コンビで売れる方と売れない方 ☆3点
予告編
映画データ
大阪芸大の卒業制作で作った映画『SLUM-POLIS』が全国の劇場で公開にまで至ったことで話題を呼んだ二宮健監督の最新作です。
本作にも出演されている『ディアーディアー』の菊地健雄監督と女優の中村ゆりさんのトークがあったので行ってきました。
本作は二宮監督の高校時代からの友人で、俳優志望でもある松本ファイターを追ったドキュメンタリーで、過去、大阪時代に撮った『MATSUMOTO METHOD』と『MATSUMOTO REVOLUTION』という2本の作品があるそうですが、当然の如く全く知らないです。
YouTubeで見れるそうで、自分もあとで見ようと思うので貼っときます。
ネタバレ感想
大阪ではそれなり?に顔が売れ、役者への足掛かりを掴んだ松本ファイターさんが東京へ進出します。
しばらく消息不明・音信不通だった松本ファイターさんが上京したと知り、二宮監督はコンタクトを取ります。
現在は足立区に住み、デリヘルでバイトしてる彼女に食わせてもらってる松本ファイターさん。
ビッグになって彼女にマンション1棟買ってあげて、家賃収入で生活させてあげたいと思ってます。
友人の小村昌士さんは松本ファイターさんの才能に惚れ込み、芸能事務所オフィス小村を立ち上げ営業活動に励んでいます。
営業活動は主に渋谷のスクランブル交差点で、街頭演説よろしく松本ファイターさん自ら拡声器とプラカードを持って声掛けに励みます。
何でもスクランブル交差点での1回の横断人数は多い時で3千人で、宣伝効果が高いってことで小村マネージャー兼社長の発案で行ってます。
また小村マネージャー兼社長がこば兄と勝手に慕っている『合葬』の小林達夫監督から、『トイレのピエタ』の松永大司監督が新作のヒロインを探してると聞きつけオーディションに参加できるよう強引にねじ込んで貰います。
ヒロイン探してるのに男優送り込むって頭おかしいんですが、小村マネージャー兼社長曰く、松本ファイターは性差超えてて会ってもらえれば分かるってことで、書類偽造して応募します。
事務所の所属女優・松本悠希(松本ファイターの本名らしいです)という名前で、広瀬すずの写真を貼り付けて応募します。
松永監督のヒロイン探しは、ほぼ最終段階にきてて、朝ドラ「ひよっこ」にも出演予定の松本穂香さんに決まりかけてます。
松永監督は穂香さんの演技を2,3回見ていて、今日で決めようかという場にオーディションをねじ込んでもらいました。
オーディションが行われてるマンションに、予定より30分も前に着く小村マネージャー兼社長と松本ファイターのポンコツコンビ。
小村が松本悠希を紹介すると現れたのはファイターで、当然の如く男なので、お前誰だ?ってなります。
小村が演技を見てもらえば分かると食い下がるも、そもそもオーディションにまで取り付ける段取りがルール違反てことで菊地健雄助監督に追い出されます。
近くの乃木神社で作戦を練る2人。近くで打ち合わせをしていた、こば兄を呼び出すも逆にオーディションに泥を塗ったということでボコられる小村。
松本ファイターはひとり、再度オーディション会場に乗り込みますが、どうなる?っていうお話です。
冒頭にドキュメンタリーと書きましたが、公式サイトにも予告編にもドキュメンタリー映画とは書かれて無いので、ドキュメント風に撮った作品という感じでしょうか(フェイクドキュメンタリー)。
リアルな部分とフィクションの部分を混ぜこぜにして、最近だと太田信吾監督の『わたしたちに許された特別な時間の終わり』とか森達也監督の『FAKE』みたいな感じかな。
リアルな部分としては、松本ファイターが上京したのはガチで彼女もガチだそうですが、デリヘルやらせてるっていうのはガチなのかな?
オーディションの部分は、設定だけ与えられていて、各出演監督もアドリブで対応したそうで、あとで同じことやれって言われても出来ないって言ってました。
最近観た映画では『ハルチカ』でそういうシーンありました。
で、戻った松本ファイターがどうなるか?なのですが、以下ネタバレになります。
本作を作るにあたり、二宮監督から相談を受けていた松永監督は、松本ファイターがオーディションを受けるっていう場(設定)までは作ってくれます。
が、二宮監督はそこから先はノープラン、松本ファイターに任せようと考えています。
オーディションもガチで臨ませるので、その場は松永監督に委ねられることになります。
MATSUMOTOシリーズ過去2作を見た松永監督は、そのままやるとグダグダになると考え一計を案じます。
まず自信満々でくる松本ファイターは、松永監督の求める基準の演技に達して無いので、本作を撮るために二宮監督が回してるカメラを止めさせます。
そして、オーディションがあるのを分かってたのに準備をしてこなかったファイターにダメ出しをします。
ファイターが諦めないのは分かっているので、稚拙に演技するのではなくて、気持ちが作れるまで待つと言います。
実は二宮監督だけとは事前に打ち合わせしておいて、カメラを止めるよう言っても回しておくことにしてあります。
ファイターにどっきりを仕掛けるような感じになる訳です。
オーディションでのシーンは泣きの芝居なんですが、気持ちを作って再開してもファイターは泣けません。
演技指導する監督は、なぜMATSUMOTO TRIBEに参加したかを語ります。
正直、松本ファイターには興味ないけど、二宮健という才能ある男が、そこまで意気に感じてる男だから協力しているって。
そして泣けないファイターに対して、高校時代からの二宮との思い出を思い起こさせます。
そして、「二宮に(こうなってる現状含めて)ごめんと言ってごらん」と言います。
なかなか言い出せないファイターでしたが、監督が何度も言うと、堰を切ったように号泣して本作は終わります。
アフタートークによると、最後の号泣はガチだそうですが、観てるときはウソ泣きに見えたかな(笑)。
ただ、こういう、演技指導・演出方法の裏を見れるっていうのは面白いですね。
一般の観客である我々は完成した作品しか観ませんから、こういうことの積み重ねで映画が作られてるんだなぁって感じられます。
監督によって、こういう感情の引き出し方とか違うんでしょうが、先月テレ東で放送されていた「山田孝之のカンヌ映画祭」でも、河瀬直美監督出演の回で、こういうことやってて面白いなぁと思いました。
松本ファイターさんの、ビッグマウスで夢を追いかける、って状況は『ばしゃ馬さんとビッグマウス』を思い出したんですけど、ビッグマウスは自己暗示効果があるので案外いけるかもしれません。
演出家と俳優の関係も、例えば三谷幸喜監督と西村雅彦さんとかありますし、松本ファイターさん頑張って欲しいなと思いました。
鑑賞データ
新宿武蔵野館 特別料金 1500円
2017年 62作品目 累計63200円 1作品単価1019円
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