獣道 評価と感想/下衆の愛からクズの恋へ

獣道 評価と感想
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船橋18歳少女生き埋め事件にも似た ☆3.5点

『下衆の愛』の内田英治監督とプロデューサーのアダム・トレルが再び手を組み、衣緒菜原案の実話を基に地方の底辺にいる若者を描いた青春ブラックコメディで主演に伊藤沙莉と須賀健太

予告編

映画データ

獣道 (2017):作品情報|シネマトゥデイ
映画『獣道』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:大人に振り回され社会の底辺をさまよう若者たちが、居場所を求めてもがく姿を描いた青春ブラックコメディー。
http://cinema.pia.co.jp/title/171938/

ホリプロ社長のツイッターをフォローしてて、かなり前から撮影中の須賀健太さんのツイートをRTしたのを見てたので、ヤバそうな映画だなと楽しみにしてました。

「その「おこだわり」、私にもくれよ!!」や「ひよっこ」で最近注目してる伊藤沙莉さん主演ということもあって観てきました。

監督は内田英治さん
昨年は『下衆の愛』を観て、今年は『ダブルミンツ』『身体を売ったらサヨウナラ』に続いて3本目の鑑賞になります。

下衆の愛 評価と感想/映画という魔物に取りつかれた人々
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主演に伊藤沙莉さん
映画は『ラストコップ THE MOVIE』で観てます。
ハスキーな感じの声がいいですね。

主演に須賀健太さん
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズでお馴染みです。

『ダブルミンツ』でも主人公の高校時代の役で出てました。

他に共演と配役は以下の通りです。

志摩愛衣(アナンダ):伊藤沙莉
作間亮太:須賀健太
北川堅太:アントニー
三重野佑二:吉村界人
向島玲花:韓英恵
喜田久弥:でんでん
志摩かおり:広田レオナ
マナミ:冨手麻妙
三田恒彦:近藤芳正
三田夕夏:松本花奈
三田幹恵:大島葉子
ラヴィ:マシュー・チョジック
瀬能:矢部太郎
北見ミハル:川上奈々美
北見カズハル:毎熊克哉
二宮:篠原篤
デリヘルの客:森本のぶ
チーちゃん:根矢涼香
北見ハルキ:川籠石駿平
勝弥:アベラヒデノブ

あらすじ

とある地方都市で生まれた少女・愛衣(伊藤沙莉)はいつも母(広田レオナ)の愛に飢えていた。
そんなある日、信仰ジャンキーの母親によって宗教施設に送られ7年もの間世間から隔離されて生活をすることになる。
自分の居場所を探そうと教祖(マシュー・チョジック)や信者たちと疑似家族を作り上げていく愛衣だったが教団が警察に摘発され保護されてしまう。
すでに違う宗教にはまっていた母の家にも、初めて通う中学校にも居場所はなかった。
愛衣は社会からドロップアウトして万引きと生活保護で生きるヤンキー一家(川上奈々美、毎熊克哉、川籠石駿平)やサラリーマン家庭(近藤芳正、松本花奈、大島葉子)などを転々として居場所を必死に探すのであった。
愛衣の唯一の理解者であり、彼女に恋をする少年・亮太(須賀健太)もまた居場所を探す不良少年であった。
亮太は半グレたち(アントニー、吉村界人)の世界で居場所を見つけ、愛衣は風俗の世界にまで身を落とす。
やがて二人の純情は地方都市というジャングルに飲み込まれていく…。

(公式サイトhttp://www.kemono-michi.com/story.htmlより引用)

ネタバレ感想

映画は時系列がポンポン飛ぶので、やや分かり辛いときがあるかもです。

オープニングは男子トイレあるあるで、いわゆる便所の落書きにヤリマンの電話番号が書いてあって電話したら美人局に会うというもの。
カツアゲに現れた亮太が高校時代で愛衣は幸せなサラリーマン家庭の三田家に住んでるときです。

そこから亮太のナレーションで愛衣の生い立ちと出会いまで描かれます。

愛衣は5歳か6歳くらい、小学校上がる前に宗教施設に出されます。
7年間そこで宗教名アナンダという名で暮らしますが、教祖が逮捕されると母親の元に帰り、中学に通いますが、中学は不登校になり、ヤンキー一家の北見家の次男ハルキと付き合うようになると北見家で暮らします。
この中学時代、不登校になる前に亮太と愛衣は一瞬クラスメートになるのが最初の出会いです。

再会は3年後、亮太が高校1年の時に下校中の街中でばったり愛衣と出会います。
亮太は中学時代、地元の暴走族の堅太と佑二のSNSの書き込みを見て、走りを見学に行ったら気に入られて以降つるむようになってます。

亮太は愛衣と再会すると一緒に北見家に行きます。
愛衣の彼氏のハルキは次男ですが、長男カズハルは女子中学生と付き合ってて、彼氏の妹ミハルは女子中学生で年上の男と付き合ってるっていうぐちゃぐちゃで田舎ヤンキーあるあるです。
愛衣がこのあと住むことになる三田家の娘・夕夏とはここで会ってて、ミハルが中学不登校なのを心配して訪ねてきてくれたクラスメートでした。

愛衣が北見家を出ることになるのは、ハルキの前の彼女が、ハルキに捨てられたと地元の女番長を連れて乗り込んできたからで、その元カノは地元番長格の妹でした。
田舎では人間関係把握しておかないとややこしいことになる、と亮太のナレーションが入ります。

ハルキは自分の立場が危ういとみるや、愛衣にたぶらかされたんだと言って、あっさり愛衣を捨てます。

愛衣は「船橋18歳少女生き埋め事件」みたいな感じで埋められて殺されそうになるんですが、駆けつけた亮太と堅太と佑二によって救われます。

参考 船橋18歳少女殺害事件 – Wikipedia

地元ヤンキーの間では堅太のヒエラルキーが一番高いようでした。

愛衣は助かって泥だらけで道を歩いていると、車でピクニックに行く途中の三田家に拾われ、夕夏の「お姉ちゃんが欲しかった」のひと声で、三田家で厄介になることになります。

この辺はちょっと唐突過ぎてリアリティが無いのですが、ブラックコメディなのでいいです。

三田家は愛衣が今まで味わったことがないような、普通の幸せな一家で、ヤンキーも卒業し年相応の清楚な女の子として暮らし始めます。
この家の生活では、実の娘・夕夏でさえ覚えていない父親の誕生日や両親の結婚記念日を手作りの料理でお祝いするなどして、寄生獣道っぷりを見せ始めると、当初はお姉ちゃんが欲しいと言っていた夕夏の危機感(両親を取られるという)を募らせます。

愛衣は三田家の両親には工場で夜勤の仕事をしていると言ってましたが、実際はキャバクラで働いてました。
不審を抱いた夕夏に尾行され父親にチクられるとキャバクラに来られます。

父親が激怒して帰るところを追いかけて、「お父さん、私はあなたの娘よ。好きにしていいのよ」とおっぱいを見せて胸をもませて色仕掛けで迫りますが、そんな手には乗らないお父さんに明日中に出て行ってくれと言われると、亮太たちの前からも姿を消すのでした。

一方、亮太たちの半グレにも変化が起きていて、亮太はこの閉塞的な田舎で一生を終えたくないと考え、東京の大学に行くためにお金を貯め始めます。
堅太はダイビングショップに勤める玲花という彼女ができ、仲間とあまりつるまなくなります。
佑二だけは変わらずで、地元のやくざの組長・喜田との関わりを深めて悪の道を加速させていきます。

この頃、またバッタリと街中で亮太と愛衣は出会います。
愛衣はデリヘル嬢になってました。
毒母の元へ帰っていて、完全に愛衣の収入をあてにされてます。
亮太は東京の大学へ行こうと思ってることを告げて別れます。

亮太たちの半グレは別のグループと大きな喧嘩をしますが、佑二が暴走し手が付けられなくなると、亮太は一刻も早く街を出たくなります。
が、貯めていたはずのお金が無くなっていました。

つきあいの悪くなった堅太は佑二によって喜田に売られると、玲花を回され自身も痛めつけられます。

完全に喜田の舎弟になった佑二が喜田の車のジャガーFタイプを洗ってると、チュッパチャプスを買ってくるようお使いを頼まれます。

するとそのタイミングで堅太がやってきてゴルフクラブで喜田を撲殺します。

佑二が戻ってくると喜田が死んでいたのでトランクに入れると、車で街を流します。

佑二は街中で亮太と出くわすと、ドライブに行かないかと誘います。

亮太が車はどうしたのかを聞くと、喜田が死んでいてトランクに入ってると言います。

佑二が富士山が見える景色のいいところに車を停めると、亮太はトランクを確認します。

トランクには喜田の死体と一緒に、亮太が貯めてたお金を入れてたペンキ缶があって、お金を盗んだのは佑二でした。

亮太はここで完全に佑二と決別し、歩いて帰っていきます。

佑二は俺を見捨てないでくれと叫びます。
佑二もまた家族や仲間との愛に飢えてたのでした。

愛衣は教祖が出所すると、教祖のマネジメントの元、東京でAV女優になっていて芸名もアナンダでした。

亮太は東京で大学生になっています。

亮太はアナンダのサイン会に出かけ再会すると、東京で大学生をしてることを告げて別れます。

時間軸は亮太と愛衣が初めて出会った中学時代に飛びます。

昼食時、お互い独り者の愛衣が突然、亮太に言います。
「私はお前とは違う。孤独なんじゃない。孤高なんだ」と言うと、そのまま教室を出て校庭を走って行ってしまいます。
亮太が恋に落ちた瞬間を描いて映画は終わります。

 

映画は『下衆の愛』みたいな感じで、原案の衣緒菜(元AV女優名・吉瀬リナ)さんのエピソードを元に、ヤンキーあるあるを取り入れ断片的に繋いだ感じでしょうか。


エピソード自体は面白いので劇場では結構笑いが起きてました。

実話ベースなので起きているエピソードは当事者にしてみれば強烈でしょうが、作品自体はブラックコメディになってるので、観客としてはそんなに深刻になることなく観れます。

AV女優の方の生い立ちは壮絶なことが多いですよね。
穂花さんとかもそうですし、桜井あゆさんとかも。

ただ宗教っていうのは珍しいかもしれないですね。

地方ヤンキーあるあるの部分は、前述した「船橋18歳少女生き埋め事件」であったり「広島LINE殺人事件」であったり、古いところでは「足立コンクリート殺人事件」とかあるので、大きな事件になるかならないかはホント紙一重だなと思いました。

参考 広島少女集団暴行殺害事件 – Wikipedia

伊藤沙莉さんは、信者、ヤンキー、清楚な娘、デリヘル嬢、AV女優と様々に変わる役を好演されてましたが、やっぱり三田家に取り入ろうとする娘役が秀逸で、お父さんを誘惑するシーンで母性のある役者さんだなと思いました。

あと、よかったのは吉村界人さんですね。
百円の恋』や『ディストラクション・ベイビーズ』に出てたみたいで気づかなかったのですが、デビューの頃のピーター(池畑慎之介)さんや『沙耶のいる透視図』での土屋昌巳(一風堂)さんのような妖しい色気を放っていました。
唾を垂らすシーンはヤバかったです。

自分には全く接点が無さそうな話と思いつつも、普段のニュースを見れば虐待死の事件などは頻繁に起こってます。

ウサギ用ケージに3ヵ月監禁…3歳の息子を虐待死させた両親の素性 | FRIDAYデジタル
ノンフィクション作家・石井光太氏が振り返る重大事件。第1回は3歳の愛児を3ヵ月間ウサギ用のゲージに入れ虐待死させた両親のケースだ。2人の両親にまでさかのぼり事件の深層をさぐる。衝撃のルポ。

ここまで至らずともそういう環境で育っている子は多いんだろうなと思うと胸が痛くもなる映画でした。

鑑賞データ

シネマート新宿 メンズデー 1100円
2017年 117作品目 累計124000円 1作品単価1060円

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