ローズの秘密の頁 評価と感想/なぜ彼女は40年も精神病院に入れられてたのか

ローズの秘密の頁 評価と感想
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彼女の目が男を狂わせる ☆4点

2008年のコスタ賞を受賞したセバスチャン・バリーの「The Secret Scripture」を原作としたアイルランド映画。
監督は『父の祈りを』のジム・シェリダン、主演にヴァネッサ・レッドグレイヴとルーニー・マーラ、共演にエリック・バナ

予告編

映画データ

ローズの秘密の頁(ぺージ) (2016):作品情報|シネマトゥデイ
映画『ローズの秘密の頁(ぺージ)』のあらすじ・キャスト・動画など作品情報:英国とアイルランドの文学を対象としたコスタ賞で「BOOK OF THE YEAR」に輝いた、セバスチャン・バリーの小説を原作としたヒューマンドラマ。
ローズの秘密の頁(ページ) : 作品情報 - 映画.com
ローズの秘密の頁(ページ)の作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。「ドラゴン・タトゥーの女」「キャロル」のルーニー・マーラ主演、「父の祈りを」で第44回ベルリン国際映画祭金熊賞を受...

本作は2018年2月3日(土)公開で、全国20館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には48館での公開となるようです。

TCGメンバーズ、ハッピーフライデーなのでシネマート新宿で斎藤工長編初監督作『blank13』を見ようと思ったんですけど、早々に売り切れてたので、本作を鑑賞。

予告編は未見でルーニー・マーラ主演ということくらいしか知りません。

監督はジム・シェリダン
アイルランドの巨匠なんですが『マイ・レフトフット』も『父の祈りを』も見たことないんですよね。
ダニエル・デイ=ルイス主演作って殆ど見たことないんです。

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なので監督作は初鑑賞となります。

主演にルーニー・マーラ
近作は『サイド・エフェクト』『her/世界でひとつの彼女』『キャロル』『LION/ライオン ~25年目のただいま~』を観てます。

主演にヴァネッサ・レッドグレイヴ
近作は『フォックスキャッチャー』を観てます。

共演にエリック・バナ
近作は『ローン・サバイバー』『キング・アーサー』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

ローズ(若い頃): ルーニー・マーラ
ローズ(現在): ヴァネッサ・レッドグレイヴ
マイケル・マクナルティ: ジャック・レイナー
ゴーント神父: テオ・ジェームズ
スティーヴン・グリーン医師: エリック・バナ
ジャック・コンロイ: エイダン・ターナー

あらすじ

取り壊しが決まった聖マラキ病院。
転院する患者たちの再診のために病院を訪れた精神科医スティーヴン・グリーン(エリック・バナ)は、病院で40年間もの長い時間を過ごしてきたローズ・F・クリア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)を看ることになる。彼女は自分の赤ん坊を殺した罪を背負っていた。しかしローズは、その罪を否認し続け、自身を本名とは別の「ローズ・マクナルティ」と名乗り続けていた。
グリーン医師は、ローズが大切にしている1冊の聖書の存在を知り、彼女の過去に興味を持ちはじめる。ローズは何十年にもわたって、聖書のなかに秘かに日記を書き綴っていたのだ。そして彼女は日記を辿りながら半世紀前の記憶を遡り、グリーン医師を前に自分の人生を語り始める――

公式サイトより引用)

ネタバレ感想

コスタ賞というのはイギリスとアイルランド在住の作家を対象とした文学賞で処女小説部門、小説部門、児童文学部門、詩部門、伝記部門、短編小説部門とあり、本作は2008年の小説部門を受賞してます。

http://www.afpbb.com/articles/-/2564863

コスタコーヒーがスポンサーだからコスタ賞というらしいです。

本作を観てると中盤過ぎぐらいから「こういうことじゃないかな?」と思い始めるんですが、ラストの方はやっぱりそうで、ストーリーもそういうことかと分かるんですが、序盤から中盤にかけて分かり辛いのと、第二次世界大戦中のアイルランドの立場や、アイルランドにおけるカトリックとプロテスタントのことなどの予備知識が無いと理解し辛いんじゃないかと思いました。

本作は2017年のアイルランドのアカデミー賞では6部門にノミネートされていますが、ロッテントマトだとトマトメーター33%、オーディエンススコア59%と低く、アイルランド人だと説明しなくても理解できると思うのですが、他の国の人だと分かり辛くて低評価になってるんだと思います。

The Secret Scripture
Residing in a psychiatric hospital, a woman receives visits from a young psychologist whose interest in her diary trigge...

物語は1942年、ヒトラー率いるナチスドイツがフランスを占領する頃です。
北アイルランドのベルファストにいたローズは叔母を頼って田舎に疎開してきます。
叔母は禁酒ホテルというのをやってるんでそこを手伝ってます。

この美貌なんで男たちが寄ってくるんですが、それが悲劇の始まりです。

まず最初にローズはマイケル・マクナルティっていう酒屋の息子と知り合います。
マイケルはもうすぐイギリス空軍に志願するんで居なくなるって言う話をして別れます。
するとローズが幼い頃やローズの母親を知ってるという街の青年が話しかけてきて、あいつは裏切り者だから関わっちゃいけないと言います。
第二次世界大戦でのアイルランドは中立だったので、マイケルは非国民のレッテルを貼られてるんですが、ローズは意に介しません。

次にゴーント神父と出会います。
都会育ちでおてんばな感じのローズは1人で水着で海を泳いでるんですが、ゴーント神父に泳いじゃダメと言われます。
神父に注意されてるときも、神父の目をじっと見てるので、目を見ちゃダメと言われます。
男を誘ってるようだと。
でも、もうこの時には神父の心はローズに奪われていて、段々とストーカー化していくのですが、自分が聖職者ということもあり、その思いをストレートに出せないので屈折したものになっていきます。

マイケルは既にパイロットになっていて、ローズが浜辺にいると低空飛行したりして存在をアピールします。

次に街の若者のジャックがナンパしてきます。
ジャックは街の平均的な若者で交際するにあたっては支障がありませんが、ジャックと親密そうにしているとゴーント神父が妬いてジャックと喧嘩となり騒ぎになります。

するとなぜか叔母はローズが男たちを誘惑してると言ってホテルの手伝いを辞めさせると、森の中の小屋で暮らさせ人前に出さないようにします。

森の中の小屋で暮らしてるある日、飛行機が墜落したので外に出てみると、パラシュートで脱出したマイケルが木に引っかかってました。
ローズがナイフを渡して助けますが、街の青年たちがパイロットを探してます。
ローズはマイケルを小屋に匿うと、小屋を調べに来た青年たちをあしらいます。

ローズはマイケルの怪我が治るまで小屋に匿ってると、ゴーント神父が訪ねてきて家政婦として雇うから小屋から出ようと言われます。
しかしマイケルのこともあるローズは返事を保留します。

マイケルの怪我も治り、小屋にあったバイクも直ると、マイケルがふらっと出て行って、ローズはもう戻らないんじゃないかと不安になりますが、マイケルが戻ってくると安心して、マイケルを想ってる自分の心に気づきます。

ゴーント神父が返事を聞きに再びやってくると、マイケルは隠れずに応対します。
全てを悟ったゴーント神父は何も言わずに小屋を離れます。

ローズとマイケルは結ばれると、牧師に結婚式を挙げてもらいます。

牧師と神父の違い ~プロテスタントとカトリックの区別|コトバノ
宗教的な区別、違いの言及は誤解を招いてしまう可能性があります。 コトバノでお伝えすることは、あくまでもざくっとした違いに

2人が小屋に戻ると人の気配がしたことからローズはマイケルを逃がしますが、街の若者たちに捕まってしまいます。

ローズはゴーント神父から色情狂の烙印を押されると、強制的に聖マラキ病院に入院させられます。
ローズにはマイケルが死んだと告げられますが、ローズは信じません。
精神病院では反抗的な態度をとると電気ショックを与えられるなど凄惨を極めます。

やがてローズは妊娠したことが分かりますが、産まれる子供は養子に出されることを知ります。
臨月を迎えたローズは病院を逃げ出しますが、職員やゴーント神父に追いかけられると、海を泳いで逃げます。
反対岸の岩場に泳ぎ着くと産気づき赤ちゃんが生まれてしまいます。
落ちていた石でへその緒を切ろうとしますが、ローズが覚えていたのはここまででした。

手漕ぎボートに乗ってローズを追いかけてきた神父や職員はローズが赤ちゃんを石で打ち付けて殺したと証言すると、以後、精神障害犯罪者として40年以上入院することになったのでした。

時間は戻って現在、ローズの話を聞いたグリーン医師は、ローズが聖書の余白に自らの無実を書き綴りマイケルが迎えに来てくれることを信じてこれまで生きたことを知りますが、事件については無実か有罪か判断がつきませんでした。

しかしローズの日記に書いてあった子供を産んだ日付が気にかかります。
ローズが子供を産んだ日は5月2日で、グリーン医師も両親から5月1日か2日と聞かされていたからでした。
そして今回の転院のための再診の資料をよく読むと、再診を依頼してきたのは大司教になったゴーント神父でした。

グリーン医師は亡くなった父親の遺品を調べると、自分宛ての手紙とイギリス軍から表彰された十字架が出てきます。
手紙にはゴーント神父から養子として託されたことが書いてあり、十字架はローズがマイケルからもらった物で聖書をくり抜いて保管していたものでした。

ローズはグリーン医師の母親で、父親のマイケルは街の若者(IRA)に殺されていたのが事の真相でした。
グリーン医師は売却予定だった育ての父の家の売却を止めて、ローズを引き取って映画は終わります。

 

最初に書いたようにローズの回想パートが終わって現在パートになると「グリーン医師がローズの息子なんじゃないかな?」と何となく思うようになるんですが、結果的にそれで合っていて40年以上ぶりに親子が対面を果たすという話なんですが「よかったねー」とは思わず、これ実話だったらゴーント神父の賠償額とんでもないことになるんじゃないか?と思いました。

劇中ローズとマイケルが結婚するところでは「牧師」と強調されるので何でかな?と思うのですが、牧師はプロテスタント、神父はカトリックだからなんですね。
ローズもマイケルもプロテスタント同士惹かれ合い、だからマイケルは地元の若者(IRA)から目の敵にされてるという背景が分かると、物語を理解できました。

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分かり辛い話でしたが集中力が途切れずに観れたのはルーニー・マーラの魅力によるところが大きいですね。

『キャロル』もそうですが、この年代の女性を演じさせるとお人形さんのように可愛いです。

本作は、この閉鎖的な時代のアイルランドを舞台に自立した女性を描こうとした点で、2年前の『ブルックリン』と共通しているのかなと思います。

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そう考えると、とっつきにくい面はありますが、そこまで評価が低い映画では無い気がします。

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ有楽町 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2018年 27作品目 累計16500円 1作品単価611円

コメント

  1. Aki より:

    理解が深まりました。 ありがとうございます。

    • eigamanzai より:

      こちらこそ拙ブログ読んで頂きありがとうございました。