アカデミー賞は獲れなかったですけど ☆5点
予告編
映画データ
あらすじ
この世にも奇妙な実話は、1984年のロサンゼルス・オリンピックで金メダルに輝いたレスリング選手、マーク・シュルツに届いた突然のオファーから始まる。有名な大財閥デュポン家の御曹司ジョン・デュポンが、自ら率いるレスリング・チーム“フォックスキャッチャー”にマークを誘い、ソウル・オリンピックでの世界制覇をめざそうと持ちかけてきたのだ。その夢のような話に飛びついたマークは破格の年俸で契約を結び、デュポンがペンシルベニア州の広大な所有地に建造した最先端の施設でトレーニングを開始する。しかしデュポンの度重なる突飛な言動、マークの精神的な混乱がエスカレートするにつれ、ふたりの主従関係はじわじわと崩壊。ついにはマークの兄で、同じく金メダリストのデイヴを巻き込み、取り返しのつかない悲劇へと突き進んでいくのだった……。
(公式サイトhttp://www.foxcatcher-movie.jp/より引用)
ネタバレ感想
ベネット・ミラー監督の手腕たるや素晴らしかったです。
同監督作の「カポーティ」も「マネーボール」も見たことないですが、なかなかの実力者とお見受けしました。
実話ベースのお話で昨年アカデミー賞候補に上がった『ダラス・バイヤーズクラブ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』よりも上手かったと思います。
まずキャスティングが良かったと思います。
ジョン・デュポンを演じたスティーブ・カレルですか。
この人の内に秘めた狂気というのがひしひしと伝わってきました。
この方もあまり馴染みがなかったんですが、聞けばコメディアン出身だそうで。
ロビン・ウィリアムズやトム・ハンクスなんかもそうですけど、ハリウッドのコメディアン出身の俳優の層の厚さは凄いですね。
個人的にはコメディを出来る人は演技が上手いと思っているのですが、日本だとその土壌はまだまだな感じがします。
それからシュルツ兄弟を演じたチャニング・テイタムとマーク・ラファロもよかったです。
本物のアマチュアレスラーにしか見えませんでした。
どうやって体作り・役作りしたんでしょうね。
この二人のリアルなレスリングシーンが映画をアクティブな物にしていたと思います。
それで監督の演出ですが、テンポも速すぎることなく、ゆったりどっしりしていて物語も淡々と進んでいきますが、それでいて最後まで飽きることなくしっかり見れました。
ややもすれば退屈な展開になるところ、デュポンが時折見せる狂気に走る緊張感や、リズミカルなトレーニングシーンやレスリングシーンで物語に抑揚が効いていたと思います。
この辺のバランス感覚は絶妙に上手かったと思います。
映画では、大富豪の家に生まれた者ならではの苦悩と、母との確執が描かれていました。
また、レスリングで金メダルを獲ってもそれだけでは生活できない当時のアメリカ社会。
幼い頃に両親を亡くし兄が父代わりだった兄弟ならではの問題など、デュポンとシュルツ兄弟それぞれの苦悩が深く描かれていたと思います。
最後に起きる事件に向かって映画的に収束していく様は見事で、見終えたあとの余韻もよかったです。
実話ベースではありますが、映画らしい映画を観たなぁという気分にさせてくれる作品で大満足でした。
鑑賞データ
角川シネマ有楽町 水曜サービスデー 1100円
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