ドッグ・イート・ドッグ 評価と感想/ポール・シュレイダー御大70歳若い!

ドッグ・イート・ドッグ 評価と感想
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単純につまらないだけでは片付けられない作品 ☆5点

『レザボア・ドッグス』でミスターブルー役だったエドワード・バンカーの同名小説を『タクシードライバー』で脚本を担当したポール・シュレイダー監督が映画化したクライムサスペンス。主演にニコラス・ケイジとウィレム・デフォー

予告編

映画データ

ドッグ・イート・ドッグ (2016):作品情報|シネマトゥデイ
映画『ドッグ・イート・ドッグ』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:『レザボア・ドッグス』などで俳優としても活躍した作家エドワード・バンカーの小説を、ニコラス・ケイジ主演で映画化。
http://cinema.pia.co.jp/title/171423/

本作は映倫区分がR18+と主演がニコラス・ケイジってことだけで観てきました。

今年観たR18+は『ザ・シェフ 悪魔のレシピ』だけなんですが、映倫は通して無さそうな自主規制で映倫作品では本作が今年初鑑賞ですが、今週末には映倫のR18+の『フィフティ・シェイズ・ダーカー』が公開されます。

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監督はポール・シュレイダー
脚本作の『ザ・ヤクザ』は見たことないです。

『タクシー・ドライバー』と監督作の『愛と栄光への日々』(主演マイケル・J・フォックス)は見たことあります。

主演にニコラス・ケイジ
本作では『赤ちゃん泥棒』以来に赤ちゃん誘拐してたんじゃないかな?

主演にウィレム・デフォー
『ストリート・オブ・ファイヤー』と『プラトーン』のイメージが強いです。

主役3人みたいな映画なんであともう一人クリストファー・マシュー・クックという方。
『ウォーキング・デッド』とか出てるみたいです。

あらすじ

警官にハメられ、コカイン所持で逮捕。さらに、法廷から脱走未遂で10年以上の実刑を食らっていた、トロイ(ニコラス・ケイジ)。
ようやくシャバに出てきた彼を迎えたのは、ひと足先に出所していた仲間だった。
誰もが手を焼くキレやすい性格で、3日前に居候していた女と娘を惨殺したばかりのコカイン中毒者、マット・ドッグ(ウィレム・デフォー)。
そして、余計なモメ事は起こさない温和な性格だが、キレたら怖い巨漢の取り立て屋、ディーゼル(クリストファー・マシュー・クック)。

クリーブランドのストリップ・バーで再会を果たした3人だったが、正直な話、未来は決して明るくない。
そこで、仲間思いのトロイは、金回りを良くすべく昔のムショ仲間の“通称・ギリシャ人”と呼ばれる、地元ギャングの首領・エル・グレコ(ポール・シュレイダー)に相談に行く。
彼の指示に従い、警官に変装した3人は、金回りがいいと噂の麻薬密売人・クリーブランドの猿こと、“ムーンマン”(オマール・ドーシー)を襲撃。
コカインと9000ドルを手に入れることに成功し、それを元手にカジノに向かった3人だったが、たった一晩で女と酒に消えてしまった……。

ふたたび“ギリシャ人”に相談に行ったトロイは、マイク・ブレナンという男の話を聞く。
彼に貸した4000万ドルを回収したいチェペ(レイ・ガレゴス)は、1歳になるブレナンの息子誘拐を計画。
身代金の報酬として、トロイたちは50万ドル+ボーナス25万ドル、計75万ドルを手に入れられるというのだ。
とはいえ、カリフォルニア州の“三振(スリーストライクス)法”により、今度逮捕されれば、終身刑になるマッド・ドッグは気が進まない様子。
だが、3人は一世一代の大きな賭けに出るのだった。

チェペの話によると、ブレナンの女とベビーシッターだけの話だったが、深夜のブレナン邸に潜入したトロイたちの前に、メキシコ系の男が現れる。
焦ったマッド・ドッグは、思わずショットガンで男を殺害。
男が持っていたIDに書かれた名前は、ホセ・バスケスだったが、家を飛び出し、遺体処理をマット・ドッグとディーゼルに任せたトロイは、“ギリシャ人”から衝撃の真実を聞く。
ホセこそが、身代金の払い手であるブレナンだったのだ!

一方、遺体処理をするマッド・ドッグをディーゼルが殺害。
ひと芝居打って、トロイと合流するディーゼルだったが、立ち寄ったスーパーマーケットで警官に気づかれ、激しい銃撃戦と化してしまう。
まさに“喰うか、喰われるか”の状況のなか、果たして、生き残るのは誰だ!?

(公式サイトhttp://dogeatdog-movie.com/about.phpより引用)

ネタバレ感想

公式サイトのストーリーが詳しくて、ほぼこの通りなんですがチェペがブレナンに貸してたの400万ドルじゃなかったっけかな?

それはさておき、ストーリーを読めばクライムサスペンスというかピカレスクロマンなんですけど、映像とか音楽がめちゃめちゃ凝ってるんです。

冒頭はマッド・ドッグがヤクでラリってて画面がピンクなんですけど、壁が花柄とかでウェス・アンダーソン監督作みたいなんです。

マッド・ドッグが付けてるテレビではトーク番組が流れてて、司会の人が銃規制派、ゲストの人が銃推進派で議論してるのが流れてます。

マッド・ドッグは居候してた太った女に追い出されてたんですけど、行くとこ無くて戻ってきて、なだめすかして1日だけ泊めてくれって言ってOKになりそうになるんですけど、女のパソコンでポルノサイト見てたのがバレてめちゃめちゃキレられます。

女は敬虔なクリスチャンみたいでそのパソコンで教会の経理とか計算してたので怒るんですが、ラリってるマッド・ドッグはナイフでメッタ刺しにして2階にいる娘は拳銃で撃ち殺してしまいます。

場面変わって、3日後。
ストリップ・バーでトロイの出所祝いしてるんですけど、その画面はシン・シティみたいに白黒なんですね。
トロイが出所祝いでマッド・ドッグとディーゼルからスーツをプレゼントされたってナレーションのときだけ、スーツが青くなったりします。

それでこの映画、トロイがよくタケノコ剥ぎに遭います。

このストリップバーではあと1500ドル(高ぇー)でもっといいこと出来るって全身タトゥーの女に言われて、カジノの女にはあと300ドルとか言われてました。
そして、それをポンポン払ってしまうニコラス・ケイジ。
女にプレゼントした宝石もあっという間に転売されてしまう、男の悲しい性よ。

それでムーンマンとブレナンのくだりはストーリー的にはクエンティン・タランティーノっぽいですが、映像面ではわりとオーソドックスに撮られています。
間違えてブレナン殺しちゃうトコとかタランティーノが使いそうなエピソードですが、この時が一番グロいのかな。
マッド・ドッグが撃ったショットガンでブレナンの頭が飛び散るんですが、一瞬なんでR18+じゃなくてR15でも大丈夫な気がします。

居ないはずのブレナンが居たのは、ブレナンが妻の浮気を疑っていて、出かけるふりして妻が男を連れ込むところを押さえようとしてたからなんですが、そのタイミングで押し入るこの3人も運が無いというか、計画が杜撰というか。
ムーンマンを襲ったときの偽パトカーも文字がガタガタだったですから、まぁ杜撰なんですけどね。

ディーゼルがマッド・ドッグを殺したのがよく分からなかったんですが、2人でブレナンの死体を捨てに行くんですね。
場所はマッド・ドッグが昔、軍にいたときの施設で現在は閉鎖されてるんですが、居候してた女と娘の死体もそこに捨てたって言うんで向かいます。

マッド・ドッグが鍵持ってるんで建物の中に入れるんですが、ディーゼルがドア開けてすぐのところに死体を捨ててこうとすると、マッド・ドッグが万が一の場合、その場所だとすぐに分かるからもっと奥に捨てないといけないと言って、奥に持って行って階段上がってゴミシューターみたいなところに捨てるんですが、勢い余って死体もろとも2人して落ちてしまいます。

そこは床一面、ゴミだらけだったんですが、おそらく女と娘以外の死体も捨ててあったんだと思うんですよね。
それを見て正気の沙汰じゃないと思ったディーゼルがマッド・ドッグを撃ったと思うんですが、ハッキリしたことは分かりません。

マッド・ドッグは顎の下にフリーメイソンのマークの目みたいなタトゥーが彫ってあったのですが、そこから撃ち抜かれて死んでしまいます。
ちなみにこの時も、脳みそ少し壁に飛び散ります。

マッド・ドッグは寄るところがあるらしいと嘘を言ってディーゼルはトロイと合流します。

計画が失敗したトロイはガソリン代にも事欠いて、金を借りるためギリシャ人とレストランで会うことになっていました。
向かう途中、ディーゼルがスーパーで買い物がしたいと言うので降ろして駐車場で待ってると警察がやってきます。

ディーゼルがスーパー内で肉を買うのに手を伸ばした時に、腰に差した拳銃が見え、警備員が警察に通報したのでした。

駐車場で女性警官に職質をかけられているトロイの状況が、どんどん悪くなってきたときにちょうどディーゼルが出てきて、ディーゼルが女性警官に発砲すると、パトカーで駆けつけた警官と撃ち合いになります。

トロイはあっさりと捕まるんですが、ディーゼルは警察が乗ってきた四駆のパトカーを盗んでカーチェイスになりますが、電柱に激突して死んでしまいます。

場面変わってパトカーの後部座席。
トロイは警察署には連れていかれずに、空き地に連れてかれて警官からリンチを受けます。
警官は仲間がやられたことへの制裁でした。
トロイはパトカーに手錠を繋げられると、馬で引き回されるみたいに車で引き回されます。

場面変わってダイナー。
ここでの映像はニコラス・ウィンディング・レフンみたい。
老夫婦がダイナーで食事してると、スーパーでのニュースが流れてて、容疑者2人は死亡したと伝えています。

老夫婦が食事を終えて車に乗ると、後部座席にはトロイがいます。
どうやって警察から逃げてきたのか?背中ずる剥けじゃないか?とか思いますが、わりとしっかりしてます。

老夫婦を人質にして車を走らせますが、スーパーでの出来事は女性警官がパニくっただけで、俺たちは悪くないというようなことを言います。
そして老夫婦たちも命は助かってここから逃げられる未来が見えるとも言います。

すると辺りには霧が立ち込めて、警官に取り囲まれます。
車から降りているトロイを狙う銃弾は車の中にいる老夫婦にも当たり皆死んで終わります。

 

最後の場面はデヴィッド・リンチみたいなんですよね。
ウェス・アンダーソンから始まり、クエンティン・タランティーノになってニコラス・ウィンディング・レフンからデヴィッド・リンチになるという。

ポール・シュレイダー監督の前作『ラスト・リベンジ』は本作同様にニコラス・ケイジとコンビを組んだものですが、元々はレフン監督が撮る予定だったのがシュレイダー監督に変更になって、レフン監督は製作総指揮に回った経緯があったみたいで、ああレフン監督に繋がるのか!と思いました。

『ラスト・リベンジ』は批評家から酷評されたようなのですが、これには最終編集権を配給会社に奪われてしまった経緯があったみたいで、その辺のことは公式サイトの監督インタビューに書いてありました。

ポール・シュレイダー監督インタビュー

『ドッグ・イート・ドッグ』を引っ提げて、カンヌ(国際映画祭)に戻ってこられるなんて、夢が叶ったよ!ニコラス・ケイジと私は『ラスト・リベンジ』のファイナルカット(最終編集)権をめぐって、かなりフラストレーションが溜まる経験をしたんだ。だから、お互いにもう一度、一緒に仕事がしたいと考えていた。私は彼に「もし、お互い生きていたら、また一緒に映画を撮るべきだ。でも、次はファイナルカットの権限は必ず守って、僕たちが作りたい作品を作ろう!」って言ったんだ。彼の返事は「もちろん!」だったよ。

しばらくして、プロデューサーのマーク・バーマンが『ドッグ・イート・ドッグ』の企画を持ってきたが、私は「これだ!」と思った。当初、ケイジはマッド・ドッグ役が合っていると思った。でも、ケイジが脚本を読んでから、トロイ役の方がハマると分かったんだ。そこで、マッド・ドッグ役には、私の親友であるウィレム・デフォーに依頼したんだ。

でも、重要なことは「エドワード・バンカーの原作をどうやって現代によみがえらせるか?」ことだった。バンカーの感性は、1970年代に作り出されたものだからだ。本作の時代設定は現代なので、「さぁ、どうしよう?」と思ったが、脚本家のマット・ワイルダーは、それを見事にやってのけてくれた。ちなみに、トロイが話すハンフリー・ボガードのくだりは当初、ワイルダーが描いた脚本にはなかったんだ。あれは撮影中に、ケイジが自分で考え出したものなんだよ。

そして、私はバンカーのノワールテイスト溢れるストーリーにエネルギーを注ぎ込むため、あえて若いスタッフを集めてクリエイティブチームを作った。撮影部、美術部、衣裳部、編集、アソシエイト・プロデューサー、作曲家……各部署のトップのスタッフは、初めて独り立ちする作品だった。彼らは言うならば、ポスト・ルール世代。つまりルールを破りたくない世代で、ルールがあるなんてことさえ知らないんだよ。そこで、私は彼らに言ったんだ。「この映画には大手スタジオで作るような予算はない。それは、残念な知らせかもしれない。でも、良い知らせは、自由にこの映画を作っていいってことだ。だから、私を大いに驚かしてほしい。唯一禁止することは、つまらないことをすることだ」ってね。

とにかく、この作品は自由に撮ることができた。「こうやってみよう! ああやってみよう!」ってね。これこそ、つまらない映画を作らないための“自由”なんだ。制作スケジュールは、効率的なものだった。これは新しい映画製作の時代ならではだね。ロケ地をロサンゼルスからクリーブランドに変更したことで、税金分を節約することもできた。そのおかげで、これまで見落とされてきたダイナミックな都市の魅力を十分に活かすことができたし、常にリラックスして、制作に取り組むことができたんだ。

正直な話、自分でエル・グレコを演じる気は、まったくなかった。プリプロダクションの段階で、マイケル・ダグラス、クエンティン・タランティーノ、マーティン・スコセッシ、ニック・ノルティ、クリストファー・ウォーケン、ジェフ・ゴールドブラム、マイケル・ウィンコット、ルパート・エヴェレットらに、このクリーブランドのトランスジェンダーのギャングを演じないかと声を掛けたが、さまざまな理由で実現しなかった。そこで、「演技は決して巧くないが…私なら、少なくとも面白くは演じられる!」と思った。私が演じれば、ギャラを払うこともないからね(笑)。

公式サイトhttp://dogeatdog-movie.com/about.phpより引用

そしてこのインタビューを読むと、本作はポール・シュレイダー監督とニコラス・ケイジのリベンジ作品であることも分かります。

低予算のため、アイデア勝負でスタッフに若手を起用し自由に作ったことが書いてあります。

なるほど、観終わったときに、ポール・シュレイダー監督、御年70歳にしてこの映像や音楽のセンス若いな!と思ったのですが、こういうことでしたか。
70歳にもなって、かっちょいい映像作るなぁと思いましたよ。

たしかにストーリーだけを追っちゃうと凡庸な作品なんです。
訳分からない作品でもあります。
自分も正直、観終わった瞬間は☆3~3.5点かなっていう感じでしたが、つまらないってだけで終わらすことは出来ない作品だとも感じました。
そして後から反芻するとじわじわとくるんですよねぇ。

これ公開から3日目の夜の時間で、劇場ガラガラだったんですけど、ちょっとこれ観といた方がいいぞと思う作品です。

上映時間93分なので結果的に合わなかったという方が見てもダメージが少ない作品だと思いますのでおススメです。

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ料金 1300円
2017年 99作品目 累計105800円 1作品単価1069円

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