岡本太郎イズム溢れる、映画は爆発だ! ☆3点
映画『まほろ駅前』シリーズと同じ、原作・三浦しをん×監督・大森立嗣×主演・瑛太で送るサスペンス。
W主演で井浦新、共演に長谷川京子と橋本マナミ
予告編
映画データ
本作は2017年11月25日(土)公開で全国22館での公開です。
来年1月になってから公開されるところも多いみたいで最終的には全国49館ほどでの公開となるようです。
今年は河瀬直美監督の『光』もありまして、感想を書くのに調べてた時、同名タイトルの映画やるんだぁと思ってました。
予告編は新宿武蔵野館で何回か見てて、三浦しをんさん原作ということで楽しみにしてました。
原作小説は例によって未読です。
監督は大森立嗣さん
監督作は『さよなら渓谷』『まほろ駅前狂騒曲』『セトウツミ』を観てます。
主演は井浦新さん
近作は『さよなら渓谷』『ジ、エクストリーム、スキヤキ』を観てます。
主演は瑛太さん
近作は『まほろ駅前狂騒曲』『殿、利息でござる!』『リングサイド・ストーリー』『ミックス。』を観てます。
共演は橋本マナミさん
近作は『闇金ウシジマくん』『破門 ふたりのヤクビョーガミ』を観てます。
共演は長谷川京子さん
近作は『後妻業の女』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
黒川信之: 井浦新
黒川輔: 瑛太
篠浦未喜: 長谷川京子
黒川南海子: 橋本マナミ
小野: 南果歩
洋一: 平田満
山内: 梅沢昌代
14歳の信之: 福崎那由他
14歳の美花: 紅甘
幼少期の輔: 岡田篤哉
黒川椿: 早坂ひらら
信之の母: ペヤンヌマキ
あらすじ
東京の離島、美浜島。中学生の信之は記録的な暑さが続く中、閉塞感のある日々を過ごしている。
美しい恋人の美花がいることで、毎日は彼女を中心に回っていた。
信之を慕う年下の輔は、父親からはげしい虐待を受けており、誰もが見て見ぬふりをしていた。
ある夜、美花と待ち合わせをした場所で、信之は美花が男に犯されている姿を見る。
そして信之は美花を救うために男を殺してしまう―。
その夜、理不尽で容赦ない天災が島に襲いかかり、すべてを消滅させた。
生き残ったのは、信之のほかには美花と輔とろくでもない大人たちだけだった。
それから25年後、島を出てバラバラになった彼らのもとに過去の罪が迫ってくる―。
妻子とともによき父として暮らしている信之と、一切の過去を捨ててきらびやかな芸能界で貪欲に生き続ける美花。
誰からも愛されずに育った輔が過去の秘密を携え、ふたりの前にやってくるのだった。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
最後まで観た印象はストーリーを追うような映画では無かったですね。
劇中に流れるジェフ・ミルズのデトロイト・テクノと相まって、殺人とか暴力への衝動だったり、何とも言えない日常の焦燥感とか不安感を表現した映画だったと思います。
ストーリーをざっと書いておくと
冒頭は25年前の美浜島が舞台です。
美浜島は架空の島なんですが、椿が象徴的によくでてくるので大島がモデルになってるんだと思います。
14歳の信之は美花と神社の境内でセックスするのが日課になっています。
その日も学校で美花に会うと、夜、神社に来てと誘われます。
放課後、信之は、山の上で灯台守してる爺さんにコンドームを買いに行きますが、10歳の輔(たすく)がついてくるので誰にも言うなよと口止めします。
10歳の輔は父親に虐待を受けていて、信之を之兄(ゆきにい)と呼んで慕ってきますが、信之はいつでもついてくる輔にうざったさも感じています。
信之がコンドームを買い終えて家に帰る途中、駄菓子屋で妹を連れた美花と出くわします。
美花に「あれ買えた?」と聞かれ、信之が「うん」と答えると、美花は「今日は神社は無しで、その代わりに18時の夕食時に来て」と言います。
バンガローに変な客が泊まっているので、来て欲しいと美花は言うのです。
美花の家は民宿でもやってるのだと思います。
信之は自宅で夕食を済まし、美花の家に向かいますが美花が居ません。
信之は何となく気になって神社に向かうと、石段の途中の森の茂みで木にもたれかかってセックスしている美花を見つけます。
美花は信之と目が合うと「助けて」と言いますが、描写としてはレイプされてるようには見えませんでした。
信之が男の元に駆け寄ると、「これは違うんだ」と弁解し、「美花ちゃんに誘われたんだ」と言います。
その男はバンガローの客で、自分が美花ちゃんをこんな所に連れてこれるはずが無いと言います。
しかし美花は、「その男殺して」と信之に言います。
信之はその男に馬乗りになると手にした石を頭に打ちつけて首を絞めて殺すのですが、14歳の少年が大人に敵うか?とリアリティを追及してしまうと、もう映画にはノレないと思います。
かく言う私も前半は退屈でした。
殺人を終えて、信之と美花が神社の石段に座ってるショットがあるのですが、その背後に2人を見下ろすような少年の姿があります。
その少年が輔かは分かりませんが、分かり辛いシーンでその後もちょくちょくそういったイメージシーンが挿し込まれます。
輔は死体を見つけると写真を撮ってます。
翌日、再び美花は、「夜、見晴らし台に来て」と信之を誘います。
夜、信之は見晴らし台に向かいますが輔もついてきてしまいます。
見晴らし台で美花と合流すると、地震が起き、津波で島が壊滅してしまいます。
地震による津波で東日本大震災を想起させますが、原作が書かれたのが2008年なので、三宅島の噴火での全島避難もモデルにしてると思います。
時代は飛んで25年後。
寂れた公団のような団地で信之は妻の南海子と娘の椿と暮らしています。
出勤前の朝食時、南海子は「引っ越しを考えてくれた?」と信之に聞いてます。
それから団地のゴミ捨て場が荒らされてる話もしますが、信之はあまり関心が無いそぶりです。
団地は取り壊しが決まっていて、出ていく人が多く、団地の主婦仲間は治安の悪化を心配してます。
信之は市役所勤めの公務員です。
南海子は信之を送り出し、娘を幼稚園に預けると、一旦家に帰り、よそ行きの服に着替えて電車に乗って出かけていきます。
川崎の工場地帯のボロアパートを訪ねると、瑛太さん演じる男が出てきます。
南海子は週に何回かその男と不倫をしていました。
橋本マナミさん演じる南海子のベッドシーンは全裸でしたが、瑛太さんの腕でおっぱいを隠す方式で、『ヒメアノ~ル』の佐津川愛美さんバージョンでした。
その代わり、セックスを終えて仕事に出かけるその男を玄関先で見送るシーンは背後から全裸でお尻丸出しでした。
人妻っぽい、くたびれた後ろ姿でエロかったです。
それから、この映画、お尻がポイントです。
夜、信之が仕事から帰ってくると南海子は食事の用意をしながら、家を探してくれているか聞きます。
変質者が出てる話もあり早く引っ越したいと言いますが、信之は上の空な感じです。
テレビではミステリアスな女優・篠浦未喜の密着番組をやっていて、信之はじっと見ています。
別の日、南海子は再びあの男の部屋にいます。
すると携帯に幼稚園から電話がかかってきて、娘の椿が病院に運ばれたことを知らされます。
南海子が病院にかけつけると、診察を受ける椿はおしっこをするところが痛いと言います。
椿は幼稚園に預けていたとはいえ、南海子が浮気してる間に変質者に連れ去られいたずらされていました。
南海子は自分を責め、今後はあの男と会わないと決めます。
そして信之と今後のことを話しますが、信之は今までと変わらずに接するだけだと言います。
まだ幼い椿はそのうちに忘れると言いますが、南海子は忘れることなんて出来ないと言います。
信之は「じゃあ、どうすればいい!おれが犯人を見つけて殺してやればいいのか!殺してやるよ!」と激昂すると、夫婦の間がギクシャクし出します。
あの男は工場で溶接工をしています。
同僚に客が来てると言われ外に出ると訪ねてきたのは信之でした。
信之は「久しぶりだな輔」と声をかけます。
あの男は輔で島を出て以来25年ぶりの再会でした。
輔は信之のことを調べていて市役所に電話して呼び出していました。
輔は南海子と浮気していて、小学校受験を控えている今、バラされたくなかったら金を払えと脅してきます。
信之は特段驚きもせず、バラしたければバラせと言います。
そして金が欲しかったら、自分じゃなく妻を脅せと言い放つのでした。
金を取れると思った輔は当てが外れます。
信之は南海子が浮気していたのを知っても何も言いません。
テレビでは再び、篠浦未喜の密着番組を放送しててベールに包まれていた出身地が美浜島と明かされます。
南海子があなた同じ出身地よと言うと、テレビを消す信之でした。
輔の工場に再び人が訪ねてきます。
それは輔の父親の洋一でした。
虐待を受けていた父親の出現に固まる輔。
洋一は輔のアパートに入り浸るようになります。
洋一の話によると島民で津波で生き残ったのは5人。
高台の見晴らし台に居た輔と信之と美花の3人、山の上の灯台守の爺さん、たまたま船で海に出ていた洋一の5人でした。
灯台守の爺さんは津波後も島に残っていて、洋一はバンガローの客が死んでいたのを聞いていました。
洋一はその話をすると、輔は「俺、それ知ってる」と言います。
死体の写真を持ってると言い、やったのは信之と美花で、美花は女優の篠浦未喜だと言います。
洋一は輔から写真を預かると、輔を使って美花を脅迫して金を取る算段をするのでした。
信之はホテルの部屋に呼び出されます。
呼び出したのは女優の篠浦未喜で美花でした。
美花は、輔が死体の写真のコピーを送ってきて金をよこせと脅迫してきたので、何とかしてほしいと信之に頼みます。
とりあえず信之に300万円を渡しますが、信之は金は要らないと言いコトにあたります。
信之は輔のアパートを訪ねると、洋一が現れたことを知ります。
ここまで信之と輔の関係は不明でしたが、信之が「洋一伯父(叔父)さん」と呼ぶことから、二人の父同士が兄弟で従兄弟の関係なんだと思います。
信之は未だに輔が洋一を恐れているのに気づくと、自分が洋一を殺して金もあげると言います。
信之はそう言って輔を籠絡しながら、洋一が隠した写真を探させます。
信之は美花と再会を果たすと家に帰らなくなります。
南海子は手のかかる椿と2人きりで育児ノイローゼ気味になります。
信之は睡眠薬を手に入れると、酒に混ぜて洋一を眠らせるよう輔に指示します。
眠ってる間に殺すと信之は言います。
輔が実行し洋一が眠ると信之が現れます。
信之は輔に写真が見つかったか?と聞きますが、輔はまだ見つからないと答えます。
写真が見つからなければ殺すわけにはいかず、引き続き写真を探すように言います。
そして、信之は自分が洋一を殺しても意味が無く、輔が洋一を殺すように仕向けていきます。
信之は輔が住んでるアパートの下の部屋を借りると、畳を外して地面に穴を掘ってます。
輔はその後も洋一の酒にちょくちょく睡眠薬を混ぜてましたが、ある日酒を飲んで寝てしまったと思われた洋一が息をしてないのに気づきます。
下着姿の男2人のむさくるしい部屋は、1人は死体として転がっていてブリーフパンツもずれていました。
カメラは死んだ洋一役の平田満さんの尻側面をズームアップして撮り、ここもお尻がポイントです。
輔は部屋を探すと、キッチンの換気扇の中に隠されていた写真を見つけます。
輔は信之を部屋に呼ぶと洋一が死んだことを2人で喜びます。
写真も無事回収した信之は輔のために洋一を殺して埋める穴を掘っていたことを明かします。
信之は「穴は無駄になっちまったな。埋めるのは手伝えよ」と言うと2人は祝杯をあげます。
洋一の遺体は参列者、輔1人で火葬されます。
家に帰らなくなった信之は美花のホテルに入り浸り、今回の件で金の代わりに美花の体を求めていました。
美花役の長谷川京子さんのベッドシーンは着衣でしたが、裾をまさぐるときにパンティが見え、太ももからお尻にかけての側面が露わになり、ここもお尻がポイントでした。
アパートの部屋の穴を埋める日、輔は工場に顔を出すと、1週間ほど休んで旅行に行くと同僚に話します。
そして一週間経っても戻らなかったら、この封筒を出して欲しいと同僚に頼みます。
夜、アパートの1階の部屋に集まった信之と輔。
輔は掘られた穴を覗き込み、穴の大きさを喜んでます。
子供の頃に作った秘密基地を思い出し、埋めるのが勿体ないと無邪気に喜ぶ輔が振り向くと、信之はスコップを振りかざします。
穴に落ちて頭から血を流す輔が「心のどこかで、こうして欲しいと思ってた」と言うと、信之はスコップで滅多打ちにするのでした。
美花のホテルの部屋。
マネージャーの小野はいつまでも入り浸ってる信之に、篠浦未喜の大勢いる男の中の1人だと言います。
自分は特別な存在だと信じてる信之はそんな事は無いと反論しますが、小野は未喜の魅力は女優としてでは無く、男を自分の意のままに操れる能力だと言います。
マネージャー役の南果歩さんは、ぱっと見だと気づかなかったです。
声の感じで分かるくらいでした。
仕事を終えてホテルの部屋に戻ってきた美花はうんざりした様子で信之に今日は疲れていると言います。
しかしそれでも信之は美花の体を求めようとしますが、拒否られます。
すると信之は輔を殺してきたことを打ち明けます。
「美花のために殺してきたんだ」と言い体を求めますが、美花は「輔を殺してなんて頼んでない」と言い、幼馴染まで殺してしまった信之に絶句します。
そして信之は、「結局、何か対価を求める他の男と同じ」と言われ、脅迫される相手が輔から信之に変わっただけだと言われるのでした。
南海子の元には封筒が届きます。
輔から送られてきたもので、この手紙が届くころには自分は死んでるであろうことが書かれてます。
信之と輔と美花の生い立ち、輔が南海子に近づいた目的が書かれていました。
南海子は自分が浮気してた相手が誰だったかを初めて知り、信之が浮気を知ってたことも知るのでした。
美花の元を去った信之は団地の入り口にいます。
道を塞ぐように、ぶら下がった子犬に乳を与える犬のオブジェがあります。
ただいまと言って帰ってくる信之。
南海子が信之を見つめる視線は冷たいですが、椿は「パパ、パパ、パパ、パパ」と言って喜んでいます。
居間に行って「パパパパパパパパ」とはしゃぐ椿の言葉にジェフ・ミルズの音楽が鼓動のように重なり、画面がホワイトアウト(ハレーション)して映画は終わります。
本作はジャンル的に言ったらサスペンスになると思うのですが、サスペンスと言っても警察が介入する事件モノでも無く、25年経って行われる脅迫も身内で行われるもので、事件そのものは稚拙です。
なので冒頭に書いたようにストーリーを追ってリアリティを求めると全くダメな作品で、異様に長い「間」だったり、長回し撮影、演者の表情や佇まいで魅せる映画です。
映画は冒頭から雄大な美浜島にミスマッチなジェフ・ミルズの音楽がかかるので普通ではないのは分かります。
その後も信之と椿の2ショットシーンでは岡本太郎の作品が使われていたり
屠畜されて内臓が飛び出した豚のビニール人形があったりと、前衛芸術・アバンギャルドな雰囲気があります。
ここら辺はやっぱり大駱駝艦を主宰する麿赤児さんの息子さんの本領発揮というところでしょうか。
調べてみるとジェフ・ミルズは大駱駝艦でも音楽を担当したことがあるみたいですね。
ユーチューブに大駱駝艦とのコラボ映像があったので貼っておきます。
大駱駝艦は10月に公開された『あゝ、荒野 前篇』でも使われてて、70年代ブームが来てるんでしょうかね?
井浦新さんのこの雰囲気なんかは、『水のないプール』や『十階のモスキート』『コミック雑誌なんかいらない!』の頃の内田裕也さんを思い出しました。
どこが?と言われると困るのですが、なんとなく全体は1979年の『蘇る金狼』の雰囲気もありまして
非常に70年代後半から80年代を感じる映画でした。
有楽町スバル座で久しぶりに観たんですけど、帰りに貼ってあったインタビュー記事の切り抜きを見たら大森監督も「これまでの映画作りを1回捨てて作品に向き合う」と書いてあったので、ストーリーは『さよなら渓谷』に似つつも、全く違う雰囲気の作品に仕上がったのだと思います。
それから20代の頃のハセキョーより最近のハセキョーが好きなんですけど、出演シーンは少なかったですね。
撮影は3日間だったみたいなんですけど、それであのファム・ファタールやるんですから凄いです。
ただ最近、どんどん唇が肥大化してくなぁ。
ピート・バーンズみたいにならなきゃいいけど…。
鑑賞データ
有楽町スバル座 映画サービスデー 1100円
2017年 197作品目 累計211500円 1作品単価1074円
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