悪女/AKUJO 評価と感想/アクションとストーリーの温度差

悪女/AKUJO 評価と感想
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わざわざニキータに寄せなくても ☆3.5点

『殺人の告白』のチョン・ビョンギル監督によるオリジナル脚本のスタイリッシュアクション映画で2017年第70回カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング出品作。
主演は『渇き』のキム・オクビン

予告編

映画データ

悪女/AKUJO (2017):作品情報|シネマトゥデイ
映画『悪女/AKUJO』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:『殺人の告白』のチョン・ビョンギルが監督を務め、『渇き』などのキム・オクビンをヒロインに迎えたスタイリッシュアクション。
悪女 AKUJO : 作品情報 - 映画.com
悪女 AKUJOの作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。「渇き」のキム・オクビンが女暗殺者を熱演したスタイリッシュアクション。日本で「22年目の告白 私が殺人犯です」とし...

本作は2018年2月10日(土)公開で、全国21館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には全国35館での公開となるようです。

予告編は角川シネマやヒューマントラストシネマ渋谷で目にしました。

予告編を見た限り、昨年同じヒューマントラストシネマ渋谷で公開された『ハードコア』っぽいなと思いましたが、本作は如何に?

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監督はチョン・ビョンギル
昨年、入江悠監督でスマッシュヒットとなった『22年目の告白-私が殺人犯です-』のオリジナル作品『殺人の告白』の監督さんです。

作品は未見です。

主演はキム・オクビン
2009年の第62回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したパク・チャヌク監督の『渇き』に主演して、2009年のシッチェス・カタロニア国際映画祭では同作で主演女優賞を受賞してます。

作品は未見です。

他に共演と配役は以下の通りです。

スクヒ: キム・オクビン
ジュンサン: シン・ハギュン
ヒョンス: ソンジュン
クォン幹部: キム・ソヒョン

あらすじ

犯罪組織の殺し屋として育てられたスクヒ(キム・オクビン)は、育ての親ジュンサン(シン・ハギュン)にいつしか恋心を抱き、結婚する。甘い新婚生活に胸躍らせていた矢先、ジュンサンは敵対組織に無残に殺害されてしまい、逆上したスクヒは復讐を実行。しかしその後、国家組織に拘束されてしまい、政府直属の暗殺者として第2の人生を歩み始める。やがて新たに運命の男性に出会い幸せを誓うが、結婚式の日に新たなミッションが降りかかり――

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

鑑賞前の印象はこんな感じです。


鑑賞後の印象はこれに『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』がプラスされてる感じでしょうかね。

本作は冒頭映像が上げられてるんでこちらをご覧ください。

監督のインタビューなんかを読むとやはり『ハードコア』や『ニキータ』に影響を受けてるようです。

韓国発のスタイリッシュアクション映画「悪女/AKUJO」の監督をインタビュー
「ハードコア」の影響、1人称視点と3人称視点の撮り方の違いについて
【イベントレポート】「悪女」監督が「ニキータ」への敬意語る、キム・オクビンのキャスティング理由も
「悪女/AKUJO」のトークイベントが本日12月5日、東京・角川試写室で行われ、監督のチョン・ビョンギルが登壇した。

動画見ると分かりますが『ハードコア』みたいにずっと1人称視点が続くのでは無くて、3分過ぎくらいに鏡のあるトレーニングルームに入るので、「鏡に映っちゃうよなぁ」と思ってると、そこで3人称視点に切り替わります。

このときの主人公は組織の暗殺者で、このあと警察に捕まると、国家情報院に送られて、顔を整形させられて、『ニキータ』みたく国家組織の暗殺者に仕立て上げられます。

ここでスクヒは国家情報院のトレーニング施設から逃げ出そうとするんですが、そのシーンは1カットで撮ってるんで『バードマン』みたくなってます。

またこの時に妊娠(ジュンサンの子)してるのが判明して施設で子供を産みます。

1~2年が経過してトレーニングに合格すると一般人として子供と一緒に団地みたいなところに住みながら、時折、指示される任務をこなすことになります。

映画はこの任務をこなしながら、スクヒの過去を振り返り、なぜ組織の暗殺者となって、(冒頭の)単身敵組織に乗り込むことになったのかが描かれるんですが、ここがあまり上手くない感じがします。

まず回想の時間軸があっちゃこっちゃに飛ぶんで分かり辛いです。
映画が終わってみればそういうことだったのかと凡そは理解できますが、細かい部分で分からないところもあり、もうちょっと上手く処理出来たんじゃないかと思います。

 

あらすじはこうです。

スクヒは幼い頃、ベッドの下に隠れていると目の前で父親を殺され宝石を奪われます。
その後、宝石を探しに来た叔父(父の弟)に見つかると児童売春させられるようになります。

児童売春させられてる相手をたまたま殺しに来たジュンサンに救われると、ジュンサンの組織に引き取られ、バラした拳銃を組み立てたりするなどのトレーニングを受けて組織の暗殺者となります。
スクヒは育ての親のジュンサンのことを「おじさん」と呼びます。

成長したスクヒは叔父を殺しにいきますが、叔父は裏社会の人間で逆に捕まってしまいます。
スクヒをいたぶる叔父は、父殺害には黒幕がいることを仄めかします。
するとそこにジュンサンが助けにきて、叔父の組織を皆殺しにします。

スクヒはジュンサンと結婚しハネムーンに出かけますが、弟分から電話が入るとジュンサンは戻ります。
暫くすると弟分からスクヒに電話があり駆け付けると、ジュンサンが顔が分からなくなる状態で殺されていました。
弟分はジュンサンがスクヒの父殺しの仇をとろうとして逆にやられたと言います。
怒りに震えたスクヒが単身、敵組織に乗り込んだのが冒頭のシーンとなります。

スクヒは国家の暗殺者となると一般人として暮らします。
普段は舞台女優をしています。
10年間、国家に仕えれば、暗殺者としての任は解かれ一般人として暮らせます。

国家情報院はトレーニング中から、一般社会に出たときの監視役として担当を決めますが、皆がスクヒの担当を尻込みする中、ヒョンスが手を挙げます。
ヒョンスは団地の住人の隣人としてスクヒに接近しますが、トレーニング中からスクヒに好意を抱いていて結婚することになります。
本来ならば許されない結婚ですが、上司のクォン幹部の許可を取って結婚します。

結婚式の日、スクヒはクォン幹部から指令を受けます。
式場のトイレの便器のタンクにライフルがあり、それを組み立てて指示したターゲットを暗殺せよとのことでした。

スクヒがライフルを組み立ててトイレの換気扇から照準を合わせると、向かいのホテルの玄関口にいるサングラスの男を射殺しろと指示が出ます。
スクヒはその男に照準を合わせますが、サングラスは外したその男は死んだはずのジュンサンで、動揺したスクヒは狙いを外してしまいます。

命を狙われたジュンサンは向かいの式場から撃たれたのを確認し部下に調べさせると、スクヒとヒョンスの式の参加者がバイトなのが分かります。
スクヒの写真を手に入れたジュンサンは、その顔にどことなく見覚えがあるのでした。

スクヒとヒョンスがレストランで食事中に、ヒョンスが電話で席を立つと、ジュンサンが現れます。
ジュンサンはスクヒが自分の妻だと確信して寝返らそうとしますが、ヒョンスを愛してるスクヒの心は揺らぎませんでした。

すると送り主不明の花束がスクヒに送られてきて、そこに添付されていた音声データを再生するとクォン幹部とヒョンスが会話しています。
ヒョンスが国家情報院でクォン幹部の部下だと知ったスクヒは愕然とします。
花束の送り主がジュンサンだと直感したスクヒは、花束に添付されていたメモの電話番号に国家情報院の暗殺者が向かっているとショートメールを入れます。

ジュンサンはスクヒの情報で自分を殺しに来た国家情報院の暗殺者を逆に捕まえます。
クォン幹部は暗殺者が捕らえられたことを知ると、ヒョンスに連絡しスクヒはジュンサンを殺さねばならないと言います。
ヒョンスはクォン幹部に延辺朝鮮族自治州に行くと言い、スクヒには実家の母が病気になったと言って出かけます。

一方、クォン幹部はスクヒを拘束しジュンサン暗殺を説得します。
ヒョンスと子供との生活を守るにはジュンサンを暗殺するしかないと言いますが、ヒョンスとの結婚が仕組まれたものだと知ったスクヒは応じません。
その裏でクォン幹部はスクヒを人質として交換しようともしていました。

ヒョンスがある病院を訪れるとスクヒの叔父が入院していて、ヒョンスはスクヒを覚えているかと言って銃を向けます。

クォン幹部はヒョンスから連絡を受けるとどうなったかを聞きますが、ヒョンスは明日戻って報告すると言います。
そしてスクヒと連絡が取れないと言うと、クォン幹部は体調を崩して病院にいると言います。

クォン幹部はスクヒを護送してるとジュンサンたちの襲撃を受けます。
スクヒはその隙に手錠を外すとジュンサンが現れ、娘が危ないと言って団地に向かいます。

スクヒが団地に駆け付けると、スクヒの部屋から爆発が起こり、娘を抱いたヒョンスが落ちてきます。
スクヒがヒョンスに駆け寄ると娘は既に息絶え、ヒョンスも虫の息でしたが何か伝えようとしています。
スクヒは誰がやったのかを尋ねますが、ヒョンスも力尽きて死んでしまいます。

茫然自失となったスクヒはクォン幹部がいる建物に入っていくと、クォン幹部に銃を向け国家情報院の仕業なのかと問います。
クォン幹部はまだ分からないのかと言って、ヒョンスが団地に戻ってからが録画されているビデオを見せます。

ヒョンスが娘と家に入るとジュンサンの弟分たちが待ち伏せていました。
スクヒの父殺しから始まる一連の仕業は全てジュンサンによるものと判明すると、スクヒはジュンサンのアジトに単身乗り込みます。

アジトに向かう車の中でクォン幹部から渡された音声データを聞くと、ヒョンスがクォン幹部にスクヒへの思いを語っていて、最初は任務だったがいつしか本気になったことが語られていました。

スクヒは車ごとダイブしてアジトに突っ込むと、機関銃を乱射して部下たちを一掃します。
ジュンサンたちはバスで逃げますが、スクヒが奪った車で追いつくとバスに飛び乗ります。
再び部下を一掃し、バスを運転してる弟分を始末すると、ジュンサンと一騎打ちの末倒します。

バスを降りたスクヒは駆け付けた警官隊に囲まれると、血だらけの顔に不敵な笑みを浮かべて映画は終わります。

 

うーん、話のミソとしてはジュンサンが生きてたことと、そもそもの父殺しがジュンサンによるものだったということだと思いますが、回想シーンが分かり辛いため、さしたる驚きはありませんでした。

それと国家情報院でトレーニングを受ける設定が、あまり上手くないなと思いました。
『ニキータ』の場合はジャンキーで凶暴な少女を訓練して国家の暗殺者に仕立てたので意味がありましたが、本作の場合は既に組織の暗殺者と完成してるので、国家情報院でのトレーニングは意味を成さないと思いましたが、その割には国家情報院でのトレーニング描写が多く、少女時代の訓練は描かれないので片手落ちな気がしました。

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むしろ『ニキータ』に寄せないで、裏組織の中で立ち回り、父殺しの黒幕に行きつく方が分かりやすいと思いました。

本作では冒頭に殲滅した敵組織と叔父組織とジュンサンの組織の繫がりが分かり辛く、ヒョンスが行く延辺朝鮮族自治州も何を意味するのか分かりませんでした。

またジュンサンが結果的にスクヒを救うことになる児童買春者の暗殺や、スクヒの卒業検定の暗殺も、ターゲットとなる相手がどのような組織に属しているかが描かれず、組織の対立構造が描かれないので、何のためにやってるのか分からなくて、アクションを見せるための暗殺になってる気もしました。

その代わりアクションは凄くて、カメラはどうやって撮ってるのだろうという映像ばかりで、ここは素直に凄いと思いました。

こうやってメイキングを見ると、これぞ映画によるマジックで「いや~映画って本当にいいもんですね」と思います。

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2018年 31作品目 累計21300円 1作品単価687円

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