ハーレイ・クインがデッドプールのノリで綴る痛怪作 ☆4.5点
1994年に起きたナンシー・ケリガン襲撃事件で有罪判決を受けたトーニャ・ハーディングを主人公にした伝記ドラマ。
監督はクレイグ・ギレスピー、主演はマーゴット・ロビー、共演にセバスチャン・スタン、アリソン・ジャネイ
予告編
映画データ
本作は2018年5月4日(金)公開で、全国52館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には90館での公開となるようです。
劇場で予告編は目にしなかったんですけど、マーゴット・ロビーがアカデミー主演女優賞にノミネートされていたので楽しみにしていた作品です。
監督はクレイグ・ギレスピー
初めましての監督さんです。
オーストラリア出身で15年ほどCMディレクターをし、本作で長編映画6本目です。
近作は2016年公開の『ザ・ブリザード』ですが、記憶にないですね。
主演はマーゴット・ロビー
近作は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『スーサイド・スクワッド』を観てます。
共演にセバスチャン・スタン
近作は『オデッセイ』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『ローガン・ラッキー』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を観てます。
共演にアリソン・ジャネイ
近作は『Re:LIFE~リライフ~』『ガール・オン・ザ・トレイン』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
トーニャ・ハーディング: マーゴット・ロビー
ジェフ・ギルーリー: セバスチャン・スタン
ラヴォナ・ハーディング: アリソン・ジャネイ
ダイアン・ローリンソン: ジュリアンヌ・ニコルソン
ショーン: ポール・ウォルター・ハウザー
トーニャ・ハーディング(8歳~12歳): マッケナ・グレイス
マーティン・マドックス: ボビー・カナヴェイル
ナンシー・ケリガン: ケイトリン・カーヴァー
ドディ・ティーチマン: ボヤナ・ノヴァコヴィッチ
デリック・スミス: アンソニー・レイノルズ
あらすじ
貧しい家庭で、幼いころから暴力と罵倒の中で育てられたトーニャ・ハーディング(マーゴッド・ロビー)。天性の才能と努力でアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させ、92年アルベールビル、94年リレハンメルと二度のオリンピック代表選手となった。しかし、彼女の夫だったジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)の友人がトーニャのライバルであるナンシー・ケリガンを襲撃したことで、スケート人生は一変。転落が始まる。一度は栄光を掴み、アメリカ中から大きな期待を寄せられたトーニャ・ハーディングだったが、その後、彼女を待ち受けていたのは・・・・・・。
(公式サイトhttp://tonya-movie.jp/about.htmlより引用)
ネタバレ感想
いやー、面白かったですねー。
事件のことは憶えてるんですけど、細かいところまでは憶えてなくて、何なら劇中で描写されてたようにトーニャ・ハーディングがナンシー・ケリガンを殴打したくらいに思ってました(笑)
というわけで、事件の背景を全然知らなかったんですけど、トーニャが星一徹もビックリのあんな鬼母(毒母)に育てられていたなんて全く知りませんでした。
アメリカのユニバーサルの方だと冒頭10分映像が公開されてますね。
見ていただくと分かる通り、映画はインタビュー形式で始まります。
主要な登場人物はトーニャと元夫のジェフ、母のラヴォナ、コーチのダイアン、ジェフの友人でトーニャのボディーガードのショーン、タブロイドニュース番組ハードコピーのレポーターのマーティンです。
物語はこれらのインタビューが劇中、頻繁に挟み込まれ、回想形式で話が進みます。
回想シーンでは『デッドプール』みたいに、たまに第四の壁を突破してキャラクターが語りかけてくるので、かなり自由な作りとなってます。
ちなみにマーゴット・ロビーは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』でも劇中、金融講座みたいなので観客に語りかけてきましたね。
アカデミー賞で助演女優賞を獲得したアリソン・ジャネイ演じる母ラヴォナは登場から強烈です。
3歳のトーニャを連れてダイアンにコーチを頼みに来るラヴォナですがリンク上なのにタバコ吸ってます。
コーチに「すみません、禁煙なんですが?」と言われても「見なかったことにして」と言う始末で、これだけでモラルもへったくれも無い人だと言うのがよく分かります。
その後は娘を罵倒する、叩く、「スケートには友達を作りに来てるんじゃない、そいつは敵だ」と言い放ち、幼いトーニャを気の毒に思うんですけど、マーゴット・ロビー演じる15歳のトーニャが登場するときには、他の生徒に「あんた邪魔なんだけど?」と言って登場し母親と同じタイプの人間になってるんで、トホホ…と思います。
物語はここから15歳のトーニャが、3歳年上になるのかな?ジェフと出会って付き合いだし、ジェフの暴力で喧嘩別れを繰り返し、19歳で結婚して23歳のときに事件が起きるまでを描いてます。
正直、15歳のトーニャのマーゴット・ロビーと18歳くらい?のジェフのセバスチャン・スタンだと老けてない?と思ったんですけど、実際の映像を見てみると23歳のトーニャも26歳位のジェフも年の割には老けてるからいいのか。
そしてここからは、出てくる登場人物が田舎のヤンキーみたいな人間関係の中にいるようなバカばかりで、コーエン兄弟の脚本を地で行くような登場人物たちで笑ってしまいます。
トーニャがオリンピック選手なのに結婚していたのも驚いたんですが、トーニャとジェフはお互いのDVで共依存の関係に陥ってますよね。
そして、一番ヤバかったのはショーンです。
ジェフがショーンと友達でなければ、この事件は起きなかったと思うんですが、自宅警備員最強ってやつです。
事件の経緯としては、まずトーニャに殺害予告の手紙が届いて大会を欠場します。
大会を欠場すれば五輪選考の上で不利になりますから、トーニャのマネジメントもしてたジェフはこう考えます。
「そうか、俺たちもこうやればいいのか」(←バカ)
ジェフとショーンは五輪代表の座を争ってるナンシー・ケリガンに脅迫状を送ることにするんですが、この計画がいつの間にかショーンによって独り歩きし殴打事件に繋がります。
劇中、ショーンと部屋に居るジェフが、ショーンの母親に何度もトーニャのところに電話をかけてもらうシーンがあったので、ショーンは両親から甘やかされて育ったのだと思います。
仕事もせず実家に寄生するニートですが、周囲には世界を股に掛ける諜報員だと言って、ことさら自分を大きく見せようとする妄想性障害です。
トーニャに脅迫の手紙を送ったのもショーンで、ボディーガードである自分の必要性が増すと考えたからでしょう。
このショーンみたいに自分を諜報員だと言って、他人を手玉に取る映画で『U Want Me 2 Kill Him/ユー・ウォント・ミー・トゥ・キル・ヒム』という作品がありましたが、ショーンはこの犯人と全く一緒だと思いました。
(ちなみにショーンは2007年に40歳で亡くなったようです。)
本作がアカデミー賞で主演女優賞、助演女優賞、編集賞の3部門にノミネートされてヒットしたことから、トーニャ・ハーディングにも再びスポットが当たってるようですね。
トーニャはマーゴット・ロビーともインタビューを受けてるので、本人的には本作の公開はよかったのでしょう。
一方で母ラヴォナは最後まで悪く描かれます。
トーニャがジェフと結婚したため縁を切っていたラヴォナですが、殴打事件でトーニャが全米から疑惑の目を向けられると、マスコミが集まる中トーニャを訪ねます。
小さい頃から厳しい言葉ばかりで優しい言葉をかけたことが無かったラヴォナが、「トーニャはよくやってる、誇りに思う」と褒めます。
そして「全米中が悪者と言っても私は味方だ」と娘を庇います。
トーニャから抱擁にいき、長年の母娘の確執も氷解する感動シーンかと思いきや、この映画はどこまでいってもゲスでした(笑)
ラヴォナはトーニャを抱きしめると耳元で「で、計画は知ってたのかい?」と聞きます。
不審に思ったトーニャが体を離し、ラヴォナの身体検査をするとテープレコーダーが出てきます。
マスコミから、トーニャの関与を引き出せばテープを高く買うと言われたのでしょう。
このシーンがホントかどうかは分からないですが、どうしようもない登場人物ばっかです(笑)
ジェフも司法取引によってトーニャに不利になる証言をしてますが、この辺になるとFBIの思惑もあるので真実は闇の中です。
トーニャがジェフに強くナンシー・ケリガンを襲うように迫ったのなら別ですが、脅迫状を出すことからこじれた襲撃計画を知っていたとしても止めようは無かった気もします。
トーニャの罪は、いつまでもジェフとショーンと付き合っていたことでしょうか。
押尾事件における矢田亜希子さんみたいな気もします。
この映画から教訓を得るとすれば、どんな親から生まれるかは選べないので、付き合う相手を選ぶ「君子危うきに近寄らず」なんですが、トーニャの場合はその教養も無かったからなぁ…。
それからこの事件が起きるきっかけになったのは、1994年のリレハンメル冬季五輪が1992年アルベールビル冬季五輪の2年後に行われた特殊性もあると思います。
アルベールビルで4位となりメダルを逃したトーニャにはスポンサーも付かず(性格もありますが)、母ラヴォナと同じようにウェイターをしてます。
オリンピックが4年後或いは6年後だったら現役を続けなかったかもしれませんが、アルベールビルではコーチを離れていたダイアンが「オリンピックが2年後に開催されることになった」と伝えに来ると、2人でリレハンメルを目指します。
このシーンではダイアンが第四の壁を突破して語りかけてきて、『ロッキー4』のパロディになってます。
ダイアンは丸太を使ったトレーニングとかをホントにやったと言いますが、どこまでホントかは分かりません(笑)
でもこの頃には大会でトリプルアクセルが成功することは無かったので、キャリアとしてのピークは過ぎていたんですよね。
それで劇中ではトーニャはアメリカ人で初めてトリプルアクセルを跳んだ女性選手として紹介され、世界でも2人目の女性選手だったんですが、最初に跳んだのが伊藤みどり選手ですよ。
伊藤みどり選手凄いんですよ。
マツコさんも熱く語ってます(最初の方、トーニャの話も出てくる)。
だから、この映画は伊藤みどり選手スゲーって思い浮かべる作品で、日本も早く伊藤みどり選手の映画作った方がいいと思いますよ、という『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』の感想でした。
鑑賞データ
TOHOシネマズ六本木ヒルズ TOHOシネマズデイ 1100円
2018年 81作品目 累計72600円 1作品単価896円
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