三度目の殺人 評価と感想/本当の事に興味あります

三度目の殺人 評価と感想
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それぞれが抱えた闇を浮かび上がらせる ☆4点

『そして父になる』で2013年の第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した是枝裕和監督によるオリジナル脚本の法廷心理ミステリーで主演は再タッグとなる福山雅治、共演に役所広司、広瀬すず

予告編

映画データ

三度目の殺人 (2017):作品情報|シネマトゥデイ
映画『三度目の殺人』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作『そして父になる』の福山雅治と是枝裕和監督が再び組んだ法廷サスペンス。
http://cinema.pia.co.jp/title/172308/

本作は2017年9月9日(土)公開で全国で300館規模での公開ですね。
是枝作品ということで製作がフジテレビで、公開に合わせて土曜プレミアムで『そして父になる』を放送するようです。

今年は『愚行録』と『追憶』がごっちゃになったりしてて、追憶の上映の5月頃には本作の予告編が流れ始めたりしてて「あ、またミステリーやるんだ」と思って楽しみにしてました。

監督は是枝裕和さん
映画館で観たのは前作の『海よりもまだ深く』が初めてでした。

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その後『海街ダイアリー』をテレビで見ました。

主演は福山雅治さん
近作は『るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編』と『SCOOP!』を観てます。

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共演に役所広司さん
近作は『渇き。』『日本のいちばん長い日』『関ヶ原』を観てます。

共演に広瀬すずさん
近作は『怒り』『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』を観てます。

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他に共演と配役は以下の通りです。

重盛: 福山雅治
三隅: 役所広司
山中咲江: 広瀬すず
山中美津江: 斉藤由貴
摂津大輔: 吉田鋼太郎
川島輝: 満島真之介
服部亜紀子: 松岡依都美
重盛ゆか: 蒔田彩珠
篠原一葵: 市川実日子
重盛彰久: 橋爪功
スナック店長: 山本浩司
留萌の元刑事: 品川徹

あらすじ

それは、ありふれた裁判のはずだった。殺人の前科がある三隅(役所広司)が、解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。犯行も自供し死刑はほぼ確実。しかし、弁護を担当することになった重盛(福山雅治)は、なんとか無期懲役に持ち込むため調査を始める。
何かが、おかしい。調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれてく。三隅の供述が、会うたびに変わるのだ。金目当ての私欲な殺人のはずが、週刊誌の取材では被害者の妻・美津江(斉藤由貴)に頼まれたと答え、動機さえも二転三転していく。さらには、被害者の娘・咲江(広瀬すず)と三隅の接点が浮かび上がる。重盛がふたりの関係を探っていくうちに、ある秘密に辿り着く。
なぜ殺したのか?本当に彼が殺したのか?得体の知れない三隅の闇に呑みこまれていく重盛。弁護に必ずしも真実は必要ない。そう信じていた弁護士が、初めて心の底から知りたいと願う。その先に待ち受ける慟哭の真実とは?

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

事件の真相で話を引っ張りつつ、司法の在り方とか死刑制度とか、そもそも人は人を裁けるのか?といったことに疑問を投げかける作品です。

重盛が経営する弁護士事務所で三隅の弁護を担当していた摂津は、接見するたびに供述が変わる三隅に手が負えなくなり、重盛に助けを求めてきます。
重盛と摂津はパートナー弁護士のような関係でしたが、重盛は「だったら最初から任せろよな」と悪態をつきながらも渋々引き受け、以後、重盛と摂津とアソシエイトの川島で弁護することになります。

一応、三隅の希望は死刑回避だったと思うのですが、話が進んでいくと矛盾してるような気もするのですが、重盛も注目を浴びてる事件なので、まず勝つ、というのが前提にあります。

三隅は昭和34年生まれ。昭和61年に北海道の留萌で2人を殺した強盗殺人を犯し無期懲役で服役していました。
懲役30年目で仮釈放が認められ、川崎の食品加工工場で働いてました。
36歳になる娘が留萌にいるようですが、長いこと服役してたので没交渉のようでした。
今回の事件はその会社の社長を殺し財布を奪って火をつけた強盗殺人の容疑で起訴されていて、強盗殺人なら死刑は確実です。

三隅は捜査の段階で自白していて容疑を認めていたのですが、事件の動機とか手順とかが今一つはっきりしません。
重盛が疑問点を突っ込むと、供述がコロコロ変わるんですが、事件自体に目撃者はいなく検察側も自白と状況証拠が頼りでした。

重盛は殺人は争わずに、強盗を無くすことを考え、単純殺人にして死刑を回避することを考えます。
三隅が犯行直後に乗ったタクシーの車載カメラを確認すると、三隅が奪った財布を懐から出したあとに窓を開けてるのが記録されてました。
重盛は運転手になぜ窓を開けたのかと疑問を投げかけると、ガソリンの臭いがしたからじゃないか?と言い、財布にガソリンが付いていたと考えます。
検察が保管してる証拠を調べるとガソリンが染みついていました。
最初から強盗殺人で財布を盗る目的ならば、財布を盗ったあとにガソリンをかけるので、財布にガソリンは付かないんじゃないかと考えます。
会社を解雇された恨みから殺したという単純殺人の線で主張を展開していくことに決めます。

事件は裁判員裁判なので公判前整理手続きで裁判官や検察側と顔を合わせると単純殺人で弁護を主張していくことを伝えます。

裁判の勝ち筋が見えてきたと思った重盛でしたが、週刊誌に三隅の独占スクープインタビューが載ります。
その記事によると、社長の妻から依頼された保険金殺人であることが書かれていて、重盛はビックリします。
すぐに三隅に確認しに行くと、のらりくらりとしてますが、そうだということになり、重盛もその線で調べ直します。

すると殺人事件の前に、社長の妻から50万円の入金があり、事件の2週間くらい前に「例の件、よろしく頼む」というメールがありました。
検察はそんなメールは保険金殺人の証拠にならないと証拠採用を拒みますが、裁判官に丸め込まれると証拠として提出します。
このあともそうですが、裁判官の人物像は事なかれ主義として描かれてましたね。
摂津もあとで言いますが、裁判官も複数の裁判を抱えていて、いかにスケジュール通りに運ばせるかだと。

保険金殺人の疑いが出てきてマスコミの取材が社長の妻の自宅にくるようになると、山中家(母娘)の様子が描かれます。
山中の食品会社は食品偽装をしていて、三隅へのメールと支払いは、その食品偽装の依頼と報酬でした。
山中の娘の咲江は、そんな不正で得たお金はいらないと母の美津江に言いますが、食品偽装がバレたら会社が倒産してしまうため、美津江は裁判で余計なことを言わないようにと咲江に釘を刺します。

重盛は何度接見しても実態が掴めない三隅の事を知ろうと、留萌での殺人事件の裁判資料を取り寄せます。
持ってきてくれたのは重盛の父の彰久で、その事件の裁判官だったのでした。
彰久は自分は死刑廃止論者じゃ無いが、三隅を無期懲役にしたのを後悔していて、あのとき死刑にしていれば新たな犯罪は生まれなかったと言います。
世の中には人を殺す奴と殺さない奴がいて、その間には深い溝が有り、三隅は殺す奴の方だと言います。

重盛は最初は交通費をケチって行かなかった留萌に行きます。
三隅の過去を調べるのと、三隅の娘に情状証人として出廷してもらうためでした。
前の事件はヤミ金業者2人を殺した事件でしたが、動機はよく分かりませんでした。
三隅の娘は留萌のスナックに勤めていましたが、今度の事件でマスコミが来るようになると、街を出て行ってしまっていました。
スナックの店長はいつまで殺人者の娘としてレッテルを貼られなければならないのかと憤っていました。

重盛は東京に帰ってくると今度は三隅が住んでたアパートを調べます。
大家さんに話を聞くと、いい人とのことで時々、びっこをひいた女子高生が訪ねてきていたとのことでした。
部屋の中には大きな鳥かごがあり、死んでしまった小鳥を庭先に埋めていいか、大家さんに聞いてきたとのことでした。
庭先を見ると小石を置いて十字架にした小鳥の墓がありました。
三隅が殺した山中の焼け跡も十字架でした。

びっこをひいた女子高生は咲江で、重盛は三隅の謝罪の手紙を持って行ったときに、一度会ったことがありました。
重盛は咲江に話を聞きに行くと平成28年2月15日の雪の降った日に学校の帰りに河原で三隅に会ったとのことでした。
その日誕生日だった咲江は雪で作ったバースデーケーキをプレゼントされたそうで、それをきっかけに三隅と仲良くなります。

裁判が始まると美津江は証人として呼ばれます。
メールの事やお金のことを突っ込まれますが、夫から頼まれた仕事の件を代わりにメールしただけで、詳しいことは分からないと偽装のことは誤魔化し、もちろん保険金殺人も否定します。

咲江が重盛の事務所を訪ねてきます。
重盛、摂津、川島の3人で話を聞くと、三隅が父を殺したのは自分のせいだと言います。
咲江は14歳のときから父に性的虐待を受けるようになっていて、そのことを三隅に話していました。
殺して欲しいと頼んだことは無いが、殺してやりたいとは思って、その気持ちは三隅に完全に見透かされたと言い、それがハッキリ分かると言います。
重盛も拘置所のガラス越しに三隅と手を合わせたときに、娘の存在を言い当てられたことがありました。
川島は三隅が咲江の気持を推し量った忖度殺人なのかと絶句します。
重盛たちはその線で裁判を進めることも出来るけど、その場合には咲江にも色々辛いことを聞かれることになるが大丈夫かと聞くと、咲江は大丈夫と答えます。

重盛は咲江から聞いた内容を三隅に伝えに行きます。
雪の日に撮った写メもありました。
三隅は咲江と会ってたことは認めましたが、父親から虐待を受けてた話なんか知らないと言います。
そして、あの娘は嘘をつく、とも言います。
そして、そもそも自分は殺してないと言い始めます。

最初の取り調べでも弁護士との接見でも、やってないと言ったが、認めれば死刑は回避できると言われたと。
混乱する重盛に畳み掛けるように持論を振りかざすと、これは信じるか信じないかの問題だと重盛に迫ります。
重盛は信じる信じないの明言は避け、法廷戦術的に不利なことを伝えますが、依頼人の希望に沿うのが弁護士なので、やってない方向で進めることにします。

「依頼人を裏切った弁護士懲戒処分例」 – 弁護士自治を考える会

重盛は事務所に戻って摂津に聞くと、摂津は「そんなこと言ってんの?」ともう呆れてました。

裁判。
三隅は証言の途中で自分はやってないと言い始めます。
裁判長は不規則発言をすると退廷を命じますよと言いますが、三隅はやってないことを主張します。
一旦休廷して、裁判官、検察、弁護人で協議を開きます。

頭を抱える裁判官は、重盛に、「殺人は争わないと言ったじゃないですか」と言い、検察も同調します。
重盛は「でも被告が言ってるんで」と殺人も争う方向で進めたいことを言います。

固まる3者。
裁判をやり直さなきゃいけないかなぁ、という空気が流れる中、裁判長が目配せすると阿吽の呼吸で現在の審理にそれを加えることにして、今の裁判を続行させることに決まります。

それを見ていたアソシエイトの川島が「何かヘンですよね」と言うと、ここでさっきの「スケジュール通り進めるのが裁判官の仕事だ」と摂津が言うわけです。

判決はもちろん死刑。
死刑を回避したいがために途中からやってないと言い出したり、被告の主張は出鱈目過ぎると怒られて終わりです。
勝ちにこだわっていた重盛でしたが、このときには負けてショックを受けるとかそういうことは無くなってました。

判決後、重盛が三隅に会いに行くと、現れた三隅はキリストのよう。
すっきりした顔をしていて何でも甘んじて受け入れるという表情や雰囲気です。

重盛は、三隅がやってないと言い出したのは咲江を守るためだったんじゃないかと持論を展開します。
咲江に性的暴行の証言をするという辛い思いをさせないために、やってないという主張をして殺人そのものに争点をずらしんたんじゃないかというわけです。
三隅はそれもはぐらかしたまま、真相は分からず映画は終わります。

 

事件の真相はどうなんだろう?というミステリーの部分で興味を惹かれるので124分の上映時間ですが飽きることなく見れます。
ただ最後まで観てもすっきりしない曇り空みたいな話なのでモヤモヤしたものは残ると思います。

「自分が生きている社会が、怖くなるかも」 是枝裕和監督が『三度目の殺人』に込めた思い
なぜ今、法廷サスペンス?

言いたいことも分かるんですが、重盛と父の話とか、重盛と娘のエピソードとか、三隅の登場しない娘を咲江とダブらせるとか、色々手を広げすぎた感じも否めなくて、この辺は『そして父になる』とか『海街ダイアリー』の要素も入れたかったのかな?と思いましたが、ちょっと物語として全体がぼやけてしまった感じがしました。

三度目の殺人 インタビュー: 是枝裕和監督が投じた新たな一手、その真意に迫る (2) - 映画.com
三度目の殺人の必見、インタビュー。今注目の俳優・監督とのインタビューを通じて映画「三度目の殺人」の注目ポイントを紹介。2ページ目

映像的にも分かり辛くなるように撮ってるんですよね。
予告編にもありますが、三隅が血の付いた顔を手で拭うシーンは、咲江にも同じことをさせますし、三隅と咲江と重盛が雪の上で寝そべってるシーンは重盛の夢ですし、拘置所の面会室でガラス越しの三隅と重盛の顔をダブらせたりとか、色々とイメージが膨らむようには撮ってると思います。

手の甲の治らない傷とか十字架、三隅そのものがキリストに見えるイメージとか、キリスト教的要素もあるのかな?と思いましたが、是枝監督にそういうバックボーンがあるのかは分かりません。
キリスト教的な視点で考察されていた感想がありましたので貼っておきますね。

【ネタバレあり】『三度目の殺人』解説・考察:タイトル、ラスト、器、赤いコートに込められた意味とは? | ナガの映画の果てまで
はじめに みなさんこんにちは。ナガと申します。 今回はですね、本日公開の映画「三度目の殺人」を見てきましたので

監督のインタビューを読むと役所広司さんの演技を絶賛されているんですが、確かにその通りだと思いました。
役的にどんどん大きくなっていったかなという気はするのですが、果たして22歳で子供が出来て27歳で強盗殺人を犯し、その後30年間服役して、出所して1年そこそこの人が、ここまで得体の知れない大きな存在になるのかな?という疑問は常に頭の中にありました。

レクター博士みたいなバックボーンがあれば、色々な問題提起を投げかけるのも説得力があるんですけど、役の設定というよりは役所広司さんという存在に頼り過ぎた気もするんですよね。

ただ、この司法の問題は凄く共感するところがあります。
弁護士がいう利害調整という言葉も、民事では全く以てそうだなぁと思います。
民事なんかだと、本来、当事者同士のシンプルな話が、事情を知らない第三者(弁護士・裁判官)が出てきて、法律的な知識を振りかざして、あーでもない、こーでもないとやるわけじゃないですか。馴染みのない法律用語使ったりして当事者は置いてけぼり食らったりするわけですよね。
理不尽なことでも訴えられたら、裁判で反論しなければ相手の主張が通ってしまう訳で、法律は弱いものを守るために作られてるのでは無くて、システムを熟知してる者のために作られてるんですよね。
なので、そういう社会に対する憤りは大変よく分かりますし、是枝監督の問題提起もよく分かりました。

でも鑑賞中はグッと現実に引き戻されるときがあって、それは斉藤由貴さんと橋爪功さんが出てきたシーンなんですけど、斉藤由貴さんなんかは1回目の認めなかった会見が法廷での証言とか偽装とリンクしちゃったり、橋爪さんは元裁判長の役で社会的な問題も口にするので大変だなと思ったりしましたが、まあ映画とは関係ないですね、すみません。

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自分的には絶賛とまでは言えないんですけど、『愚行録』のようなドス黒い澱のようなものが漂っているいい映画だなと思いました。

鑑賞データ

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2017年 150作品目 累計160300円 1作品単価1069円

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