人生はシネマティック! 評価と感想/戦時下でも人々に希望を届けたい

人生はシネマティック! 評価と感想
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フェミニズム映画でもあります ☆4点

2009年に発行されたリサ・エヴァンスの小説「Their Finest Hour and a Half」を原作にしたイギリス映画。
監督はロネ・シェルフィグ、主演はジェマ・アータートンとサム・クラフリン、共演にビル・ナイ

予告編

映画データ

人生はシネマティック! (2016):作品情報|シネマトゥデイ
映画『人生はシネマティック!』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:第2次世界大戦中のイギリスを舞台に、コピーライターの秘書が脚本家として奔走する姿を描く人間ドラマ。
人生はシネマティック! : 作品情報 - 映画.com
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本作は2017年11月11日(土)公開で全国で6館程での上映です。
今後、順次全国で公開されて最終的には27館程での上映となるようです。

予告編は劇場でたまに目にしてて、「あのダンケルクを題材にしたお話です」とあったので観てきました。

ダンケルク 評価と感想/これは物語やドラマではなく体験である
そしてノーラン版クイズタイムショックでもあった ☆5点 第二次世界大戦の西部戦線の一つでナチスドイツ軍によりフランス最北端ダンケルクに追い詰められた英仏軍40万人を民間船舶を総動員しイギリスに撤退させた史上最大の撤退作戦ダイナモ作戦を描く。...

監督はロネ・シェルフィグ
デンマーク出身の女性監督さんで初めて知りました。
日本では『17歳の肖像』と『ワン・デイ 23年のラブストーリー』という作品が公開されたことがあるようです。

主演はジェマ・アータートン
初めましてかと思いましたら『ランナーランナー』に出てました。
本作とはかなり雰囲気違いますね。

共演にサム・クラフリン
殆ど眼鏡かけてたのでジョニー・デップに似てるなぁと思って観てましたが『世界一キライなあなたに』のイケメンの方でした。

共演にビル・ナイ
出演作を殆ど見たことなくて、先日『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督繋がりで、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』をアマゾンプライムビデオで見たくらいです。

他に共演と配役は以下の通りです。

カトリン・コール: ジェマ・アータートン
トム・バックリー: サム・クラフリン
アンブローズ・ヒリアード/フランク: ビル・ナイ
エリス・コール: ジャック・ヒューストン
ソフィー・スミス: エレン・マックロリー
レイモンド・パーフィット: ポール・リッター
フィル・ムーア: レイチェル・スターリング
ロジャー・スウェイン: リチャード・E・グラント
サミー・スミス: エディ・マーサン
陸軍長官: ジェレミー・アイアンズ
カール・ランドベック/ブラニガン: ジェイク・レイシー
ガブリエル・ベイカー: ヘンリー・グッドマン
ドリス/リリー: クローディア・ジェシー
アンジェラ/ローズ: ステファニー・ハイアム
ミュリエル(エリスの浮気相手): ナターリア・リュミナ

あらすじ

1940年、第二次世界大戦下のロンドン。
連戦連勝のドイツ軍からの絶え間ない空爆にさらされている街は、男性が次々と徴兵され、女性や子供、老人ばかりが残されていた。そんな中、イギリス政府は国民を鼓舞するために戦意高揚映画(=プロパガンダ映画)を日夜製作していた。
ある日、コピーライターの秘書カトリン(ジェマ・アタートン)が、徴兵されたライターの代わりに書いた広告コピーが情報省映画局の特別顧問バックリー(サム・クラフリン)の目に留まり、彼女は新作映画の脚本家としてスカウトされる。彼女が描くのは、双子の姉妹が父親の漁船で海にこぎ出し、「ダンケルクの戦い」でドイツ軍の包囲から撤退するイギリス兵士を救う物語だった。新しい職に就いたカトリンは、スペイン戦争で足を負傷し、空襲監視員を務めながら画家の夢を諦めきれずにいる夫エリス(ジャック・ヒューストン)との暮らしを守るため、なんとしても映画の仕事を成功させることを決意する。 情報省映画局からの出向する形で制作会社ベイカー・プロでの執筆がスタートしたカトリンは、バックリーとパーフィット(ポール・リッター)の3人の共同で脚本化に挑戦する。だが滑り出しから、情報省のフィル・ムーア(レイチェル・スターリング)に呼び出しを食らってしまう。姉妹が乗る船ナンシー号のエンジン故障の場面が、英国の威信を傷つけるから脚本を直せと要求が入ったのだ。脚本のペアを組むバックリーからも容赦のないダメ出しをされ、厳しい検閲や政府の要望がある度に衝突しながら、脚本は進んでいった。
やがてスタッフや役者が決まり、いよいよデヴォンでの3週間のロケが始まるが、監督はノンフィクションの経験しかなく、出足から不安がいっぱい…。出演者のひとり、アンブローズ(ビル・ナイ)は、かつて刑事ドラマシリーズで人気を博したプライドを捨て切れない落ち目の俳優だった。そんな彼も、戦争の空爆でエージェントのサミー(エディ・マーサン)を亡くし、代わりにその姉のソフィー(ヘレン・マックロリー)が新しい代理人として、アンブローズに新境地を開かせようと奮闘していた。
製作陣の足並みが揃わない中、軍部からの横やりが入る。アメリカの参戦を促すため、無理矢理に追加のキャスティングが決まったのだ。勇敢なアメリカ人を演出するため、アメリカ人パイロット、カール・ランドベック(ジェイク・レイシー)が加わることになったが、彼は演技経験が全くないズブの素人。そこでカトリンは、アンブローズを何とか説得して演技指導を頼むことに成功する。出演者たちで何度もリハーサルを繰り返しながら、少しずつ絆を深めて撮影は進んでいく。カトリンにとっても、映画作りは確実にやり甲斐のあるものになっていた。バックリーとも仕事をしていく中で、互いに親しみと好感を抱くようになる。そんな2人の情熱が、脚本にも次第に表れていった。自分が活躍するシーンを増やしたいアンブローズのわがままに付きっきりになっていたカトリンだが、ロンドンで個展を開いた夫のもとに帰るため撮影現場をあとにする。
いつしか特別な存在となっていたバックリーと書き上げた脚本も、完成に近づいた。だが、撮影も終盤に差し掛かったころ、ロンドンは大規模な空爆に襲われる。破壊しつくされた街に打ちひしがれるカトリンだが、それでも最後まで映画を完成させようとあきらめずに奮闘する。しかし、最悪なことに、カトリンたちの前には最大の困難が待ち受けていた…。
はたして脚本は完成し、映画を国民に届けることはできるのか――?

(公式サイトhttp://jinsei-cinema.jp/about/より引用)

ネタバレ感想

2013年の『ヒステリア』や2016年の『未来を花束にして』の系譜に連なる映画だと思いました。

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女性の社会進出や活躍を描いている映画で、製作国がイギリスで女性監督で主人公が女性の映画というので共通してます。

映画は序盤から登場人物が多くて、誰がどの立場とかよく分からないんですが、話が進んでいくうちに主要な登場人物が絞れてくるんで、理解出来るようになります。

主人公のカトリンは、スペイン戦争で足を負傷したため徴兵を免れている夫・エリスと暮らしてますが、序盤からこのエリスにはヒモ男臭が漂います。
でもカトリンは夫の夢を全力で支えていて、「私が稼ぐから任せて」と言ってる頼りになる妻です。

バックリーにスカウトされたカトリンは、てっきり秘書の仕事かと思ったら脚本チームの一員で自分の机も与えられ喜びます。
給料は男性が週給3ポンド20ペンスのところ、女性ということで2ポンドでしたが、それでも今までよりよかったので喜ぶのでした。

バックリーは双子の姉妹がダンケルクに船を出して兵士を救ったという新聞記事をカトリンに見せ、この話を映画にしようと思うので取材してきてくれと言います。
カトリンが双子姉妹の元へ取材に訪れると、新聞記者か?と警戒するので、情報省で映画にするために来たと言うと安心してくれます。
というのも双子に話を聞くと、双子の船はダンケルクまであと8kmの沖合で故障して辿り着けず、他の船に引っ張って貰って帰ってきたのでした。
兵士を乗せてたのも、他の船に乗り切れない兵士を乗せただけでしたが、新聞社が細かい事実確認をせずに美談として掲載したのでした。
双子には飲んだくれの父がいましたが、このことが公になると恥なので、新聞社には言わないよう口止めされていたのでした。

情報省映画局ではプロパガンダ映画を作るにあたり、「大切なのは信憑性と楽観」だと言っています。
カトリンは取材を終えて帰ってくると、バックリーに取材のことを聞かれますが、ダンケルクに辿り着けなかったことには触れずに、いくつか脚本になりそうな話が聞けたと報告します。
カトリンはこの企画がぽしゃって仕事を失うのを恐れたため嘘をついたのですが、このことは後に情報省の知るところとなり問題になりますが、何よりプロパガンダ映画を作ってる訳で、双子の姉妹が勇気を出して船を出したという、大きな事実は変わらないと主張すると上層部も納得するのでした。

かくして、この記事を元にして脚本が書かれることになります。

脚本制作はあらすじにあるように検閲や横やりが入って難航しますが、カトリンは映画制作に魅力を感じるようになってきます。
しかしロンドンの空襲は激しく、相変わらず生活費も厳しかったため、夫のエリスはカトリンだけでも故郷であるウェールズに帰れば?と言います。
自分だけなら友人のところに身を寄せれば何とかなる、とも言います。
仕事にやりがいを感じ始めていたカトリンは、稼ぎの方も頑張ると言って夫をなだめると、バックリーに事情を話して給料も上げてもらうのでした。

脚本が段々と進んでくると、監督やキャストが決まり、撮影に入ります。
撮影はイングランド南西部デヴォンでのロケ3週間と、ロンドンに戻ってスタジオでの3週間のスケジュールが組まれました。
現場でも脚本の手直しがあるためカトリンはロケに帯同することになりますが、ロケ期間中に夫の個展が開かれることが決まります。

個展期間中、一度も顔を出せずにいたカトリンは、ロケ最終日が個展最終日と重なると、バックリーや周囲の気遣いでロンドンに戻ります。
個展に行くため一度自宅に戻ると、エリスが芸術家仲間の女性と浮気してるのを目撃してしまいます。
部屋を出ていったカトリンをエリスは追いかけますが、カトリンはエリスに別れを告げると、とんぼ返りでデヴォンに戻ります。

すぐに戻ってきたことを不思議に思ったバックリーは、ロケ最終日の打ち上げパーティーのあと、月夜の浜辺で1人佇むカトリンに声をかけます。
エリスとは終わったことを匂わせ、元々きちんと結婚してなかったことを打ち明けられると、バックリーは唐突にプロポーズします。
プロポーズが唐突過ぎたのと上から目線だったので受け入れられませんでしたが、カトリンもバックリーを意識するようになるのでした。

ロンドンのスタジオに戻って撮影が続けられますが、バックリーはラストの脚本をなかなか仕上げられずにいました。
納得できないながらも数日徹夜して仕上げた原稿を置いて、バックリーが一旦休むために自宅に帰ると、カトリンは会社に残ってその原稿を推敲します。
夜には空襲がありオフィスも揺れましたが、夢中で作業していたため周囲の状況は分かりません。
朝方になって原稿が完成して自宅に戻ると、空襲でアパートが崩壊していました。
カトリンはそのままスタジオに向かうと、昨夜のロンドン空襲の被害は甚大でウィンブルドンも壊滅したことを聞かされます。

バックリーがスタジオにやってくると、カトリンが手直しした原稿を読んだと言い、素晴らしい出来栄えで感動したと言います。
そして、一緒に添えらえていた手紙も読んだと言います。
その手紙はデヴォンでのロケ最終日の月夜の下での2人のやりとりを脚本形式にしたものでした。
カトリンが続きはどうするの?と聞くと、バックリーはセットの奥にカトリンを連れて行き、2人はキスをするのでした。

バックリーが撮影のために呼ばれスタジオに戻ると、セットを組んでいた足場が崩れバックリーが下敷きになってしまいます。
バックリーはそのまま帰らぬ人となってしまいました。

情報省では最終試写が行われています。
脚本チームのカトリンとレイモンドも観ていますが、欠落シーンがありました。
それはダンケルクで救出した兵士を乗せた船のスクリューに何かが絡まって動けなくて、誰かが外さなければならないシーンでした。
しかしそのシーンに辻褄が合う登場人物ブラニガン役のカールは既に戦地へ戻っており、追加撮影が出来ない状態で情報省の幹部の頭を悩ませていました。
カトリンは船を出した双子の姉ローズがいいと言います。
カトリンは脚本当初から女性をヒーローにしたいと考えてましたが、情報省は女性がヒーローではおかしいと考えていました。

映画は完成しプレミア上映が行われますが、カトリンの姿はありませんでした。
カトリンは映画完成後はバックリーが亡くなったこともあって脚本チームを離れ、古びたアパートでひっそりと暮らしていました。
するとそこにアンブローズが訪ねてきます。
新しく空襲監視員を主人公にした映画を作るそうで脚本を依頼されますが、カトリンは断ります。
アンブローズは「今、この国には年寄りと子供と女性しかいない。我々がやらなければならない」と言うと、カトリンは心を動かされボロボロ泣くのでした。

映画が一般公開されるとカトリンも観に来ます。
欠落したシーンはローズになっていて、女性もヒーローの映画になっていました。
観客の反応は上々で隣の席に座っていた女性は、もう5回も観たと興奮気味に言ってきます。
自分が関わった作品が多くの人に希望を与えていることを実感したカトリンが脚本チームに戻って映画は終わります。

 

全体的にコメディタッチではあるんですが、序盤はロンドン空襲の悲惨さも描いていてシリアスな場面もあります。
カトリンが家に帰るために空襲のあとを歩いてると、死体かと思ったらマネキンが転がっていてほっとするんですが、曲がり角を曲がるとカトリンと同じ年くらいの女性が亡くなっていて厳しい現実を突きつけられます。

家に帰ればエリスはカトリンの仕事への理解は低いですし、亭主関白な感じもあって嫌な感じがします。

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(案の定、カトリンが家賃を払ってる自宅で浮気するクソ野郎でした)

仕事場では当初、バックリーが上から目線できますが、脚本家としての腕は買われてるので、理不尽な目に遭わないのは気持ちのいいところです。
また、会社に出入りするキャリアウーマンの先駆けのような女性、情報省のフィル・ムーアの存在は心強く、カトリンは彼女のアドバイスに助けられることもしばしばありました。

フィルを演じた宝塚の男役のようなレイチェル・スターリングがよかったですね。
調べたら2002年にイギリスBBCで放送されたサラ・ウォーターズ原作の百合ドラマ「Tipping the Velvet 」で主演を務めてたそうで納得でございます。

ビル・ナイ演じるアンブローズも当初はわがままおじいちゃんですが、撮影を通して徐々に変わっていくのがいい感じでした。
自分の立ち位置を知り役割を果たすようになると、最後はカトリンの心も動かすようになります。
お茶目なおじいちゃんをビル・ナイが好演してました。

戦時下の女性が主人公で、女性ならではのアイデアで様々な困難を乗り越え、辛いことがあっても逞しく生きていくっていうお話は、昨年の『この世界の片隅に』と共通するところもあり、おすすめでございます。

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ有楽町 TCGメンバーズ会員割引 1300円
2017年 189作品目 累計202900円 1作品単価1074円

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