マーティン・フリーマンか天知茂か ☆4点
イギリスで2010年より上演されたところ大ヒットロングランし、その後、トロント、上海、シドニー、モスクワでも上演され累計100万人を動員したジェレミー・ダイソンとアンディ・ナイマンによる脚本・演出の同名舞台を当人たちが映画化。
主演もアンディ・ナイマンで、共演にマーティン・フリーマン
予告編
映画データ
本作は2018年7月21日(土)公開で、全国2館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には17館での公開となるようです。
東京での公開もヒューマントラストシネマ渋谷とユナイテッド・シネマ豊洲だけだったので予告編は目にしませんでした。
ここ最近のホラー映画、『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』と『インサイド』が個人的には物足りなかったので、リ・リベンジとばかりに観に行ってきました。
監督はジェレミー・ダイソン
初めて名前を聞いた方なんですが、1999年からBBCで放送されている「リーグ・オブ・ジェントルマン 奇人同盟!」というブラック・コメディ番組にマーク・ゲイティス、スティーヴ・ペンバートン、リース・シェアスミスといった方たちと出演(本人は制作)してるみたいなんですけど、テリー・ギリアムを輩出しているモンティ・パイソンみたいなものでしょうかね。
2010年からアンディ・ナイマンと共同で本作の舞台版を脚本・監督してるようです。
監督と主演でアンディ・ナイマン
こちらも初めて名前を聞いた方なんですが、イングランドの俳優、声優、テレビプロデューサー、マジシャンの方だそうです。
近作は『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』『トレイン・ミッション』などに出演していたようです。
共演にマーティン・フリーマン
近作は『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『ブラックパンサー』を観てます。
他に共演と配役は以下の通りです。
グッドマン教授: アンディ・ナイマン
マイク・プリドル: マーティン・フリーマン
トニー・マシューズ: ポール・ホワイトハウス
サイモン・リフキンド: アレックス・ロウザー
マーク・ヴァン・リース: ニコラス・バーンズ
ペギー・ヴァン・リース: ジル・ハーフペニー
エメリ神父: コブナ・ホルドブルック=スミス
幼少期のグッドマンの父: ダニエル・ヒル
エスター・グッドマン: エイミー・ドイル
ウーリー: ポール・ウォーレン
チャールズ・キャメロン: レーナド・バーン
あらすじ
心理学者のフィリップ・グッドマン教授は、イギリス各地でニセ超能力者やニセ霊能者の嘘を暴いてきた。ある時グッドマンは、長らく行方不明になっていた憧れのベテラン学者・キャメロン博士から「自分ではどうしてもトリックが見破れない」という3つの超常現象を調査するよう依頼を受ける。初老の夜間警備員、家族関係に問題を抱える青年、妻が出産を控えた地方の名士……3人の超常現象体験者に話を聞くため、グッドマンは旅に出る。しかし、そこで彼を待っていたのは、信じがたい怪奇現象の数々と想像を絶する恐怖だった……。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
予告編の映像は見ないで、あらすじの「オカルト否定派の心理学者が超常現象を検証するうちに、想像を絶する恐怖に見舞われるホラー」というのに惹かれて観に行ったので、どんな雰囲気の映画かも分からずに観たんですけど、最後まで観ると、いわゆる一般的なホラー映画を期待するとイメージと違うかもしれません。
原題は「Ghost Stories(ゴースト・ストーリーズ)」で、日本では「英国幽霊奇談」の副題が付いてますが、この「奇談」というのがピッタリだと思います。
(この『奇談』ではないが)
公式サイトにもIndieWire(映画情報サイト)の評として「デヴィッド・リンチを思わせる悪夢的恐怖」とありますが、確かにラストの方はリンチ的だと思いましたし、自分はこの感じ好きですね。
「英国風ドクラ・マグラ」とでもいいましょうか。
さて、オカルト否定派といえばマジシャンのフーディーニを思い浮かべるのですが、その実は亡き母と交信したかったからなんですが、本作のグッドマン教授はいかに。
一応、公式サイトのあらすじには心理学者のグッドマン教授って書いてあるんですけど、学生の前で講義してるシーンとかは出てきません。
冒頭はグッドマン教授の子供の頃のホームビデオを映してるんですけど、はっきり言って何やってるか分かりません。
誰かの結婚披露パーティー(ユダヤ教)みたいですけど。
ただ子供の頃から自分でホームビデオを撮るのが好きなようで、両親の喧嘩?とかも撮ってて父親に怒られてます。
大人になったグッドマンは電波少年的な突撃番組「降霊術の嘘を暴く」という番組をやってて、各地でやってる降霊術ショーに突撃してはその嘘を暴いてテレビで放送してます。
というのも背景にあるのは子供の頃に見ていたキャメロン博士の番組で同じようなことをやっていたからなんですが、キャメロン博士失踪のニュースが流れると長年に亘り行方不明となってしまいます。
ある日、グッドマンが書斎で執筆してたら写真とカセットテープが届きます。
写真は現在の新聞を持った年老いたキャメロン博士が写ってて、カセットテープにはどうしても謎が解けない3つの心霊現象を調べて欲しいと吹き込まれています。
グッドマンは封書の住所を訪ねると古びたトレーラーハウスに辿り着き、呼び鈴を鳴らすと体が悪そうなキャメロン博士が出てきます。
トレーラーハウスの中は使った皿も洗われずシンクの中に放置されていて、生活が荒れている様子が窺えます。
また、点滴スタンドが置いてあり、自分で点滴してる様子もありました。
グッドマンは憧れの人に会えた嬉しさで自著にサインして渡そうとしますが、そんなもん要らんと言われ、番組も見てるようで、あれも酷いと言われます。
キャメロン博士は自分が否定してきた心霊現象は真実でこの3人に起きた心霊現象はどうしても解けないと言い、調べて欲しいと言います。
そしてグッドマンに謎を解き明かしてもらって「私に、間違ってる、と言って欲しい」と資料を渡します。
グッドマンは1人目のトニー・マシューズという男に酒場に会いに行きます。
トニーは以前、廃病院になってる精神病院の夜間警備の仕事をしてて、そのときの怪奇現象を語ります。
怪奇現象は電灯が付いたり消えたり、聞いてるラジオに雑音が入って聞こえなくなったり、別棟を見回ってる同僚と連絡が取れなくなったり、閉めたはずのドアが開いてたり、そういうのです。
電灯が消えて真っ暗な廊下の先に人影が見えるのに近づくと何もなかったり、ある部屋に入るとマネキンがずらっと置かれてて、中に1体だけ布が被さってるのがあって、それが動いたと思って調べるも結局ただのマネキンだったり、出そうで出ないんですがこれが結構怖いんです。
トニーには娘がいるらしく、閉じ込め症候群(初めて聞きました)で入院してるのですが、いつからか病院に行かなくなったと言い、怪奇現象はその罰だと言います。
そして、それ以来、また病院に行くようになると、娘は徐々に回復していったと言います。
この1件目の話は、トニーがその部屋に閉じ込められてドアを開けようとすると、背後から黄色い服を着た少女の幽霊が抱きついてきたところで終わります。
次にグッドマンはサイモン・リフキンドという青年の自宅に会いに行きます。
青年は実家暮らしで今日は誰もいないからと言って自分の部屋に案内するんですが、グッドマンにはキッチンに両親が立ってたり家族の気配が感じられます。
サイモンは両親に大学に落ちたことを打ち明けられずに悩んでいるのですが、ある夜、気分転換に両親の車を無断で拝借するとドライブに出かけます。
深夜の森を走ってると両親に車を勝手に持ち出したのがバレて、ちょくちょく電話がかかってきて戻るように言われます。
実は免許を取ったとも嘘をついていたので意気消沈しながら車を走らせてると、目の前に突然何かが降ってきて人のようなものを轢いてしまいます。
サイモンは一旦は車を停めて轢いたものを確かめようとするも、怖くてはっきり見れずに立ち去ってしまいます。
しばらく車を走らせていると轢き逃げしたことを後悔しながらも、自分を奮い立たせ更に車を前に進めるんですが、この辺はサイモンを演じているアレックス・ロウザーの顔芸が上手いです。
しかし、サイモンの車は突然故障して動かなくなってしまいます。
JAF的なロードサービスに電話し修理が到着する間、車の中で待っていますが、謎の人影が襲ってくるとサイモンは車を飛び出して森の中に逃げます。
森の木を背にして車の様子を窺ってると、その木がサイモンを襲ってきたところで2件目の話は終わります。
グッドマンはサイモンが話していた森の場所を昼間に訪れると、倒れた木の根が剝き出しになり盛り上がっていて、恐怖でそれを見間違えたと結論付けます。
3人目は狩猟に出かける地方の名士であるマイク・プリドルに会いに行きます。
(ちなみに映画情報サイトではキャストのところにマーティン・フリーマンが一番上にきてるところが多いですが、出てくるのは1時間くらいしてからです)
マイクは出産を控えた妻が入院していたため、広い家に一人でいましたが、用意した子供部屋でティッシュが突然舞ったり、おもちゃが突然動いたりなどのポルターガイスト現象が起きます。
マイクが夜、リビングのソファーで寝ていると、子供部屋から音がします。
子供部屋に行くと、ベビーベッドに赤ちゃんの姿が一瞬見えますが、すぐに消えると周囲の温度が一気に下がり、飾ってあった花も枯れてしまいます。
すると、部屋の奥から恐ろしい形相をした妻が向かってきて呻き声を上げると消えてしまうのでした。
マイクによると、妻は出産時に亡くなり、赤ちゃんは酷い姿で生まれてきたと言います。
そして、妻はあの赤ちゃんを見なくてよかったと言うと、突然、猟銃で顎を撃ち抜いて自殺してしまうのでした。
グッドマンは直ちにキャメロン博士の元に向かうと、調査した結果を伝えます。
グッドマンの答えは「皆、恐怖のあまり判断力を失っていた」「人は見たいものを見たいように見る」で、心霊現象など存在しないというものでした。
するとキャメロン博士は目の辺りに指を突っ込み、顔を剥がし始めます。
顔はラバーマスクになっていて、中から出てきたのは自殺したはずのマイクでした。
マイクはキャメロン博士が着ていたパジャマを剥ぎ取ると、ビシッとしたスーツ姿になります。
いやー、このシーンは完全に土曜ワイド劇場の「江戸川乱歩の美女シリーズ」の天知茂さんを思い起こしました(笑)
制作陣は江戸川乱歩シリーズ見てるんでないかな?と思うくらい似てましたね。
マイクがトレーラーハウスの窓に掛かってるカーテンを切り裂くと壁が現れて扉が付いてます。
マイクが扉を開けて中に入っていくのでついて行くと、そこはグッドマンの少年時代でした。
グッドマンはいじめっ子2人にいじめられてますが、そこに病気で髪が抜けている同級生が通りかかるとその少年がターゲットになります。
いじめっこはその少年に廃トンネルの中に入って、中に書かれてる数字を読み上げてくるように言うんですが、その数字はトニーが見た精神病院の部屋番号とかになってます。
少年が中に入って数字を読み上げていくと、いじめっ子は更に囃し立て奥へと進ませます。
少年は戻りたいと言いますが、いじめっ子は奥の数字を読めと言って奥に進ませると、少年は酸欠?からか倒れてしまいます。
少年の応答が無くなるとビビったいじめっ子たちは逃げ出しますが、グッドマンも少年を見捨てて逃げてしまうのでした。
封印していた少年時代のトラウマを見せられたグッドマンの前に、マイクが再び現れると線路上にベビーベッドが置いてあります。
マイクはベビーベッドに寝ている赤ちゃんにキャットフードを食べさせると、赤ちゃんを抱いて消えてしまいます。
すると今度は廃トンネルで死んでゾンビのようになった少年が現れます。
グッドマンは見捨てたことを謝りますが、少年に服を剥ぎ取られると着ていたのは病人服でした。
少年はマイクのように再び空間を切り裂くと、真っ白い壁で覆われた通路が現れます。
通路の先は病院のベッドに続いていてグッドマンは少年に手を引かれます。
グッドマンは行きたくないと言いますが、ベッドの上に寝かされると、やがて眠ってしまいます。
カメラはベッドの上のグッドマンを映します。
グッドマンの目は僅かに開いてますが閉じ込め症候群のように全く反応が無く、体にはチューブが取り付けられています。
するとそこにサイモンとマイクが入ってきます。
サイモンはこの病院の看護師でマイクは医師でグッドマンの担当でした。
グッドマンは自殺により病院に運ばれたもののずっとこの状態なのでした。
サイモンとマイクが病室を出ると、今度はトニーが入ってきます。
トニーは病室の清掃員で、意識の無いグッドマンにも外の景色が見えるよう鏡を置くと、グッドマンから見える窓の景色を映して映画は終わります。
うむ、所謂、夢オチってやつなんですが、そういう風に転がると思って観てないので面白いんですよね。
終盤の悪夢的な感じはまさしくリンチって感じですし、『エルム街の悪夢』の鑑賞後感にも似てたと思います。
『IT/イット』とかも近いかな?(雰囲気として)
舞台でホラーをやるときは、精神的にくるものの方が合うと思うのですが、ラストの展開は舞台的でもあり映画的でもありどちらでもいける感じで、なるほど上手い戯曲だなと思います。
伊達に元の舞台がロングランされてる訳じゃないなと思いました。
思えば、ラストの窓から見える景色とか序盤からちょこちょこ挿入されてたんですよね。
グッドマンが椅子に座ったまま動かない父親らしき人物と会ってるシーンとか、前半から分からないシーンがあるのですが、そういうのが全部ラストに掛かってくる感じです。
導入部の『レッド・ライト』的な掴みも好きなんですよね。
基本的にはオカルト否定派なので(笑)
「人は見たいように見る」
グッドマンにブーメランのように返ってくるこの言葉は、一番恐ろしいのは「人の心」なんだと言ってるように思いました。
鑑賞データ
ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ 1300円
2018年 124作品目 累計120500円 1作品単価972円
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