後半、教会での籠城戦が凄まじい ☆3.5点
第二次世界大戦中、ナチス高官の暗殺としては最上位の人物ラインハルト・ハイドリヒの暗殺に成功した「エンスラポイド(類人猿)作戦」を描いた実話を基にした映画。
監督はショーン・ハリス、主演にキリアン・マーフィーとジェイミー・ドーナン
予告編
映画データ
本作の予告編は劇場とかで見たことなかったんですけど、ヤフー映画のレビュー点数が高そうだったのと、またまたナチス物ということで観に行ってきました。
監督はショーン・エリス
初めましての監督さんで元々はファッションフォトグラファーで短編映画を2本と本作で長編が4本目のようです。
主演にキリアン・マーフィ
ノーランバットマン3部作で有名ですが見てないんですよね。
来週から公開される『ダンケルク』にも出てます。
近作は『レッド・ライト』と『フリー・ファイヤー』を観てます。
主演にジェイミー・ドーナン
フィフティ・シェイズの変態社長グレイ役で有名ですが、日本ではフィフティ・シェイズ自体がヒットしてないので認知度は今一つというところでしょうか?
近作は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』と『フィフティ・シェイズ・ダーカー』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
ヨゼフ・ガブチーク: キリアン・マーフィ
ヤン・クビシュ: ジェイミー・ドーナン
マリー・コヴァルニコヴァー: シャルロット・ルボン
レンカ・ファフコヴァー: アンナ・ガイスレロヴァー
ヤン・ゼレンカ=ハイスキー: トビー・ジョーンズ
アドルフ・オパルカ: ハリー・ロイド
マリー・モラヴェツ: アレナ・ミフロヴァー
ラジスラフ・ヴァネック: マルチン・ドロチンスキ
アタ・モラヴェツ: ビル・ミルナー
あらすじ
第二次大戦中期、ナチスがヨーロッパのほぼ全土を制圧していた頃。イギリス政府とチェコスロバキアの亡命政府とが協力して極秘計画を練る。パラシュートを使ってチェコ領内に送り込んだのは、二人の軍人ヨゼフ・ガブチーク(キリアン・マーフィ)とヤン・クビシュ(ジェイミー・ドーナン)。
当時、チェコの統治者でホロコースト計画を推し進めていたのが、ヒトラー、ヒムラーに次ぐナチスNo3と言われたラインハルト・ハイドリヒ。二人はナチスとハイドリヒの暴走を止めるために送り込まれたスパイだった。ヨゼフとヤンはチェコ国内に潜伏するレジスタンスの協力を得てハイドリヒの行動を徹底的にマークして狙撃する機会をうかがう。任務の過程で芽生えた愛する女性との幸せな生活を夢にみながらも、祖国チェコのために、そして平和な未来のために自らを犠牲にして巨大な敵と戦うことを誓うのだった。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
去年と今年だけでも、これだけナチス物を観たんですが、歴史に疎く本作の事件もこの映画で初めて知りました。
このエンスラポイド作戦を題材にした映画は『死刑執行人もまた死す』と『暁の7人』という作品が作られてたみたいなんですけど未見です。
『死刑執行人もまた死す』は実際の事件が1942年に起きて、もうその翌年の1943年には作られてたんですね。
映画はオープニングにテロップでミュンヘン協定のことが説明されます。
イギリス、フランス、イタリア、ドイツの首脳会談で、ドイツによるチェコスロバキアへの領土要求を認めてしまい、チェコスロバキアは戦わずしてドイツに併合されてしまったことが説明されます。
説明が終わると本作の主人公のヨゼフとヤンが当初の目標地点からずれて、森の中へパラシュートで着地したのが描かれます。
荷物は木に引っ掛かり、ヨゼフも足に木が刺さって負傷してしまいます。
とりあえずパラシュートを片付けて森の中で隠れてると、猟犬を連れた農家に見つかってしまいます。
パラシュートも隠れてなく農家にはレジスタンスということもバレバレでしたが、温かいスープがあると言って家に招いてくれます。
2人はプラハに行きたいようで距離を聞くと30kmとのことでしたが、翌日農家が車で連れてってくれるといいます。
この時代、レジスタンスをゲシュタポに通報すれば報奨金が出るようで、この農家もそうでした。
それに気づいたヨゼフが農家を撃ち殺すも、もう一人を追っていたヤンは拳銃を持つ手が震えて撃てませんでした。
プラハに着いた2人はある男の住所のアパートを訪ねますが、出てきたのは女でその男は前の住人とのことでした。
前の住人のことは何も知らないとのことで困り果てた2人ですが、近所の動物のお医者さんが親切な人だから、そこをあたってみるといいと言われます。
動物病院に行ってヨゼフの足も縫ってもらい、訪ねに行った男のことを聞くと知ってるとのことでした。
しかし今は連絡がつかないとのことで、別の男を紹介してくれると言います。
動物病院で一夜を明かすとその男が現れ付いていくと、やっとレジスタンスと合流できるのでした。
レジスタンスと合流した2人は、計画がハイドリヒ暗殺であることを告げると反対されます。
チェコスロバキア国内に潜伏するレジスタンスの見立てでは、ハイドリヒを暗殺すればナチスによる無差別の報復が起こり、多数の一般市民が殺されるとのことでした。
2人はイギリスにある亡命政府の決定だと言いますが、亡命政府とは通信手段が途切れてて確認する術がありませんでした。
とりあえず2人はレジスタンスに協力する一般家庭のモラヴェツ家に匿われることになります。
2人はハイドリヒ暗殺のための下調べとして、ハイドリヒの普段の行動確認に街へ出ようとしますが、男1人だと怪しまれるってことで、その家のお手伝いであるマリーとカップルを装うことにします。
マリーにもう1人信頼できる友人を紹介してもらって、ヤンとマリー、ヨゼフと紹介してもらったレンカとでコンビを組みます。
その後はこの2組のロマンスが軽く描かれるんですが、正直、前半1時間くらいは少し退屈でしたね。
といいますのも、まず暗殺計画にレジスタンスが反対していて、目的が定まってないこと。
序盤の描写から、この2人が暗殺計画を実行するには頼りなく見えたこと。
暗殺計画を実行するという強い意志があるにも関わらず、女に現を抜かしてるところがリアリティがあるように感じられなかったことなどです。
結局、ハイドリヒ暗殺計画は2日後くらいに行うことが急に決まって、それはハイドリヒがプラハを離れチェコスロバキアには戻ってこないかもしれないからでした。
暗殺決行当日も待合せたメンバーが1人来ず、不安な立ち上がりとなります。
予定通り出勤中のハイドリヒの車を止めるとヨゼフが正面から銃で撃とうとしますが、銃が故障して撃てません。
モタモタしてる間にハイドリヒが銃で反撃してきたので、ヤンが慌てて車の下に手榴弾を投げ入れて爆発させると、ハイドリヒに怪我は負わせますが、作戦は失敗で2人は逃げることになります。
結果的にはこの怪我が元で1週間後にハイドリヒは死亡しますが、作戦としては失敗してるのでどうもスカッとしないんですよね。
ただ映画的には、この辺りから面白くなってきました。
ナチスが実行犯を探し始めるとヨゼフもヤンも、もうモラヴェツ家には居れないということで、教会に潜伏することになります。
ヨゼフたちと一緒にイギリスからパラシュートで潜入してきた7人で聖ツィリル・メトデイ正教大聖堂に潜伏することになります。
このパラシュート隊の7人の中ではハリー・ロイド演じるアドルフ・オパルカが仕事出来る感じで頼もしかったですね。
彼の方が主人公2人よりも魅力的に見えました。
このあとは、暗殺当日に来なかったカレル・チュルダという人物が密告して、ヨゼフとヤンが匿われていたモラヴェツ家が割れると、ゲシュタポがやってきます。
母マリーが用意してあった青酸カリで自殺すると、息子のアタは連行されます。
アタは激しい拷問にかけられ、バケツに入った切断された母マリーの頭を見せられると、ヨゼフたちが教会にいると口を割ります。
ゲシュタポとドイツ軍が大聖堂を急襲すると、激しい籠城戦になります。
パラシュート隊は3人交代で見張りを立てていて、残りは地下で休んでいたので、最初に応戦したのはヤンとアドルフたちでした。
もうこの籠城戦は3人対何百なので敵わないのが分かってるから切ないんですよね。
これがシュワルツェネッガーとかスタローンだったら逆転もあるんでしょうけど、エンタメ作品じゃないんでそうはならないです。
弾が尽きるとアドルフもヤンも用意してあった青酸カリを飲んで1発だけ残してあった銃で自殺します。
地下ではヤンが死んだことに気付くヨゼフの表情が描かれ心を締め付けられます。
ドイツ軍は教会の地図を入手すると地下室があるのが分かり、そこも突入されます。
ヨゼフたちが降りてくるドイツ兵を片っ端から撃つと、ドイツ軍は地下室に降りるのを諦め、水攻めにします。
結局ヨゼフたちはヤンと同じように服毒し銃を撃って死んでいくのでした。
エピローグではテロップで籠城は6時間に及び、その後報復として村1個が壊滅させられ他に5千人が処刑されたと説明されます。
この事件をきっかけにイギリスはミュンヘン協定を無効にしチェコスロバキア復活を支持したと説明されて映画は終わります。
映画は史実なので仕方ないですが、ハイドリヒ1人を倒すために1万人以上が犠牲になったようでモヤモヤするところではあります。
この事件をチェコスロバキア内部のレジスタンス側の視点で描いた『抵抗のプラハ』という作品があるようですがDVD化されてないようですね。
あらすじを読んだ限りだとロンドンの亡命政府と国内にいるレジスタンスとでは温度差があったみたいで、その辺は本作でも最後まで反対してた人がいました。
映画はラスト3~40分くらいはかなりの銃撃戦になるんで見応えがあるんですが、前半1時間くらいは眠くなってしまいました。
ラブロマンスの部分は史実なのか分かりませんが、あまり必要が無かった気がします。
最後ヨゼフが、先に死んでいるレンカに導かれるように死んでいくんですけど、そのシーンが撮りたいがためのラブロマンスに見えてしまいました。生き残ったマリーの方は触れられずじまいでしたし。
ただこういった史実は知らなかったので勉強になりました。
キリアン・マーフィー、ジェイミー・ドーナンという人気スターを起用してこういう映画を作るのは史実を知らない層に届くと思うのでいいことだと思います。
今後もこういう歴史に残る大きな史実と、『ヒトラーへの285枚の葉書』のような埋もれた史実の名もない市民のエピソードの映画が作られていくのだろうなと思います。
鑑賞データ
新宿武蔵野館 ファーストデー 1100円
2017年 144作品目 累計152800円 1作品単価1061円
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