実はキモはPC画面以外で、物語の概要と脚本にあり ☆4点
2018年のサンダンス映画祭で観客賞を受賞してソニーピクチャーズが配給権を獲得したPC画面上だけで展開されるサスペンス。
突然失踪してしまった16歳の高校生の娘の父親が、娘のパソコンにログインし、娘のSNSを手掛かりに行方を探すミステリー。
監督は本作が長編劇場映画デビュー作となるアニーシュ・チャガンティ、主演はスタートレックシリーズのジョン・チョウ
予告編
映画データ


本作は2018年10月26日(金)公開で、全国60館での公開です。
劇場では予告編を1,2回見ただけですが、全米でスマッシュヒットしたのは知ってて、評判よさそうだったので観に行ってきました。
監督はアニーシュ・チャガンティ
1991年生まれのインド系アメリカ人で南カリフォルニア大学で映画製作を学んだそうです。
2014年にグーグルグラスだけで撮影した2分半の短編映画『Google Glass: Seeds』が24時間で100万回再生され話題を呼んだそうですが、そのことは全く知らず…。

この注目でニューヨークのグーグル・クリエイティブ・ラボに招かれ、2年間グーグルのCM制作などに携わったのち、本作で長編劇場映画デビューを飾ったそうです。
主演はジョン・チョウ
近作は『アメリカン・パイパイパイ!完結編 俺たちの同騒会』『スター・トレック BEYOND』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
デビッド・キム: ジョン・チョウ
デビッドの娘マーゴット: ミシェル・ラー
デビッドの弟ピーター: ジョセフ・リー
ヴィック捜査官: デブラ・メッシング
あらすじ
忽然と姿を消した16歳の女子高生マーゴット(ミシェル・ラー)。行方不明事件として捜査が始まる。
家出なのか、誘拐なのかわからないまま37時間が経過。
娘の無事を信じる父デビッド(ジョン・チョウ)は、彼女のPCにログインしSNSにアクセスを試みる。
インスタグラム、フェイスブック、ツイッター・・・
そこに映し出されたのは、いつも明るく活発だったはずのマーゴットとはまるで別人の、自分の知らない娘の姿があった。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
えー、観たのが10月末なのに2か月半経ってやっと感想書いてる(笑)んでだいぶ忘れてるのと、公式サイト見たら2019年2月13日(水)からデジタル配信、3月6日(水)からブルーレイ&DVDが、あっという間にリリースされるみたいなので、手短にいきたいと思います。
まず100%PC画面上で展開される映画ということで、公式サイトや予告編で「全く新しい映画体験」と謳われてるんですが、個人的には2016年に公開された『アンフレンデッド』を観てるので目新しさは感じませんでした。

ただ『アンフレンデッド』を製作したカザフスタン出身の映画監督でありプロデューサーであるティムール・ベクマンベトフという方が本作でも製作に携わっているので、兄弟的な作品なんだと思います。
このティムール・ベクマンベトフという方も初めて聞いた名前で、アンジェリーナ・ジョリーが出演している『ウォンテッド』や大コケした『ベン・ハー』の2016年版のリメイクを監督してるんですが、このPC画面上で展開する映像手法を「スクリーン・ライフ」と名付けて専売特許得意としてるみたいです。

あと、全編主観映像で話題を呼んだ『ハードコア』も製作してました。

そういう訳で映像表現としては『ブラック・ハッカー』なんかもあるんで目新しさは感じなかったんですが、『アンフレンデッド』より編集やカメラワークが進化してて見やすかったです。
『アンフレンデッド』のときはスカイプ画面が中心で、複数ウィンドウになったときに一つ一つのウィンドウが小さく見辛かったんですが、本作ではPC画面の一部を拡大して見せたり、カメラがズームアウトしていくとPC画面上で見てるニュース映像だったり、監視カメラの映像だったり、より映画的な表現になっていたので見やすかったです。

ただ上の記事にもあるように注意深く観てると、結果的にPC画面上の映像にしてるものの、「これどうやって撮ったんだろう?」という映像(特に後半)もPC画面上で展開されていて、厳密には『アンフレンデッド』なんかとは違って100%PC画面では無いので、「そもそも100%PC画面にする必要は無いんじゃないかな?」とは思いました。
ただ本作がよかったのは、娘のSNS上の痕跡を辿っていき真相を探っていくという骨格と、どんでん返し的な脚本が面白かったです。
父親が娘の様々なSNSアカウントを辿っていくと、親が全く知らなった娘の顔が見えてくるっていうのは、中島哲也監督の『渇き。』みたいな感じで(この作品は娘の交友関係をあたっていくでしたが)、これが自発的な家出なのか?それとも事件・事故なのか?という謎で物語に推進力を生んでいてダレることなく観れました。

上の記事では元ネタ映画として『ゴーン・ガール』が挙げられていますが、個人的には『渇き。』の印象の方が強く、途中で展開が読めた『ゴーン・ガール』より、本作の方が最後まで展開が読めなかったので面白かったです。
そして終盤になって訪れる怒涛の展開。
結局、娘の失踪は家出ではなく事件ということが分かります。
そして明かされる犯人。
犯人は捜査に当たっていたヴィック捜査官の引きこもり気味の息子ということで、ヴィック捜査官が捜査に積極的だったのは証拠を隠滅するためというものでしたが、このラストのどんでん返しはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』を思い浮かべました。
『プリズナーズ』では犯人と思われた青年の叔母(養母)が真犯人でしたが、娘を探す父親と息子を庇う母親という構図を含め似ていると思いました。
実は様々なインタビュー記事を読むと、監督のアニーシュ・チャガンティも主演俳優のジョン・チョウもPC画面上だけで展開される映画というものに魅力を感じなかったそうで、監督や出演の決め手となったのは、父と娘の断絶であったり、我々を取り巻くSNS社会だったり、そういった物語の概要やテーマに惹かれて決めたそうなんですが、実際その部分が映画を面白くしてて、全編PC画面というのは話題性やきっかけ作りに過ぎなかったと思うのですが、そのドラマ部分とテクノロジー部分のバランスがこの監督は上手いなと思いました。

これが『アンフレンデッド』や『ハードコア』などの映像表現が凄かっただけの作品とは違うところで、どなたにもおススメできる作品となってます。
鑑賞データ
TOHOシネマズ日比谷 シネマイレージウィーク 1100円
2018年 172作品目 累計154400円 1作品単価898円
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