グザヴィエ・ドラン版『家族はつらいよ』? ☆1点
予告編
映画データ
あらすじ
「もうすぐ死ぬ」と家族に伝えるために、12年ぶりに帰郷する人気作家のルイ。母のマルティーヌは息子の好きだった料理を用意し、幼い頃に別れた兄を覚えていない妹のシュザンヌは慣れないオシャレをして待っていた。浮足立つ二人と違って、素っ気なく迎える兄のアントワーヌ、彼の妻のカトリーヌはルイとは初対面だ。オードブルにメインと、まるでルイが何かを告白するのを恐れるかのように、ひたすら続く意味のない会話。戸惑いながらも、デザートの頃には打ち明けようと決意するルイ。だが、過熱していく兄の激しい言葉が頂点に達した時、それぞれが隠していた思わぬ感情がほとばしる――――。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
えーっと、クソつまんなかったです。
途中で本気で帰りたくなりました。
特にあのお兄さん(ヴァンサン・カッセル)と車でタバコを買いに行く辺り。
もう全然、会話が噛み合ってなくて、弟(ギャスパー・ウリエル)が空港で時間潰してた話もどうでもいいし、いつもケンカ腰のお兄さんには本気でイライラさせられますし、これでカンヌのグランプリ獲れるんだったら前田司郎監督の作品を持っていけばいいじゃんと思いましたよ。マジで。
前田司郎監督作『ふきげんな過去』
あっ、ごめんなさい。取り乱してしまいました。
えー、本作はカナダの若き天才と評されるグザヴィエ・ドラン監督の長編第6作目で、2016年の第69回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した作品です。
原作はジャン=リュック・ラガルスって方の戯曲『まさに世界の終り』って作品だそうです。
ドラン監督は初監督作『マイ・マザー』で母親役だったアンヌ・ドルヴァルから本人も演じたことのあるこの戯曲を勧められて読んだそうですが、その当時はピンとこなかったようで、反感すら覚えたかもしれないと言ってるので、今の私の心境と同じかな(笑)
それで2014年の第67回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した前作『Mommy/マミー』(未見です)の撮影後、再び読んだところ次に撮るべき作品はこれだ!ってなって本作に至ったようです。
ドラン監督作品は『わたしはロランス』と『トム・アット・ザ・ファーム』を観てます。
本作のあらすじは、街で劇作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)34歳が自分の命が余命幾ばくも無いことを知って、そのことを告げるために12年ぶりに、母マルティーヌ(ナタリー・バイ)、妹シュザンヌ(レア・セドゥ)、兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)とはじめましての兄の妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)が居る実家に戻るんですが、結局何も告げられず5~6時間滞在して帰るって話です。
まぁ実際自分も実家に帰っても大した話はしないんですが、本作でも母と妹との会話はどうでもいい話で、唯一はじめましての兄の妻との会話は弾みそうになるのですが、それにいちいち兄が口を挟むから空気が悪くなるっていう展開で辟易するんですよね。
妹はタバコばっかり吸ってて、こんな吸うか?っていうくらい吸うんですが、きっと何かの比喩になってると思うんですけど、よく分かりません。
お母さんには死にそうになってるから来てるのに、元気そうとか言われるし…。
救われそうになったのはマリオン・コティヤールの存在だけですよ。
最初出てきたときは、あれ?『マリアンヌ』より綺麗じゃないなと思いましたけど、唯一会話のキャッチボールが成立しそうな人でしたし、いつまでなの?ってドキッとすること言いますし、最後、茹で上がって蒸された家族の中で上気ばんだ顔は綺麗でしたね。ありゃマリア様だ。
本作は『トム・アット・ザ・ファーム』に似てるなと思いまして、まず口数少ない主人公というのが一緒です。
トムアットのときは主人公のトムをドラン監督自身が演じてたんですが、基本的に自分のことは話しません。
こういう人いますよね。自分をミステリアスに見せたいのか、口数少なくて何を聞いても煙に巻く感じの人。
女性だったら、すぐ秘密~とか言うタイプ。
こういうタイプの人は男女問わず見ててメンドクセーと思ってしまうんですけど、男性だと母性本能くすぐるタイプな気がします。
トムアットでは交通事故で死んでしまったゲイの恋人の実家に葬儀のために訪れるって話なんですけど、ここでも彼のお母さんには気に入られ、彼の兄からは高圧的な態度を受けるっていうので同じなんですけど、きっとドラン監督自身の母とか兄への思いが反映されてるんだと思います。
それで、トムアットでは彼の兄をどこでも軍事介入するアメリカの比喩と思ったんですけど、本作では、妹がバシバシタバコ吸って、母が隠れてタバコ吸って、兄がたまに吸って、主人公がタバコ1本吸うんですけど、それがラッキーストライクなのでアメリカの象徴だと思うんですけど、アメリカなんて煙に巻いてやるぜとか飲み込んでやるぜってことなんでしょうか?
自分は比喩とか詩とか苦手なんでよく分かりませんが、何か意味があると思います。
比喩とか詩でいえば、トムアットではラストで唐突にアメリカ批判みたいな歌詞の歌が流れましたけど、本作では4曲くらい歌流れました。
これ映画観に来てるのであってミュージックビデオ観に来てる訳じゃないですし、何か言いたいことを歌詞に載せるのって、本人が作詞作曲したならまだしも、歌で表現するって手抜きな感じがしたんですよね。
恋のマイアヒでは眠気吹き飛びましたけど。
ラストではモービーのナチュラルブルース(Moby Natural Blues)がかかってました。
うーん、色んなレビューを見ますと、ルイは監督自身を反映させたキャラクターでその居心地の悪さを表してるってことみたいなんですけど、黒沢清監督が『クリーピー 偽りの隣人』でやろうとしたことしてるのかなぁ?
書いてて思ったんですけど、前田司郎監督の作品に似てますね。
『ジ・エキストリーム・スキヤキ』と『ふきげんな過去』しか観てないですけど、『トム・アット・ザ・ファーム』も本作も、お久しぶりの人間が現れることで物語が展開していきますし、戯曲が元っていうのも同じですし。前田作品みたいなコメディ要素は無いですけど。
うーん、でもねぇ、本作はやっぱりつまらないです。
そりゃ出演者は豪華ですけど、演じてる人も分かってやってるのか不明です。
特に心に響く台詞とかがある訳でもないですし。
演技のエチュードとかで感情を爆発させる感じでしょうか(倒れたパイプ椅子を死体だと思って泣けみたいな)。
そういうのを延々見せられる感じ。
なんか著名な人たちもこぞって絶賛してますし、一人くらい酷評してくれてる人がいれば溜飲も下がるんですけどね。
現在テレビ東京で「山田孝之のカンヌ映画祭」っていうのがやってるんで見てるんですけど、毎回カンヌで賞をもらうなんておかしいですよ。
と思ってウィキペディアの『たかが世界の終わり』の項目みたら、上映時は不評だったって書いてあって溜飲下がりました。
(追記)
なんで自分がノレないのか分かりました。
【チラシ 第2弾】
ナタリー・バイ バージョンです!「理解できない、でも愛してる。」#たかが世界の終わり #ItsOnlyTheEndOfTheWorld #JusteLaFinDuMonde #グザヴィエ・ドラン #XavierDolan pic.twitter.com/ToSfSkZrF5
— 映画『たかが世界の終わり』 (@xdolan_sekai) 2017年1月19日
理解しようとする努力が愛するってことじゃないの?
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ有楽町 TCGメンバーズ ハッピーチューズデー 1000円
2017年 26作品目 累計22300円 1作品単価858円
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