『愚行録』評価と感想/どいつもこいつもゲス過ぎる

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2017年現時点で邦画ナンバーワン ☆5点

予告編はこんな感じです


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映画『愚行録』の作品情報:「乱反射」「後悔と真実の色」などで知られる人気小説家、貫井徳郎の直木賞候補作を実写化したミステリー。未解決の一家殺人事件を取材する雑誌記者が、その思わぬ真相にたどり着く姿を追う。メガホンを取るのは、短編を中心に手掛けてきた石川慶。
『愚行録』は2017年の映画。『愚行録』に対するみんなの評価やクチコミ情報、映画館の上映スケジュール、フォトギャラリーや動画クリップなどを紹介しています。
この映画は、あんまり映画館で予告編を見なかった気がします。
内容も殆ど知らなくて、事件モノっぽいことと、オフィス北野の製作で珍しいなと思いました。

北野武監督作品以外のオフィス北野製作・配給作品は観たことなかったんですが、調べてみると過去に『七人の弔』っていうダンカン監督作品と『BIG RIVER』っていうオダギリジョーさん主演作品があるみたいですね。

ワーナー・ブラザースとオフィス北野のタッグは『アウトレイジ』からでしょうか。
『アウトレイジビヨンド』『龍三と七人の子分たち』と続いて今作。今年はあとアウトレイジの最終章も控えています。

監督の石川慶さんは長編は初監督。
東北大学物理学科卒業からアンジェイ・ワイダやロマン・ポランスキー、昨年『イレブン・ミニッツ』が公開されたイエジー・スコリモフスキを輩出したポーランド国立映画大学(ウッチ映画大学)で演出を学んだという異色の経歴の方です。

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風が吹けば桶屋が儲かる的な ☆4.5点 予告編はこんな感じです映画データはこちらからどうぞ短い特報予告編を見て面白...
原作は貫井徳郎さんによる2006年に東京創元社から発行された同名小説で第135回直木賞候補になってる作品です。
例によって原作は未読で著者の方も知らなかったです。

映画は冒頭、停留所に停まってる路線バスを舐めるようにゆっくり映すと、後部座席に今作の主人公である妻夫木聡さんが座っています。
この出だしの重々しい雰囲気は、北野武監督のデビュー作『その男、凶暴につき』でホームレスをアップで捉えた冒頭を思い出したんですが、そのあとに続くシチュエーションのブラックさも、これまた北野監督っぽくて。

妻夫木さん演じる主人公の田中武志(偶然にも名前がたけしだった)が、バス後方の座席に座ってるんですが、立っているおっさんのサラリーマンにおばあさんに席譲れと言われます。
渋々な感じで席を譲ってバスが動き出すと、足が悪いみたいな感じで倒れて、次の停留所で足を引きずりながら降りていきます。
気まずそうなサラリーマンのおっさん。
バスを降りて歩道でも足を引きずりながら歩いてますが、バスが動くと田中は普通に歩きだします。

もう、この冒頭からイヤ~な感じがじっくりと描かれて、この田中武志なる人物がどういう人物なのか興味をそそられます。

田中武志は週刊誌の記者なんですが、シングルマザーである妹の光子(満島ひかり)がネグレクトによる幼児虐待で逮捕されたばかりという設定です。

田中は1年前に起きた未解決の一家惨殺事件が、来月でちょうど事件発生から1年になるということで改めて取材したいと編集部に申し入れますが、あまりいい顔をされません。

編集部的には1年前の殺人事件なんて当事者以外見向きもされないし、それよりは有名人のスキャンダル的なネタを拾ってきてほしいと思ってますが、妹が逮捕されたことに同情して田中のやりたいようにやらせます。

田中はまず、被害者一家の田向家(小出恵介・松本若菜)が住んでいた新興住宅街の一軒家を訪れるんですが、このときの撮り方も一軒家を真ん中にデーンと据えて、そこから歩いて妻夫木さんがフレームに入ってくるっていう撮り方をしてたんですが、これも『その男、凶暴につき』でビートたけしさん演じる刑事の我妻がホームレスを襲った少年の家に向かうシーンとかに似ていて、初期の北野映画っぽいなぁと思いました。

この一軒家のイメージなんですが、造成中の新興住宅地の中でも一軒だけポツンと離れていて、ちょっと世田谷一家殺人事件を思い出したんですが物語とは一切関係ないです。

田中の取材は、未解決事件なので被害者の友人・知人をインタビューすることが中心になるんですが、そこで語られるエピソードの数々がイヤ~な気持ちにさせられるのです。

まず被害者である田向浩樹役が小出恵介さん。
その妻で旧姓・夏原友季恵役が松本若菜さん。

田向と大学と職場が同じという友人の渡辺正人役に眞島秀和さん。
田向の大学時代の彼女、稲村恵美役に市川由衣さん。

夏原の大学時代の友人、宮村淳子役に臼田あさ美さん。
夏原の大学時代の彼氏で宮村の彼氏でもあった尾形孝之役に中村倫也さん。

各々のインタビューを聞いていると、それが事件と直接関わりがあるのかは分かりませんが、何かしら大学時代の学内ヒエラルキーが起因してるのが分かります。

特に妻側の大学が文應という名前で内部進学と外部進学があることから慶應大学を想起させますが、原作では慶應大学と表記されてたみたいです。
それで、慶応大学といえば広告学研究会の事件が昨年話題になりましたが、まんまあの世界でした。

セックス、恋愛、お酒、オシャレ…。慶応大の広研は若さで想定しうるありきたりなことはすべて内包していた。社会学者、鈴木涼美が見た広告研究会とは。
夫側の大学名は失念しましたが、こちらもエリート。原作者の貫井徳郎さんが早稲田大学卒業であることから早稲田大学をイメージしたものと思われます。

早稲田大学といえばスーパーフリー事件を思い浮かべますが、むしろ今作の田向のエリート上昇志向は、昨年話題になった東京大学の誕生日研究会を想起させます。

「新潮45」(新潮社)16年11月号 「ミス慶應コンテスト」中止で明らかになった慶應義塾大学「広告学研究会」(以下、広研)を舞台にした集団レイプ事件が大きな波紋…
今年は大学生らによる集団暴行事件や騒動が立て続けに報じられた一年だった。5月の東大生集団わいせつ事件、9月~10月の慶應大学集団暴行疑惑、11月の千葉大学医学部…(2016年12月30日 22時00分05秒)
これらの記事を読むと、まさに、愚かな行いの記録、なんですけど、2006年の時点でうまいタイトル付けたものだなぁと思いました。

ホント、出てくる人物がゲス過ぎて『その男、凶暴につき』のラストの台詞「どいつもこいつもキチガイだ」を思い出したんですけど、本当にどいつもこいつもゲス過ぎます。


物語はここに妹・光子がどう関わってくるのかなんですけど、詳細は映画を観て欲しいと思います。

本当に、全く、救いが無い話ですが、本作への影響を受けた作品としてドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『灼熱の魂』を上げられていたので、それがヒントになるかなと思います。

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本作を観てる途中は、ゆったりじっくりとしたテンポで撮っているので2時間の尺に物語が収まるのか?と思いましたが、向井康介さんの脚本は見事でしたね。
最近だと『聖の青春』も脚本されてますが、こちらもゆったりじっくり、いい脚本でした。
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それからカメラがなんといってもよかったです。
撮影監督は石川監督の同窓生であるポーランド人のピオトル・ニエミイスキ。
黒沢清監督作品のような黒っぽさが印象的でした。

音楽もクラシカルな弦楽器を中心にしててよかったです。ヨーロッパ風な作品に仕上がったと思います。

直木賞候補作の映画化ですが、エンタメエンタメし過ぎることなく、むしろ芥川賞作品のような雰囲気でじっくり撮られていて、ストーリーは当然のように面白く、それでいて人間が内包する闇を描ききっていて、出演者の演技も素晴らしいですし、2017年現時点で今年のマイ邦画ナンバーワンですが、惜しむらくは80館くらいと上映館数が少ないことと、日本での賞レースを考えると時期的に不利だなと思うことです。

丸の内ピカデリー SMTデイ 1100円
2017年 25作品目 累計21300円 1作品単価852円

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