フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 評価と感想/ディズニーランドに行けない子供たち

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 評価と感想
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日本のネカフェ難民にも似た問題 ☆4点

全編iPhoneで撮影された『タンジェリン』で話題を呼んだショーン・ベイカー監督がディズニーワールド近くの安モーテルで暮らすホワイト・トラッシュ(白人低所得者層)の母娘を描いたドラマ。
主演に子役のブルックリン・キンバリー・プリンスと母役にブリア・ヴィネイト、共演にウィレム・デフォー

予告編

5/12(土)公開『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』本予告

映画データ

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 (2017) - シネマトゥデイ
全編iPhoneで撮影した『タンジェリン』などのショーン・ベイカーが監督・脚本を務めた人間ドラマ。フロリダで貧しい生活をしている母娘と二人を取り巻く人々の日常を、6歳の少女の視点から描く。
フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法|映画情報のぴあ映画生活
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は2017年の映画。『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』に対するみんなの評価やクチコミ情報、映画館の上映スケジュール、フォトギャラリーや動画クリップなどを紹介しています。

本作は2018年5月12日(土)公開で、全国15館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には51館での公開となるようです。

劇場では予告編を目にしなかったんですけど、ウィレム・デフォーが今年のアカデミー助演男優賞にノミネートされて、タイトルだけ頭に入っておりました。

監督はショーン・ベイカー
観る直前まで気にしてなかったんですけど、全編iPhoneで撮影されて話題になった『タンジェリン』の監督でした。
昨年の1月末から劇場公開されて、見よう見ようと思って結局見に行けなかったんですけど、そのときにはすでにネットフリックスで配信されてたらしく気付かなかったんですけど、1年後くらいにネットフリックスで観ました。

タンジェリン | Netflix (ネットフリックス)
出所間もないトランスジェンダーの娼婦シン・ディー。客引き兼ボーイフレンドの浮気を突き止めるため、同業の友アレクサンドラと共にロスの街を探し回る。

カラフルなタッチとドキュメントタッチが特徴的な監督さんと思いました。

主演に子役のブルックリン・キンバリー・プリンス
2010年生まれで3歳の頃から子役として活動してるようで、いくつかのテレビシリーズと映画に出演してます。

主演にブリア・ヴィネイト
監督がインスタグラムで友人のリポストを見てキャスティングしたそうで、完全な素人だそうです。

主演ブリア・ヴィネイトが語る『フロリダ・プロジェクト』
インスタグラムで見出されたブリア・ヴィネイトは、ショーン・ベイカー監督の新作『フロリダ・プロジェクト(原題The Florida Project)』で女優デビュー。ディズニー・ワールドの影で起きている、貧困と売春を描いた挑発的な映画だ。

共演にウィレム・デフォー
近作は『誰よりも狙われた男』『ニンフォマニアック Vol.1Vol.2』『グランド・ブダペスト・ホテル』『ジョン・ウィック』『ドッグ・イート・ドッグ』『オリエント急行殺人事件』を観てます。

共演にケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
まさか本作にも出てるとは思いませんでした(笑)
ケイレブ君のアカデミー賞絡み率凄いです。
アカデミー賞でノミネートされたい監督は、彼を起用するといいんじゃないかと思います。
近作は『アンチヴァイラル』『神様なんかくそくらえ』『バリー・シール/アメリカをはめた男』『ゲット・アウト』『スリー・ビルボード』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

ボビー: ウィレム・デフォー
ムーニー(子役): ブルックリン・キンバリー・プリンス
ヘイリー: ブリア・ヴィネイト
ジャンシー(子役): ヴァレリア・コット
スクーティ(子役): クリストファー・リヴェラ
ジャック: ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
アシュリー: メラ・マーダー

あらすじ

6歳のムーニーと母親のヘイリーは定住する家を失い、“世界最大の夢の国”フロリダ・ディズニー・ワールドのすぐ外側にある安モーテルで、その日暮らしの生活を送っている。シングルマザーで職なしのヘイリーは厳しい現実に苦しむも、ムーニーから見た世界はいつもキラキラと輝いていて、モーテルで暮らす子供たちと冒険に満ちた楽しい毎日を過ごしている。しかし、ある出来事がきっかけとなり、いつまでも続くと思っていたムーニーの夢のような日々に現実が影を落としていく———

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

お話的には『わたしは、ダニエル・ブレイク』と『チョコレートドーナツ』みたいな感じだと思いました。

わたしは、ダニエル・ブレイク 評価と感想/2016年カンヌパルムドール作品
先進国が抱える閉塞感 ☆5点 わたしはダニエル・クレイグ 最初にタイトル見たときにはそう思ったんですけど、映画を観たらそんな冗談は言ってられないほどヘビーでやるせなく、心えぐられる社会派ドラマでした。 ケン・ローチ監督作品は初めて観ました。 小難しい作品が多いのかな?と思ってたんですが、とても分かりやすくて見やすかったです。
チョコレートドーナツ 評価と感想/素晴らしい映画です
無償の愛に涙 ☆5点 予告編 映画データ アラン・カミング演じるルディが包むマルコへの無償の愛は、穏やかな母親の胎内にいるような心地良さで、なぜだか涙が止まりませんでした。 おいおい泣くという感じでは無くてじわー...

そして『タンジェリン』と同じくドキュメントタッチで、相変わらず素人使いが上手いなぁと思います。

一応、劇中ではフロリダのディズニーワールドのすぐそばであることを直接的に言及してるシーンは無くて、南米から来た新婚の夫婦がディズニー系列のホテルを予約したと勘違いして、がっかりして帰っていくシーンがあるくらいです。

ディズニーランドも最後まで映らないんですけど、舞台はディズニーランドから1kmくらいでしょうか、フロリダ州キシミーにあるマジックキャッスルというモーテルで、このモーテルは名前とか変えて無くて実在します。

劇中、頻繁に登場するオレンジワールドを含め、U.Sハイウェイ192号線沿いでお話は展開していきます。

Florida Orange World - The World's Largest Orange Store
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マジックキャッスルに滞在しているムーニー、スクーティ、ディッキーのクソガキ3人はいたずらばかりして遊んでます。

この日は通りを隔てた隣のモーテルに行くと2階の通路に上がり、下に駐車してある車に唾を垂らして遊んでます。
この車の持ち主のおばあさんが気付いて注意しても、反省するどころか悪態を付いて逃げていきます。
おばあさんはクソガキ3人を追ってマジックキャッスルに行くと、雇われ管理人のボビーに事情を話します。
普段からムーニーたちのいたずらに手を焼いてるボビーは、ムーニーの母親であるヘイリーが滞在している323号室に案内します。
ヘイリーはムーニーを叱るどころか、ムーニーと同じようにおばあさんに悪態を付きますが、ボビーが間に入っておばあさんの車を子供たちに掃除させます。
ムーニーは車の掃除を始めると、おばあさんの横で見ている女の子にも「一緒にやる?」と言って声をかけます。
その女の子はジャンシーと言って、おばあさんの娘が育てられなくて預けられた子でした。
おばあさんはジャンシーに「手伝う必要は無い」と言いますが、ムーニーとスクーティが楽しそうに掃除してるのを見てジャンシーも手伝うと言います。

ディッキーは父親にいたずらのことがバレ、外出禁止を言い渡されますが、暫くすると父親と旅立っていきます。
友達が減ったムーニーとスクーティはジャンシーを遊びに誘います。
ジャンシーのおばあさんは最初こそ2人を警戒しますが、ジャンシーはすぐにムーニーたちと仲良くなります。
ジャンシーより行動範囲の広いムーニーたちは、アイスクリーム屋に行くと買い物客から小銭を分けてもらってアイスを手に入れる逞しさもあります。
ムーニーはジャンシーを新入りだど言って、アイスを多く分けてあげる優しさもありました。

ムーニーの母親のヘイリーは職安のようなところで職探しをしますが、生来の粗暴さや忍耐強さが無いこともあって、仕事が見つかりません。
とりあえずの日銭は、中華系のバッタもん屋で安く仕入れた偽ブランドの香水を、近くのゴルフコースに遊びに来る富裕層に本物と言って安く売りつけて稼ぎます。
また食事はボランティアによるパンの配給や、スクーティの母親のアシュリーが近所のワッフル屋に勤めてるため、日中スクーティの面倒を見る代わりにタダで分けてもらいます。

ある日、ムーニー、スクーティ、ジャンシーの3人は廃墟になってる別荘地に探険に行きます。
3人は元は豪華であった一軒家に入り暖炉を見つけると、おままごと遊びの延長のように暖炉に布を詰めて火を着けてしまいます。
3人は一目散にマジックキャッスルに戻りますが、暫くすると消防車が出動する騒ぎとなり、野次馬が集まり始めます。
ヘイリーはムーニーと野次馬に行こうとし、アシュリーにも声を掛けます。
アシュリーはスクーティに野次馬に行こうと誘いますが、スクーティは行かないと言います。
様子がおかしいと感じたアシュリーがスクーティを問い質すと放火をしたことを認めます。
アシュリーは放火がバレて児童福祉局が介入することを恐れ、スクーティにムーニーたちと遊ぶのをやめさせると、自身もヘイリーと距離を置くのでした。

一方、ヘイリーはアシュリーが急に態度を変えた理由が分からずワッフル屋に乗り込みます。
しかし、理由を言わないアシュリーと喧嘩別れしてしまいます。

またゴルフコースの駐車場で行っていた転売も警備員に見つかり締め出されてしまいます。
それから、モーテルには住んではいけない決まりがあって、一定期間滞在したら別のモーテルに移らなければなりません。
しかし近隣のモーテルが協定を破棄し値上げしたため、移動することも出来ません。
ボビーの好意で部屋を移動して引き続きマジックキャッスルに滞在することが出来ますがヘイリーの生活は詰んでいきます。
ヘイリーはSNSを使って客を取り、マジックキャッスルの部屋で売春するようになってしまうのでした。

ボビーは当初、急に宿泊料を滞納しなくなり金払いのよくなったヘイリーを不審には思いましたが、部屋で売春してるとまでは思いませんでした。
しかし、ディズニーワールドに入場するチケット代わりのマジックバンドを盗まれたと乗り込んできた観光客により、ヘイリーが部屋で売春してることに気づきます。

ディズニーワールドで配られる「マジックバンド」に隠された、ちょっと不気味なテクノロジー
米GizmodoのAdam氏がアメリカのディズニーワールド&#123...

ヘイリーは部屋で売春した相手の荷物からマジックバンドを盗み出し、金券ショップで売り捌こうとしますが、買い取ってくれませんでした。
そこで、金券ショップに来た観光客に自分たちが行けなくなったと言って、マジックバンド4つで1700ドル相当を400ドルと言って売ろうとしていましたが、足元を見られ350ドルで買い叩かれていました。

ヘイリーがやったことは窃盗で完全に犯罪でしたが、ボビーが間に入って、「事件化させて買春してたことが家族に知れたらまずいのでは?」と観光客に言うとトラブルは収まります。
そしてヘイリーには部屋で売春するのを止めさせるため、訪ねてくる人に身分証確認を義務付けるのでした。

部屋で売春が出来なくなったヘイリーは、アシュリーに謝罪してお金を借りようとしますが、売春してる動画(客が盗撮したもの)がネットに出回っていると見せられます。
ヘイリーは動画を見て「自分じゃない」と言いますが、アシュリーに「どう見たって同じタトゥーじゃない」と言われると、思わずアシュリーを殴ってしまいます。

さらに後日、何者かに児童福祉局に通報され職員の訪問を受けます。
ヘイリーは職員の突然の訪問に抵抗しますが、次は警察を伴ってムーニーを一時保護に来ると言われます。

ヘイリーは部屋を片付け始め、雨の中ムーニーと遊びます。
近くのホテルでビュッフェを摂ると会計を323号室の部屋付けにしますが無銭飲食でした。
ヘイリーとムーニーがマジックキャッスルに戻ると児童福祉局と警察が待っています。

ヘイリーは支度を整える間、ムーニーにスクーティにお別れの挨拶をしてくるように言います。
福祉局の職員がムーニーに付き添いスクーティに挨拶を済ませると、そのまま保護します。
しかしヘイリーから何も聞かされてなかったムーニーは動揺し、職員から逃げ出してしまいます。

一目散に走り出したムーニーが向かった先はジャンシーの部屋でした。
ムーニーは目に涙を溜めながら「お別れしなきゃならない」と言うと、ジャンシーはムーニーの手を取って走り出します。

ジャンシーが向かった先はディズニーワールドでした。
駐車場とゲートを抜けてパーク(マジック・キングダム)内に入ると、シンデレラ城を目指すムーニーとジャンシーを映して映画は終わります。

 

本作は『タンジェリン』と違って35ミリでの撮影だそうですが、ラストのディズニーワールドのシーンはiPhoneで撮影されていて、撮影許可も取ってなくゲリラ撮影だったようです。

なので劇中はすぐ近くにありながら、手の届かないものとして対比するように、敢えてディズニーワールドを映さなかったんだと思います。
劇中でのディズニー的要素は、ジャンシーの誕生日を祝ったときに見た打ち上げ花火くらいで、殆どディズニーとは無縁でした。

最初に『わたしは、ダニエル・ブレイク』に似ていると書いたんですが、ボビーがダニエル・ブレイクで、ヘイリーがダニエル・ブレイクでのシングルマザーという感じです。
ダニエル・ブレイクでもシングルマザーが売春に手を染めてしまうくだりがありました。

ボビーはダニエル・ブレイクほど積極的にヘイリー母子には介入しませんが、雇われ管理人としてギリギリのところで手を差し伸べます。
しつけが出来てないムーニーたちを注意する地域社会の親としての側面もあり小児性愛者を追い払ったりもします。

ただイギリスとアメリカ、お国柄の違いもあるのか、ダニエル・ブレイクの方は東京の下町の頑固おやじみたいな感じで、日本人でも共感できるのに対し、ヘイリーの方はいわゆるDQNで1ミリも共感出来ないんですよね。

ただ、ヘイリーに至ってはどうしてシングルマザーになったのか?とか、母親との関係はどうなのか?とかのバックボーンが一切描かれないので、そうなるに至った何かはあると思うのですが…。

ムーニーたちも冒頭からクソガキぶりを見せつけられてうんざりするんですが、後から入ったジャンシーをいじめるかと思いきやそういったことはせず、アイスを多く分けてあげたりする優しさをみせ、子供本来の可愛さもあるので途中からは気にならなくなりました。
何と言っても子供は被害者ですしね。

ヘイリーの状況は日本だとネカフェ難民みたいです。
マジックキャッスルの宿泊料が35ドルとホテルとしては安いとはいえ、日本だとカプセルホテル並みの値段で、1か月もいれば10万円を超えてしまうので、高いなぁと思うのですが、普通のアパートを借りようとしても初期費用が無かったり、きっと審査とかではじかれてしまうんでしょう。
だから、この話は最初から詰んでる人の話で辛いんですよね。

本作は演出面とかも上手いなぁと思います。
途中からムーニーが1人でお風呂で遊んでるシーンが挟まれるようになりますが、その直前にヘイリーがTバックを着て自撮りを上げることから、直接的に描かなくてもヘイリーが部屋で売春してるのが分かります。

ムーニーたちが火を着けてしまったカラフルな一軒家の別荘地もバブルを物語ってます。
きっとディズニー・ワールドの観光客向けの別荘地として売り出したんでしょうけど、日本だと苗場のリゾートマンションといった感じなんだと思います。

バブル期に数千万で売られていた苗場のリゾートマンションが10万円で売られている『30階建てタワマンの17階が管理費+修繕積立金の月額約2万円』
大地に足をつけて生活したい派なので一戸建てがいいなって

ラストはシンデレラ城に向かうムーニーが現実にシンデレラに成れればいいんですが、現実的にはこのあと福祉局に保護されてヘイリーとは離れ離れですよね。

シンデレラ (字幕版)
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ダニエル・ブレイクも救いの無いラストでしたが、本作で救いがあるとすればヘイリーもムーニーもボビーも命は有って生き続けるということでしょうか。

ムーニーに適切な教育が施され幸あれです。

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2018年 84作品目 累計76300円 1作品単価908円

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