ブリグズビー・ベア 評価と感想/ガチャピンであり、ムックであり、ゴン太くんである!

ブリグズビー・ベア 評価と感想
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『ルーム』を上回る監禁モノ ☆5点

サタデー・ナイト・ライブの人気コントユニット「GOOD NEIGHBOR」のデイヴ・マッカリーとカイル・ムーニーが監督と主演を務めた初長編映画。
赤ちゃんの頃に誘拐され偽の両親が制作する教育番組「ブリグズビー・ベア」を見て育った主人公が、25歳で救出され本当の両親の元へ戻ることにより巻き起こる騒動を描いたコメディドラマ。
共演はマーク・ハミル

予告編

映画データ

ブリグズビー・ベア : 作品情報 - 映画.com
ブリグズビー・ベアの作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。赤ん坊の頃に誘拐され、偽の両親のもとで彼らが制作した教育番組「ブリグズビー・ベア」だけを見て育った25歳の青年が、...

本作は2018年6月23日(土)公開で、全国15館での公開です。
今後順次公開されて、最終的には24館での公開となるようです。

東京でも新宿シネマカリテとヒューマントラストシネマ渋谷でしか上映されてなくて、公開されることも知らず、予告編も見たこと無かったんですけど、せっかくのTCGメンバーズハッピーフライデーだったので、特に見たい作品でもありませんでしたが、時間的にちょうどよかったので観に行ってきました。

鑑賞にあたっての予備知識はほとんどなく、いまいちダサい熊の着ぐるみも、アメリカのマイナーなテレビ番組のキャラクターなのかしら?ぐらいに思っての鑑賞です。

監督はデイヴ・マッカリー
本作が長編映画デビュー作で初めましてです。
本作は、監督デイヴ・マッカリー、脚本ケヴィン・コステロ、主演カイル・ムーニーの3人がサンディエゴ出身の中学の同級生の幼馴染だそうです。
その中でデイヴとカイルは4人組からなるコメディユニット「GOOD NEIGHBOR」を結成し、YouTubeにコメディ動画をアップしたところ人気に火が付き、ケーブルテレビチャンネルのコメディ・セントラルの目に留まり、パイロット番組の制作にまで至ったようです。
そしてコメディ・セントラル自体がサタデー・ナイト・ライブと契約したことにより、GOOD NEIGHBORはサタデー・ナイト・ライブの常連となり認知度を上げていったようです。
デイヴ自身は脚本を担当してるようで、なんとエマ・ストーンの新恋人だそうで、なんとも羨ましい限りです。

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主演はカイル・ムーニー
前述したようにGOOD NEIGHBORのメンバーでコメディアンです。
本作では共同脚本も担当しています。
日本でいえばTEAM NACSみたいな感じなんでしょうかね。
映画は『ズーランダー NO.2』とかに出演してるみたいです。

共演にマーク・ハミル
近作は『キングスマン』『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を観てます。

他に共演と配役は以下の通りです。

ジェームス: カイル・ムーニー
テッド(偽父): マーク・ハミル
エイプリル(偽母): ジェーン・アダムス
ヴォーゲル(刑事): グレッグ・キニア
エミリー(精神科医): クレア・デインズ
グレッグ(父): マット・ウォルシュ
ルイーズ(母): ミカエラ・ワトキンス
オーブリー(妹): ライアン・シンプキンズ
スペンサー(妹の友人): ジョージ・レンデボーグ・Jr
メレディス(妹の友人): アレクサ・デミー
アリエル: ケイト・リン・シール
エリック: アンディ・サムバーグ

あらすじ

ジェームスは、外気から遮断された小さなシェルターで、両親と3人で暮らす25歳の青年。ドームの中から砂漠と化した地上を眺めるだけで、地下の生活が彼の全てだった。子どもの頃から毎週ポストに届く教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」を見て育った彼は、今は「ブリグズビー・ベア」の番組研究に勤しむ毎日を送っていた。少し退屈でも、パソコンでチャットする友人や仲の良い両親と、平和な日々がずっと続くのだと思っていたある日、警察がジェームスを連れ去り、両親は逮捕されてしまう。
両親だと思っていた2人は、25年前にジェームスを誘拐し、隔離して育てていたのだった。突然訪れた「外の世界」に困惑するジェームス。本当の両親、高校生の妹と一緒に暮らすことになっても、テレビも見たことがなく、彼が両親だと思っていたテッドとエイプリル以外の人間に会ったこともないジェームスは、何もかも初めての体験で驚きの連続。「ブリグズビー・ベア」をジェームスの教育のためだけに作っていた2人は逮捕されてしまったため、今後新作ビデオが届かないことに落胆する彼だったが、妹のオーブリー、映画好きのスペンサーたちの協力を得て、自身で映画版「ブリグズビー・ベア」を撮り、その手でシリーズを完結させることを決意する。変わった環境で育ったジェームスの変人ぶりを受け容れてくれる仲間との出会いをきっかけに、次第に周囲はジェームスの純真さと素直さ、ものづくりに対する情熱に惹かれていく…。

(公式サイトhttp://www.brigsbybear.jpより引用)

ネタバレ感想

いやー、予告編も目にせず、どんな話か知らないで見たせいもあると思いますが、めちゃめちゃ面白かったですね。

まず、警察がやってきた時点では、何が起きてるのかは分からなかったのですが、偽の両親が逮捕されるときに「すまない」と謝っていたので、この時点で『ルーム』みたいな誘拐監禁モノであるという察しが付きます。

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主人公のジェームスは警察に保護されてパトカーでの移動中に「ガスマスク付けなくて大丈夫なの?」って聞くんですけど、偽両親から外の空気は毒素に汚染されてると信じ込まされていて地下シェルター暮らしだった理由が分かるのですが、この辺の設定は『10 クローバーフィールド・レーン』に近いと思いました。

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本作が優れてるのは、まだ冒頭の段階で、この監禁モノとプチSFの世界観を構築してるところなんですが、ジェームスが警察署に着いて本当の両親と再会を果たし、自宅に帰ると更に一捻りしてあって脚本と設定が上手いなぁと思いました。

「ブリグズビー・ベア」はてっきり「セサミストリート」みたいにアメリカで実際に放送してて、ローカル局で放送された知る人ぞ知るマイナーな番組かと思ったんですけど、本作のために作られた劇中劇であり、しかもそれがジェームスのためだけに偽両親が作ったことが明らかになると、何て面白い設定を考え付くんだろうと思いましたし、劇中の小道具(壁一面に並べられたビデオやキャラクターグッズ)のこだわりぶりも凄いなぁと思いました。

ジェームスは本当の両親の元へ帰ってきても、ブリグズビー・ベアの世界しか知らないので、話題の中心はどうしたってブリグズビー・ベアになるんですが、両親を含めて周りは誰も知らないので、その状況がまず面白いです。
両親はジェームスの失われた25年を取り戻そうと、「やりたいことリスト」を作るんですが、ジェームスのブリグズビー・ベアへの興味はそれを上回ってて、毎週送られてくる新作のビデオテープが見たいと言います。
両親は当然の如く、何のことか分からないのですが、ジェームスの精神面をケアするために往診に来る精神科医のエミリーによって真実が語られます。

ジェームスの偽父は60km離れたスタジオ倉庫でブリグズビー・ベアの撮影をしていたこと。
パソコンはオンラインに繋がってなくて、ブリグズビー・ベアのフォーラムに集まっていたのは偽両親の自作自演だったこと。
偽両親は逮捕され、ブリグズビー・ベアの撮影で使われた道具も警察が押収してることから新作は作られないこと。

などが語られるんですが、事実を知ってショックを受けると思われたジェームスは、「偽両親が作ってたなんて凄い」と逆に喜びます。
ジェームスは本当の父親に映画館に連れて行ってもらっていて、この世には映画というものがあり、何人もの監督が映画というものを作っているということを知ったので、ブリグズビー・ベアの続きも自分が作ればよいと考えたのでショックがあまり無いんですね。

ジェームスは両親に内緒で警察署に行くと、担当刑事に撮影で使われた道具を少し分けて欲しいと言います。

担当刑事のヴォーゲルのキャラクターもまたいいんですよね。
学生時代はシェイクスピア演劇にのめり込んでて、役者になる夢を諦めて刑事になった人なんですが、押収したブリグズビー・ベアの世界観に触れて、ジェームスの続きを作りたいという熱い思いを知ると、押収した道具を少し返してくれます。

本作は基本的にいい人しか出てこないんですが、ヴォーゲルが押収した道具をジェームスの家まで持って来てくれると、両親は嫌な顔をします。
ジェームスにはブリグズビー・ベア以外の世界を知ってもらいたいと思ってますし、何より犯罪者が作った教育番組だということが受け入れられないんですね。
劇中では両親と精神科医のエミリーがジェームスをブリグズビー・ベアから引き離そうとするんですが、この辺の描かれ方も『ルーム』に似ていましたね。

ジェームスは高校のアメフトの試合を見に行くと言って妹のオーブリーに連れ出されますが、それは両親が留守にする友人のスペンサー宅で開かれるパーティーに出席するための口実で、そこで初めてビールやドラッグや女性とのキスを経験し、映画監督志望であるスペンサーとも知り合います。

このスペンサーのキャラもいいキャラでして、スタートレックのTシャツ着て部屋には古いSF映画のポスターが貼ってあるSFオタクで、ジェームスが話すブリグズビー・ベアの話も興味深く聞いてくれるんですね。
スペンサーがジェームスに「ブリグズビー・ベアってどれくらいあるの?」と聞き「25巻で730話」と答えると、スペンサーは是非見たいと言うんですが、この辺もニヤッとしてしまいました。

スタートレックのテレビドラマ版は現在までに700話を超えてるんで、スペンサーのオタク魂に火がつかない訳が無いんですね(笑)
スペンサーはジェームスからビデオテープを借りるとパッケージを見て、「このキャラはドナルドダックに似てるな」とか言うんで、偽父がパクってたりするのが分かるところも面白いんですが、逆にジェームスはドナルドダックを知らないんで「~~ダックだよ」って教えてくれます。
スペンサーはビデオを見るとこれは傑作だと言って映画を作ろうと言ってくれます。
またビデオをユーチューブにアップしたものが話題になり、若者たちの間でブリグズビー・ベアが人気になっていきます。

映画制作が始まると、ヴォーゲル刑事も役者として参加するんですが、これが『スター・ウォーズ』のパロディにもなってて楽しいんです。
ヴォーゲル刑事を演じる役者さんはグレッグ・キニアという方なんですが、この人、少しマーク・ハミルに似てるんですね。


ブリグズビー・ベアがサン・スナッチャーという悪を倒すための導師役なんですが、洞穴に籠ってて『フォースの覚醒』や『最後のジェダイ』のルーク・スカイウォーカーみたいなんです。

一方、マーク・ハミルは偽父と、『月世界旅行』の月みたいなサン・スナッチャーの顔を演じてるんで、ダークサイドに堕ちたダース・ベイダーをイメージさせます。

なので本作は『スター・ウォーズ』と『スタートレック』という2大SF映画へのオマージュにもなってるんで胸アツなんです。

妹のオーブリーは突然現れた兄を受け入れられなかったのですが、スペンサーやメレディスたちと一緒に映画のロケ撮影を兼ねた旅に出ると、周囲を魅了するジェームスの純真さや素直さに気付き、ジェームスを受け入れるんですが、ここで事件が起こります。

ジェームスは爆発シーンのため、ネットで調べて撮影用の爆発物を作ると、思いのほか大きな火が上がり警察沙汰になってしまい、再び美術道具を押収されてしまいます。
両親と精神科医からも叱られブリグズビー・ベアを忘れるように言われます。
しかし反発したジェームスは、ブリグズビー・ベアに出てきた美少女キャラのアリエルの行方をネットで探すと、両親の車を盗んで会いに行きます。
ジェームスは自分なりにブリグズビー・ベアにけじめをつけようと、アリエル役の人にお礼を言いに行ったのでした。
ジェームスは行方を捜していた警察に捕まるとそのまま精神病院送りになってしまいます。

精神病院では腑抜けのようなっていたジェームスですが、同じように患者でオタクの友人を得ると脱走を企てます。

一方その頃、ジェームスを失ったスペンサーやオーブリーは大きな喪失感に包まれていました。
スペンサーはジェームスが途中まで撮っていた映画を編集してメイキング映像を作るとオーブリーを介して両親に見てもらいます。
そこにはロケ撮影で楽しそうに生き生きとしているジェームスの姿が収められていて、両親も考え方を改めるのでした。
両親はヴォーゲル刑事に会いに行くと美術道具を返してもらいます。

ジェームスは病院を抜け出してこっそり自宅に帰ってくると、庭の方で楽しそうな声が聞こえます。
ジェームスが庭に向かうと、両親とスペンサーたちが撮影準備をしていて、ジェームスが戻ってくるときに備えてサプライズの準備をしていたのでした。
脱走のため予定より早く帰ってきたジェームスでしたが、当然、両親は咎めること無く、皆で映画作りをしようと言うのでした。

ジェームスには映画を完成させる前に一つやらなければならないことがありました。
それは刑務所にいる偽父のテッドに会いに行くことで、父親のグレッグが送ってくれます。
ジェームスは会いに来るのはこれが最初で最後と告げると、映画版の脚本を見せます。
実はブリグズビー・ベアのナレーションと声はテッドが1人で演じてたのでした。
ジェームスはテッドに音声を吹き込んでもらうと映画は完成します。

完成披露試写会の日。
地元の映画館は満席で観客は映画を楽しんでいましたが、ジェームスは緊張のためトイレで吐いています。
スペンサーが様子を見に行くと、「観客に受け入れられなかったら」とジェームスが言います。
しかしスペンサーは「人の評価なんて気にしなくていい」と言ってジェームスを勇気づけます。

映画版「ブリグズビー・ベアの冒険」はラスト、サン・スナッチャーに襲われている大勢の人を救うため、ブリグズビー・ベア自らがミサイルとなってサン・スナッチャーに突っ込むと、宇宙の星屑となって2人とも跡形もなく消えてなくなって終わります。

ジェームスは映画が終わったタイミングで客席の様子を見に行くと、大きなスタンディングオベーションで迎えられ、自身もブリグズビー・ベアから卒業することが出来るのでした。

 

本作は辛いことがあっても、夢を持つことの大切さや想像することの大切さを説いてくれています。
他者を思いやることが出来なく、世界が不寛容になってる現在、他者の立場になって想像することはとても大切なことで、普遍的なメッセージだと思いました。

ブリグズビー・ベアのモデルになってるのは主演のカイル・ムーニーが夢中になった「Welcome to Pooh Corner」や「テレタビーズ」だそうですが、日本人にとってはガチャピンであり、ムックであり、ゴン太くんなんだと思います。

「できるかな」は最終回でノッポさんが喋ったのが衝撃的でしたね。

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ノッポさん「大きくなった、みんなへ」と題し、本作のメッセージと同じようなことを言ってますね。

終わらないと思った「ポンキッキ」も今年終わってしまいました。

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これからは1人1人が想像することが大切なんだと思います。

 

(後日追記)

本作を観たあと、後日『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』を観たんですが、その感想を書く段になって監督降板があったのを知ったんですけど、ロン・ハワード監督の前はフィル・ロード&クリス・ミラー監督だったんですね。

「ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」の監督降板について、ロードとミラーが初めて語る
「私たちの映画の製作方法は、彼らのものとは違っていたのです」とフィル・ロードが説明。

それで、降板したせい(製作総指揮には名を連ねてるみたいですけど)かどうかは分からないですけど、『ハン・ソロ』は面白くなかったんです。

でも本作では2人が製作に名を連ねてるんですね。

マーク・ハミルも冗談で、「本作ではセリフがあった」と言ってるみたいなんですけど、本作の方がよっぽどスター・ウォーズ愛やSF愛に溢れてたと思いますし、面白かったです。

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なのでスター・ウォーズの1/10でもいいからヒットして欲しいと思いますね。

鑑賞データ

ヒューマントラストシネマ渋谷 TCGメンバーズ ハッピーフライデー 1000円
2018年 117作品目 累計112100円 1作品単価958円

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