そのいいね!が全ての人にいいね!とは限らない ☆4点
2013年に発行されたデイヴ・エガーズ原作「ザ・サークル」の映画化で監督はジェームズ・ポンソルト
主演はエマ・ワトソン、共演にトム・ハンクス、ジョン・ボイエガ
予告編
映画データ
本作は2017年11月10日(金)公開で全国125館での公開規模です。
アメリカでは2017年4月28日(金)公開で最終興収が2000万ドルくらいです。
アメリカでは『美女と野獣』が2017年3月17日(金)に公開されましたが、同じエマ・ワトソン主演でも恩恵を受けることは出来なかったようです。
予告編はTOHOシネマズで洋画を観たときによく目にしました。
今年初めに観た『NERVE/ナーヴ』みたいなテーマもありそうな感じで面白そうと思いました。
監督はジェームズ・ポンソルト
初めましての監督さんです。
『人生はローリングストーン』という作品を監督してるようです。
主演はエマ・ワトソン
近作は『ウォールフラワー』『ブリングリング』を観てますが、今年最大のヒット作『美女と野獣』を見てないという…。
共演にトム・ハンクス
近作は『王様のためのホログラム』『インフェルノ』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
メイ・ホランド: エマ・ワトソン
イーモン・ベイリー(CEO): トム・ハンクス
タイ・ラフィート: ジョン・ボイエガ
アニー・アラートン: カレン・ギラン
マーサー: エラー・コルトレーン
ビニー(父): ビル・パクストン
ボニー(母): グレン・ヘドリー
ステントン(COO): パットン・オズワルト
あらすじ
世界No.1のシェアを誇る超巨大SNS企業〈サークル〉。創始者でありカリスマ経営者のベイリー(トム・ハンクス)が掲げる理想は、全人類がすべてを隠す事なくオープンにする“完全な”社会だ。大きな輪を意味する〈サークル〉では、誰もがいつでもつながりあい、互いの体験をシェアしあい、最高に刺激的な毎日を送ることができる。
憧れの最先端企業〈サークル〉社に採用され、日々奮闘する24歳の新人・メイ(エマ・ワトソン)は、ある事件をきっかけにベイリーの目に留まり、新サービス〈シーチェンジ〉の実験モデルに大抜擢される。至るところに設置された超小型カメラにより自らの24時間をすべて公開したメイは、あっという間に一千万人を超えるのフォロワーを獲得し、アイドル的な存在となる。ベイリーの理想「全人類の透明化」を実現するため、更なる新サービス〈ソウルサーチ〉の公開実験に臨むメイ。だがそこには思わぬ悲劇が待ち受けていた。あまりにも膨大な善意の渦に隠された〈サークル〉の重大な欠陥に気付き始めるメイだったが——。(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
Facebookのような実名制で、Twitterのように軽く、LINEがオープンになったような劇中SNSのサークル。
映画内ではサークルというのは企業名で、その中の人気コンテンツのSNSはトゥルーユー(True You)と呼ばれています。
LINE(線)も端と端を繋げばサークル(円)です。
ロッテン・トマトを見るとトマトメーター16%、オーディエンススコア22%と低いですね。
ヤフー映画のレビューを読んでも酷評が多くて、リアリティが無いとか、陳腐で胸糞悪い脚本の声がありましたが、自分は面白いと思いました。
サークル内のサービスについては、説明不足と勢いで押し切った感はありますが、結構、現実は近いところにきてる気がします。
一私企業のサービスですよ(笑)
最近はPTAの連絡はLINEがデフォとか。
たしかに昔は連絡網で電話を使ってましたが、元は電電公社で半官半民ですからね。
ユーチューバーとか言って持ち上げられますが、こういう事件が起きたり
逆に、事件が起きたときに容疑者のフェイスブックがニュースで使われることも多いですよね。
フェイスブック上げてる最中は、自分が罪を犯すなんてこれっぽちも考えてないんでしょうけど。
インスタ映えとか言ってるのも、この映画と大して変わらないと思うけどなぁ。
主人公のメイは派遣スタッフとして水道料金未納者に電話を掛けて徴収する仕事をしています。
安月給で車はオンボロ、家に帰れば多発性硬化症(MS)に苦しむ父とそれを看病する母との3人暮らしです。
高度医療を受けさせたくても治療費がネックになって諦めざるを得ません。
唯一の気晴らしは1人でシーカヤックをすることです。
そんなある日、超巨大人気SNS企業サークルに勤める親友のアニーから採用面接を受けれるという連絡をもらいます。
飛びあがって喜ぶメイでしたが、今期も100人という大量採用予定のうちの1人と言われ落ち着くように言われるのでした。
メイは採用面接を無事突破し、新人が配属される顧客サービスの仕事に就くことになります。
仕事の内容は何やってるか、よく分かりません。
ニコマークをもらい、ムカマークを減らす。
遊んでるみたいな気もしますが、他者評価を高めるのが仕事のようです。
(手厚い福利厚生や透明化、社員同士のgサンクスなんかを見るとグーグルをモデルにしてるのかな?)
とにかく両親は喜び、母親なんかは友人に思わず給与額を自慢してしまったりします。
毎週金曜日に全社員を集めて行われるTEDみたいなカンファレンス。
CEO(社長)のベイリーはビー玉サイズで高画質、配線不要で衛星回線を使ったビデオカメラを発表します。
それと同時にそのカメラを使ったライブカメラシステムの新サービス、シーチェンジを発表します。
週末金曜日、業務終了後は社内でパーティーが開かれ、ベックがステージを行うという豪華さです。
メイは、金曜日は会社を出る最終バスで帰ると土日は自宅で過ごし、月曜日に出社すると人事部2人の訪問を受けます。
人事部2人は新興宗教の勧誘のようなテンションで、1週間経ってもメイのプロフィールが上がってないことを言いに来ます。
また、土日の社内での催し物にも姿が見えなかったことから、遠回しに参加するように言ってきます。
社内コミュニケーションが大事だと。
メイは土日に何をしていたのか聞かれ、父の介護と趣味の1人カヤックをしてたことを伝えると、人事部2人は父親の病気がMSと知っており、社内にも同じ病気を家族に持つ者の会が2つあり、そういうのも参加するといいと言います。
カヤックは人事部のもう1人の方の趣味で誘ってくれればいいのにと言います。
とにかく一人じゃない、繋がりが大事とアピってくるのでした。
人事部は父親の病気に関しても会社の補助を受けられることを説明すると、詳しくは健康診断の際に医師に相談するように言われます。
健康診断を受けたメイは医師に相談すると、人事部から話が通っており高度な医療が受けれるよう手配してくれるのでした。
父親の介護の負担が減ったメイは実家から通うのを辞め、会社の寮に入ると土日も会社の催し物に参加するようになります。
パーティーにも積極的に参加しますが、どうも大勢で騒ぐのが苦手で一人になってしまいます。
周りを見回すと同じように一人で佇む男性がいます。
その男性はメイが最初の金曜日に参加したパーティーでも同じように一人で佇んでいて会話した人物で名前を聞きそびれていました。
メイが再び声を掛けると、その男性は面白いところがあると言って、メイを会社の地下に案内します。
会社の地下を抜けると建設されたまま使われなかった地下鉄のトンネルがあり、サーバーが1基設置されていました。
それはサークルのために情報の透明化を推進する議員のサーバーで、その議員はいち早く自身の情報の透明化を表明していました。
そしてその男性は、トゥルーユーが本来の目的とは違う使われ方をし始めたことを危惧していました。
メイはその男性の名前を聞くと、その男性は自分の名前を知らなかったことに驚いたようで、タイ・ラフィートと名乗ります。
彼こそがサークルの人気サービス、トゥルーユーの開発者でしたが、最近は表には出てこず、サークルのサービスに疑問を抱いていました。
すっかり実家に顔を出さなくなったメイはビデオチャットで母親と話しています。
会話中、以前からお願いしていた友人のマーサーが作ってくれた鹿の角のシャンデリアが完成して取り付けてあるのに気が付きます。
メイはシャンデリアを写メって、マーサーのプロフィールを付けてトゥルーユーに上げるのでした。
ある日、マーサーが会社にメイを訪ねてきます。
メイは以前、入社が決まった頃、マーサーに会社に遊びに来るよう言ってましたが、そんな呑気な事では無くて、マーサーはメイがアップした写真で大変な目に遭っていると言います。
鹿角シャンデリアの写真を見たフォロワーから動物虐待をしていると非難するコメントが殺到して炎上していました。
マーサーはメイに自分を巻き込まないで欲しいと言って仲違いしますが、会社のロビーでやり取りされていたその行為を目撃した社員はスマホのカメラを向けるという異様さでした。
意気消沈したメイは憂さ晴らしに夜に一人カヤックに出かけます。
いつも利用している施設の営業終了後に忍び込んで、海へ出ますが夜霧の視界不良と高波で転覆してしまいます。
すると上空に救助ヘリが現れ命を救われますが、メイは運がよかったと考えます。
しかし実際はブイに設置されていたシーチェンジのカメラで海を見ていた視聴者によって通報され助かったのでした。
その事実を知ったメイは夜、忍び込んだことを恥じて反省すると共に、シーチェンジ(可視化)=透明化によって助かったことに感動して、自らも常にシーチェンジのカメラを付けて透明化することを金曜日のカンファレンスで発表すると、瞬く間に人気を博し透明化推進のアイコンとして祭り上げられるのでした。
(セルフ・トゥルーマン・ショーとでもいいましょうか)
メイは自分の行動を全てオープン(トイレやお風呂以外は)にしてるため、ビデオチャットに登場する両親も当初は協力的でしたが、メイが誤って両親の性生活を中継してしまうと、両親からもそっとしておいて欲しいと言われます。
また、メイの親友のアニーはサークルの重要なメンバー40人の中の1人で、各国に飛んで地道に透明化を働きかけてましたが、メイがその働きを一気に飛び越えてきたことや、その激務から精神のバランスを崩していきます。
メイは注目を浴びれば浴びるほど、身近な人が離れていくのでした。
ベイリーはメイの人気に目を付けると、人探しサービス「ソウルサーチ」をメイに発表させます。
シーチェンジのシステムに顔認証技術を融合したもので、カンファレンスで発表すると実験で脱獄犯を探します。
20分の制限時間を設けますが、その半分の10分で脱獄犯を見つけるとカンファレンス参加者は熱狂します。
メイは「次に誰を探したい?」と尋ねると、マーサーとの答えが返ってきます。
参加者も次々にマーサーと口にしますがメイは渋ります。
しかしベイリーの口上に乗せられるとメイは「次に探すのはマーサー」と言い、視聴者も巻き込んだ追跡が始まります。
マーサーは家に居るところを視聴者にすぐ見つかると、次々にスマホのカメラを向けらます。
そっとしておいて欲しいマーサーは車に乗って逃げますが、視聴者がパパラッチのように追いかけると事故が起きてしまいマーサーは亡くなってしまいます。
ショックを受けたメイは実家に戻り三日三晩寝込むのでした。
サークルの熱狂から覚めたメイはアニーに電話すると、アニーは故郷のスコットランドに戻っていて心の平穏を取り戻していました。
メイは4日ぶりに出社するとベイリーに心配され、徐々に仕事を再開します。
するとタイ・ラフィートから電話がかかってきて、いつかの地下トンネルに呼び出されます。
透明化データを保存するためのサーバーは急速に増えていてタイからベイリーの企みを聞かされます。
メイは再び自身にカメラを付けるとフォロワーが次々におかえりと言って迎えてくれます。
メイは再び週末のカンファレンスに出席するとベイリーはマーサーの死を悼み、再びこのようなことが起きないために、シーチェンジやソウルサーチに自動ブレーキシステムを連動させたシステムを開発することを宣言します。
するとメイが登壇して、ベイリーやステントンは透明化を推進してるが、自身の透明化は何一つしていないと非難します。
タイが手に入れた会社の極秘データやベイリーとステントンとのメールを公開すると、ステントンはブレーカーを落とし停電させますが、その模様は参加者たちのスマホで配信されてるのでした。
エンディングはメイが一人カヤックをしてるとドローンが旋回し、透明化された社会を映し出して映画は終わります。
本作はデイヴ・エガーズ原作の映画化とは知らずに観たんですが、同じくデイヴ・エガーズ原作の『プロミスト・ランド』や『王様のためのホログラム』とテーマは同じで、一貫して、行き過ぎた物質社会(物質主義)への批判となっています。
このテーマではデイヴ・エガーズも影響を受けている『ローカル・ヒーロー 夢に生きた男』という大変面白い映画があるので未見の方は是非見ていただきたいです。
本作はデイヴ・エガーズ自身が監督と共同で脚本を務めているのですが、『プロミスト・ランド』や『王様のためのホログラム』同様、説明不足の点が多々あって分かり辛く、物語的なカタルシスも無く、そのためテーマはいいのですが作品の評価を落としてる気がします。
例えば本作ではベイリーとステントンとの企みが、具体的にはどのようなものか明らかにされないですし、ラストにしても皮肉が効き過ぎて分かり辛いですし、後味が悪いものとなっています。
エマ・ワトソンは冒頭のくたびれたTシャツを着たワーキングプアの若者から、憧れの巨大企業に取り込まれていく若者を好演してたと思います。
トム・ハンクスはあんまり出てこないですね。
『王様のためのホログラム』のときは、「ベストセラー小説の原作をトム・ハンクスが熱望」のコピーが踊って主演でしたが、本作もデイヴ・エガーズ原作でアラブ資本が入ってるので、出演シーンが少ない代わりに製作に名を連ねてます。
きっとこのテーマ好きなんでしょうね。
エンドロールで「ビルに捧ぐ」と今年2月に亡くなったビル・パクストンを追悼してたんですが、妻役を演じたグレン・ヘドリーも今年6月に亡くなってるんですね。哀悼の意を表します。
小説の方はかなりボリュームがあるみたいですが、テーマは本当にいいと思うので映画をきっかけに小説の方を読み進めるのもいいかもしれないと思いました。
鑑賞データ
TOHOシネマズ六本木ヒルズ TOHOシネマズデイ 1100円
2017年 188作品目 累計201600円 1作品単価1072円
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