ゲイと死体といじめっ子と過食嘔吐と私 ☆4.5点
1993年から1994年にかけて雑誌「CUTiE」に連載された岡崎京子による漫画原作を実写映画化した作品。
監督は行定勲、主演に二階堂ふみ、吉沢亮、共演に上杉柊平、SUMIRE、土居志央梨、森川葵
予告編
映画データ
本作は2018年2月16日(金)公開で、全国108館での公開です。
3月に公開するところもあるみたいで、最終的には116館での公開となるようです。
予告編は映画館で1回か2回チラッと見た気がします。
漫画原作未読での鑑賞です。
監督は行定勲さん
近作は『ピンクとグレー』『ナラタージュ』を観てます。
主演に二階堂ふみさん
近作は『渇き。』『味園ユニバース』『ふきげんな過去』『SCOOP!』『何者』を観てます。
主演に吉沢亮さん
近作は『ラストコップ THE MOVIE』『銀魂』『斉木楠雄のΨ難』『悪と仮面のルール』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
若草ハルナ: 二階堂ふみ
山田一郎: 吉沢亮
観音崎: 上杉柊平
吉川こずえ: SUMIRE
小山ルミ: 土居志央梨
田島カンナ: 森川葵
よっちゃん: 小川紗良
若草(母): 西田尚美
あらすじ
若草ハルナ(二階堂ふみ)は、彼氏の観音崎(上杉柊平)が苛める山田(吉沢亮)を助けたことをきっかけに、夜の河原へ誘われ放置された<死体>を目にする。
「これを見ると勇気が出るんだ」と言う山田に絶句するハルナ。
さらに、宝物として死体の存在を共有しているという後輩でモデルのこずえ(SUMIRE)が現れ、3人は決して恋愛には発展しない特異な友情で結ばれていく。ゲイであることを隠し街では売春をする山田、そんな山田に過激な愛情を募らせるカンナ(森川葵)、暴力の衝動を押さえられない観音崎、大量の食糧を口にしては吐くこずえ、観音崎と体の関係を重ねるハルナの友人ルミ(土居志央梨)。
閉ざされた学校の淀んだ日常の中で、それぞれが爆発寸前の何かを膨らませていた。
そうした彼らの愛憎や孤独に巻き込まれ、強くあろうとするハルナもまた、何物にも執着が持てない空虚さを抱えていた。
そんなある日、ハルナは新しい死体を見つけたという報せを、山田から受ける…。(公式サイトhttp://movie-riversedge.jp/story/より引用)
ネタバレ感想
昨年の9月とか10月でしょうか、映画サイトのニュースとかで「リバーズ・エッジ映画化」の文字を目にしたのは。
大根仁監督でテレビ東京でやってたドラマを何で今頃映画にするんだろ?と思ったほどで、漫画原作のことは全く知りませんでした。
ドラマは「リバースエッジ」で「ス」に濁点が付かないのですね。
岡崎京子さんの名前は知っていて、映画版の『ヘルタースケルター』は見ました。
交通事故に遭われて、事実上、作家生活を絶たれていたのは知らなかったんですが、そういえば当時(1996年)そんなニュースを聞いた気もします。
本作を観るにあたっての予備知識は殆どなくて、「河原の死体」というフレーズから『アヒルと鴨のコインロッカー』みたいなの思い浮かべてたんですが、全然違いましたね。
そして映倫区分がR15+なのも忘れてました。
あらすじは、漫画原作が有名だそうで大抵の方が知ってるんじゃないかと思うので省略させていただきます(笑)
自分は未読ですので、映画と原作がどれくらい違うのかは分かりませんが、漫画原作のページ数からすると2時間の映画にするにはちょうどいい分量じゃないかと思うので、端折られてるところは無いんじゃないかと思います。
映画、始まってすぐ思ったのが画面が4:3のスクリーンなんですよね。
グザヴィエ・ドランかと思いました。
スタンリー・キューブリックは、4:3こそが理想の画郭だと言った。グザヴィエ・ドランはなぜ『MOMMY/マミー』で1:1を選んだのか? #グザヴィエドラン #ピクチャーズデプトシネマセレクション #逗子文化プラザホール https://t.co/J6o6i7yheG
— グザヴィエ・ドラン (@XDolanJP) 2017年9月25日
そして高校が制服が無くて私服。
当時、ゆとり教育の延長かなんかで、そういう学校が増えてたのを思い出します。
現在は、また逆に制服回帰でしょうか。
そして、吉沢亮さん演じる山田一郎が真っ裸でロッカーから転がってくるシーンは、体張ってるなと思いましたが、観音崎とルミの濡れ場もこのクラスの作品としてはエグいなと思いました。
シックスナインのシーンまであったのでルミ役の女優さんは脱ぎ要員かと思いましたが、土居志央梨さん、存じ上げなかったのですが、2015年の奥田瑛二さん主演の『赤い玉、』でも、体を張った演技をされてたそうで失礼しました。
要チェックな女優さんだと思います。
観音崎と付き合ってるのはハルナで、ルミはセフレみたいな扱いだったので土居さんのヌードシーンが多かったんですが、そのシーンは突然やってきました。
観音崎がラブホテルでセックスしてるんですが、女優さんのおっぱいは見えてます。
てっきり相手はまたルミかと思ったら、ハルナで一瞬何が起こってるのか分からなかったんですが、二階堂ふみちゃんのおっぱいがハッキリ見えちゃってます。
いやー、全然知らなかったのでビックリしました。
普通、ベッドシーンて順序立てて描かれると思うんですけど、ノーモーションで繰り出された二階堂ふみさんのヌードにはビックリしました。
ノールックパスが送られてきてビックリする感じです(笑)
昨年の『海辺の生と死』の満島ひかりさんのときも全然知らなかったので驚きましたが、それを上回る衝撃。
しかも、最後の方、河原の草むらのシーンでもう一回見せてくれます。
たぶんシーン的には見せなくても全然大丈夫なんですけど、きっと原作がそうなってるんだと思います。
原作で描写されているところは忠実にやろうとしてるんだと思うと、この作品にかけた意欲に頭が下がります。
不思議なことに『海辺の生と死』も本作も、このことに関して殆ど話題になってないんですよね。
逆に『ナラタージュ』の時はマスコミ試写のときに過激ぶりが伝えられてましたが、公開されたバージョンは明らかに編集されてて全く大したことなかったのに…。
本作はそれぞれに覚悟を決めた演者さんたちが素晴らしいです。
本作で特徴的なのは、冒頭からハルナへのインタビューで始まるのですが、その後も随所にキャラクターへのインタビューが挿入されてることです。
これはおそらく漫画原作には無い表現だと思うのですが、最後にそのインタビューが何なのかが明かされるのかと思ったら、結局明かされずじまいで、ここはよく分かりませんでしたが、25年前の原作でありながらも現在性を持たせる演出方法だったのではないかと思います。
ただそういった4:3の画角だったり、インディーズ的な面もある体当たりな演技、フィクションとドキュメントの間をいくような演出等、往年のATG作品のような雰囲気もありました。
ATGはちょうど1992年まで活動していたんで年代的にも近いです。
それから最近の邦画だと『共喰い』とテーマとかも近いのではないかと思いました。
なんか上手く言えないんですけど似てると思います。
岡崎京子さんの漫画原作には元ネタがあるそうで、1986年のアメリカ映画でティム・ハンター監督、キアヌ・リーブス主演の『リバース・エッジ』なんだそうですが、あらすじを読むと確かに似てます。
参考 リバース・エッジ (1986年の映画) – Wikipedia
1993年~1994年の日本というと、バブルがはじけた後でノストラダムスの終末思想に向かっていく暗い感じです。
1995年には阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件という大きなことが立て続けに起こりました。
1993年~1994年に高校生というと、ちょうど安室奈美恵さんと同じ世代なんですよね。
映画の舞台は大田区の京浜工業地帯なんですが、登場人物たちはほぼこの中で完結する感じで渋谷などは登場しません。
カンナが山田に声をかけたのが、お互いに小沢健二を聞いていた渋谷のHMVだったのがインタビューで語られるくらいです。
場所的にも、この頃レインボーブリッジが開通してお台場に注目が集まる中、町工場の廃業が続き急速に廃れていくウォーターフロントだったのではないでしょうか。
時代的にも場所的にも閉塞感が現れていたと思います。
映画はこうした閉塞感とか、この年齢ならではの空虚感が切り取られていましたが、現在でもそのまま通じると思います。
大人が不在だったのも特徴的でした。
ハルナの母親が少し出てきますが、学校の先生にしても保健の先生にしても空気で、高校生だけの閉鎖的な世界で社会と断絶してる感じがしましたね。
いじめ、暴力、セックス、援助交際、LGBT、ドラッグ、過食嘔吐
さすがに25年前ほどセンセーショナルには感じませんが、時代を取り巻く状況は変わっておらず、今の若い人にも刺さるところがあると思いますので、若い人にこそ是非見ていただきたいと思いました。
石原慎太郎は昭和30年に「太陽の季節」を書きましたが、岡崎京子のこれはその平成版といった趣もある感じがします。
ただ、前者はその後の日本が高度経済成長に入っていくのに対し、後者はバブル崩壊後の失われた20年に入っていくので、太陽の季節ならぬ太陰の季節なんだと思います。
鑑賞データ
TOHOシネマズ新宿 シネマイレージデイ 1400円
2018年 33作品目 累計23900円 1作品単価724円
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