クリアな映像に抑えた演出が光る良作 ☆4.5点
岡山県に在住するカップルの実話で、2006年に発症した原因不明の病で昏睡状態に陥った彼女との闘病から8年越しの結婚までを描いた作品。
監督は『64-ロクヨン- 前編/後編』の瀬々敬久、脚本は岡田惠和、主演に佐藤健と土屋太鳳
予告編
映画データ
本作は2017年12月16日(土)公開で全国319館での公開です。
予告編は劇場で頻繁に目にしました。
この冬の松竹の大作でしょうかね。
これで一応、東映は12月1日公開の『探偵はBARにいる3』、東宝は12月9日公開の『DESTINY 鎌倉ものがたり』、あとワーナーは12月1日公開の『鋼の錬金術師』と日本のメジャー配給の今冬の大作は出揃った感じでしょうか。
監督は瀬々敬久さん
近作は公開中の『最低。』を観てます。
主演に佐藤健さん
近作は『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』『リアル~完全なる首長竜の日~』『トイレのピエタ』『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』『何者』『亜人』を観てます。
主演に土屋太鳳さん
近作は『PとJK』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
西澤尚志: 佐藤健
中原麻衣: 土屋太鳳
柴田社長: 北村一輝
室田浩輔: 浜野謙太
島尾真美子: 中村ゆり
和田医師: 堀部圭亮
そうめん工場社長: 古舘寛治
中原浩二: 杉本哲太
中原初美: 薬師丸ひろ子
あらすじ
結婚を約束したカップル、尚志(佐藤健)と麻衣(土屋太鳳)。
結婚式を間近に控え幸せ絶頂だったある日、原因不明の病が突然麻衣を襲い、意識不明となってしまう。
いつ目が覚めるかわからない状態に、麻衣の両親(薬師丸ひろ子、杉本哲太)からは「もう麻衣のことは忘れてほしい」と言われるが、尚志は諦めず麻衣の側で回復を祈り続ける。
長い年月の末、ようやく麻衣は目を覚ますが、さらなる試練が二人を待ち受けていた。
そして二人が結婚を約束してから8年、ついに最高の奇跡が訪れる―。
ごく普通のカップルから生まれた、想像を超える愛の物語。(公式サイトhttp://8nengoshi.jp/about/story.htmlより引用)
ネタバレ感想
物語は2006年3月17日から始まります。
主人公の尚志(佐藤健)は勤務する自動車整備工場の先輩・室田(浜野謙太)に誘われた飲み会で麻衣(土屋太鳳)と出会います。
その日はお腹が痛く積極的に会話に参加せず一次会で離脱すると、二次会のカラオケに向かった麻衣からダメ出しされます。
一次会での態度は何なの?と。
お腹が痛かったことを説明すると誤解が解け、麻衣はお腹温めてと持ってたカイロをくれたことから、付き合うようになります。
仕事は車の修理、趣味も車の修理という尚志の愛車AE86で様々なところに出かける2人。
クリスマスが過ぎ、年が明けると、尚志はプロポーズします。
麻衣は以前から前を通るたびに素敵だなと思っていた結婚式場に尚志を連れて行くとその場で予約を申し込みます。
それは2人が出会った記念日からちょうど1年後の2007年3月17日。
結婚式場のスタッフ島尾(中村ゆり)の「仏滅ですがよろしいですか?」の声にも力強く頷く2人でした。
ある日、いつものデートのように麻衣が尚志の家に遊びに来て、尚志が前に2人で行った場所の写真を見ていると、麻衣はそんな所に行ったことは無いと言い始めます。
そのうちに体に虫が這いずり回ったり、手足が失われる幻覚を見るようになって発狂します。
尚志は暴れる麻衣を押さえて病院に連れていくと直ちにストレッチャーに乗せられます。
病室に運ばれる麻衣は「殺せー、殺せー」と喚いています。
麻衣の両親(薬師丸ひろ子、杉本哲太)も駆け付けますが、麻衣はすぐに昏睡状態に陥るとそのまま意識を取り戻すことはありませんでした。
医者(堀部圭亮)からはこのまま意識が戻らない可能性があることも覚悟して欲しいと言われます。
別の日、尚志が仕事をしてると麻衣の両親から麻衣が危篤状態だと連絡を受け直ちに向かいます。
尚志が病院に着くと麻衣は心停止していてAED治療を受けていました。
幸いにして危篤状態を脱すると、麻衣は再び昏睡状態に入ります。
尚志はいつ目覚めるとも分からない麻衣の元へ、仕事前に毎日2時間かけて会いに行きます。
麻衣が昏睡状態に陥ってから54日目には、麻衣が起きた時の為にビデオレターを撮って麻衣の携帯電話に送るようになります。
麻衣は意識不明ながらも夢遊病者のように手を動かします。
ある日医師から、病状を良くするために卵巣摘出手術を勧められます。
麻衣の病気は卵巣奇形腫などによる免疫反応でできた、本来、体を守るべき抗体が誤って脳を攻撃している為で300万人に1人の病気と言われます。
尚志は手術はきっと上手くいくと言いますが、看病疲れと不安になっている麻衣の母は「家族じゃないから、そんなこと言えるのよ」と言います。
麻衣の闘病が1年を過ぎても足繫く通う尚志にいたたまれなくなった麻衣の両親は「もう来なくていい。麻衣は諦めて自分の道を生きて欲しい」と言います。
気落ちした尚志に気付いた自動車整備工場の社長・柴田(北村一輝)は気分転換にトヨタ2000GTを小豆島のそうめん工場の社長(古舘寛治)に届ける納車に同行させます。
柴田は尚志が採用面接の時、「修理で車が直らなくても愛情を持って修理し続ける」と言っていたのが印象的だったと言います。
その言葉に気持ちを押された尚志は翌日から再び、病院に通います。
尚志の強い意志を知った麻衣の両親はありがとうと言って、尚志はもうとっくに家族だったと言います。
昏睡状態から2年半のある日、尚志が見舞ってると麻衣が突然意識を取り戻します。
両親も駆け付けると医師から説明を受けます。
意識を取り戻したといっても、以前の記憶が全て戻るかは分からないと言われ、今の脳の状態はまだらに目覚めてるだけで、赤ちゃんと同じような状態だと言われます。
そこから麻衣は脳のリハビリと体のリハビリをしていくと段々と回復していきます。
車椅子生活は余儀なくされますが、両親や同窓生たちとも楽しく会話できるまで回復します。
しかし麻衣は尚志の記憶はありませんでした。
家族でもないのにいつもいるこの人は誰だろう?と思っていました。
尚志は麻衣が自分の記憶が無いことにショックを受けますが、それこそがこの病気の特徴であると理解し受け止めます。
しかし麻衣は尚志のことを思い出せない自分に苛立ち始めます。
尚志とデートした場所などを訪れ、記憶を蘇らせようとしますが、逆に自己嫌悪に陥りるばかりでした。
記憶を蘇らそうと無茶をする麻衣を見た尚志は、自分がそばにいると逆に傷付けると考え身を引きます。
尚志は柴田社長の整備工場を辞め、島の小さな整備工場に勤め始めます。
麻衣は変わらず車椅子生活でしたが、病院を退院して実家で暮らせるようになります。
実家に戻った麻衣は自分の携帯電話を見ようとしますがロック解除のパスワードが思い出せず開けません。
ある日、麻衣は母親と市内に買い物に出かけると、結婚式場の前で足が止まります。
オープン準備をしていた式場スタッフの島尾が麻衣に気付くと声を掛けてきます。
結婚式場のことも島尾のことも思い出せない麻衣は、島尾から説明を受けます。
麻衣が以前からこの式場を気に入っていて初めて来たその日に予約を入れていたこと。
その後すぐ病気になるも尚志は式場をキャンセルせず、毎年3月17日に予約を入れてたことを知ります。
尚志の思いを知った麻衣は両親の手を借りず、1人で尚志に会いに行きます。
島に向かう船の中で携帯を開き、パスワードを0317と入れるとロックが解除されます。
メールフォルダには尚志からのビデオレターが届いていました。
島に着いた麻衣は子供たちが遊ぶブランコを修理してる尚志を見つけます。
麻衣に気付いた尚志が歩いてこようとすると、麻衣は私から行くと言います。
麻衣は尚志のことは思い出せないけど、また好きになったと言います。
思い出の結婚式場で式を挙げて映画は終わります。
この実話はユーチューブに投稿された1本の動画から話題になったとのことですが、この件は全く知りませんでした。
一般の素人の方が上げた動画かと思ったんですが、式場のテイクアンドギヴ・ニーズが絡んでるんですね。
経緯がちょっと『余命1ヶ月の花嫁』っぽい気もしますが、この病気のことは知らなかったので、単純に勉強になりました。
劇中では診断名が出ないんですけど、病名は「抗NMDA受容体抗体脳炎」というようです。
『エクソシスト』もこれだったなんて、科学が進むと何でも分かっちゃうのが凄いですね。
今度からエクソシストを見る時は、「あ、抗NMDA受容体脳炎だな」と思って見ますね。
昏睡状態時やリハビリ時の土屋太鳳さんは特殊メイクで臨んだようですが、見た目からヤバさ感が伝わってきました。
虫が体を這いずる映像や手足が消失する映像もホラー感あって『震える舌』を思い出しましたね。
瀬々監督の演出は8年間を119分で描くのでテンポがよく飽きませんでした。
クリアな映像に抑制された演出が効いていて、泣かせよう感がなく好感が持てました。
シーンによってはまったく劇伴をつけず、佐藤健さん、土屋太鳳さんの演技で魅せるシーンもあって良作だと思います。
主人公が車好きということで愛車が『頭文字D』のAE86というのも男性にはツボに入るのではないでしょうか。
トヨタ2000GTが登場するのもツボりました。
劇中では卵巣摘出手術は描かれないのですが、母親が頼んで子供が産めるようにしてました。
具体的にどのような手術をしたのかは不明です。
全体的には詳しい病気の説明は避けて、ラブストーリーの方に比重を置いたのは、個人的にはやや物足りなかったですが、本作と同じ12月16日公開の『彼女が目覚めるその日まで』も抗NMDA受容体脳炎を扱ってるようなので、そちらも観てみたいと思います。
(鑑賞後の感想はこちら↓)
難病系のお話は何年か周期で注目が集まりますね。
数年前は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の作品が多く作られてました。
アイス・バケツ・チャレンジなんかもあってかなり話題になりましたよね。
今年公開された作品でも『ギフト 僕がきみに残せるもの』というのがありました。
こういう病気は防ぎようがないので困りますが、映画からは、そのようになったときにどのように病気と向き合うかを学ぶのが大事なんだと思いました。
鑑賞データ
丸の内ピカデリー SMTメンバーズ60P無料鑑賞クーポン 0円
2017年 207作品目 累計222100円 1作品単価1073円
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