面白いが傑作までは至らず ☆4点
2014年の第67回カンヌ国際映画祭の批評家週間で上映され、日本では2016年に公開された『イット・フォローズ』で注目を浴びたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督によるオリジナル脚本のネオノワールサスペンスで2018年の第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作。
主演は『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのアンドリュー・ガーフィールド、ヒロインにエルヴィス・プレスリーの孫のライリー・キーオ
予告編
映画データ
本作は2018年10月13日(土)公開で、全国5館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には50館での公開となるようです。
本作については公開されるの全く知らなかったんですけど、個人的には動線が悪いと思っていてあまり行かない新宿バルト9に、たまたま『コーヒーが冷めないうちに』『チューリップ・フィーバー』『ルイスと不思議の時計』と立て続けに観に行ったんですけど、そのときロビーに設置してある特設モニターで本作の予告編が繰り返し流れてて公開されるのを知りました。
それでその予告編を見たら、2016年の洋画のマイベストテンの10位にした「『イット・フォーローズ』監督が放つ、ネオノワール・サスペンス」とあったので、「これは観に行くしかないでしょ!」ってことで観に行ってきました。
ちなみに新宿バルト9はトイレの洗面台は最高だと思っていて、奥が温水と石鹸で手前が乾燥用の温風が自動で出るようになっていて、あの1台で完結する洗面台は素晴らしいと思っております。
話が完全に逸れました。
監督はデヴィッド・ロバート・ミッチェル
監督作は短編1本と長編が本作で3作目で、作品は前作の『イット・フォローズ』しか観てませんが、なかなか上手い監督さんだと思いましたよ。
長編デビュー作の『アメリカン・スリープオーバー』はイットフォローズの成功を受けて、日本ではクラウドファンディングでBlu-ray+DVD化され、昨年各地で上映会なども行われたようです。
主演はアンドリュー・ガーフィールド
近作は『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』『沈黙 -サイレンス-』『ハクソー・リッジ』を観てます。
共演にライリー・キーオ
近作は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ローガン・ラッキー』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
サム: アンドリュー・ガーフィールド
サラ: ライリー・キーオ
サムの友達: トファー・グレイス
トロイ: ゾーシャ・マメット
ミリセント・セヴェンス: キャリー・ヘルナンデス
コミック・マン: パトリック・フィスクラー
バルーン・ガール: グレイス・ヴァン・パタン
アレン: ジミ・シンプソン
ソングライター: ジェレミー・ボブ
サムの彼女: リキ・リンドホーム
シューティングスター: インディア・メヌエル
シューティングスター: シドニー・スウィーニー
メイ: ローラ・リー
ジーサス: ルーク・ベイネス
最後の男: ドン・マクマナス
ビルボード・ガール: サマー・ビシル
ホームレスの王: デヴィッド・ヨウ
あらすじ
“大物”になる夢を抱いて、L.A.の<シルバーレイク>へ出てきたはずが、気がつけば職もなく、家賃まで滞納しているサム。ある日、向かいに越してきた美女サラにひと目惚れし、何とかデートの約束を取り付けるが、彼女は忽然と消えてしまう。もぬけの殻になった部屋を訪ねたサムは、壁に書かれた奇妙な記号を見つけ、陰謀の匂いをかぎ取る。折しも、大富豪や映画プロデューサーらの失踪や謎の死が続き、真夜中になると犬殺しが出没し、街を操る謎の裏組織の存在が噂されていた。暗号にサブリミナルメッセージ、都市伝説や陰謀論をこよなく愛するサムは、無敵のオタク知識を総動員して、シルバーレイクの下にうごめく闇へと迫るのだが――。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
本作は予告編を見ただけの予備知識で鑑賞したんですが、観終わった直後の率直な感想はデヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』みたいな話で、最後はアレハンドロ・ホドロフスキー監督の『ホーリー・マウンテン』みたいだったなぁと思いました。
ただ話自体は面白いんですけどダラダラしてて、鑑賞中は「いつ終わるのだろう?」と思いながら観ていて、上映時間140分で元々長目なんですけど、体感的には180分くらいに感じられ「長いなぁ」と思いました。
話の大筋としては、一目惚れしたサラの失踪後、サラの部屋に入ってきた女性を尾けたら、モデルや女優の卵のような娘たち(バルーン・ガールやシューティング・スター)と知り合い、その娘たちにサラのことを聞いてるうちに、ニュースで報道されている富豪の失踪と交通事故死に関係してそうなことが分かり、様々な暗号を解くうちにゼルダの伝説のマップと結び付き、そのマップが指し示す一部衛星写真にも写らないハリウッドの山に向かうと、小屋で瞑想する新興宗教の教祖に出会い、失踪した富豪もサラもそのカルト宗教の信者で別世界へ旅立とうとしてるのが分かるって話です。
一応『マルホランド・ドライブ』的なハリウッド奇譚を描きながらも、話の本筋には分かりやすいラストが用意されてて、その辺はリンチ作品のようなあやふやな感じは無かったんですけど、投げっ放しの伏線も多いと思います。
例えば「ソングライター」という存在自体が投げられっ放しですし、しかもサムが撲殺しちゃうので殺人事件ですが、まるで夢の中の出来事のように、その後の物語には全く関わってきません。
またフクロウのマスクを被った真っ裸の女性暗殺者「フクロウのキス」もビジュアル的にインパクトありましたが、その正体が明かされることもありません。
ただこれらの存在は、物語にアクセントを与えて面白くしてるものの、物語が終わってみると本筋にはあまり関わってこない話にも思えて、個人的には投げられっ放しでもモヤモヤすることは無く、突き詰めていっちゃうと個人的には「どうでもいい」という感じでした(笑)
あと、富豪の娘のミリセント・セヴェンスがサムと一緒にシルバーレイクで泳いでたら狙撃されちゃうのとかも。
ところで鑑賞中は予告編にある「ヒッチコックとリンチを融合させた悪夢版『ラ・ラ・ランド』だ!!」のヒッチコックの部分だけ忘れてまして、確かに「悪夢版ラ・ラ・ランドだなぁ」と思いながら観てたんですが、序盤から中盤にかけては「ブライアン・デ・パルマ監督っぽいなぁ」とも思いながら観てたんですけど、よくよく思い出せばデ・パルマはヒッチコックに強い影響受けた監督でしたし、劇中、ハリウッド・フォーエヴァー墓地で行われてる野外上映会でヒッチコックのお墓まで出てくるんですが、鑑賞中は映画のプロット自体が『裏窓』にインスパイアされたものであることには気づきませんでした。
しかし、感想を書くにあたり、さらに調べて思い出せば、自分が「デ・パルマっぽいなぁ」と思ったのはデ・パルマ監督の『ボディ・ダブル』がヒッチコックの『裏窓』と『めまい』をモチーフにしたエロティックサスペンスだったからで、本作の主成分は『ボディ・ダブル』+『マルホランド・ドライブ』だったんだなぁと思いました。
彼女とのコスプレSEXだったり
サラへの妄想というか幻覚だったり
バルーンガールのエロティックな水着だったり
こういうところがヒッチコックよりデ・パルマを感じたところです。
本作を彩るポップカルチャーについては、公式サイトのイントロダクションや町山智浩さんのコラムが詳しいと思うので、そちらをご参照ください。
また本作に登場する「暗号」「隠し言葉」「サブリミナル」「都市伝説」「仕掛け地図」などは、『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズで個人的には食傷気味ですが、ダヴィンチコードに登場するような中世の美術品ではなく、本作では現代のポップカルチャーだったので、その分面白く観れる感じでした。
それからゲームで解く謎に関しては『レディ・プレイヤー1』よりも難しかったんじゃないでしょうかね。
鑑賞中、ずっと気になっていたのは「サムはいったい何者か?」ということで、仕事もしてないし、女優の卵のような彼女は「近くでオーディションがあったから」と言って昼食にお寿司を買ってきてくれますし、セックスにも困ってなさそうですし、「ヒモみたいな男なのかな?」と思ったりしながら観てました。
家賃滞納してて、あと何日かで追い出されそうな割には金策に走る様子もないですし、車はフォード・マスタングですし、「以前は少しは食えてた役者なのかな?」とも思いましたが、色々な記事を読むとミュージシャン志望っぽい気がしますね。
本作はハリウッドの闇を描いてるわけですがリアルに感じられたのは、モデルor女優の卵だと思われた娘がデリヘルもやってたことで、これは日本の芸能界にも当てはまりそうと思えました。
下の記事なんかは古いですが、実際に西麻布なんかで飲んでると、そういった話が耳に入ってきたりするんですよね。
何気に邦画ではNEWSの加藤シゲアキさん原作の『ピンクとグレー』が日本の芸能界の闇の入り口を垣間見せてくれていたんですけど、この作品をもっと突っ込んでいけば本作みたいな感じにもなったかもしれません。
とまぁ、本作を観終わったあとはそんなことを思っていたんですが、日本だったら「プチエンジェル事件をリンチ的悪夢で描いた作品かな」と思いました。
あとそういえば、今年はカルト宗教といえばハリウッドを震撼させる事件がありましたね。
鑑賞データ
新宿バルト9 夕方割 1300円
2018年 163作品目 累計144100円 1作品単価884円
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