はじまりへの旅 評価と感想/アメリカにも『湯を沸かすほどの熱い愛』があった!

はじまりへの旅 評価と感想
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もちろん「北の国から」もあるよ ☆5点

第69回(2016年)カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞受賞作品でマット・ロス監督によるオリジナル脚本のコメディドラマ。
森の中で暮らす家族が母親の葬儀に出席するために起こる騒動を描く。主演はヴィゴ・モーテンセン

予告編

映画データ

はじまりへの旅 (2016):作品情報|シネマトゥデイ
映画『はじまりへの旅』のあらすじ・キャスト・評価・動画など作品情報:第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門での監督賞受賞を筆頭に、各国映画祭で賞を獲得したロードムービー。
はじまりへの旅 : 作品情報 - 映画.com
はじまりへの旅の作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。ビゴ・モーテンセンが大家族の父親役を演じ、森で暮らす風変わりな一家が旅に出たことから巻き起こる騒動を描いたロードム...

本作は予告編を見たときから「北の国から」みたいな感じかなぁ?と楽しみにしてた作品で、妻の令子(いじだあゆみ)が死んじゃって、お葬式に参列するために五郎(田中邦衛)と純(吉岡秀隆)と蛍(中嶋朋子)が東京に行く話です。
あの破れた靴の話よかったなぁ、って違うか。

本作のサバイバルな暮らしは、冒頭からすごくて、どこかの原住民みたいに保護色でペインティングして森の中で待ち伏せてナイフで鹿を仕留めるという狩りをしていて、銃や弓矢を使わないところが凄いです。

まぁこれは長男のボウ(ジョージ・マッケイ)の元服的な意味合いもあるのですが、基本、父ベン(ヴィゴ・モーテンセン)のモットーは「ナイフ1本で何でもできるようにする」です。

上のお姉ちゃんのキーラー(サマンサ・アイラー)とヴェスパー(アナリース・バッソ)の2人はナイフ1本で鹿を捌けます。

三女で8歳のサージ(シュリー・クルックス)は度々お姉ちゃんたちの骨切りナイフを持ち出しては小動物の剥製を作っていて、ポル・ポトに興味があります。

基本、子供たちは、純みたいに「電気が無かったら暮らせませんよ」なんてことは言わずに何でも出来ますが、次男のレリアン(ニコラス・ハミルトン)だけがやや父に懐疑的・反抗的で純的なキャラクターだったかな。

蛍もそうでしたが女の子は父に反発しないですね、お父さん大好き。

あとこの家族は、下の子サージとナイ(チャーリー・ショットウェル)がめちゃめちゃ可愛いんでそれ観てるだけでも楽しいです。

詳しいキャラクター紹介が公式サイトにあるので是非見て下さいね。

http://hajimari-tabi.jp/(リンク切れ)

お母さんであるレスリーの死因は手首を切ったことによる自殺なんですが、産後うつからの双極性障害で入院してたんですね。
お父さんのベンは大自然の中に身を置けば治るだろうと思ってたんですが、なかなかうまくいかず、結果的にレスリーの実家に引き取られていました。

レスリーの実家はかなりのお金持ちでレスリー自身は弁護士だったのですが、これ、「北の国から」で五郎(ガソリンスタンド店員)と令子(美容院経営)がなぜ結婚したか?っていうくらいギャップのある夫婦なんですが、ベンの若い頃は描かれてないので、どうやって出会って、なぜこのような生活を送るようになったのかは分かりません(サバイバル生活の前はオレゴンで農業してたと言ってた)

ベンはレスリーの父親ジャック(フランク・ランジェラ)と折り合いが悪く、葬式に来たら逮捕すると言われて諦めます。
そういうところはサバイバル生活を送ってるわりには根性無しで、子供たちからの突き上げがあって葬式に向かいます。

ベンのサバイバル生活は、学力という点では実を結んでいましたが、それ以外の点では弊害として描かれてました。

ニューメキシコへの移動中、お腹が空いたという子供に対し、動物がいないか見てるように言うベン。
移動中も狩りをして自給自足するするつもりでしたが、見つけられたのは放牧されてる羊。

仕方無いのでダイナーで食事しようとしますが、メニューはホットドッグやハンバーガーやコーラばかり。
子供たちは食べたことないので目を輝かせますが、こんなのは毒だと言って食べさせません。

結果、ベンがやったことは、「食料を救え」という名を付けた任務でしたが、もっともらしい理由を付けただけで、やってることはスーパーでの万引きでした。

反抗的だったレリアンがジャックの家に残ることになったときもそうです。
崖登りが得意なヴェスパーが屋根から忍び込もうとしますが、落ちてしまいます。
頸椎骨折の重傷で一歩間違えは半身不随か死んでたかで、却ってサバイバル訓練が仇となっていました。

ベンのサバイバル生活は、子供たちに社会との接点を持つ機会や協調性を学ぶ機会も奪っていて、それを気づかせてくれる旅でもありました。

狩猟民族だったベンが農耕民族に変わるような話でもあって、妻の手紙や子供たちによってベンが救われる話でもあります。

 

本作は全米で4館からの公開で始まり600館に増えて、世界各地の映画祭で賞を獲ったみたいなんですけど、その口コミでの広がり方とか映画の内容も含めて、去年公開された中野量太監督の『湯を沸かすほどの熱い愛』に似てるなと思いました。

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基本いい映画だが、監督の趣味も ☆5点 予告編 映画データ あらすじ 銭湯・幸の湯を営む幸野家だったが、1年前、父・一浩(オダギリ ジョー)がふらっと出奔してから休業していた。母・双葉(宮沢りえ)は持ち前の明るさと強さで、パートをしながら娘...

中野監督からもコメントが寄せられてるみたいですね。


内容で似てるのは、妻のレスリーは仏教徒で死んだら火葬してくれと言われてたんですが、レスリーの両親の教会で葬式を挙げられてしまい土葬されてしまいます。

レスリーからベンに届いた最後の手紙・遺言には、火葬した遺灰はどこか人が集まるトイレに流してくれ、っていうぶっ飛んだもので、ぶっ飛び具合が『湯を沸かす』と共通するんですが、仏教の諸行無常感をもってすればアリなんですよね。
(あと『ファインディング・ニモ』で知った、死んだ金魚はトイレに流すを思い出した)

ベンたち家族は土葬された棺を掘り返して火葬して空港のトイレに流すんですが、世の中の常識からは外れてるかもしれませんが、湯を沸かすの感想でも書きましたように、どちらが尊厳を持って送り出してるかといえばベンたちであり湯沸かしだと思います。

火葬のシーンもよかったですよ。
お母さんの好きな曲を歌おうってなるんですが、それまでバッハとかアカデミックなことばっかり言ってたので、そういう曲になるのかと思ったら、ガンズ・アンド・ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」でテンション上がりました。

主演のヴィゴ・モーテンセンは『ロード・オブ・ザ・リング』を見てないのであまり見たことなかったんですが、ヒゲ剃ったらイケメンでした。
もう58歳なんですね。
マシュー・マコノヒーとかと同じ年くらいかと思いました。
4館から始まった本作ではアカデミー主演男優賞にノミネートされました。

人生で大事なことはだいたい「北の国から」で教わった気がするんですが、本作もアメリカ北西部ワシントン州カスケード山脈から「オレゴンから愛」を経由して、ニューメキシコ州ラスクルーセスまで南下する北の国からの話で、湯を沸かす要素もありますし、子供たちみんないい子で可愛いですし、愛すべき家族で最高でした!

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ有楽町 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2017年 54作品目 累計54100円 1作品単価1002円

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