ゴジラをオマージュしたシン・ゴジラに近い ☆5点
2010年にTBSで阿部寛主演で連続ドラマ化された東野圭吾の小説「新参者」加賀恭一郎シリーズの第10作目を映画化。
監督は「半沢直樹」をヒットさせた福澤克雄、主演は引き続き阿部寛、共演に溝端淳平、田中麗奈、ゲストスターに松嶋菜々子
予告編
映画データ
本作は2018年1月27日(土)公開で、全国334館での公開です。
TBS制作で東宝配給の大作ですね。
予告編は頻繁に目にしましたが、自分は2010年の連続ドラマ版で止まってたので、どうして今頃「新参者」シリーズなんだろう?とは思いました。
「赤い指」(2011年)と「眠りの森」(2014年)の2本のスペシャルドラマと劇場版の『麒麟の翼』(2012年)は未見です。
監督は福澤克雄さん
TBSのディレクターさんです。
福澤諭吉の玄孫だったのは知りませんでした。
「半沢直樹」以降の日曜劇場枠で演出したドラマはだいたい見てますが、演出が段々と大仰になってきていまいち好きになれませんでした。
「半沢直樹」も1部はよかったですが、2部からは「倍返しだ!」に拍車がかかり、1部ほどいいとは思えませんでした。
映画は『私は貝になりたい』を監督してるようですが未見です。
主演は阿部寛さん
近作は『カラスの親指』『エヴェレスト 神々の山嶺』『海よりもまだ深く』『恋妻家宮本』『海辺のリア』を観てます。
共演に松嶋菜々子さん
映画は『藁の楯』から5年ぶりですね。
劇場で観たのは『ホワイトアウト』が最後かもしれません。
(てかホワイトアウト興収42億もいってたのか…いい時代だ)
他に共演と配役は以下の通りです。
加賀恭一郎: 阿部寛
浅居博美: 松嶋菜々子
松宮脩平: 溝端淳平
金森登紀子:田中麗奈
浅居厚子: キムラ緑子
押谷道子: 中島ひろ子
宮本康代: 烏丸せつこ
大林: 春風亭昇太
警視庁捜査一課刑事: 上杉祥三
浅居博美(14歳): 桜田ひより
浅居博美(20歳): 飯豊まりえ
????: 音尾琢真
????: 及川光博
????: 小日向文世
田島百合子: 伊藤蘭
加賀隆正: 山崎努
あらすじ
東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。
被害者は滋賀県在住の押谷道子。
殺害現場となったアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。
やがて捜査線上に浮かびあがる美しき舞台演出家・浅居博美(松嶋菜々子)。
しかし彼女には確かなアリバイがあり、捜査は進展しない。
松宮脩平(溝端淳平)は捜査を進めるうちに、現場の遺留品に日本橋を囲む12の橋の名が書き込まれていることを発見する。
その事実を知った加賀恭一郎(阿部寛)は激しく動揺する。
それは失踪した加賀の母に繋がっていた――。(東宝WEB SITEより引用)
ネタバレ感想
いやー、これ、ストーリー面白かったですわ~。
序盤はちょっと説明の字幕が多くて、サウンドノベルかと思って、「まさかずっとこのままいかないよな?」とか思ったんですけど、途中からは普通になりましたね。
ドローン撮影の空撮が効いていて、映画ならではのスケール感もありました。
最初に起こる2つの事件も適度にグロくて、1つは5月に死後20日くらい経った腐乱死体で、もう1つは丸焦げの焼死体で、この焼死体が誰なのか?で魅せるミステリーです。
序盤からグッと心を掴ませる展開は『22年目の告白-私が殺人犯です-』みたいでよかったですねー。
ウィキペディアを見ると、原作が刊行された当初から「松本清張の世界を思わせる古典的ミステリー」とか「東野版『砂の器』」とか言われてるみたいで、確かにそういう雰囲気ありました。
野村芳太郎監督版の『砂の器』はたぶん1回くらい見ただけでもう忘れてたんですが、YouTubeで販売してるやつの冒頭を見てみると、字幕の感じは野村芳太郎版意識してますね。
福澤監督が2004年に日曜劇場枠で中居正広さん主演の『砂の器』を演出してたのは知らなかったんですが、きっと念頭にあると思います。
(ネットフリックスで『砂の器』配信されてたので、ちょっと見てみたんですけど、序盤に結構説明字幕出てくるんで、完璧にオマージュだと思います)
砂の器 | Netflix (ネットフリックス)(https://www.netflix.com/jp/title/70049044リンク切れ確認)
それから、劇中、顔のアップを右半分とか左半分とかに配置してて、市川崑監督っぽいなと思ったんですが、このシーンなんかも市川崑監督っぽいかなと思いました。
松嶋菜々子さんはリメイク版の『犬神家の一族』にも出てますし。
きっと本作は、70年代に作られた、この名作の誉れ高い2本のミステリーを多分に意識してるんだと思います。
ストーリー書くのめんどくさいんで(笑)、小説版のこちらを参考にしていただくとして、いや、これね『砂の器』と非常に近いですよ。
(映画版『砂の器』のストーリーはこちら)
本作では女性演出家、『砂の器』ではピアニスト兼作曲家で、父親の存在を知ってる人が死ぬっていう。
それで本作では、その容疑者の父親が、主人公・加賀の母親にもかかってくるという構造になってます。
刑事も加賀(阿部寛)と松宮(溝端淳平)のコンビに対し、今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)のコンビで似てますね。
途中で加賀恭一郎が「鍵は俺か?俺なのか?」って「犯人はヤス」みたいになるところは『ポートピア連続殺人事件』っぽくて、名作ミステリーてんこ盛りの趣があります。
福澤監督の演出も「半沢直樹」第二部以降の大仰な演出ではなくて、じっくり撮っててよかったです。
特にあの、能登で14歳の博美がワゴン車を訪ねるシーン。
無音でズームアウトして、映画館がシーンとなるっていうね。
あのシーンは、『ストロベリーナイト』だと、西島秀俊さんの前で竹内結子さんと大沢たかおさんが乗ったワゴン車がギッタンバッコンしてて切なかったんですが、本作はさすがに14歳の設定だから配慮してました。
福澤演出は概ね満足だったんですけど、警視庁捜査一課主任の大林役に春風亭昇太さんキャスティングしちゃったのは残念でした。
「ルーズヴェルト・ゲーム」の立川談春さんで味を占めて、「下町ロケット」から起用されるようになりましたが、下町ロケットでの銀行の融資課長のずる賢さくらいはギリギリ嵌まりましたけど、「小さな巨人」での警察署長役はさすがに嵌まらなくて、本作も捜査一課の主任とか警察役はやっぱり嵌まらなくて、コメディタッチの物はいいと思うんですけど、シリアスな物だと嵌まらないと思うんですよね。
個人的には「美味しんぼ」の富井副部長とかハマると思います。
ミステリーの部分で言えば、加賀が早い段階で母の恋人である綿部俊一が電力関係の仕事で各地を回り、仙台に来たときは女川まで足を伸ばしてたのを知りながら、原発作業員に当たりをつけなかったのはミスリードな気もしますが、綿部俊一が越川睦夫と繋がり、そこからもうひと転がりふた転がりしていく様は見事で圧巻のミステリードラマでございました。
鑑賞データ
TOHOシネマズスカラ座 1か月フリーパスポート 0円
2018年 21作品目 累計9700円 1作品単価462円
コメント
序盤、字幕が長いという、ちょいディスる感想をたくさん読みましたが、「砂の器」のオマージュと書いてあったこのブログをみて、スッキリしました ミステリー映画好きなら、すぐピンとくると思ったんだけど…