あの頃、君を追いかけた 評価と感想/ローカライズしない潔さ

あの頃、君を追いかけた 評価と感想
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両主演が魅力的 ☆4点

2011年に台湾の人気作家ギデンズ・コーが自伝的小説を自ら映画化して監督にも初挑戦し、低予算ほぼ無名キャストながら台湾では社会現象を巻き起こすほど大ヒットし、日本でも2013年に公開された同名青春映画のリメイク作品で原題は『那些年,我們一起追的女孩』(英題:You Are the Apple of My Eye)
監督は長谷川康夫、主演に山田裕貴と乃木坂46の齋藤飛鳥、共演に松本穂香

予告編

映画データ

http://cinema.pia.co.jp/title/174228/

本作は2018年10月5日(金)公開で、全国115館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には122館ほどでの公開となるようです。
配給はキノフィルムズ

劇場では予告編を見かけなくて、公開されるのも知らなかったんですけど、いつものようにヤフー映画の公開カレンダーを眺めてたら、山田裕貴さん主演ということで気になり観に行ってきました。
ほら、彼ってヘンなことするじゃないですか(笑)

監督は長谷川康夫さん
初めましての監督さんですがベテランでした。
風間杜夫さんや平田満さんなんかと同世代で劇団つかこうへい事務所に所属し、劇団解散後は劇作家・演出家として数多くの舞台作品を手掛けてます。
映画監督デビューは1990年の『バカヤロー!3 へんな奴ら』で、その後は1997年に『恋は舞い降りた。』を監督して、本作はそれ以来の監督作です。
2000年以降は映画脚本も多く『ホワイトアウト』や『亡国のイージス』なんかも手掛けてます。

主演に山田裕貴さん
普段、脇役が多いので初主演作かな?と思ったんですが、2014年の井口昇監督の『ライヴ』で映画初主演を務めてました。

ただメジャー映画では初主演となるようです。
近作は『ホットロード』『ふきげんな過去』『亜人』『あゝ、荒野 前篇後篇』『となりの怪物くん』『万引き家族』『虹色デイズ』『センセイ君主(写真のみ)』を観てます。

主演に齋藤飛鳥さん
本作で初めて知った方で乃木坂46のメンバーです。
ドラマ・映画通して初めて見ましたが、出演作に2007年『さくらん』とめき役とあって、さくらんは見てるのでどの役かな?と思ったんですが、2007年だと当時8歳ですので子役ですね。
また見る機会あったら注意して見てみたいと思います。

共演に松本穂香さん
近作は『MATSUMOTO TRIBE』『恋は雨上がりのように』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

水島浩介: 山田裕貴
早瀬真愛: 齋藤飛鳥(乃木坂46)
小松原詩子: 松本穂香
大野陽平: 佐久本宝
町田健人: 國島直希
秋山寿音: 中田圭祐
杉山一樹: 遊佐亮介
浩介の母: 生田智子
: 中村育二

あらすじ

君の手作りの数学テスト
制服の背中に残る 青いペンのあと
夏の夜、見上げた空のリンゴのような月
2人で空に放った、願い事を書いた天燈
どの瞬間も、君の事しか思い出せない。
愛おしくもカッコ悪い、僕の10年間───。

(公式サイトhttp://anokoro-kimio.jp/より引用)

10年前_。水島浩介(山田裕貴)は、クラスメイトの仲間たちとつるんではバカなことばかりをし、さしたる夢や目標も分からぬまま、お気楽な高校生活を送っていた。浩介の態度に激怒した教師が、クラス一の優等生・早瀬真愛(齋藤飛鳥)を浩介のお目付け役に任命するまでは。真面目でお堅い真愛を疎ましく思う反面、胸がザワつき始める浩介。彼と仲間たちにとって、彼女は中学時代からの憧れだったのだ。やがて、教科書を忘れた真愛のピンチを浩介が救ったことで、2人の距離は一気に縮まっていく・・・。

キノフィルムズ公式サイトより引用)

ネタバレ感想

鑑賞時には、うっすらと「リメイク作品である」という認識くらいで観に行きまして、オリジナルの存在すら知らなかったんですが、今年公開された邦画ではリメイク作品という点で『50回目のファーストキス』や『SUNNY 強い気持ち・強い愛』と同じような立ち位置の作品だと思いますが、3作ともオリジナルを知らない(SUNNYは直前に見ましたが)って、自分ホントに映画ファンなのかな(笑)

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なのでオリジナル作品との比較は出来ないんですが、それぞれのリメイクの仕方に特徴があって、その違いが面白いなと思いました。

まず、『50回目のファーストキス』はオリジナルはアメリカ映画で舞台はハワイですが、福田雄一監督のリメイク版も舞台はハワイで、主人公の仕事が違ったり、ところどころ福田雄一ギャグを入れてくる以外は、ほぼ完コピだったんじゃないかなと思います。

一方、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』はオリジナルは韓国映画で時代設定は1986年でしたが、大根仁監督によるリメイクは時代設定を1995年にしてコギャル文化にフィーチャーしてて、日本版はかなりローカライズされたものになっていました。

そして本作ですが、オリジナル版の台湾映画では1994年からの10年を描いてるようなのですが、日本版では2008年からの10年になっています。

また、オリジナル版では高校生の主人公たちが当時ヒットしていた「SLAM DUNK」に夢中になってたり、大学に進学すると日本のAVを見ながら飯島愛や小沢まどか等の名前が出てきたりと、時代性を感じさせる作りになっていたようですが、日本版では、冒頭のモノローグ部分で東京スカイツリーが着工した年という言及と、北京オリンピックでの北島康介選手の「何も言えねえ」を水島浩介が言うくらいで、それ以外で世相・風俗を描写するシーンが無く、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』に比べると、オリジナル版ほど時代性を感じられないような作りになっていた気がします。

ただ、オリジナル版では1999年に台湾で起きた921大地震の描写があるようで、本作でも具体的な説明はありませんが3.11の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)を想起させる地震(それでも昼じゃなくて夜なんですが)があって、そこが唯一、物語の途中で時代性を感じたシーンでした。

本作はオリジナル版のストーリーを見てもそうなんですが、物語として取り立てて何か大きなことが起きる訳ではありません。


高校3年生の浩介に真愛がお目付け役になると、段々と気になる存在になり、でもはっきりとした思いは告げられず、大学進学で皆がバラバラになるまでが1時間くらい描かれ、その後は時間軸が飛び飛びになって浩介の十年愛が描かれます。

大学進学後、初めての帰省で2人はきちんとしたデートをすると、浩介は告白しますが真愛からはっきりとした返事は貰えません。

そこで中国拳法オタクである浩介が大学で格闘技イベントを企画して、いいところを見せようと真愛を招待して自身の対戦を見せますが、逆にそのことが原因で2人は喧嘩別れしてしまいます。

するとそのことが仲間内で伝わり、大野陽平が真愛にアタックする様子なんかも描かれますが、これも結局は実りません。

そして地震が起こると、真愛を心配した浩介が久しぶりに電話をして、どうして自分と付き合ってくれなかったかを聞きます。

真愛によると、「本当の自分の姿を見せて失望させるのが怖く、また浩介のことがよく分からず近づきすぎるのも怖かった」というようなもので、それを聞いた浩介は「パラレルワールドでは付き合ってるかもしれない」というようなことを言うのですが、日本版はこのパラレルワールドが案外キモになってる気がします。

結局、そこからまた月日が流れ、浩介は小説家になっているのですが、そこへ真愛から連絡があります。

ここで冒頭のシーンに繫がり、浩介が結婚式で着るような正装に着替えてるのですが、式場のシーンになると浩介と真愛が結婚するのではなく、真愛が年上の外科医と結婚するのが分かります。

しかしこの頃になると浩介は「あの頃、君を追いかけた」と思えるようになっていて、真愛の結婚を心から祝福できるようになっているのでした。

ラストは新郎新婦と写真撮影しようとすると、健人が「花嫁にキスさせろー」と言います。
すると新郎が「まず自分にキスしてからだ」と言い、間髪入れずに健人が新郎にキスします。
そして「オレも」と浩介が新郎にキスし、皆が笑って映画は終わります。

 

この映画、まず引っ掛かりというかインパクトがあるのが、浩介が家に帰ると全裸で生活していて、肛門が蒸れるのか扇風機で風を当てています。

そしてお父さんも全裸生活していて、ここのところお母さん役が多い生田智子さんに「お母さんも全裸になればいいのに」なんて言ってるんですが、これはオリジナル版を踏襲してのようです。

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そして明らかに違和感を覚えるのが、高校の卒業式が終わってからの大学受験と、皆の進学が決まってバラバラになる前の卒業旅行的なもので海に行くことで、3月なのにみんな半袖なことです。

それから真愛が帰省して浩介とデートしてるシーンでも、本来であれば住んでる街の近くの観光地であるはずなのに、街並みは完全に台湾で実際に台湾でロケしています。

しかし、これは観客が違和感を感じるのを承知であえてやってるのでしょう。

オリジナル版へのオマージュを含め、あえてローカライズさせないで、9月からが新年度の台湾に合わせてるんだと思います。

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気候なんかも台湾のままで、だから暑くて全裸だったり、制服に名前が刺繍されてるのもオリジナル版を完コピしてのことだと思います。

ただ、この完コピは舞台をまるっきりハワイまで同じにしてしまった『50回目のファーストキス』の完コピと違って、不思議な雰囲気を醸し出していて、作品全体がパラレルワールド的だと感じました。

実際、浩介が真愛との勝負に負けて坊主にした美容室が、次の日前を通ったら無かったというセリフがあり、こういうところもパラレルワールド的だと思いました。

雰囲気としては、「あの時こうしていたら、こうしていれば」のタラレバ映画で、これもパラレルワールドを描いていたアニメ版の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』に割と近いと思いましたね。

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それにしても主演のお二人が魅力的でした。
芸達者な山田裕貴さんがこれくらいやるのは分かっていたんですが、初めて見た齋藤飛鳥さんがとてもよかったです。

『響-HIBIKI-』のときにも書きました坂道グループは可愛い人が多い印象で、本作の齋藤飛鳥さんもヒロインとしての魅力十分で、あの顔の小ささと細さは何なんですかね。
女優さん、隣に並ぶの嫌でしょうね。
こういうお話はヒロインに魅力があれば、成功は半分保障されたようなもので、キャスティングの勝利だと思います。

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偶然にも、役柄なんかも平手友梨奈さんが演じた鮎喰響と似た感じで、「頭がよくて、感情をあまり出さず、人付き合いは苦手」というキャラクターと外見の可憐さがピタリとハマった気がします。

あと共演者もオリジナル版と同じで松本穂香さん以外、あまり有名で無い人を起用したのも好感が持てます。

あえてローカライズしないことでオリジナル版とはまた違った、不思議な雰囲気を醸し出したと思われる、高リメイク作品だったと思います。

 

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ会員料金 1300円
2018年 160作品目 累計140400円 1作品単価878円

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