アラフォー女の嫉妬を描く ☆3.5点
ウディ・アレン監督による長編49作目で、1950年代のコニーアイランドを舞台に理想を追い求めるあまり、ひと夏の恋に溺れる再婚した元女優の姿を描いた作品。
主演はケイト・ウィンスレット、共演にジャスティン・ティンバーレイク、ジム・ベルーシ、ジュノー・テンプル
予告編
映画データ
本作は2018年6月23日(土)公開で、全国30館での公開です。
監督はウディ・アレン
近作は昨年の5月に『カフェ・ソサエティ』を観てます。
また本作までの間にWOWOWで『教授のおかしな妄想殺人』を放送してたので見ました。
それにしても、この1年でウディ・アレンを取り巻く状況は大きく変わりました。
本作がラストになるのでしょうかね?
主演はケイト・ウィンスレット
近作は『トリプル9 裏切りのコード』を観てます。
なんか本作ではずっとマドンナに見えて仕方なかったです。
共演にジャスティン・ティンバーレイク
近作は『ランナーランナー』『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』を観てます。
共演にジュノー・テンプル
近作は『ラヴレース』を観てます。
共演にジム・ベルーシ
鑑賞中は気づかなかったんですが、ジェームズ・ベルーシだったんですね。
1990年前後は主演作がよく公開されていて、『レッドブル』と『K-9/友情に輝く星』は劇場で観ました。
他に共演と配役は以下の通りです。
ジニー・ラネル: ケイト・ウィンスレット
ミッキー・ルービン: ジャスティン・ティンバーレイク
ハンプティ・ラネル: ジム・ベルーシ
キャロライナ: ジュノー・テンプル
リッチー・ラネル: ジャック・ゴア
ジェイク: デヴィッド・クラムホルツ
ライアン: マックス・カセラ
パーティーの招待客: デビ・メイザー
アンゲロ:トニー・シリコ
ニック: スティーヴ・シリッパ
あらすじ
遊園地のレストランでウェイトレスとして働くジニー(ケイト・ウィンスレット)は、かつては女優として舞台に立っていたが、今は、回転木馬の操縦係を務める夫のハンプティ(ジム・ベルーシ)、そして自身の連れ子のリッチー(ジャック・ゴア)と観覧車の見える部屋で暮らしている。実は彼女は夫に隠れて、海岸で監視員のアルバイトをしているミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)と付き合っていた。平凡な毎日に失望していたジニーは、脚本家を目指す彼との未来に夢を見ていた。だが、ギャングと駆け落ちして音信不通になっていた夫の娘、キャロライナ(ジュノー・テンプル)が現れたことから、すべてが狂い始める─。
(公式サイトより引用)
ネタバレ感想
なんか観終わったあとの最初の感想は、『マッチポイント』っぽいなぁと思いました。
『マッチポイント』は、主人公の男がセレブの男友達が出来ると、その妹と付き合えるようになり、玉の輿婚に目が眩むと、それまで付き合ってて婚約してた美人だけど貧しい女優志望の彼女のことが邪魔になり殺す、という話でしたけれども、本作では主人公の女が不倫相手のイケメン年下男を手に入れるために、恋敵になりそうな義理の娘が殺されそうなのを黙って見過ごすという話でした。
ジニーはかつては女優で、バンドのドラマーである夫との間に一人息子であるリッチーを儲けましたが、共演者と浮気したのが夫にバレて、ショックを受けた夫は自殺してしまいます。
ジニーは女優を辞めてしばらくリッチーを1人で育てるとハンプティと再婚します。
ハンプティには妻との間に一人娘のキャロライナがいましたが、ギャングと付き合いだし結婚しようとしたので猛烈に反対します。
しかしキャロライナは親の反対を押し切って結婚したので勘当状態になります。
ハンプティは妻と死別するとジニーと再婚します。
物語はそんな過去を持つジニーとハンプティが暮らしてる、やや廃れてきた1950年代ニューヨークのコニーアイランドから始まります。
ハンプティは遊園地の回転木馬の操縦係、ジニーはレストランのウェイトレスとして働いてて、社員寮みたいな敷地内にある建物で暮らしてます。
ジニーは貧乏暮らしと遊園地の喧騒に疲れていて、一人息子リッチーの問題行動(放火癖)にも頭を悩ませています。
そんなある日、ハンプティの一人娘であるキャロライナが訪ねてきます。
話を聞くとギャングの夫とは贅沢な暮らしをしてましたが、徐々に喧嘩が絶えなくなり離婚してきたのでした。
その際キャロライナは腹いせに夫の悪事をFBIにタレ込んだことから、夫の部下たちに追われていました。
お金も行くあても無く、父親のハンプティを頼ってきたのでした。
キャロライナは「夫は、実家とは縁が切れてると思ってて、ここまでは追ってこないから、しばらく泊めてほしい」と言います。
父親のハンプティは当初は勘当した娘を撥ね付けていましたが、妻であるジニーがとりなすと一緒に暮らすことになります。
しかしジニーはキャロライナと一緒に暮らし始めると、すぐに2人の仲をとりなしたことに後悔します。
夫のハンプティは久しぶりに娘が戻ってきたのが嬉しくて甘やかし、お客さん扱いします。
ジニーがリッチーのことで悩んでいてもキャロライナしか目に入っていませんでした。
ジニーはいつまでもキャロライナを甘やかすハンプティにキレると、キャロライナもレストランのウェイトレスとして働き始めます。
そんなジニーが黄昏れて、小雨降る海岸を傘も差さずに歩いていたところ、海水浴場の監視員のバイトをしてるミッキーに声を掛けられます。
ジニーは聞き上手のミッキーに愚痴をこぼしてるうちに、ミッキーが脚本家志望の大学生と分かると、自身もかつては女優をしていたことを明かし意気投合します。
2人は頻繁に会ううちに恋仲になります。
ある日ジニーが、仕事中のハンプティに弁当を届けに行くと、ギャングがキャロライナを探しに来てるところに出くわします。
キャロライナの行方を尋ねるギャングにハンプティは知らないと答えると、ジニーも口裏を合わせます。
別の日、ジニーがキャロライナと街を歩いてるとミッキーと出くわします。
ジニーはミッキーに夫の娘であることを紹介し、キャロライナには海水浴場で監視員をしてる知り合いだと言います。
ミッキーに一目惚れしたキャロライナは、ジニーにミッキーのことを尋ねますが、キャロライナの恋心に気付いたジニーはミッキーは遊び人だから止めた方がいいとアドバイスします。
しかしキャロライナはジニーの助言を聞かずミッキーに積極的にアプローチすると、ミッキーもギャングの妻だったキャロライナに興味を持つのでジニーは激しく嫉妬するようになります。
キャロライナはジニーがミッキーと付き合ってるとは知らず、ミッキーと会ったことを屈託なく話すのでジニーは余計に苛立ちますが、リッチーの放火癖がエスカレートしてることも苛立ちに輪をかけます。
ジニーはリッチーが受けているカウンセリングの回数を増やすべく、費用を出してくれるようハンプティに言いますが、これにはある打算もありました。
リッチーをカウンセリングに預けてる間、頻繁にミッキーと会おうと思ったのでした。
しかしハンプティはカウンセリングをこれ以上増やしても無駄だと言い費用を出してくれません。
そのくせ、キャロライナはウェイトレスで終わるような娘では無いと言い、その分の費用はキャロライナを学校に行かせるために使うと言います。
ジニーは、キャロライナにミッキーを取られそう、リッチーはますます悪くなり、ハンプティは娘ばかりを可愛がり、ということで、よりミッキーへの依存度を深めるという悪循環に陥っていきます。
ジニーはミッキーの誕生日が近いことから、以前欲しがっていた高価な腕時計を贈ろうと考えます。
しかしお金が無かったジニーはハンプティのへそくりをちょろまかすのでした。
ミッキーの誕生日、ジニーは仕事の合間を縫ってミッキーと会う時間を作ると、プレゼントを渡します。
しかしプレゼントを見たミッキーは、「こんな高価なものは貰えない」と言います。
ミッキーが喜ぶと思っていたジニーは口論になると、時計を投げ捨てて家に帰ります。
ジニーが家に帰るとハンプティがリッチーに怒ってます。
リッチーがお金を盗んだと言って怒ってるので、ジニーは自分が盗ったと言います。
しかしカウンセリングのためのお金だと嘘を付きます。
するとそのタイミングでキャロライナが仕事から帰ってきます。
キャロライナは帰ってくるなり慌ただしく準備をすると、ミッキーの誕生日ディナーに出かけると言います。
それを聞いて驚くジニーでしたが、キャロライナが「もしかしたら今日、告白されるかも」と無邪気に言って出かけると、ジニーは仕事に向かいます。
ジニーがレストランに向かうと、以前ハンプティを訪ねてきたギャング2人が店先にいて、同僚の店員と話をしています。
ギャングが立ち去ったあと同僚に何を話してたか聞くと、キャロライナを訪ねて来たとのことでした。
同僚はミッキーの誕生日ディナーのことを聞いていたらしく、キャロライナが行くお店を教えたとのことでした。
キャロライナの命が危ないと考えたジニーは、すぐさまその店に電話しますがキャロライナを呼び出してもらおうと店員と話してるうちに気が変わりそのまま電話を切ってしまうのでした。
その頃、キャロライナは店でミッキーの告白を受けていましたが、同時にジニーと付き合ってることも打ち明けられます。
ミッキーはジニーと別れるので、付き合って欲しいと言います。
キャロライナは少し考えさせて欲しいと言うとディナーを終えて帰ることになります。
ミッキーはキャロライナに「車で送って行く」と言いますが、少し一人で考え事をしたいキャロライナは歩いて帰ると言います。
そして、その様子をギャングが見ていました。
翌日、ミッキーの元へハンプティがやって来ます。
ハンプティはキャロライナが昨日から帰ってこないと取り乱していました。
ミッキーは別れたときの様子をハンプティに説明します。
ジニーが家にいるとハンプティが戻ってきます。
ハンプティはギャングがキャロライナを探しに来たのを掴んだようでした。
ハンプティはキャロライナがもう殺されていると悲しみ、その日不審な行動を取っていたジニーが、知ってて何もしなかったのではないかと責めます。
ハンプティは怒り悲しみながら出ていくと、バーに行って禁酒してた酒をあおります。
ジニーはハンプティが出ていったあとドレスに着替える(ここは謎)と、ミッキーが訪ねてきます。
初めて家を訪ねてきたミッキーに、「こんなこといけない」とジニーは言いますが、ミッキーはキャロライナ誘拐の真相を掴んでいました。
ジニーが同僚にキャロライナを探しに来た人物がいるのを確認してること、その後慌ててどこかへ電話したこと、店に呼び出しの電話がありながら途中で切れたこと、という3つの事実をミッキーは確認してました。
ジニーの前で「彼女を愛してた」と肩を落とすミッキーとは完全に終わるのでした。
ハンプティは疲れ果てて家に戻ってくると、「出ていかないでくれ」とジニーにすがります。
ハンプティはジニーと出会った頃、よく一緒に釣りに行ってましたが、ジニーは本来、釣りに興味がなく結婚してからは行ってませんでした。
ハンプティは「また釣りに一緒に行こう」と言いますが、ジニーは「行かない」と答えます。
夏の終わりの誰もいない海岸で、監視台の前で何かを燃やしているリッチーを映して映画は終わります。
本作の考察では、この作品がウディ・アレンの自己弁護だと評するニューズウィークの記事が面白かったです。
確かに本作では物語の語り部であるミッキー(アレン作品の場合、アレンが語り部のことが多い)は、キャロライナに言い寄られるものの肉体関係には至りません。
脚本家志望として、ギャングの妻だったという過去に興味を持つだけで、ジニーと二股かけている訳ではありません。
一方、ジニーは過去に浮気をし夫を自殺させてるにも関わらず、再び浮気をします。
リッチーの問題行動の根本的な原因にも気づかず浮気をし、嫉妬に狂うどうしようもない人物として描かれてます。
アレン作品を全部見てる訳では無いですが、こういうゲスなキャラクターは男性主人公に多いものの、女性主人公では珍しいんじゃないかと思い、そういう部分でも自己弁護的なものを感じました。
ミッキーのキャラクターは詳しくは語られませんが、なかなか不思議なキャラクターだと思います。
ニューヨーク大学の学生で脚本家志望。
夏休みの間は海水浴場の監視員のバイト。
一人暮らしのわりにバスタブが部屋の中にあるいい部屋に住んでいる。
そして学生なのに車も持っている。
きっと金持ちの息子なんでしょうけど、お洒落な日本庭園を知ってたり、高価なプレゼントに戸惑う真摯さもあったり、非の打ち所が無く、これがウディ・アレン自身の投影だとしたら、なかなかのものがあります。
だとすると嫉妬に狂うジニーはミア・ファローの投影で、あちこちに火をつけて回るリッチーはディラン・ファローの投影だとしたら、いやこれ結構ドロドロした恐ろしい映画だと思うんですがいかがでしょう。
鑑賞データ
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2018年 109作品目 累計103600円 1作品単価950円
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