いつしか観客も真剣になった ☆5点
予告編
映画データ
TBS製作で東宝配給作品です。
TOHOシネマズによく行くので、本作は昨年末から今年頭にかけてよく予告編を目にしました。
今をときめく若手女優がおへそ出してチアリーディングとあっては、観に行かない手は無いでしょ、とよこしまな気持ちでいましたが、公開が近づくにつれて、そういえば前に同じようなドラマあったよな?と思い出しリメイク映画かな?と思いました。
前にあったドラマはフジテレビ「ダンドリ。」で、これは見てなかったんですが、榮倉奈々さんと加藤ローサさん主演で2006年放送ってもう11年前ですか!(時間経つのが早すぎる)
だから今の高校生ぐらいの子とか知らない可能性もあるんですよね。
ダンドリは神奈川県立厚木高等学校のダンスドリル部が全米ダンス選手権で総合優勝するまでの実話を基にした話で、本作と全く同じ感じなんですけど、ひょっとして全米ダンス選手権て大したことないんじゃないか?と穿った見方をして、見る気が失せてしまったんですが、それは私の全くの無知からきてるものでした。
まずそもそもチアリーディングとチアダンスの違いが分かって無かったです。
キルスティン・ダンスト主演で2001年に公開されて日本でもそこそこヒットした『チアーズ!』
チアーズ(原題:Bring It On)予告編
これはチアリーディングですね。
アクロバットな動きがあるやつ。
一方、チアダンスはアクロバティックな動きは禁止されていて、振り付けのセンスや表現力、チームの一体感が重視される競技だそうで、今まで完全にごっちゃになってました。
で、一時は見る気が失せてしまった本作なんですが、出演者のところを見ると陽月華さんの名前が。
昨年末NHKのBSプレミアムドラマ「プリンセスメゾン」で初めて知った方で元宝塚なんですが、その演技にすっかり魅了されてしまいまして観に行った次第です。
これからグイグイ来ると思います。
そんな本作はダンドリとも無関係ではなくて、本作のモデルになった福井商業高校チアリーダー部の顧問である五十嵐裕子先生が厚木高校の全米選手権優勝のニュースを知ったことから始まる軌跡(奇跡)です。
そして厚木高校のコーチとダンドリでの振り付け、福井商業での月1指導と本作での振り付けと、全てに日本チアダンス協会の前田千代さんという方が関わっています。
本作では前田千代さんをモデルにした大野コーチ役を陽月華さんが演じ、五十嵐先生をモデルにした早乙女先生役を天海祐希さんが演じて宝塚の先輩後輩共演にもなっています。
キャスト陣は
主人公ひかり役に広瀬すずさん
『海街diary』と『怒り』は観ましたが、今までそれほど興味無かったんですが、本作では父子家庭ながらも、ポジティブシンキング・ナチュラルボーン福井みたいな役柄を好演していて、すっかり魅了されてしまいました。ラストでは先生役の天海祐希さんを完全に食ってましたね。
W主演みたいな感じで部長の玉置彩乃役に中条あやみさん
『セトウツミ』で観たとき綺麗な子だなぁと思いましたが、本作ではチアダンス経験者でザ・優等生という役柄を好演してました。
紀藤唯役に山崎紘菜さん
いつもTOHOシネマズで本編上映前に見るので、映画に出てくると嬉しいですね。
ヒップホップダンスが得意だけど、笑顔が作れない女子高生役でした。
東多恵子役に富田望生さん
渡辺直美さんのビヨンセばりにキレキレのダンスを見せてくれます。
この方は『モヒカン故郷に帰る』を観たときに上手いなと思ったんですが、本作では『ソロモンの偽証』を彷彿とさせるシーンが出てきます。
監督は河合勇人さん
ドラマ「ダメ恋」の演出とか『俺物語!!』の監督です。
漫画原作モノに強そう。
あらすじ
県立福井中央高校に入学した友永ひかり(広瀬すず)は、中学からの同級生の孝介(真剣佑)を応援したいためだけにチアダンス部へ入部する。しかし彼女を待ち受けていたのは、顧問の女教師・早乙女薫子(天海祐希)による「目標は全米大会制覇!おでこ出し絶対!恋愛禁止!」という超厳しいスパルタ指導!!早々に周りが退部していく中、チームメイトの同級生・綾乃(中条あやみ)の存在もあり何とかチアダンスを続けていく決意をするひかり。チアダンス部は”全米大会制覇”に向かって走り出す!!フツーの女子高生たちの夢への挑戦が今、始まる――。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
物語は、全米優勝するっていうあらすじは分かっているので、どう見(魅)せるかなんですが、映画は冒頭からかなり漫画的な描写が目立ちまして、ここは好き嫌いが別れるトコだろうなと思いましたけど、何でこういう描写にしたのかは後になって分かりました。
映画はひかりたちの入学から3年生で優勝するまでを描くので、テンポよく描かなければならないのですが、序盤はこうした漫画的描写でテンポを出すのと同時に笑いも取りにきてましたが、中盤くらいまできますとそうした描写は消え、かなり前のめりになって真剣に観ている自分がいました。
まず1年生の県大会まで。ダンス経験者である部長や唯は踊らせてもらえますが、ひかりをはじめとした未経験者は踊る以前の基礎ばかり先生にやらされます。見かねた部長が先生に進言して、基礎練習は早出してやるから踊る楽しさを知ってもらいたいと、1曲通して踊れるまで自分達で仕上げます。
が、県大会ではボロボロに失敗し、4チームの出場でしたが県大会も突破することが出来ずチームが崩壊してしまいます。
(この時、多恵子役の富田さんがダメ出しされて泣いて走って出ていくのですが、ソロモンの偽証みたいに車に轢かれることはありません。)
ひかりと彩乃も心が折れかけますが、この2人が中心になってチームを立て直していきます。
2年時。新入生が入ってきます。ダンス経験者もいるようで前年より戦力アップ。
ひかりのポジションは新入生に奪われますが、自分より上手いから仕方ないと物分かりのいいひかりです。
全国大会に駒を進めるも4位で全米選手権は出場ならず。
このチームの欠点は仲が良過ぎることと考えた部長の彩乃は自ら嫌われ役を演じ、メンバーに厳しくダメ出しをしていきます。
3年時。ひかりが靭帯損傷して全治2か月。県大会までぎりぎりの状況です。
チームの練習は厳しさを増し部長の当たりも強くなってきますが、それをフォローして回るひかり。
でも、そんなひかりを見て早乙女先生が言い放った言葉は「余計なことしないで」。
そのあなたの仲良しこよしがチームをダメにさせると(この辺はマジで早乙女先生に殺意を覚えます)。
落ち込むひかりでしたが、踊れない状況になって、こんなにも踊りを欲してたのかと気付くひかりでもありました。
大会に間に合い練習に合流するも2か月のブランクは大きく、先生から足を引っ張ってると言われメンバーから外されます(二度目の殺意!)。
ひかり抜きで戦ったチームは全国大会優勝、全米選手権出場を決め、学校全体が浮かれてますが、ひとり黙々と練習するひかり。
全米選手権ではチームに復帰し予選を通過しますが、決勝進出7チーム中7番目。
ここで先生は1年からずっとセンターだった彩乃をひかりと交代させます。
彩乃の努力を人一倍知ってるひかりは先生に反発しますが、先生の思いを大野コーチから聞かされます。
ここまで早乙女先生と生徒たちの関係の描かれ方が薄いなと感じていましたが、決勝を前にしての回想シーンへの布石でした。
日本の高校生が全米選手権で優勝したのをニュースで知って感銘を受けたこと。
荒れていたバトン部をチアダンス部に変更して、生徒たちにやりがいを持たそうとしたこと。
ただその取り組みは上手くいかず、常に校長たちからは反対されていたこと。
ひかりたちが入ってきたときに可能性を見出したこと。
多恵子の家庭環境などにも踏み込んでいたこと。
チアダンス部廃部の危機に進退をかけていたこと。
大野コーチを招聘すべく毎日手紙を書いていたこと。
などなど。
これは実際の五十嵐先生もそうなんだそうですが、チアダンス経験はないそうで技術的なことはビデオを見たり、コーチにお願いしたりして、専ら内面を充実させることに取り組んでいたようなのですが、自己啓発書とか読み込んでいるシーンが出てきます。
彩乃をセンターから外したのは、野球でいえば4番にバントを命じるようなもので、非情なんですが、勝つのと負けるのでは大きな開きが出来るのを知ってるんですよね。
ひかりには、何かを得るためには何かを捨てなければならない、とも言っていて、その描写は序盤の漫画的描写とは全く違ってズシンとくるものでした。
2年時で言えば彩乃が早乙女先生化することで限界(全国大会出場)を乗り越え、最後は非情さを持って限界を乗り越えるという、限界の超え方みたいな映画でした。
ただ惜しいのは最後の決勝戦の踊りですかね。
会場の応援とか母校での応援、特に外人のナレーションとかは要らなかった気がします。
踊り自体が2分半くらいらしいので、それをきっちりノーカットで見せるだけでもよかった気がします。
実際、観る前はアイドル映画だし、序盤の漫画的演出にナメてたんですが、先日の『ハルチカ』といい、なかなかの青春映画の良作でした。
(校長室に直談判に行くシーンでズンズン並んで歩くハルチカみたいなシーンありました。)
鑑賞データ
新宿バルト9 夕方割 1300円
2017年 44作品目 累計42000円 1作品単価955円
コメント
[…] 出典元:https://eigamanzai.com/movie-review/cheer-dan/ […]