焼肉ドラゴン 評価と感想/リヤカー1つあれば何とかなる

焼肉ドラゴン 評価と感想
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舞台作を上手く映像化できたと思います ☆4点

2008年に新国立劇場10周年とソウル芸術の殿堂20周年を記念して企画された鄭義信による舞台作品で、2011年と2016年に再演された同名作品の映画化。
監督は舞台版の演出と同じく鄭義信、主演に真木よう子、井上真央、大泉洋

予告編

映画データ

焼肉ドラゴン : 作品情報 - 映画.com
焼肉ドラゴンの作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。「血と骨」など映画の脚本家としても活躍する劇作家・演出家の鄭義信が長編映画初メガホンをとり、自身の人気戯曲「焼肉ド...

本作は2018年6月22日(金)公開で、全国162館での公開です。
後から公開される所もあるようで、最終的には176館での公開となるようです。
配給はKADOKAWAとファントム・フィルム

劇場での予告編は、TOHOシネマズが日比谷、日本橋、新宿、六本木ヒルズで上映するんで、わりと目にしました。

2016年の新国立劇場での舞台を鑑賞してるので観に行った次第です。

焼肉ドラゴン
新国立劇場の演劇公演「焼肉ドラゴン」のご紹介。新国立劇場では、意欲的なラインアップにより演劇の多様性と豊かさをお届けします。

監督は舞台版と同じく鄭義信さん
本作が映画監督デビュー作となります。
映画脚本は『月はどっちに出ている』『岸和田少年愚連隊』『愛を乞う人』『血と骨』などを手掛けてます。

『月はどっちに出ている』は面白かったなぁ。
WOWOWでのドラマ版が先にあったのは知らなかったんですが、映画版もドラマ版もコニー役はルビー・モレノなんですね。
あの頃のルビー・モレノ重宝されてたんだなぁ(笑)

主演に真木よう子さん
近作は『さよなら渓谷』『まほろ駅前狂騒曲』『脳内ポイズンベリー』『劇場版 MOZU』『海よりもまだ深く』『ミックス。』『孤狼の血』を観てます。

主演に井上真央さん
近作は『白ゆき姫殺人事件』を観てます。

主演に大泉洋さん
近作は『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』『アイアムアヒーロー』『東京喰種 トーキョーグール』『探偵はBARにいる3』『鋼の錬金術師』『恋は雨上がりのように』を観てます。

共演に桜庭ななみさん
近作は『マンハント』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

静花: 真木よう子
梨花: 井上真央
哲男: 大泉洋
美花: 桜庭ななみ
長谷川豊: 大谷亮平
尹大樹: ハン・ドンギュ
呉日白: イム・ヒチョル
時生: 大江晋平
呉信吉: 宇野祥平
美根子: 根岸季衣
英順: イ・ジョンウン
龍吉: キム・サンホ

あらすじ

万国博覧会が催された1970(昭和45)年。高度経済成長に浮かれる時代の片隅。
関西の地方都市の一角で、ちいさな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む亭主・龍吉と妻・英順は、静花、梨花、美花の三姉妹と一人息子・時生の6人暮らし。
失くした故郷、戦争で奪われた左腕。つらい過去は決して消えないけれど、“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”それが龍吉のいつもの口癖だった。
そして店の中は、静花の幼馴染・哲男など騒がしい常連客たちでいつも賑わい、ささいなことで、泣いたり笑ったり―。

そんな何が起きても強い絆で結ばれた「焼肉ドラゴン」にも、次第に時代の波が押し寄せてくるのだった―。

(公式サイトhttp://yakinikudragon.com/about/より引用)

ネタバレ感想

2年前に舞台版を観に行ったばっかりなんですが、内容はほぼ忘れててフレッシュな気持ちで鑑賞できました(笑)
舞台版も日本語と韓国語がチャンポンだったんですけど、舞台の両端に縦長のスクリーンが置かれていて、字幕が表示されてたのを思い出しました。

あと、上演前の客入れのときから舞台上で焼肉を焼いてどんちゃん騒ぎしてて、「何やってんだろ?」と思いましたけど、それは梨花と哲男の入籍祝いをしてて、そのまま梨花と哲男が喧嘩しながら帰ってくるっていう冒頭の入り方になってて、上手いなと思いましたよ。
これは、焼肉の匂いとか煙にこだわった演出だそうで、さすがに座席は真ん中より後ろの方だったので匂いは届きませんでしたが、映画版だったら4DXとかMX4Dでやればいいんじゃないかと思いました。

舞台版はバラック小屋のセットがよく出来てて、上演中もセットチェンジとか無くて、ほぼそこで完結する感じだったと思います。

映画版も冒頭こそボーイング727が離陸しようとしてる伊丹空港を映したり、バラック小屋の集落を空撮したりするものの、すぐにバラック小屋のセットで物語が進むので、いい意味で舞台的でしたね。

監督は舞台の台本を書いていたとき、当時ヒットしてた『ALWAYS 三丁目の夕日』のアンチテーゼを意識したそうですが、映画になって冒頭の空港や空撮がCGなんで、逆にALWAYS感ありましたね。

ストーリーは舞台版と同じなんで、こちらが詳しいと思います。

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物語は映画版もほぼバラック小屋周辺で進行するんですが、映画版ならではのシーンもあります。
時生が学校でいじめられてるシーンとか、哲男と静花の回想で子供時代に夜の空港に忍び込むシーン、美花が勤めるキャバレーのシーンなどは、それぞれの場所で撮影されてます。

あと、大きく違うのは舞台版では時生はいつも上ってる屋根から飛び降りて自殺してしまいますが、映画版では水管橋(水道橋)みたいなところから川に飛び込んで死んでしまいます(時生が死んじゃうのも忘れてた)。

それからマッコリの飲み比べのシーンも忘れてました。
このシーンは舞台でも長かった気がしますが、映画でも4分くらいやってるんで長いですね(笑)

本作は基本的には笑って笑って泣ける作品だと思います。
自分は、舞台版も映画版も面白かった(それこそ『月はどっちに出ている』的な面白さ)んですが、感動して泣くというよりは面白さの方が勝った感じです。

『月はどっちに出ている』も本作も、核になるのはアイデンティティの不在ですよね。
日本人でも韓国人でもない在日という存在。
カフカの小説なんかもそうですけど、このアイデンティティの危うさというものに、なぜか惹きつけられるんです。

自分が泣けなかったのは、たぶん登場人物にそれほど感情移入出来なかったからだと思います。
本作はお父さんが「働いて、働いて、働いて」と言いますが、哲男とか店の常連の男とか働かないですよね(笑)
しかも、みんな飲み代ツケにしてて回収出来るんだろうか?といらん心配をしてしまいます。

静花は自分のことを「かたわ」とか言って卑屈ですし、哲男とのこととかも面倒くさいじゃないですか。
梨花は哲男と仲が悪いとはいえ婚姻中に日白と浮気しますし、美花は最初から不倫してますし、可哀想なの時生くらいかな。

お父さんも時生が学校に行けなくなった時、公立か朝鮮学校という選択肢を与えてあげれば、時生は死ななかったとも思うんで、そんなに感情移入出来ないんですよね。
オモニは「美味しいボンカレー作っちゃる」って言って料理作らなかった(キムチ作ってたけど)し(笑)

でも逆に登場人物が清廉潔白じゃないから、重いテーマでも気楽に見れて笑えるというのもあります。

観てる途中で思い出しましたが、舞台版のときも映画版でも、「一番山っ気がありそうな哲男が北朝鮮帰国事業を選んじゃったか…」と思いました。

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梨花たちは韓国に渡り、美花たちは日本に残りましたから、静花が一番悲惨なんですけど、あの時点では希望があるんですよね。

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それから本作は、役者陣の縁起がいいですね。
バラック小屋でのシーンとかは、ほぼ舞台での設定と同じで出来るんで、舞台的な演技の熱量が伝わってきました。
舞台だと座席によっては演者から遠いので、細かい表情などは見えづらいですが、映画だとその点は映像的にもアップになるので、役者の「顔」が見えてよかったです。

それにしてもヤフー映画のユーザーレビューとか面白いですね。
特に低い評価つけてるの。
まぁ本作は題材からして、そういう低評価のレビューが付くのは想像出来るんですが、『万引き家族』の低評価レビューと同じで「なんだかなぁ」と思います。
『月はどっちに出ている』が公開された頃って、こんな感じじゃなかったんですけどね。

国有地の不法占拠についても怒ってる人いますけど、「醤油屋の佐藤さんから買った」って繰り返すの半分ギャグになってますよね。

行政の担当者が「国有地は売り買いできません」と言っても、僕の父は「醤油屋の佐藤さんから買った」の一点張りで、担当者がひどく困っていたのをよく覚えていますし(笑)、作品の中でそのまま、龍吉のエピソードに使いました。

(公式サイトhttp://yakinikudragon.com/interview/より引用)

お父さんにしてみれば必死なんでしょうけど、その下の世代、息子や娘にしてみれば「登記されて無いんだから無理だよなぁ」とか、「親父、その醤油屋の佐藤さんに騙されてるよなぁ」などと思ってそうな気がして、そういうところに面白さを感じてしまいますね。

本作はポスターにも書いてあるように「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる。」というそれ以上でもそれ以下でもない超ポジティブな映画で、ケ・セラ・セラな映画なんだと思います。

 

PS:どうでもいいけど安楽亭コラボフェアやってたのか。

鑑賞データ

TOHOシネマズ日比谷 シネマイレージデイ 1400円
2018年 108作品目 累計102400円 1作品単価948円

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