人の姿をした人では無い何かの物語 ☆3.5点
2004年に起きた大牟田4人殺害事件を題材にした鈴木智彦著「我が一家全員死刑」を原作に映画化した作品で、監督は初商業映画となる小林勇貴、主演は間宮祥太朗、共演に毎熊克哉
予告編
映画データ
本作は2017年11月18日(土)公開で全国28館での公開です。
12月に入ると7館ほど増えて最終的には全国35館での上映となるようです。
本作の予告編はあまり目にしなかったんですが、映画サイトの情報などで1年くらい前から知っていたので実話モノということで楽しみにしてました。
昨年、2016年は実話ベースの作品が『葛城事件』『日本で一番悪い奴ら』『後妻業の女』『怒り』『ひかりをあててしぼる』と結構あったのですが、今年はこれが最初で最後かな?
監督は小林勇貴さん
本物の不良を出演させた『孤高の遠吠』という作品で、第26回(2016年)ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門でグランプリを受賞されたそうです。
作品は初鑑賞になります。
主演は間宮祥太朗さん
近作は『帝一の國』を観てます。
共演は毎熊克哉さん
近作は『ダブルミンツ』『彼女の人生は間違いじゃない』『獣道』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
首塚タカノリ: 間宮祥太朗
首塚サトシ: 毎熊克哉
首塚テツジ: 六平直政
首塚ナオミ: 入絵加奈子
カオリ: 清水葉月
吉田カツユキ: 落合モトキ
吉田ショウジ: 藤原季節
パトラ: 鳥居みゆき
あらすじ
家族想いの主人公タカノリ(間宮祥太朗)は、情緒不安定な組長の父・テツジ(六平直政)とヒステリックな母・ナオミ(入絵加奈子)を借金苦から救う為、兄・サトシ(毎熊克哉)と共に、近所の資産家一家の現金強奪を実行する。しかしあまりにもお粗末な強盗の末、資産家の息子を殺害して事態はエスカレート。止められないアドレナリンと「家族のため」という「愛」を合言葉にタカノリたちの人殺しは狂いに狂い咲いてく!
(公式サイトhttp://shikei-family.jp/about.htmlより引用)
ネタバレ感想
映画は冒頭、「小林祝勇貴」と書いてあって、「祝」のところがおまんこマークになってるんですけど、それがそのまま出会いカフェで脚広げてパンツ見えてる女子高生の股間に重なる画になります。
で、それをマジックミラー越しに盗撮してる客が事務所に連れて行かれてボコられる展開になるんですけど、その出会いカフェを仕切ってるのがタカノリです。
そこには兄のサトシも来てて、タカノリに電話しても連絡がつかないと言って怒ってるのが冒頭なんですが、シリアスな感じじゃなくてマッド・ファンタジーな感じで撮ってるんで、「ああ、そっちの路線で来ちゃったか」と思いました。
ベースとしては、シリアスな路線の『葛城事件』『怒り』『ひかりをあててしぼる』の方では無くて、コメディ寄りの『日本で一番悪い奴ら』や『後妻業の女』みたいで、日活シネスコープや東映実録シリーズみたいな感じになるので『日本で一番悪い奴ら』をもっとふざけた感じのテイストでした。
ストーリーはウィキペディアに出てる概要のまんまですね。
事件に関しては映画公開に合わせたと思われる東洋経済の記事が参考になると思います。
記事中にある兄が弟を脅すセリフは、そのまま映画内で使われてました。
本の内容に関することはこちらのブログが詳しいと思います。
映画を観終わったときは、ストーリーがスッカスカだなと思ったんですが、上記の記事を読むと事件そのものがそうなんですね。
映画内でもそうですが、金目の物のありかを聞く前に殺しちゃうので、大してお金が取れないんです。
映画内では20kgくらいの金庫を見つけるんですが、鍵が無いのでグラインダーとかバールを、わざわざ仲間から借りてきてこじ開けるんですが、大変な思いをしたわりに金目の物は入ってなくて、やってることがドリフのバカ兄弟みたいなんです。
事件の動機としては『冷たい熱帯魚』の埼玉愛犬家連続殺人事件みたいに金目当てという単純なものなんですけど、詐欺にあたる部分が無いんでお話としてはスカスカになってしまいます。
なので、それを埋めるようにタカノリと彼女のカオリのやり取りが挟まれるんですが、下ネタの無駄なシーンが多かった気がします。
病院のくだりもいらなかったかな。
入院してる小人の人も出だしのインパクトはありましたけど、入院したら包帯でぐるぐる巻きでしたし、布団の中での化け猫のような泣き声も、何を表現しているのかよく分からなかったです。
あと、この映画では人はなかなか死なないというのが描かれてるんですが、座間のような事件が起きてしまうと、犯人がただ単に知識が足りなかっただけなのかな?とも思ってしまいます。
今年公開された『フリー・ファイヤー』という映画でも、ピストルでは人はなかなか死なないというのをやっていましたが、リアル過ぎると逆に面白くないのかもしれません。
ただ不謹慎ですけど、人はなかなか死なないというリアルを描くと、グダグダな展開になってある種のおかしみは生まれると思います。
ストーリーの部分は、あまり見るべきものは無かったんですけど、映画のルックや役者の演技はよかったと思います。
冒頭のケバケバしい感じとかは好きになれなかったんですけど、製作が西村映造なので話が進んでくと『冷たい熱帯魚』ぽくなったり、終盤なんかは黒沢清監督作みたいな不穏な画がありました。
ただ西村映造らしくやり過ぎなところもあって、殺されたショウジの遺体なんかはゾンビものみたいになっちゃってました。
殺したと思ったショウジが生きてて車のトランクから出てきたときは、後ろのお客さんが凄い驚いてて椅子蹴られました(笑)
間宮祥太朗さんの演技は、シャブでパキったときや殺害前の追い込み方なんかは鬼気迫るものがあって凄かったです。
毎熊克哉さんも、もう居るだけでおっかなくて迫力ありました。
昔の邦画、特にヤクザ映画でああいうクセのあるいい感じの役者さんがいたのを思い出し、もっと他の出演作もみたいと思いました。
人がなかなか死なないのと同様、車がなかなか沈まないというのもやっていて、タカノリの「いつかギラギラする日では景気よく沈むんだけどな」には笑ってしまいました。
もう少し物語性のある映画かと思っていたので、評価が低くなってしまうんですが、自分がこの事件そのものに興味を惹かれなかったせいもあると思います。
無軌道な残虐ぶりはウクライナ21を思い出しましたが、原作の表紙の写真を見てもそんな感じがしました。
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ会員料金 1300円
2017年 191作品目 累計205400円 1作品単価1075円
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