母への郷愁があまり感じられず ☆3点
『ヒューゴの不思議な発明』の原作者ブライアン・セルズニックが2011年に発表した同名のジュブナイル小説の映画化。
監督はトッド・ヘインズ、主演は子役のオークス・フェグリー、共演にジュリアン・ムーア、ミシェル・ウィリアムズ
予告編
映画データ
本作は2018年4月6日(金)公開で、全国24館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には43館での公開となるようです。
予告編はヒューマントラストシネマ渋谷と新宿ピカデリーに行ったときによく目にしていて、『キャロル』のトッド・ヘインズ監督ということと、予告編で象徴的に使われるデヴィッド・ボウイの「スペイス・オディティ」に目をウルウルさせて、期待して観に行きました。
監督はトッド・ヘインズ
監督作品は『キャロル』しか観たことないんですが、2016年のマイベストテンの洋画の第2位で大好きな作品ですね。
主演はオークス・フェグリー
なんか見たことある顔だなと思って観てましたが『ピートと秘密の友達』のピートでした。
共演にジュリアン・ムーア
近作は『フライト・ゲーム』『マップ・トゥ・ザ・スターズ』『キングスマン:ゴールデン・サークル』を観てます。
共演にミシェル・ウィリアムズ
近作は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『グレイテスト・ショーマン』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
ベン: オークス・フェグリー
ローズ: ミリセント・シモンズ
ジェイミー: ジェデン・マイケル
ウォルター: コーリー・マイケル・スミス
リリアン・メイヒュー/ローズ: ジュリアン・ムーア
エレイン: ミシェル・ウィリアムズ
ウォルター: トム・ヌーナン
あらすじ
1977年、ミネソタ州ガンフリント。12歳のベン(オークス・フェグリー)は、母エレイン(ミシェル・ウィリアムズ)を交通事故で亡くし、伯母の家で暮らしている。父とは一度も会ったことがなく、母は「いつか話すから」と言いながら、なぜか父の名前すら教えてくれなかった。
ある嵐の夜、母の家に秘かに戻ったベンは、「ワンダーストラック」というニューヨークの自然史博物館の本を見つける。中にはキンケイド書店のしおりが挟まれていて、「愛を込めて、ダニー」と記されていた。きっと父親だと直感して書店にかけようとした電話に、雷が落ちてしまう。病院で意識を取り戻したベンは耳が聞こえなくなっていたが、父親を探すためにニューヨークへと旅立つ。何とかキンケイド書店を見つけるが、店は閉店していた。途方に暮れたベンは、声をかけてきた少年ジェイミー(ジェイデン・マイケル)のあとをついて行き、自然史博物館に辿り着く。
1927年、ニュージャージー州ホーボーケン。生まれた時から耳の聞こえないローズ(ミリセント・シモンズ)は、大きな屋敷に父と使用人たちと暮らしていた。支配的な父とは心が通わないローズにとって、女優のリリアン・メイヒュー(ジュリアン・ムーア)の映画を観て彼女の記事を集めることだけが心の支えだった。
ある日、リリアンがニューヨークの舞台に出演すると知ったローズは、彼女に会いに行こうと決意し、ひとりで船に乗る。兄のウォルター(コーリー・マイケル・スミス)が働く自然史博物館にも行ってみたかった。ローズはリリアンが稽古中のプロムナード劇場を探しあてるのだが──。
1977年、父親が自然史博物館で働くジェイミーに、立ち入り禁止の資料室へと導かれるベン。そこでベンは、母と“ダニー”の出会いにまつわる書類を発見する。果たして、ダニーがベンの父親なのか? 彼は今どこで何をしているのか? その先には、ローズが鍵を握る、さらなる謎が待ち受けていた──。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
結論から言うと、あんまり面白くなかったですかねー。
まず1927年パートはローズが耳が聞こえない設定もあって、白黒でサイレント(観客にも疑似体験させる)なんですね。
それで1977年パートもベンがニューヨークに行くまでは台詞が少な目で、映像で状況を語る感じなんで、序盤から眠くなっちゃうんですよね。
ストーリーは1927年パートと1977年パートで交互にお話を進めて、徐々に分かっていく形なんですけど、ローズがニューヨークに行ってリリアン・メイヒューに会うと母親だということが分かります。
ただ母親はあまり歓迎してくれないので、兄のウォルターのところに行き、父親の元へは帰りたくないと言ってニューヨークで暮らしたいと言うと1927年パートは終わりです。
ベンの方はキンケイド書店が閉店してて呆然としていると、出勤する父親に連れられアメリカ自然史博物館に向かうジェイミーに「どこどこに移転したよ」って声を掛けられるんですけど、耳が聞こえないので気づかなかったんですね(逆にここで気づくと話がすぐ終わっちゃう)。
ベンは行く当ても無いんで、白人の父親に黒人の子供という組み合わせのジェイミーの後を尾けると自然史博物館に辿り着きます。
父親の勤務中は博物館で過ごすジェイミーは、ベンが落とした財布を拾ってあげたことから仲良くなると、使われていない資料室で自身がよく過ごす秘密の部屋を案内します。
ベンは母親が死んで父親を捜しに来たことを語り、ジェイミーも養子であることを告げるとお互いにシンパシーを寄せますが、ジェイミーはキンケイド書店が移転してることをすぐには伝えませんでした。
友達がいないジェイミーはそのことを話してベンが居なくなってしまうのが嫌だったんですね。
ジェイミーが移転したことをベンに告げるまで、博物館内の探索が続くのですが、そこに映し出される可愛らしい展示物(セットや美術や小道具)に興味が無いとつまらなく感じてしまうかもしれません。
ウェス・アンダーソン監督的要素があると思いますが、そこにハマらない自分としては退屈でしたし、結果的にはこの部分はストーリー的には全然進んでいません。
ただこのシーン、子供同士の追いかけっこ遊びがあったりして児童向けに作られているとは思います。
実際、本作は文部科学省の少年向き、青年向き、成人向き、家庭向きの選定作品になっています。
博物館内の探索で一点だけ伏線になるのは、ベンがよく怖い夢に見るオオカミが模型として展示してあったことで、ベンの夢のイメージ通りでした。
そして資料室で書類を漁ってると、ミネソタの自分の家の写真とかが出てきて、ベンが「どうして?何で?」ってなると、いたたまれなくなったジェイミーが書店が移転してることを教えるという流れです。
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」と怒ったベンはジェイミーと喧嘩別れしてキンケイド書店に向かいます。
ベンがお店に入っても誰も出てこなかったので、2階に上がったベンはそこで疲れて眠ってしまいます。
カメラはキンケイド書店に向かう1人の女性を映します。
演じてるのはジュリアン・ムーアで、1927年パートではローズの母役であることから、1977年パートではローズなんだな、と推測できます。
そしてその女性が店に入り、店主と手話を交わしてると、2階で寝ていたベンが資料を落とし、2人はベンに気付きます。
落とした書類を見たその女性が「ベンなの?」と言うので、「ローズはベンのおばあちゃんじゃないかな?」と思うのですが、果たしてその通りに物語は進みます。
ローズは自分が勤務するクイーンズ美術館にベンを連れて行き、1964年のニューヨーク万博のために制作された、自身も関わったニューヨークの巨大ジオラマの前で真相を話します(話せないので手紙で)。
ニューヨーク市を再現した巨大パノラマは必見「クイーンズ美術館」
キンケイド書店の店主はローズの兄のウォルターで自然史博物館退職後に店を開いてました。
1927年パートでニューヨークで暮らしたいと言ったローズは、そのまま兄のところで生活し、やがて結婚して子供を儲けるとダニーと名付けます。
そして成長したダニーはウォルターと同じようにアメリカ自然史博物館の学芸員となり、ミネソタ州ガンフリントを調査することになります。
ダニーは図書館司書員だったベンの母エレインに手紙を送り、調査協力を求めたところ快諾され、ベンが育った家を拠点にしてガンフリント湖周辺を調査していたところ恋仲になったのでした。
やがて調査を終えたダニーはニューヨークに戻りますが、暫くしてエレインの妊娠が判明します。
しかし元々病弱だったダニーは博物館でガンフリント湖でのオオカミの模型を完成させると亡くなってしまったのでした。
幼いベンはエレインに連れられ、その模型を見ていたのが夢の正体でした。
この辺がローズの手紙によって説明されると停電が起きます。
観てる最中は何で停電するのか分からなかったんですが、1977年のニューヨーク大停電を描いているんですね。
ローズたちが美術館を出ようとするとジェイミーが入口にいました。
今度はジェイミーがキンケイド書店から見知らぬ女性と連れ立って歩くベンが気になって後を尾けてきたのでした。
ベンはローズに「友達」と言ってジェイミーを紹介すると、ローズは2人を美術館の屋上に連れて行きます。
そこはニューヨーク中を見渡せる景色のいい場所でした。
冒頭ベンが見ていたエレインの部屋に貼ってあったオスカー・ワイルドの名言「俺たちは皆 ドブの中にいる。でもそこから星を眺める奴だっている」と対比するようにニューヨークを見渡して映画は終わります。
本作は、1927年と1977年、アメリカ自然史博物館とクイーンズ美術館、1964年のニューヨーク万博のジオラマ、エレインが聞いてたデヴィッド・ボウイの「スペイス・オディティ」、ジェイミーが秘密の部屋でかけたSweetの「Fox on the run」、1977年のニューヨーク大停電など、二つの時代のジュブナイルと、トッド・ヘインズ監督なりの1977年の総括というか、そういう映画になってたんじゃないかと思います。
本作では特に事件が起きるわけじゃないですが、「20世紀少年」的といいますか。
去年公開されたマイク・ミルズ監督の『20センチュリー・ウーマン』的な側面もあるかもしれません。
あくまでもジュブナイルがメインではありますが。
ただ、そこら辺を中盤まではサイレント描写を含めて映像をメインにして漠然と見せ、大人のローズが出てきてからは手紙で一気に回収するというやり方で、確かに「なるほど!」とは思うのですが、あまり物語に必然を感じられないといいますか、ベンが耳が聞こえなくなるくだりもすごく漫画的だなと思います。
部屋でワンダーストラックという本を見つけて、そこに挟まれてたキンケイド書店のしおりを見つけて電話したタイミングで家に雷が落ちて、電話線を伝わって耳に落ちるって、絵を描いて説明してましたけど、なんかすごく子供っぽいアイデアだなと(笑)
エレインが父親の名前を口にしなかったことにも必然を感じませんし、エレインとダニーの馴れ初めは伯母さんに聞けば知ってそうな話ですし、ただニューヨークに行かせるためだけの設定になってた気がしますね。
まぁ、児童文学なのであまり細かいところをツッコんでもいけないと思いますが。
あ、あと父を探したいに重きが置かれていて、母への郷愁があまり感じられませんでしたね。
新聞の死亡記事1枚で済ますシーンが多かったです。
デヴィッド・ボウイのスペイス・オディティも母親のエレインが(好きなんだとは思いますが)1回聞いてただけで、物語全体の包括的なテーマに掛かってはくるんでしょうが、あまりこの曲を使う必要性が感じられませんでしたね。
『ベルベット・ゴールドマイン』でデヴィッド・ボウイの曲が使用出来なかったトッド・ヘインズ監督が追悼の意味もあって使ってるんだと思います。
ちょっと『キャロル』のあとの作品ということと、ボウイの楽曲で期待値を上げ過ぎた自分にはハマりませんでしたが、この世界観好きな人にはハマると思います。
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2018年 58作品目 累計48200円 1作品単価831円
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