加藤剛さんがリアルです ☆3.5点
フジテレビ製作によるオリジナルストーリーの作品で、モノクロ映画のヒロインと撮影所の助監督の青年を巡るラブファンタジー。
監督はフジテレビディレクターの武内英樹、主演に綾瀬はるか、坂口健太郎、共演に本田翼、北村一輝、加藤剛
予告編
映画データ
本作は2018年2月10日(土)公開で、全国299館での公開です。
ワーナー・ブラザース配給のフジテレビ映画ですね。
予告編は昨年の9月、10月とか早い時期からやってたので、かなり目にしました。
予告の感じでは見に行こうかなぁと思ってたんですが、2月は見たい作品が多くて後回しにしてたら、見なくてもいいやとなりました。
しかし、ファーストデーだったので『ブラックパンサー』か『シェイプ・オブ・ウォータ』か『15時17分、パリ行き』を見ようと思ったんですけど、見たい時間のがかなり混んでたんで本作を鑑賞しました。
丸の内ピカデリーシアター3で鑑賞しましたが、上映も3週目なんで3割くらいの客入りでしょうか。
監督は武内英樹さん
フジテレビのディレクターです。
映画は「のだめカンタービレ」と「テルマエ・ロマエ」を監督してますね。
ドラマは「デート〜恋とはどんなものかしら〜」が面白かったです。
主演に綾瀬はるかさん
近作は『リアル~完全なる首長竜の日~』『本能寺ホテル』を観てます。
主演に坂口健太郎さん
近作は『予告犯』『俺物語!!』『ナラタージュ』を観てます。
共演に本田翼さん
近作は『ニシノユキヒコの恋と冒険』『鋼の錬金術師』を観てます。
共演に北村一輝さん
近作は『KILLERS/キラーズ』『無限の住人』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『羊の木』を観てます。
共演に石橋杏奈さん
近作は『22年目の告白-私が殺人犯です-』『泥棒役者』『勝手にふるえてろ』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
美雪: 綾瀬はるか
牧野健司: 坂口健太郎
成瀬塔子: 本田翼
俊藤龍之介: 北村一輝
山中伸太郎: 中尾明慶
成瀬社長: 西岡徳馬
吉川天音: 石橋杏奈
本多正: 柄本明
病室の老人: 加藤剛
タヌキ: 竹中直人
トラ: 池田鉄洋
トリ: 酒井敏也
警察官: 今野浩喜
あらすじ
映画監督を夢見る青年・健司(坂口健太郎)が密かに想いを寄せるのは、通いなれた映画館・ロマンス劇場の映写室で見つけた古いモノクロ映画のお姫様・美雪(綾瀬はるか)。今は誰も観なくなったその映画を、毎日のように繰り返し見ていた健司の前に、ある日奇跡が起きる。
美雪が目の前に現れたのだ!その日から2人の不思議な同居生活が始まった。モノクロの世界しか知らない美雪にカラフルな現実世界を案内する健司。同じ時間を過ごす中で、2人は次第に惹かれあっていく。
しかし、美雪にはある秘密があった。現実の世界に来るための代償で、人のぬくもりに触れたら美雪は消えてしまうのだ。
そんな中、美雪は映画会社の令嬢・塔子(本田翼)が健司に想いを寄せていることを知る。好きだから触れたい、でも触れられない・・・この切ない真実に2人はどう向き合い、どんな答えを出すのか-
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
舞台は昭和35年です。
京映撮影所の助監督の牧野健司は、連日、終映後のロマンス劇場を訪れては館主の本多正に幾ばくかの金を払い、昔、封切られた白黒映画の「お転婆姫と三獣士」を観ることを楽しみにしてます。
健司は主人公のお姫様・美雪に恋していました。
時間は飛んで現在。
病院のナースステーションで禁止されているスマホをいじる、ぐうたらナース吉川天音は自身が担当している余命幾ばくも無い男性老人患者の話を同僚としています。
その老人患者には孫と思われる女性が頻繁に見舞いに訪れるが、老人が転んでも手を貸すことなくしらんぷりしてるので遺産目当てかな?と話してます。
その老人患者の検温時間をすっかり忘れていた吉川は、先輩ナースに注意されると病室に向かいます。
老人の検温をしてると、テーブルに置いてある原稿に目が留まり、そのことを尋ねると、昔、映画の助監督をしていてそのときに書いていた脚本と言われます。
すぐにナースステーションに戻ると先輩ナースから怒られるため、どんな話か聞かせてとせがむと、時代は再び昭和35年に戻ります。
ある晩、健司がロマンス劇場に行くと、本多から「お転婆姫と三獣士」が見れるのは今日までと言われます。
理由を聞くと廃棄フィルムであったその映画は、現存するものが1本しかなくマニアが高値で買い取ったためでした。
名残りを惜しんでフィルムをかけ映画を見ていると、折から降り出した雨と雷により停電してしまいます。
するとスクリーンの中から抜け出した白黒の美雪が『リング』の貞子のように現れます。
興奮した健司が近づいて触ろうとすると「無礼者」と言って、床に落ちてるジュースの瓶で殴るのでした。
映画のお転婆姫そのままの性格に少しげんなりする健司でしたが、そのままにする訳にもいかず、自分が住んでる安アパートに連れて帰りますが、その際に職質を受けた警察官にも危害を加える凶暴さでした。
翌日、健司が仕事に行くと言うと、美雪も撮影所に行くと言います。
美雪がスクリーンから出てきたのは、映画の中では同じことを繰り返す毎日で飽きていたからでした。
健司は人目につかないように美雪に布団をかけてリアカーに乗せて撮影所に向かいます。
途中、川沿いの道でお地蔵様を見つけると外に出て手を合わせる美雪でした。
健司は撮影所に着くとメイク室に美雪を入れドーランを塗ろうしますが、自分で出来ると言います。
ドーランを塗って衣装を着た美雪が出てくると、健司が初めて目にする、モノクロでないカラーの美雪の姿でその美しさに感激するのでした。
仕事がある健司は美雪を1人にしますが、見学する先々でトラブルを起こす美雪に健司は怒ります。
しかし、そんなことお構いなしに、「撮影所に来る途中で失くした御守を探せ」と言う美雪に、遂に健司の堪忍袋の緒が切れるのでした。
美雪がお地蔵様付近の草むらで1人で御守を探してると雨が降ってきます。
撮影所にいた健司はすぐに後悔すると美雪の元に駆け付け御守を探します。
健司が御守を見つけると雨は止み、空には虹がかかっていました。
健司はそれを見ると、虹は二重にかかることもあると言い、いつかこの場所から2人で二重にかかる虹を見たいと言います。
撮影所では健司たち助監督に脚本を書く機会が巡ってきます。
優秀な脚本には自身が監督するチャンスを与えられるとのことで健司は俄然張り切ります。
この企画は健司に恋心を寄せる社長令嬢の塔子が父親に進言したものでした。
書くテーマが見つからない健司でしたが、自身に起きた奇跡を基にしたラブストーリーに決めるとペンが走ります。
恋愛経験の少ない健司はシナリオハンティングも兼ねた美雪とのデートを楽しみ充実した毎日を送ると、上司からはラストは再考の余地があるが脚本を採用すると言われるのでした。
この頃、健司と美雪のデートを偶然目撃した塔子は美雪を訪ねに健司の家に行きます。
塔子と喫茶店で話をした美雪は、健司への恋心を見抜くと、自分は恋人ではなく親戚だと言って塔子を安心させます。
脚本も採用され順風満帆な健司はその勢いのまま美雪を蛍狩りに誘うとプロポーズします。
しかし、美雪からは無理だと言われてしまいます。
美雪はこの世界に来る代償として、人の温もりに触れたら元の世界に戻ってしまう運命だと言います。
健司はどうしてそこまでしてこの世界に来たのかを聞くと美雪は昔を語ります。
昔は、この映画を多くの人が見に来ていて、人々の喜ぶ顔をスクリーン越しに見てたと言います。
しかし、段々と見る人が減り、遂には見向きもされなくなったと言います。
しかし、それは分かってるとも言います。
そんな時に何年も経って健司がフィルムを見つけて、また熱心に映画を見てくれて嬉しかったと言います。
そしてフィルムが人手に渡ってしまう最後に、一目会いたくてお礼が言いたかったと言います。
健司のためにも身を引くべきと考えた美雪は仲違いしたふりをして家を出て行きます。
そして美雪は塔子を呼び出すと健司についてのアドバイスして塔子に託すのでした。
美雪は行く当てもなく街を彷徨いロマンス劇場の前を通ると、本多から「あなたは!」と声を掛けられます。
本多は美雪に何も聞かずに劇場の2階を自由に使っていいと言うのでした。
美雪のアドバイスを受けた塔子は積極的に健司を誘いデートに出かけます。
健司も美雪を忘れようとデートを楽しみますが、塔子とふと繋いだ手にハッとします。
健司の様子に気付いた塔子は「こうして触れ合えることは当たり前のように思っていたが、すごく幸せなことだと気づいた」と言い、健司に好きと告白するのでした。
塔子はその後も健司とデートを重ねますが、健司はたびたび美雪のことを思い出してしまいます。
その様子を感じ取った塔子は、美雪から呼び出されてアドバイスを受けたことを話します。
美雪がロマンス劇場にいることを聞いた健司は劇場に向かいます。
劇場には映画を見に来た人の列が出来ていましたが、本多と顔を合わせると貸切にしてくれます。
健司が不思議そうに本多の顔を見ると、奥さんと写った写真を見て、うちも同じだったと言います。
そしていつの間にか消えてしまったと言うのでした。
ロビーに現れた美雪に帰ろうと言う健司でしたが、美雪は健司に何もしてあげることが出来ないと言って泣きます。
普通の人がしてあげられることが出来ないのだと言います。
しかし健司はそれでもいいと言って、美雪じゃなきゃダメなんだと言います。
美雪は泣きじゃくってその言葉が聞けただけで十分と言い、抱きしめてと言うのでした。
再び時間は現在に戻ります。
病室で老人の話を聞き終えた吉川はいいお話ですねと感激しています。
そして牧野さんのお話だったんですねと言い、結末を是非書いて欲しいと言うとお見舞いの人が現れます。
吉川が「お孫さんが来ましたよ」と言って戻ると現れたのは美雪でした。
60年前のロマンス劇場で健司は美雪を抱きしめず、共に生きていくことを決めたのでした。
病院で牧野が転んでも介助しなかったのは美雪で吉川はそれを見ていたのでした。
結局、脚本の結末が書けなかった健司は助監督のままで、やがて京映撮影所は倒産します。
健司は高齢となった本多の後を継いでロマンス劇場を経営してましたが、それもやがて閉館を余儀なくされるのでした。
健司が段々と老いていくのに対し美雪は若いままで、余命幾ばくもない病気となった健司が入院していたのでした。
健司は脚本を完成させると危篤状態に陥ります。
連絡を受けた美雪が駆け付けると、健司は呼吸器を外し、何か話そうとします。
美雪は健司を見つめ今までの感謝を述べると、最後に健司に触れたいと言います。
健司はゆっくりと頷くと、美雪は健司の手を握りしめ胸に顔をうずめます。
暫くして美雪が消えると健司もそのまま息を引き取るのでした。
健司が完成させた脚本は「お転婆姫と三獣士」の世界に健司がダイブするものでした。
舞踏会のシーンに健司が現れると、美雪姫の前に跪いて一輪のバラを差し出します。
美雪姫がバラを受け取ると白黒映画が鮮やかなカラー映画にみるみる変わります。
健司は美雪姫にキスをすると皆に祝福され映画は終わります。
本作は様々な映画のオマージュになってるそうでして、お姫様のご乱心は言わずと知れた『ローマの休日』ですね。
劇中映画の「お転婆姫と三獣士」は『オズの魔法使い』
スクリーンの中の主人公に恋して、第四の壁を突破して出てくるのは『カイロの紫のバラ』
ただ白黒で出てきて、登場の仕方もホラーっぽいんで貞子みたくなってましたけど、それも狙ってたぽいです。
ついでに出てきたときに、コーラ瓶みたいので殴りますが、映画だったら飴ガラスで壊れるところ、壊れないのも劇中劇の主人公と現実を対比させているのでしょう。
美雪が現れる時に映画館に雷が落ちるのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
健司と本多の関係は『ニュー・シネマ・パラダイス』ですかね。
電話ボックスでのガラス越しのキスは今井正監督の『また逢う日まで』とのことですが、この作品は見たことありません。
岡田英次さんと久我美子さん!
久我美子さん、ご存命なんですよね。
「お転婆姫と三獣士」のポスターの美雪姫役が安藤絹枝なのも田中絹代さんからでしょうね。
健司の苗字が「牧野」姓なのは日本映画の父・牧野省三さんからだと思うんですが、津川雅彦さんの祖父です。
俊藤龍之介の「ハンサムガイ」シリーズは、タフガイの石原裕次郎、マイトガイの小林旭、ダンプガイの二谷英明あたりからきてるのは言うまでもありません(日活ダイヤモンドライン)
俊藤龍之介が美雪にちょっといいこと言って、スポーツカーで撮影所をあとにするとき、ちょっと赤木圭一郎も想起しました。
そんな感じでオマージュに溢れてるんですけど、前半はわりとわちゃわちゃしてて、そんなに面白くなかったです。
まず美雪姫の性格が、映画の中の女優が出てきた訳じゃなくて、お転婆姫がそのまま出てきたから仕方ないんですけど、あれのどこに健司が惹かれたのか理解し辛くノレないんですよね。
まぁ健司がM体質というのもあると思いますが。
撮影所でトラブル起こすあたりもノレなくて、暴力的だなと思って『猟奇的な彼女』?と思ったりして。
ただ触れられてはならないから、あのような暴力だったのかと、後から分かる訳ですが、前半はノレませんでしたねぇ。
オードリー・ヘップバーンの『ローマの休日』を意識して、綾瀬はるか史上最高に美しく撮ることを目標にしたらしいですけど
前半はつまらなかったので、「おっぱい見えないかなぁ」ってばっかり考えてましたね。
ただ加藤剛さんが坂口健太郎さんと同一人物だと分かると面白かったですね。
老いてく者と変わらない者の対比も切なかったですし、何より加藤剛さんリアルだなぁと思いました。
結構、周りを見ると女性の観客が泣いてる人が多いようで、自分は「60年間、美雪は戸籍とか住民票どうしたんだろ?」とか考えて、全く感動はしなかったんですが、加藤剛さんホントよかったんで☆3.5点です。
感想でも書いたように、加藤剛さんの演技が素晴らしかったんですが、2018年6月18日に80歳で亡くなられました。
また、演じた役の牧野姓からイメージされる日本映画の父・牧野省三さんの孫である津川雅彦さんも2018年8月4日に78歳で亡くなられました。
昭和からの名優のお二人が、立て続けにお亡くなりになりとても残念ですが、謹んで哀悼の意を表します。
鑑賞データ
丸の内ピカデリー ファーストデイ 1100円
2018年 38作品目 累計28100円 1作品単価739円
コメント
こんにちは。
先日wowowでこの映画を見ました。
前半本当につまらなくて何度も挫折しそうになりましたが
最後にまさかの号泣。
結果録画してたので3回見るはめに。
毎回泣いています。
塔子が美雪から聞いたアドバイスを健司にするシーンは
猟奇的な彼女にありましたね。
そして最後はタイタニックです。
出演者全員がにこやかに笑っていて健司と美雪が幸せそうで
ホッとしました。^^
くみこさん
コメントありがとうございます。
ホント前半がツラかったですが、全て最後の方への布石でしたね。
そしてラストでの大団円。
現実は死んでるからアンハッピーなんですが、映画(フィルム)は永久に残るということを示唆するようなハッピーエンドでよかったですよね。
こんにちは。
私は、先日TVで放送されたこの映画を見ました。その放送は本編ノーカットの放送でした。eigamanzaiさんがまとめているあらすじを見させて頂いたところ、美雪が塔子にアドバイスをし、塔子が積極的に誘い、健司とデートを重ねると書かれていたのですが、TVで放送されたものにはデートを何度もする描写がありませんでした。その描写はカットされていたのでしょうか?あと、細かいことなのですが塔子の「こうして触れあえることは〜」というセリフはなく、健司の「当たり前のことかと思ってました、隣にいる人の温もりをしれるって。でも、それって…」というセリフだと思います。長文失礼しました。
うどさん、コメントありがとうございます。
劇場公開時に観ただけでもう忘れてしまったんですが、アマゾンプライムで配信してたので確認したら、ご指摘頂いた通りでした。塔子と健司が会ってるシーンと健司の台本上の妄想デートシーンがごっちゃになってました。セリフもご指摘頂いた通りで、塔子が言うのは変ですよね。
ご指摘下さいましてありがとうございました。