と言います。
譲り状があることから茶碗もあると考えた則夫は「見落としがあるといけないので、もう一度、蔵を見させて欲しい」と蔵を調べると最初調べたときには無かった木箱が奥の方から出てきて開けると幻の千利休の茶碗なのでした。
様子を伺いに来た佐輔に、蔵の中の物を100万円で引き取ると言うと了承され、早速持ち帰ろうとしますが、佐輔に「今日は遅いのでまた明日」と言われます。

翌日、はやる気持ちを抑えられない則夫は約束の時間より早く行くと、蔵の中の物は運び出しやすいようにあらかた段ボール箱に収められていました。
「余計なことしやがって」と思う則夫ですが、千利休の茶碗は昨日戻した奥の方にまだありました。
佐輔に100万円を払うと急いで屋敷をあとにしようとしますが、娘のいまりが誠治とすっかり仲良くなってしまったので置いて帰るのでした。

則夫は上機嫌で帰路に就くもラジオの占いの油断大敵の言葉に不安になり千利休の茶碗を見ると一目で分かるニセモノなのでした。
急いで佐輔の屋敷に戻りますが、出てきたのは全くの別人の家主の絹田で、佐輔は外出がちの絹田が雇った留守番なのでした。
絹田に佐輔の行きつけの居酒屋を聞くと乗り込みます。

居酒屋に着くと佐輔は騙し取った金で祝杯を上げていて、いまりと誠治もいました。
誠治と仲良くなっていたいまりは佐輔が屋敷の者では無いのはとっくに知っていましたが傲慢な則夫に反発してあえて何も言わなかったのでした。
則夫は場末の居酒屋には似つかわしくないほど有名人のサインが貼られているのを見て、マスターと顔を見合わせるとマスターから贋作仲間だと明かされるのでした。

佐輔が則夫を騙した手口は、まず本物の書状と木箱はあったので、佐輔が贋作の茶碗を作ります。
則夫は本物の書状と木箱に惑わされ、蔵の中が暗いこともあって佐輔の贋作を本物だと思ってしまいます。
翌日則夫が手に入れた物は、精度の高い贋作の書状と木箱に入れられた佐輔の平凡な贋作だったためすぐに分かったのでした。

逃げる佐輔を則夫が追うと、佐輔が暮らしてたのは寂れた一軒家でした。
則夫は佐輔から100万円を取り戻す算段をするため行動を共にしてると、佐輔の事情を知っていくことになります。

佐輔は若い頃、新進の陶芸家として表彰され、棚橋から賞状を授与されたことがありました。
表彰された作品は有名作品の写しでしたが、樋渡が祝儀と言って10万円で買い取ってくれます。
後日、佐輔が樋渡の店に行くと自分の作品が棚橋のお墨付きを与えられ、何倍もの値段で売られてるのを知り愕然としますが、骨董の世界の重鎮2人に逆らえるはずもなく、2人に取り込まれるように贋作作家の道を歩き始めると、腕も落ちぶれてお払い箱になったのでした。

それを知った則夫は「自分も古美術商として駆け出しの頃、2人に贋作を掴まされ、それに気付かず客に売ったことで信用を失った」と打ち明けると100万円なんてチンケな額ではなく、2人から大金をせしめることになります。

則夫が描いた絵は、書状も木箱も本物なので「あとは佐輔の贋作の精度を上げるだけだ」と佐輔の闘志に火を付けると贋作作りに励む様子が描かれます。

土を食べる土選びから始まって、体力勝負の土練り、寝食を共にして満足できるまで作っては壊すの繰り返しは、ロッキーのトレーニングシーンのようでした。

佐輔は則夫のアドバイスの元、贋作では無く、利休が作ったかもしれない作品を作り上げると、絹田の家でオークションを開催します。
オークション参加者は仕込み、則夫の仲間のピエールを大英博物館員に仕立てると、美術品の海外流出を危惧している文化庁なども巻き込んだオークションになります。

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則夫と佐輔は利休の勉強のため訪れた博物館で、千利休のかもめに関する話を聞いていたことから、茶器にもその思いを込めましたが、あろうことかその話を聞いていた達筆のマスターが千利休のサインにかもめの絵を書いてしまったことから、棚橋から突っ込まれます。
則夫は学芸員から聞いた利休とかもめの関わりを滔々と述べますが、棚橋が「贋物や」と言ってオークションがお開きになってしまいます。

則夫たちが落胆して後片付けを始めると、棚橋たちが戻ってきます。
実は棚橋はかもめが決め手で本物と判断したのですが、意に反して則夫がかもめについて滔々と述べたので、大英博物館などに値段を吊り上げられたら敵わんということで贋物だと言ったのでした。
オークションで8千万円まで上がっていた佐輔の茶碗を、棚橋たちが現金1億円で買って帰るのを見届けると、則夫と佐輔のリベンジは果たされるのでした。

映画はここで終わりでもいいと思うのですが、このあといまりと誠治の結婚式が描かれます。
いまりと誠治が結婚式を挙げていると、ウェディングドレス姿をした大原陽子という女性が乱入してきて、誠治に騙されたと息巻いて結婚式がおじゃんになります。

実は陽子は則夫の恋人?で、佐輔の家との結婚では釣り合いがとれないと判断した則夫が破談にさせるべく仕込んだのでした。
則夫はいまりを誠治から引き離し連れて帰りますが、心から通じ合っている2人はそんなことにはめげなくて、則夫と佐輔の取り分のお金を奪って海外に行こうとします。

金を持ち出されたことに気づいた則夫と佐輔が空港に向かうと、誠治が身を挺していまりを守り、いまりが搭乗口に入って映画は終わります。

 

本作は冒頭に書いたように、曜変天目茶碗の件があるので話の大筋ではリアリティがあり、映画内で語られる古美術品や千利休に関する蘊蓄は面白いと思いましたが、則夫という人物の掘り下げ方が浅いと思いました。

則夫はかなりの目利きではあると思うのですが、その能力と現在の生活の釣り合いが取れてないと言いますか、詐欺師のようなピエールと付き合いがあることで則夫も詐欺師っぽく見えてしまいました。
ラストになって唐突に出てくる陽子との関係性も不明で、いまりの結婚をそこまで反対する理由も分からなかったです。

上映時間105分の映画ですが、結婚式のくだりが無ければ90分くらいで収まった映画で、話もボヤけた感があるので無理に伸ばす必要も無かったと思います。
結婚式で話を伸ばすより、もう少し則夫の過去や背景を掘り下げた方が、リベンジとなった時のカタルシスが大きかった気がします。

それとやっぱり絹田の家でのオークションは画的にショボかったですね。
オークションのサクラも身内で固めてるのでスケール感が無いといいますか、あのシーンがもう少しスケール感があってスリリングならよかったと思います。

とはいえ、原作モノや漫画モノで同じような話が多い中、オリジナル脚本で紡ぎだされるストーリーは魅力的ですし、コメディ調でもあるので深刻にならずに見れますし、正月明けの初笑いにはピッタリの映画だと思います。

鑑賞データ

TOHOシネマズシャンテ 1か月フリーパスポート 0円
2018年 6作品目 累計3100円 1作品単価517円

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